ミートギアス 〜筋肉のルルーシュ〜   作:ベルゼバビデブ

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STAGE19′

 私は…私は何をしていた?ここは…建物の中?痛い。突然頬を叩かれた気がする。

『お前なんて本当の…!』

 本当の…なんだろう。白衣を着た男の人…顔は見えたが、ぼやけていてよく分からない。

『あなた止めて!」

 同じく白衣を着た女の人が男の人に怒っている。

 

 …あぁ、そうだ、私は…もっと強い子になれば怒られないと…そう思ったんだっけ

 

『…………………ブリ……アが……る……の…………苦…!凌………い、……よ!』

 熱い…熱い…。炎と煙で前が見えない。

 苦しい…苦しい…。炎の向こうに人影が見える…

『マーヤ…強く、生きて!』

 あれは…お母さん…これは…

 

「…はっ!?」

 起きあがろうとして激痛が走る。

「まだ動くのは無理よ、安静に寝てなくちゃ」

「セシルさん…」

 どうやらここはアヴァロンの医務室らしい。そうか、私腹にスラッグ弾受けて倒れたんだっけ。

「普通なら死んでもおかしくない出血量だったらしいわ。スザクくんが羽交締めにして引き摺りながらも運んだからなんとか間に合ったみたい。」

「そう、ですか」

 スザクには借りが出来ちゃったな…。

「そのスザクはどうしたんですか?」

「それがね、目覚めたユーフェミア様と殴り合って、それからランスロットに乗ってトウキョウ租界に向かったわ。…行政特区日本の失敗を機に多くの民衆やテロリストが租界に向けて進軍してるの」

 ユフィとスザクが…?それにスザクが租界に…なら、私も行かなくちゃ…!

「じゃあ私はブリッジに居るから何かあったら呼んでね。くれぐれも無理はしないで、今はゆっくり傷を癒やしなさい。」

「…わかりました」

 私は、嘘を吐いた。セシルさんが部屋を出たことを確認し、身体を起き上がらせる。

「大丈夫…ナイトメアくらいなら動かせる…!」

 腹の痛みにも慣れてきた。これくらい軽傷だ。なんてことはない…!傷口だって筋肉で止血できる…!すると扉が開いた。セシルさんが戻ってきたのかと思って身構えるが、その人影はセシルさんに比べてかなり低い。…よく見てみれば前病院で会った男の子…?なんでアヴァロンに…

「肝を冷やしたよマーヤ。君に死なれると少し困るからね。傷の具合はどうだい?」

「…えぇ、少し腹を抉られたけど、ナイトメアの操縦くらいならできるわ」

「そっか。君の頑丈さには正直驚かされるよ。」

 そう言って彼はベッドに腰をかけ、こちらを振り返る。相変わらず整った顔立ちに高そうな服、それに大人びた雰囲気の不思議な子だ。

「君は今から何をしようとしてるのかな」

「…ナイトメアに乗ってスザクを助けようと…」

「そっか、でもね、枢木 スザクを助けてもゼロは倒せないよ」

 そんなことは…ないはずだ。流石のゼロでも生身でナイトメアには勝てないはず。ならばゼロの乗るガウェインを破壊してゼロを直接攻撃すれば…あるいは。いや、あのゼロの強さは生半可ではないし、頭も恐ろしく良い、きっとお互い生身の状態に持っていかれるはずだ。

「なんでか教えてあげようか?ゼロにとっては枢木 スザクなんてどうでも良いんだ。ゼロの目的はね、ブリタニア皇族なんだよ。だからクロヴィスを殺し、ユーフェミアの心を破壊して殺戮人形にしたんだ。」

「そんなことが…!?」

「ゼロにはね、超常の力があるんだ」

「確かにゼロの筋肉は常軌を逸した超常の力とも言える筋肉…その筋肉から放たれるパンチでユフィの脳を破壊して可笑しくしたって事ね!?」

 私の完璧な推理に彼は呆れたように目を閉じる。

「半分正解ってところかな。筋肉じゃないんだ。ゼロにはギアスという人を操る力があるんだよ。」

 そんなもの…あるはずがない。そんなものがなくても筋肉があれば…

「ゼロのギアスはね、大脳に直接干渉するんだ。その時の刺激で少し脳を痛めつけてしまうからね、記憶に混乱が起きたりするんだけど…覚えはないかな。何故ナリタでは黒の騎士団と日本解放戦線が共闘してたんだと思う?土砂崩れを利用してまで」

「…どこからか情報が漏れた…?」

「そう。君からね」

 …私が…!?

「君は既にゼロのギアスに掛かってるんだ。『質問に答えろ』というね。だから君はゼロに聞かれたらなんでも答えてしまうんだよ。」

「仮に…そうだとして、なんで…君はそれを…?」

「ふふ、それは秘密。でもね、君には何度か経験があるんじゃないかな?ゼロと話してる時に記憶が飛ぶ瞬間が」

 …例えば、河口湖のホテル…。あの時私はゼロがとてつもない素早さで動いたのだと思った。でも違う…?私はそのギアスとやらの記憶の混濁で一時的に記憶を失って…。そういえばさっきの式典でもそうだ。撃たれる直前、記憶が飛んだ…。もしかして違法プロテインの倉庫内で誰かがいると思ってたけど、あれもゼロ…?だとしたらスザクからの通信に気がつかなかったことにも納得がいく…!

「私の…せい…?」

「結果的にはそうなるかな?でも、悪いのは君じゃなくてゼロさ。そうでしょ?」

 確かに…そうだ。…待てよ?ゼロの狙いが皇族…。もしゼロがルルーシュやナナリーも皇族だと知ってたら!?コーネリア総督はナイトメアで自衛できる。ルルーシュも…あのゼロに匹敵する筋肉で身を守れるかもしれない。でもナナリーは!?目も見えず、足も不自由だ。ゼロに狙われれば一たまりもない!!助けなくちゃ!私が…!!

 ベッドから飛び出て私は立ち上がる。

「行くんだね?マーヤ。」

「えぇ」

「なら、これを渡しておくよ。」

「…これは?」

 渡されたのは濁った液体…。容器の形状を見た感じ飲むタイプだろうか?

「もし生身の時にピンチになったらそれを飲むと良い。必ず君の助けになるよ。」

「…分かった。」

 今の私は腹にスラッグ弾で風穴が空いている。この液体がなんなのかは知らないが…貰えるものはもらっておこう。

「そうだ。聞きそびれてたんだけど君の名前は?」

「うん?そっか、名前も忘れちゃってるのか。僕はV.V.だよ、マーヤ」

「そう、じゃあねV.V.くん」

 そして私はボールスに乗り込み、機体の状態を調べる。…ふと目に白いサザーランドが映った。その背中にはフロートシステムらしきものが付いている。

「借りますね」

 ボールスからシステムにハッキングし、サザーランドに付けられていたフロートシステムをボールスに装着する。流石はボールス、元々がサザーランドベースだから規格が合ったようだ。

『ちょっとマーヤさん!?何してるの!?』

「すみません!これお借りします!」

 そのままハッキングでハッチを開放して飛び立つ。目指すはアッシュフォード学園だ。

「もしもし?シャーリー?今そっちはどんな感じ?」

『マーヤ!良かった、無事なんだね!なんか黒の騎士団が租界を襲撃しようとしてるから私達は生徒会室にいるの…ルルーシュが出掛けていないからナナちゃんの事心配で』

 よし、これでナナリーは保護できる!ルルーシュの筋肉ならきっと大丈夫だ。できることを確実にやろう。暫く飛んで、学園に着く頃には24時になっていた。

『マーヤさん、聞こえる?』

「セシルさん…はい、聞こえます」

『スザクくんは現在コーネリア総督に呼ばれて政庁の守備に向かっているわ。マーヤさんもそっちに合流して』

「分かりました」

 答えてからすぐにボールスを降り、生徒会室に向かう。

「みんな、無事?」

 私が生徒会室に入るとルルーシュ、カレン、スザク以外のメンバーが揃っていた。その中にナナリーもいることを確認し、ナナリーへと近付く。

「ナナリー、ごめんね?悪いんだけど私ときてくれる?」

「えっ?でも…」

「お願い…!私はナナリーを守りたいの!」

 その言葉に渋々了解してくれたらしく、私はナナリーと車椅子を運び、車椅子はボールスに運ばせ、ナナリーと共にコクピットに入る。

「狭いけどごめんね」

 私の膝の上にちょこんと座るナナリーに声をかけ、ボールスで政庁へと向かう。瞬間、ボールスをハドロン砲が掠めた。

『そこのナイトメア…停止しろ!次は当てる!!』

 ゼロ…!味方の通信で黒の騎士団は政庁外縁に布陣していたと聞いていたのにもうここまで突破されたの…!?

『お前が誘拐した少女を…ナナリーを返せ!!ナナリーをぉ!!!!』

 ガウェインはその指のスラッシュハーケンを放ってくる。

「ごめんナナリー!」

 流石にボールスで応戦しようにもナナリーの車椅子が邪魔だ。渋々廃棄し、ブレイズルミナスで防御する。…まずい…フロートシステムでかなりエナジーを消耗してしまっている…このまま闘うのは…!しかも、V.V.くんの情報通りというべきか、ゼロはナナリーも皇族であることを知っているらしく、抹殺せんと身柄を狙っているらしい。確かに良くも悪くも目立つコーネリア総督より一般人として紛れやすいナナリーを今確実に追う方が皇族狙いとしては正しいか…!

『ナナリーを…ナナリーを返せ!この盗人がァァ!!』

『そうはさせない!』

 私たちの間に割り込んできたのはランスロット…!スザク、来てくれたのね

『マーヤ!君は政庁に!ここは僕が食い止める!』

「分かった!」

『俺の邪魔をするな!スザァク!!』

 あの図体でランスロット顔負けのアクロバティック攻撃…スザク、無事でいて…!政庁周辺にボールスを降ろすと整備班がエナジーの交換をやってくれるようだ。そちらは任せて私はナナリーを抱えて政庁に入る。ナナリーをお姫様抱っこするが、ナナリーが私に触れた時何かに気付いたようだ。ナナリーの手を見ると血がついていた。

「これ…血?もしかしてマーヤさん…」

 急ぎ過ぎて傷口が開いたのかな。でもこんなのは平気だ。それよりもナナリーを安全なところに運ばねば。普段は冷静なあのゼロがあそこまで反応するとは…皇族を標的に何をするかは知らないが、かなりの執念というべきだろう。暫く進むと兵士の方々に命令を行なっているコーネリア総督が見える。

「コーネリア総督!」

「マーヤか、貴様ここで何を…ってその少女はまさか…ナナリーか!?」

「お、お久しぶりです、コーネリアお姉様」

 コーネリア総督は喜びの表情を浮かべていたがすぐにいつもの険しい表情に戻した。

「…何故お前がナナリーを連れている。」

「コーネリア総督、ゼロの狙いはブリタニアではなく皇族そのものです。」

「そんなことは我々も把握している…質問に答えよ。何故お前はナナリーが皇族だと知っていた?」

「この前学園の文化祭でユーフェミア副総督にナナリー…皇女殿下が妹君だと聞きまして」

「ユフィめ、私に黙ってたのか…!まぁいい、ナナリーが生きているのは私も嬉しく思う。…ナナリーが生きているということはまさかルルーシュもか?」

 コーネリア総督の発言に私は頷く。

「はい。しかし、現在行方がわからず…しかしながらルルーシュはあのゼロに匹敵する筋肉の持ち主ですので心配はないかと」

「何?ゼロ並みの筋肉だと…?」

 そろそろ整備も終わる頃だと思い私はコーネリア総督にナナリーを任せてその場を離れた。

「ブリタニア皇族への恨み…まさかゼロの正体は…」

 そんな声が聞こえた気がした。

 

 ボールスを起動し、飛び上がる。さっきまでナナリーを連れていくのに必死で気が付かなかったけれど、空からの風景には何か違和感があった。そう、何か…変だ。普段空なんて飛んだことはないのでそのせいかと思ったが、違った。

 租界の外縁部が崩落していたのだ。

 

 

 そう、陽菜達の施設諸共。

 

 

政庁上空に既にガウェインが迫っていることに気がつく。

『見つけたぞ…ナナリーを攫ったら盗人め…!ナナリーを返せぇ!!』

 

 まさかスザクは負けたの…!?

 

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