一瞬理解ができなかった。すぐさま施設に電話をするが繋がらない。施設職員さんに電話しても、繋がらない。
「陽菜…?みんな…」
呼吸が荒くなるのを感じる。一体どうして外縁部が壊れてるの…?訳がわからない。口の中が乾いていくのを感じる。ふと、味方の通信が耳に入る。
『ゼロによる工作で租界外縁部のフロアパーツが一斉パージされ我が軍はかなりの損害を受けています。現在はグラストンナイツとギルフォード卿が防衛に当たっていますが、本国からの応援が来るまで耐えられるかどうか…』
…そう、ゼロが…ゼロが殺したのね。陽菜を…みんなを…!許さない!!
瞬間、私はボールスのフロートシステムを解除して高度を下げていた。そして私の居たところにはハドロン砲が放たれている。
『ナナリーは政庁か、コーネリア諸共対処するとして…貴様は邪魔だ。ここで始末する。マーヤ ディゼル!!』
ガウェイン…ゼロの駆る大型ナイトメア。その図体からは想像できないアクロバティックな動きはその質量だけでボールスを軽く吹き飛ばすことができるだろう。油断はできない…!
『マーヤ!聞こえるかい?』
「スザク!無事だったのね」
てっきりゼロがここに居るのだからやられてしまったのかとも思ったがそうではないらしい。
『僕は今…赤いナイトメアと交戦中だ。済まないが僕が行くまでゼロを足止めして欲しい!』
「足止め…?冗談、倒すに決まってるでしょ」
『待つんだマーヤ!』
待たない。ゼロは…陽菜達の仇だッ!遠距離ではまず勝ち目はない、そして中距離ではスラッシュハーケンの餌食だ。ならば狙うはただ一つ、ゼロを確実に葬り去る方法はこれしかない!もう陽菜達は居ないのだ。もう私に…未来なんて必要ない!
「ゼロ!陽菜達の仇ィー!!」
私はフロートシステムで一気に全速前進し、ガウェインに対して距離を詰める。こちらに放たれたハドロン砲をブレイズルミナスで受け流すようにして躱し、プロトヴァリスを構える。
「そこだァ!」
砲身のオーバーヒートを気にせずとにかく連射する。ゼロにこのプロトヴァリスが脅威に映ればそれで良い!
『馬鹿が!』
放たれるスラッシュハーケンにプロトヴァリスを破壊されるが、今の狙いはそれだ。ガウェインにスラッシュハーケンを無駄撃ちさせること!ガントレットを展開し、ガウェインの蹴りを防ぐ。これで距離は詰まったッ!ボールスによるドロップキックを叩き込み、一旦に距離を取る。ガウェインのスラッシュハーケンは巻き取り中だ。
『小癪な!』
放たれたハドロン砲に対してスロウ・ヴァリスを投擲し相殺、ガウェインの格闘のぎりぎりリーチ外!奴はこちらを見失っている…このタイミングだ!チャンスは一度きり、私はガウェインにスロウ・ヴァリスを投げつける。この距離ならば十分にガウェインを破壊できる…!
『馬鹿が!この私がその程度の策を見抜けないとでも思ったか!』
「何!?」
スロウ・ヴァリスの爆煙から出てきたガウェインは無傷。その手にはサザーランドらしき装甲の残骸が握られていた。…まさか巻き取られたスラッシュハーケンの先にサザーランドを…!?そのサザーランドを盾にスロウ・ヴァリスを防いだ…!?いけない…!
『これで…チェックだ!!』
策を破られたという衝撃、その瞬間をゼロが見逃すはずはなく回し蹴りを叩き込まれ、その衝撃でフロートシステムは破損しボールスは墜落した。
それからどれくらい経ったのだろう。どうやらあの後ゼロによる追撃は無かったらしく私は目立った外傷…は腹の穴以外無いようだ。また傷口が開いたことは…パイロットスーツに血の色が滲み出ていることから想像ができた。ボールスはまだ動くがエナジーはかなり心もとなかった。空を見上げるとオレンジ色の丸い何かがガウェインを圧倒している。
「何…あのオレンジ…」
高速回転しての体当たり…シンプルながらもその破壊力は馬鹿にならないようでガウェインは苦戦しているようだ。
「味方…なの…?」
『現在ガウェインは我が軍の物と思われるナイトギガフォートレスと戦闘中!総員戦闘域から退避せよ!明確な敵対行動はないが攻撃に巻き込まれる危険がある!』
通信を聞く限りは味方のようだが、どうやら暴走しているというのが正しい表現のようだ。そして…戦闘の最中ガウェインからゼロが飛び降りたかと思うと、ガウェインはナイトギガフォートレスと呼ばれたあれをどこかに押し出さんとしていた。…これ以上イレギュラーを作らせないって訳ね…。更にゼロが飛び降りたであろう地点に一体のナイトメアが降ろされている。ナリタで戦った薙刀のアイツだ。
「まだ動く、ならばゼロを仕留める…!」
こちらにはもうガントレットとごく短時間しか使いないブレイズルミナスしかない。しかし、ゼロはおそらくあのナイトメアには初めて乗るはず。ならば付け入る隙はあるはずだ。
恐らく戦線に復帰せんと動く蒼いナイトメアに狙いを定め、手頃な瓦礫を投擲する。
『何!?』
シールドで塞がれたか、だが!私はボールスの左腕を振りかぶり、ゼロを殴らんとする。
『まだ動けるとはしぶとい奴!』
薙刀の一振りをブレイズルミナスで弾く。この一瞬だ。この一瞬で勝負を決める!ガラ空きになったボディにガントレットを叩き込む。
『そんな機体で舐めた真似を!』
左腕のクローで防がれる。届かない…!流石にボールスでは万全の状態の機体には勝てないのか…!
『マーヤ、今すぐ脱出を!』
スザクの声にすぐさま反応してハッチをブチ抜きボールスから飛び降りると、瞬間MVSが飛来しボールスを串刺しにしてそのまま爆散した。
『何ッ!?』
突然の近距離爆破に蒼い機体も左腕を吹き飛ばされたらしい。私も咄嗟に腕でガードしてなんとか防いだが、危ないところだった。
『やはり…最後に俺の前に立ち塞がるのはお前か…スザァク!』
『ゼロ!君をここで終わらせる!』
始まったのは蒼いナイトメアとランスロットの一騎打ち。ランスロットはスラッシュハーケンのメッサーモードによる手刀を、蒼いナイトメアはその薙刀を獲物とし、激突した。
そして結局勝負は互角と言うべきか、どちらの機体も有効打らしい有効打は出ず、共に大破。だが、これはチャンスだ。ナイトメアから降りたのなら…拳は届く!
「ゼロォォォォォォォオオオオオ!!!」
「またお前かマーヤ ディゼル…腹に穴が開いた状態でよく動くな…!」
「穴のひとつやふたつ!今更増えたところでどうってことないわ!」
私はマッスルウーマン、これしきのことでへこたれてたまるかッ!陽菜達の仇、今ここで!!手頃な瓦礫を拾い上げ、それらを投擲する。
「ふん!瓦礫の投擲など見飽きたぞ」
ゼロは瓦礫を振り払ったけど…
ひとつ目の瓦礫の影になっていたもう一つには気が付かなかったみたいね!
「何ッ!?」
流石に不意打ちの瓦礫の衝撃によろめいたゼロにすかさずドロップキックを叩き込む。吹き飛んだゼロは空中で回転し受け身を取ったようでダメージは薄いようだ。だが…
「前は微動だにしなかったのに…効いてる!」
「…チィ…戦いの経験を積んだと言うことか…!」
だがゼロはお返しと言わんばかりに瓦礫を投擲してきた。だが、私はそんなことに付き合うほどお人好しではない、弾くのではなく回避を…
「馬鹿が!」
恐ろしく速い正拳突き…!?いや、違う…!
「かはっ!?」
的確に私の腹の穴を狙っての貫手…!距離があったから直撃とまではいかなかったけど、抉られている穴をスーツ越しとは言え触られるのは流石に堪える…!
「何を一息ついている?私の攻撃がアレで終わりだとでも?」
気がついた時には遅かった。私は喉、鳩尾、下腹部に目にも止まらぬ三段突きを叩き込まれてしまった。…こ、呼吸が…出来ない…!
「これで…チェックだ!」
いつのまにか距離を取られていた私はクラウチングスタートの姿勢をとるゼロを視認した。…ダメだ…やられる…!
その時、私の体は的確にゼロの膝蹴りを防御していた。
「何!?確かに意識の外の一撃だったはず…!」
その瞬間、私はゼロの腹に拳をブチ込んでいた。この感覚は…!その後も私は考える前に拳を叩き込みゼロの防御を崩し、カウンターを弾き、的確にゼロの腹に拳を叩き込み続けていた。
「一体何が…!この俺が反応速度で負けるなど…!」
ゼロは知らないだろう、脊髄反射で全ての行動を行うこの技を…咄嗟の危機的状況で偶然発動できた。これならばゼロに勝てる…!!
「くっ…!人間の認識速度をはるかに超えた連撃…一体何が…」
ッ!?私はゼロの拳を両腕でガードしていた。また、意識が飛んでいた…これがギアス!?
「なるほど、確かにお前の意識とは関係なく体が勝手に防御しているようだな。」
先ほどまでと同様に私は全ての攻撃を脊髄反射でおこなっているはずだった。しかし、そのいずれもがゼロに防がれている。
「まさか…貴方も!?」
そうか、私に質問したのか…!そしてゼロはその技の仕組みを知ることで体得した…!追い詰められて偶然した私と違い、ゼロは己の意識でこれを可能にしたなんて…!戦闘の…天才…!?
「ふん。あと3手で決まるな」
「何!?」
ゼロに言われたからの2手で私は腕を大きく弾かれていた。対するゼロは既にその場でジャンプしている。…これは…!
「チェクメイトだ!」
両脚による蹴りをモロに喰らった私は数度跳ねながら瓦礫の中を吹っ飛んでいく。傷口の腹痛どころか、今ので鋭利な瓦礫が何本か腕や脚に刺さってしまった。とてもではないが’…動けない。
ギュピッギュピッと足音を鳴らし、ゼロがこちらに近づいてくる。
「よく頑張ったと褒めてやろう。だが、もはやお前は立ち上がることすらできない。」
「どうかしら。油断して近づいた貴方の喉に食らいついて噛みちぎるぐらいのことはできるかもしれないけど?」
勿論こんなのは虚勢だ。でも、このままやられるなんて嫌だ…何か、何か手は…!
手頃な瓦礫に手を伸ばそうとすると、瞬間ゼロの方から瓦礫が飛来し指の骨が砕けた。
「ぐっ!?」
「お前の手癖の悪さには私とて警戒している。諦めろ」
こんな…ところで…!
その時、ふとV.V.くんから貰った液体のことを思い出した。アレがどんなものかは知らない。そして私の体は思い出したかのように勝手に動き、気がつけばその液体を飲み干していた。
「この土壇場で何を…いや、まさか!?」
力が…力が溢れる…!高まる!あの液体を飲んだ途端、全身の筋肉が弾けるようだッ!
「何をしたかは知らんがッ!この連撃なら!」
ゼロは凄まじい動きで拳の連打を放とうとしている…が、そんなゼロの動きが…止まって見える!
「ゼロ!それが本気の速さなの?ラッシュの速さ比べなら…今の私は負けないわ!」
ゼロの拳を全て弾いてお返しに拳を叩き込む。
「この急激な筋肉の増加…まさか違法プロテインか!?」
なるほど、確かに違法プロテインならば瞬時に爆発的筋肉へのブーストが可能だ。だが、この戦いでゼロを倒せれば私はそれで良い。そして…効果が切れる前にゼロを倒す!!私はクラウチングスタートの構えを取り、一気に加速するとゼロの腹にドロップキックを叩き込んだ。
「かはッ!?」
すごい…!あのゼロよりも速く!そして強い!無敵!まさに無敵だ!強靭、無敵、最強!!今の私なら全速前進するだけでゼロを轢き殺せるかのようだ!!
「最高にハイッ!って感じね!さぁゼロ、最終ラウンドよ!」
もはや私の筋肉は皮膚科下に収まりきらぬほどに膨張し、表皮は弾けた。だがそれを持ってあまりあるこの筋肉!相手があのゼロでも負ける気がしない!!私の渾身の一振りをゼロは待ち構えている。
「受け止められないなら…弾く!」
「弾けるものなら弾いてみなさい!!」
圧倒的筋肉。その凄まじい筋肉の塊から放たれる砲弾のような一撃をゼロは弾くことはできず、その腹に拳がメキメキと音を立てて突き刺さる。そしてそのまま振り抜くとゼロはビルの壁面に吹き飛んでいき、巨大なクレーターを形成した。
今度は私がギュピッギュピッと足音を鳴らしゼロに近づいて行く。ゼロの仮面を握りしめて握力を強めていく。メキメキと仮面は音を立ててひしゃげていった。ゼロが…あのゼロがそんな私の腕を必死に引き剥がそうともがいている!勝った!私はそんなゼロを空中に放り投げ、落下地点で拳を引き絞る。
「受け取りなさいゼロ…これは貴方に殺された陽菜達の分よッ!!」
この一撃が決まれば恐らく私の拳はゼロの腹部を貫通するだろう。そしたらそこからさらに腹の穴を利用して上半身と下半身を引き裂いてやる。そうなれば流石のゼロも死ぬはずだ!
「これでッ!おわっ…」
その瞬間、私は膝から崩れ落ち、目の前が真っ暗になった。
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