名誉ブリタニア人とは言え、まさか日本人のスザクが騎士になるなんて驚きだ。さらにテレビ放送も許可したとか。…これで少しでも日本人への風当たりが和らげばと思うが…。すると、私のところにセシルさんがやってきた。
「マーヤさん、コーネリア総督がお呼びよ。」
…ユフィの次は総督か…なんで私ばっかり…。
そんな訳で政庁に行き、受付を済ませコーネリア総督の部屋を訪れる。しかし、扉の先から聞こえる怒声に思わずノックを躊躇った。
『お姉様!何がそんなに不服なのですか!私の騎士は私が決めます!』
『ここでは総督と呼べユフィ!公私のけじめを…』
いや、総督も今ガッツリ私的な呼び方したよ。
『兎に角、何故あのような名誉ブリタニア人を騎士に!もっと相応しい人物はいるだろう!例えば、そう、マーヤ ディゼルとか!ユフィも私にそう言っていたではないか!』
『それは…そうですが…。でも騎士は枢木 スザクです!お姉様をお救いしたこともありますし、そのほかの実績や功績も十分あります…実力は十分騎士に相応しい方かと思いますが!?』
『だからここでは総督と呼べユフィ!』
公私混同しまくりながら言っても説得力無いですよコーネリア総督…。うわぁ、嫌だなこの部屋に入るの。
「おや、ディゼルくん、来ていたのか。…入らないのか?姫様に呼ばれているのだろう?」
「あ、ギルバートGPギルフォードさん…。私、帰っちゃダメですかね」
「何故フルネームで呼ぶ…?君が全力で帰ることを私では止められないと思うが…その場合姫様のお怒りを鎮めることもまた私には出来ないと理解してほしい」
つまり…入れと言うことだ。意を決してノックすると、扉が爆散した。うーん、安物の扉だったに違いない。
「おぉ、来たかマーヤ ディゼル!今丁度お前の話をしていたのだ!」
「マーヤ!…お姉様、マーヤにまで迷惑をかけるつもりですか!?私はもうスザクを騎士にすると決めたのです!」
「マーヤ!頼む、今から枢木の代わりにユフィの騎士になってくれ!」
うーん、思ってたように面倒臭い状況だ。しかし、総督には悪いが私にはナナリーを守りたい気持ちがある。故にここはスザクがユフィと近しくなる事を妨害してはならない!
「申し訳ありませんが総督、私もユーフェミア副総督の騎士はご自身で決めることが良いかと思われます…」
「…お前までそんなことを言うのか…!私を裏切ったな!!」
えぇ…理不尽だ…。
「姫様、先日テレビにて報道してしまいましたし、今更他の人物にというのは難しいかと」
「ギルバートGPギルフォード!我が騎士であるお前まで!!」
「姫様、何故フルネームを?」
「もう良い!貴様ら全員私を裏切るとは…!」
この人、ユフィへの家族愛でおかしくなってるよ…大丈夫かなブリタニア皇族…。
「まったく…コーネリア…皇女殿下。みっともない声が廊下まで響いてるよ。」
「なっ…」
突然の来訪者…振り返ればそこにいるのはノネットさんだった。
「たまの休暇に後輩の働きぶりを見に来てみればなんだい。みっともなく騒いでんじゃないよ」
「ノネット先輩!これは極めて複雑な政治的話で…」
「何言ってんだい。極めて単純な好みの話だろ」
「なななななななんのことかわわわわわわわからないな!」
あー、やっぱりユフィと総督って姉妹なんだなぁ…。動揺の仕方がそっくりだ。
結果として、ノネットさんの介入でコーネリア総督もスザクの騎士叙勲を渋々了承。…因みに扉の修理費用は私の自腹になってしまった。
そして迎えたスザクの騎士叙勲式、私はダールトン将軍の隣でスザクの晴れ舞台を眺めていた。
「…そういえばダールトン将軍、私も参加してていいんでしょうか」
騎士の叙勲式に参加しているのは貴族だらけ…そして私は社長令嬢とは言え貴族と比べられれば当然庶民に分類される。正直言って場違いだ。
「構わん。総督と副総督が許可を出した。それに副総督の護衛の一人であるならば軍属の貴様がいてもおかしくはなかろう」
護衛なんてダールトン将軍だけで十分な気がするけど、まぁいいか
「枢木スザク。汝ここに騎士の誓約をたて、筋肉を鍛えブリタニアの騎士として戦うことを願うか」
「イエス ユア ハイネス」
「汝我欲を捨て大いなる正義のために、鍛えた拳で剣となり分厚い胸板で盾となることを望むか?」
「イエス ユア ハイネス」
「わたくしユーフェミア・リ・ブリタニアは汝枢木スザクを騎士として認めます」
騎士として認められたスザクは貴族達に体を向け、ラットスプレッドフロントをするが、誰も声をかけない。拍手すらもなかった。しばしの沈黙の後のことだ。
「今日もキレてるよぉスザクくん」「胸板に鉄板でも仕込んでるのか?」
声をかけたのは私達の上司であるロイド伯爵。伯爵だって聞いた時は心底驚いたよ…。そして続けて声をかけたのはダールトン将軍だ。ロイド伯爵だけならともかく、将軍であるダールトンさんには逆らえないのか、堰を切ったように貴族達はスザクに声をかけていった。
「キレてるキレてる!」「腕にスタントンファでも付けてんのかい!」「ナイスバルク!」
良かったねスザク、少しずつだけどこうやって認められて…。スザクの言っていた中からブリタニアを変えるって言うのももしかしたら実現するかもしれない。
騎士となったスザクと共に様々なパーティに出席することがしばらくの間私たちの仕事だった。とは言え、殆どが貴族の集まりだったり軍の偉い人の集まりだったのでスザクは居心地が悪そうだ。私も正直ハーフだと言うことがバレるんじゃないかとヒヤヒヤしながら愛想笑いを振りまく。
「ようやく終わったね…マーヤ、次のパーティはなんだったっけ?」
「確か…ブリタニア軍筋肉愛好会のタンクトップパーティよ。」
「そっか、ようやく気が休まりそうだね…」
そう、ブリタニア軍筋肉愛好会ではその身の筋肉こそが正義であり真理である。愛好会としての催しの際は全ての階級は不問であり、より強靭な筋肉を持つ者が賞賛される。スザクはブリタニア軍筋肉愛好会でも5本の指に入る筋肉量を誇るので愛好会においては既に認められているのだ。そしてこの愛好会の現在のトップは…
「枢木 スザク、見事な筋肉で見事騎士の地位を手にしたな。これからも励めよ」
「はい、ダールトンさん!」
そう、ダールトンさんだ。ダールトンさんはブリタニア軍筋肉愛好会のトップマッスルガイなのである。そしてそのトップマッスルガイによる司会でパーティは進み、高タンパク低カロリーな食材を使った豪華な料理をダンベル片手に空気椅子をしつつ食べながら私達はスザクを祝福した。
「それではブリタニア軍筋肉愛好会ベストマッスルであるマーヤ ディゼルによる締めの挨拶で本パーティはお開きとする。」
私は頷き、マイクを受け取る。先程トップマッスルガイはダールトンさんだと言ったが、ベストマッスルは私だ。何故筋肉量の勝る私がトップでは無いのかというと、まぁ私は正式なブリタニア軍筋肉愛好会のメンバーではないからだ。誘われてはいるけとね。
「ブリタニア軍筋肉愛好会の皆さん、オールハイルマッスル!」
「「「「「「「「「「オールハイルマッスル!」」」」」」」」」」
みんなスクワットをしながら私の話を聞こうとしているので凄まじい熱気だ。かく言う私も片手逆立ちをしながら腕立て伏せをしているのでかなりの熱量だろう。
「今回、名誉ブリタニア人と言う不利な立場でありながら、ブリタニア軍筋肉愛好会に所属している枢木 スザクがユーフェミア皇女殿下の騎士に任じられたことは実に喜ばしいことであります。これも偏に彼が努力し、筋肉を鍛えたからかと思います。思いますよね?思うと言え」
「「「「「「「「「「思います!」」」」」」」」」」
よし、殴打はしないでおこう。
「我々も己の研鑽を辞めず、努力し、より強靭な筋肉を身に付けましょう!今回の騎士叙勲のように筋肉は奇跡を起こすのです!それでは改めて枢木スザクの筋肉を祝ってご一緒に!」
私はすぐさま逆さ片手逆立ち腕立て伏せをやめてラットスプレッドのポージングを構える。そして会場のマッスルガイと共に叫ぶのだ。
「「「「「「「「「「「ナイスバルク!!」」」」」」」」」」」
タンクトップパーティが終わり、次のパーティの予定を確認するとセシルさんが主催の特派でのパーティらしい。…。どうしよう、とてつもなく嫌な予感がしたので携帯でロイドさんに連絡を入れてみた。
「もしもし?ロイドさんですか?」
『なんだいマーヤくん』
「よろしければ全力でセシルさんを厨房に立てないように画策していただけませんか?今からダッシュで帰って私が料理するので」
『マーヤくん、残念でした!もう手遅れなんだ!』
その言葉と裏腹に既にロイドさんの声は死にそうなものであった。…。覚悟を決めよう。そして…スザクにはぎりぎりまで言わないでおこう。
そして始まった絶望へのカウントダウン。つまり地獄のセシル飯パーティの始まりだ。
「こんにちはセシル。今日は呼んでくれてありがと」
「…セシルさん、この方は?」
ピンク色っぽい髪の人は初めて見る人だった。誰だろう?穏やかそうな人だけど…。
「二人とも初めてよね、紹介するわ。この人はカノン マルディーニ伯爵。シュナイゼル殿下の側近の方よ」
「よろしくね」
「あ、はい、よろしくお願いします。」
「よろしくお願いします。」
シュナイゼル殿下の側近だなんて凄い人だけど…うーん、あんまり筋肉は無さそうね。…そう思っているとカシャリとシャッター音が鳴る。音のした方を見ると今度はピンク髪の女の子が立っていた。
「イレブンの騎士、記録。」
「こーら、アーニャ。彼は名誉ブリタニア人よ。」
しかし、カノンさんの話を無視して女の子は私にカメラを向けてきたので、咄嗟にサイドチェストを決める。
「ムキムキな女の子、記録」
そして何やらカタカタと文章を打っているようだ。ブログかな?
「…彼女はナイトオブラウンズのアーニャ アールストレイム卿よ。今日はシュナイゼル殿下の代理で、私はその付き添い」
こんな女の子が、帝国最強の騎士ナイトオブラウンズの一人…?ノネットさんと比べるとかなり幼い印象だけど…。なんだろう、何故かこの子からは不思議な筋肉の波動を感じる…うまくは言えないけど、心の筋肉…とも違うような…?
「よろしくお願いします。アールストレイム卿。」
「…アーニャで良い。そこのムキムキちゃんも」
むきむきちゃんってのは私か、まぁ確かにそうだけども。
「よろしくお願いします。アーニャさん」
そして…一瞬アーニャがニコりと笑った。ふーん…私の次くらいには可愛いかも。
「えぇ、よろしくねマーヤ」
そしてはじまってしまった地獄。早々に犠牲は出た。
「あら、何かしらこれ。見たことない料理ね。はむっ…」
そう言って料理を口にしたカノンさんだったが、みるみるうちに顔色が赤から紫への虹の七色に変わっていく。人間の顔の顔ってあんなコロコロ変わるんだ…例えるなら…そう、ゲーミングカノンさんだ。
「ミ°ッ」
あ、倒れた。
「倒れたカノン、記録。」
カノンさん…南無阿弥陀仏…。
「もしかしてロイドさん、この料理って…!」
「そうだよスザクくん。これはセシル君が作ったんだ〜!」
ロイドさんの目は死んでいた。そして白色になったカノンさんは口から泡を吹いている。
「スザク、私はカノンさんを病院に運ぶからあとはよろしく」
「待つんだマーヤ!カノンさんを運ぶなら僕も…」
私は首を横に振る。
「主役が離れちゃダメでしょ?それじゃあパーティ楽しんでね!」
私はカノンさんを担ぎ走り出…そうとするとアーニャさんに腕を掴まれた。
「私も…お願い…!」
この地獄から逃げ出すまたとない機会に勘づいたらしい。流石はラウンズ…引き際を分かっていると言うことか、私は二人を抱えてその場を逃げ出す。
「マーヤ!!君は僕を!!!裏切ったな!!!!」
スザクの罵声を無視して私は病院へと駆けた。
「ねぇ、マーヤ」
「なんですか?アーニャさん」
カノンさんをお姫様抱っこしているのでアーニャさんは私に肩車されている状態だ。
「貴女、今幸せ?」
…まぁ、あの地獄から正当な理由で逃げ出せたのだ。不幸ではないだろう。
「ええ、比較的幸せかなと思います。」
「そう、よかった。」
…?
「…視線が高い。新鮮。」
アーニャさんは小柄だし、背が高い状態がどうやら新鮮な体験のようだった。
因みに、ことの顛末をスザクに聞いたところ、トイレというていで一旦その場を後にしたスザクはランスロットを起動し、ヴァリスで料理を処理したらしい。セシルさんにはボコボコにされたらしいが…
死ぬよりはマシだよね!
特派所属のマーヤだとルルーシュに関係のない話がキングクリムゾンされるせいで原作よりも話数が大分前倒しになりますね。
美少女JKマーヤの貴重なタンクトップ回にしてみんな大好きアーニャのゲスト出演回
…まぁ、ミートギアス的には他のラウンズのあの人の方が人気ありそうですけども