やはり人が多い所は人のカルマが聞こえてきて辛いものがある。少し静かな山などの場所にでも行くとしよう。
おや、拙僧の正体について勘付いた者もいるようだな。中々鋭い。
それでは本編開始といこう。
聞こえるぞ、お主ら読者のカルマが!お主はこの話を読んだ時『誰だお前!?』と言う!!
生徒会室に向かうと、今日は休みだったはずのルルーシュが扉から出てきた。
「あれ?ルルーシュ、今日は休みじゃなかった?」
「あぁ、ナナリーがちょっと熱を出してね…。でももう落ち着いたし平気だよ」
「そうなんだ、ナナリーにお大事にって伝えてくれる?」
ルルーシュは少しだけ口角を上げると
「ナナリーも喜ぶ」
と言って去って行った。…猛ダッシュで。ナナリーのこと心配だったのかな?改めて生徒会室に入ろうとすると、今度はシャーリーが飛び出てきた為、ぶつかってしまった。
「ごめんシャーリー、怪我してない?」
「う、うん…へ、平気…!私こそごめんね…!そうだ、ねぇ、ルルは!?」
「ルルーシュならダッシュで帰ったけど…」
「…なら追いつけないなぁ…ありがと、私ちょっと行ってくるね」
…なんだったんだろう?まぁ、ルルーシュはクラブハウスに住んでるらしいからすぐに追いつけるよね。
暫くして戻ってきたシャーリーに話を聞けばどうやらルルーシュとプロレス観戦に行くようだ。…そういえばナリタでシャーリーのお父さんとジェレミアさんと会ったのだが、ジェレミアさんは現在行方不明との話だ。ならばシャーリーのお父さんはどうなのだろう?この前シャーリーに話を振った感じでは何かあった様にも思えないが、単身赴任と言っていたし、ただ情報が入ってないだけかもしれない。
「ねぇ、シャーリー、そのプロレスのチケットって自分で買ったの?」
「ううん、お父さんに頼んで買ってもらったの。お父さんね、私のご機嫌取りにこう言うのをよく買ってくれるの」
プロレス観戦のチケットを送ってくれるなんてなんて良いセンスのお父さんなのだろう。
「…最近お父さんとは会った?」
「ううん、単身赴任で暫く会ってないけど、なんで?」
「ほら、肩を貸してもらったでしょ?御礼を改めて言おうかなって」
私がそう答えるとシャーリーは手紙で伝えてみると答えてくれてそれで話は終わった。それから特派から連絡があり、ボールスの修理が終わるまでは私は仕事が休みになった。別にナイトメアがなくてもやれる仕事はあるはずなのだが、普段学校が休みの日は仕事だということもあるので、恐らくセシルさんあたりが気を遣ってくれたのだろう。別に良いのに…。
陽菜達への顔出しはそれなりの頻度で行っているし、今日は確か施設のイベントで不在にしているはずだ。そうなると休日と言われても筋トレ以外に特にする事は無くなってしまう。そう言う訳で自室で筋トレに励んでいると、クラリスさんから声をかけられた。
「ねぇ、マーヤ…軍のお仕事、まだ続けるつもりなの?」
「…当たり前でしょ」
私が陽菜達を守るためにはこれしか選択肢はない。だから私が軍を辞めるわけにはいかないのだ。
「私が…マーヤが病院にまた運ばれたって聞いた時どれほど心配したかわかる!?」
またその話か…もう、うんざりだ!私は窓を突き破ってそのまま逃げるように走り出した。そしてあてもなく走っていると、どうやらナリタまで来てしまったようだ。もう夜も遅く、ロープウェイなどやっていないが…たまには山登りも悪くないだろう。道中熊に襲われた事以外は何事も無く、怪我もなく山頂に到着した。
それにしても…またクラリスさんと喧嘩しちゃったな…。いつも謝らなきゃって思ってはいるんだけど何故か反抗しちゃうんだよね…
「…それはクラリスさんとやらに甘えてるだけであろう」
…甘えてる、かぁ…そうなのかな。…そうなのかも?…私ってまだまだ子供なんだな…
「作用、お主はまだ子供よ。女子高生なのだからな」
…卑怯だな、こういう時だけ立場に頼るのは
「卑怯でも良かろう。そうでなくば生きられぬ者も居ろうて。」
…。んん?さっきから私誰と話してる?というか、私一言も発してないよね?
私は後ろを振り返るとそこにはサングラスを掛けた男の人が立っていた。
「初めまして、マーヤ ディゼル」
「どうして私の名前を…!?」
男はゼロほどではないが筋肉隆々だ。それに唯ならぬ雰囲気がある…!この人、強い…!
「そんなことどうでも良かろう。…申し遅れたな。拙僧の名前はマオ。」
…格好は山伏って感じだけど…その頭から垂れる髪は銀色だ。…日本人ではなさそうだけど…
「人が居ると人のカルマが拙僧に流れ込んでくるので人混みは拙僧には辛くてな。この辺りは静か故好きであったのだが」
…こ、この人何を言ってるんだろう…?カルマって…頭大丈夫なのかな。
「拙僧には聞こえるのよ、人々のカルマが。お主のカルマも聞こえてくるぞ?ふむ、お主は…人には言えぬ秘密があるな?」
…!いや、こんなのは占いなんかな常套句だ。
「そ、そんなの誰にだって秘密の一つくらいあるでしょ」
そんなのあなたは探し物をしていると同じくらい誰にでも当てはまる質問だ。
「では当てよう、お主はハーフである事を皆に隠して生きておる…」
「!」
な、なんでこの人…!私誰にも言ってないのに…!
「だから言っておろう、人のカルマが聞こえると」
わ、私が…ハーフだと、この人にバレてしまっている…どこから情報が漏れた…?学校?あり得ない、こんな訳のわからない人に、それもこんなところにいる人に偶然渡ったとは考え難い…ダメだ、答えを絞り込むには…
「情報が足らぬ、だろう?当然だ。何故なら…む?」
こうなったら…ここで情報源を吐かせるしか無いッ!幸い、こんな時間にこんなところに来る人間なんて居やしないんだ!
「…お主のカルマが聞こえてくるぞ。次にお主は…『あなたを始末するッ!』と言う…」
「あなたを始末するッ!」
今、ここでッ!!私は一気に踏み込み、右拳でフェイントを、本命の左脚で蹴りを放つ
「拙僧には聞こえると言ったはずだ」
フェイントには目もくれず蹴りが弾かれた…!?だったら…
「下段蹴りをしつつ落ちている石を拾う…か?安直だな」
私は下段蹴りを…なっ!?何故私の行動が!?
「それを私に投擲するか、面白い、当てられるなら当ててみるが良い」
あぁダメだ。カチンと来たわ。読まれていても関係ない。私は大きく振りかぶり…投げるッ!!
「ふん、胴体を狙っても無駄な事よ」
マオは右に避けた…が、その時!風と、石の形状がそうさせたのか、石もマオに吸いつかれるように右に曲がった!
「な、何ィッ!?軌道が曲がっただと!?」
私の攻撃は見切れたのに今のは見切れない…?どうやら私のカルマとやらは聞こえても私にも予測不可能な攻撃には対処し切れないみたいね…!だったら!
「ッ!させるか!!」
「遅い!」
私は地面を鷲掴み、それを思い切り投擲する。面的に放たれた弾丸のような石礫はいくら私が石を投げることが分かっても避けられはしない。
「間髪入れずとどめの一撃ッ!」
私は地面を大きく蹴り、ドロップキックを仕掛ける。石礫による猛攻で体勢は崩れている!今なら!
「言ったはずだッ!拙僧には聞こえるのだと!!」
腕でなんとかガードしたようだけど、勢いまでは殺せてない!大きく弾き飛ばし、マオは地面を転がっていた。よし、これなら…
「勝てる…と?」
「えっ?」
目の前に迫る脚に蹴りを腕でガードするが吹き飛ばされ、空中でマオの貫手を喰らい、私は受け身も取れずに地面を転がった。
「拙僧はな。中華連邦の過酷な山々を放浪し、この強靭な肉体を手に入れた。お主のような半端者とは鍛え方が違う!お主が悪いのだ、拙僧はただ静かに過ごしたかっただけなのに!お主が悪いのだ!」
…完全に油断していた…!決まったと思ってたのに…!私は体に力を入れようとするが、何故か痺れて動かない、一体なぜ…!?
「お主にもようやく効いてきたようだな。拙僧の毒が」
「毒…!?」
「然り。拙僧は人のカルマを聞くことができる故、人との争いでは無敗よ。しかし、野生動物はカルマを持たぬ故そうはいかぬ、ならばと身に付けたのがこの毒の貫手よ。言ったであろう?お主とは鍛え方が違う、と」
だ、ダメだ…段々呼吸も辛くなってきた…ゼロにも負け、緑髪の女にも負け、この男にも負けるなんて…私は…
「…む?緑髪の女だと!?お主その話…」
「その子から離れなさい!」
「しまったッ!」
突如現れた影からのドロップキックを顔面にモロに受け、マオは吹き飛んでいった。
「マーヤ、大丈夫?心配したんだから」
「ク…ラ…」
私とマオの間に立った細い体はクラリスさんのものだ。…まさか私のことを追って…?私のことなんて放っておけば良いのに、馬鹿な人だ…
「私の娘にこれ以上手を出すことは許しません!」
「…ふん、なにが娘だ…。拙僧には聞こえるぞ、お主のカルマが…!」
「き…を…」
ダメだ、呂律が回らない…!クラリスさん、アイツに正攻法なんて通じない…!それに毒の貫手のことも教えないと…!
「大丈夫よマーヤ、私が守るからね」
クラリスさんは少しだけ振り返って私に微笑んでくれた。次の瞬間、クラリスさんの鋭い蹴りがマオの腹を穿っていた。
「な…にぃ!?」
す、凄い…!流石クラリスさんだ…!その後も容赦ない連続の殴打を続け様に放ち続けている…!回し蹴りを食らったマオは吹き飛んで転がっていた。
「…馬鹿な!カルマは聞こえているのに…!」
「私の師匠はね、あらゆる攻撃をその動きから先読みして的確に防御される凄い方なの。でもね、その師匠が言っていたわ。『分かっていても対処できない物凄い速度で攻撃すれば私も対処できない』ってね」
クラリスさんの師匠もすごいが、それが実践できるクラリスさんも凄い…!道理で私なんかではクラリスさんに勝てないはずだ…!
「…聞こえるぞ、お主のカルマが」
「…またそれですか」
「お主はマーヤ ディゼルを娘だと言ったが…お主はその娘に隠し事をしているな?」
…クラリスさんが私に隠し事…?
「ッ!黙りなさい!」
「マーヤ、教えてやろうか、お主の秘密を!お主自身が知らぬ秘密を!」
私が…知らない秘密…。
「それ以上は!」
クラリスさんは攻撃に転じたが先程までのキレが無い。…もしかして動揺してる…?それほどまでに私の秘密を私に知られたくないのかな…。でも…!
「何が娘だ!本当は先輩とやらへの罪悪感だけで引き取った癖になぁ!」
「違うッ!」
クラリスさんが押されてる…。あのマオの人のカルマを聞くという力は恐らく本物、きっと言っていることも事実なのだろう…でも、もう関係ない。
私は上手く動かない身体に鞭を打ち、クラウチングスタートの構えを取った。
「…!マーヤ、そんな体で動くとは…お主の胆力を侮っていたか、だが無駄な事よ!二人のカルマを聞き対処することくらい拙僧には造作もない!」
カルマを聞く…カルマとは業だ。だが、これは苦しむクラリスさんを助けるためだ。だからカルマなんて無い。それに、これ以上先の事柄を…
考える必要なんて、無い!
「!?」
私はクラウチングスタートの構えから一気に駆け出していた。そしてクラリスさんにドロップキックをブチかまし、そのままクラリスさんをマオにぶつけていた。クラリスさんごめんなさい。やっぱり考えなしに動くのは良く無いのかも。そんなことを思っていると、次の瞬間クラリスさんの顔面スレスレを拳が掠め、その後ろにいたマオの顔面を私は殴っていた。
「な、何故だ!?カルマが、カルマが聞こえない!!なのに何故お主は動けている!?」
私は次の瞬間、マオの顔面を掴み、膝を叩き込んでいた。うわ、痛そう。
「マーヤ…まさかあなた体得したのね…!」
…体得?なんの話だろう。そんなことを考えている間も私はマオの攻撃を的確に弾き、顔面に拳を叩き込んでいる。
「…な、何!?全ての行動を脊髄反射に任せた完全反射行動だと!?」
なるほど、脳を中継して思考を挟む行動には必ずラグがある。それを今の私はどうやら全てを脊髄の条件反射に体を委ねることで思考を挟まない分、素早く攻撃が可能ということらしい。私今そんなことが出来てるのか、すごいなぁ人間の体って、不思議。
そして私の脚が渾身の力でマオの睾丸を蹴り上げているのが見えた。
「ミ°ッ!?』
どうやら…決着はついたみたいね。
マーヤ(脳筋)式心を読むギアス対処法:全ての行動を脊髄反射に委ねてボコボコにする。
という訳で謎の男の正体はマオでした。異なる可能性の世界としてマオも筋肉モリモリのマッチョマンという世界線でしたね。
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・ジョジョの奇妙な冒険(ジョセフ ジョースター、花京院)
・グラップラー刃牙