ミートギアス 〜筋肉のルルーシュ〜   作:ベルゼバビデブ

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PHASE03′

 パーティの次の日、私と日向中尉とレイラはスマイラス将軍と共に国防四十人委員会の開催会場まで向かっていた。まぁ、出席するのはスマイラス将軍でレイラは見学、私と日向中尉に至ってはあくまでも道中の護衛…まぁ、国内移動なのでその護衛も不要だけど…で会場に着いたら会場の外で待ちぼうけを喰らうことになる。会場周りをランニングでもしていようかな。

 輸送車両に積み込まれたガルドメアのコクピット内で一人揺られながら空気椅子で筋肉を鍛えていると、ニクアツ マッスルガイさんから通信が入った。直ぐに指で二度とコクピット内を弾いて反応を返す。

『相変わらずの反応速度だなディゼル。E.U.のお気楽さが感染していないようで安心したぞ。今お前は国防四十人委員会の開催会場に向かっているな?』

「…えぇ」

 コクピット内ならばこの会話が聞かれることも無いと思い口頭で反応を示した。

『お前には委員会会場に潜入してもらいたい』

「私には立ち入りが許可されていませんが…」

『何のための筋肉だ?警備の眼を掻い潜りなんとか潜入しろ。これは命令だ。』

 …はぁ、簡単に言ってくれる…。

『しかしE.U.の無能な政治家が40人集まったとて我ら神聖ブリタニア帝国を変えることは出来ぬゥ!我が国なるように有能な皇帝陛下が!…皇帝…陛…下が…っ!』

 …ん?どうしたのだろう、通信機の不調だろうか?

『ぐっ…うぅ…スザク…プロテインを…プロテインをくれないか…なぁ…スザ』

 あ、通信が切れた。それにしてスザクとマッスルガイさんはどうやら私が潜入任務をしている間に仲良くなったらしい。確かマッスルガイはスザクのことを枢木と呼んでたと思うけど。

 その瞬間、車両が急ブレーキを掛けたらしく、大きな揺れが起きた。

「日向中尉!」

『まさか国内で襲撃とはな』

 コクピット内から車両ハッチの開放を試みるが、恐らく今の揺れで歪んでしまったらしく反応がない。

「日向中尉、こちらのハッチが開きません」

『こちらもだ』

「分かりました。私が手を打ちます」

 私はガルドメアのコクピットから飛び出し、日向中尉の乗るガルドメアの前のハッチに蹴りを叩き込む。

「ふん!」

 再度の蹴りでハッチが吹き飛んだ。外を確認すると、そこにはグラスゴーが立っていた。

「グラスゴー?一体何でこんなところに…」

 そしてどうやら既にわたしたちとは別の護衛のガルドメアが2機、そのグラスゴーにやられてしまっているようだ。

『どいていろ!』

 スピーカーから日向中尉の声が聞こえ、そこを退くとガルドメアが飛び出ていく。どうやらガルドメアであのグラスゴーとやり合うようだ。私も援護しようと車両を飛び降りる。すると日向中尉のガルドメアは敵のグラスゴーに突っ込んでいき、続けてグレネードを手にした日向中尉が飛び降りてきた。

 

 ので、それを抱き止める。

 

「このままグラスゴーの懐に入るんですよね?」

「お前…!?あの距離から追いついたきたのか!?」

 奇しくもお姫様抱っこの形になった日向中尉を抱えたまま速度を落とさずグラスゴーに突っ込む。

「そのままグラスゴーの股下を走り抜けろ!」

「分かりました日向中尉!」

 言われた通り駆け抜けると、すれ違い様にグレネードを股関節に撃ち込んだらしく、グラスゴーは倒れ込んでいた。

「後は俺がやる。お前は司令の方を見てきてくれ」

「分かりました。」

 これまた言われた通りレイラの乗っていた車両の方に向かうと、爆発して炎上する車両からスマイラス将軍をお姫様抱っこしたレイラがギュピッギュピッと足音を鳴らして出てくるところに出くわした。

「レイラ…司令、スマイラス将軍が無事ですか!」

「あ、あぁ、私は平気だよ。恥ずかしくはあるがね」

「心配してくれてありがとう。でも、これくらいの爆発で傷を負うほどやわな鍛え方はして無いわ、マーヤ」

 そんな風ににこやかに会話をしていると、フードを被った女の子が現れた。

「な、何で…何であの爆発食らって生きてんだよ…!おかしいよあんた!」

 そして刀を構えてこちらに向かってくるが、余りにも遅い。

「んー、顔はやめといてあげるね」

「なっ…」

 私は一気に距離を詰めるとその腹に本気の半分くらいの力で拳を叩き込む。

「かはっ!?」

 女の子はそのまま倒れ込んでしまったので刀を取り上げる。

「この刀…本物?凄いね、ちゃんと手入れされてる…これなら私の皮膚に上手く当てれば傷はつけられるかも…」

「か、返せ…!」

 女の子はこちらを鬼気迫る表情で並んでくるあたり、きっと彼女にとって大切なものなのだろう、へし折るのは勘弁してあげようかな。しかし、この状態で返してあげるほど私はお人好しでもお気楽でも無い。女の子の首根っこを掴んで持ち上げる。

「は、離せ!」

「静かにして」

 握る手にギリギリと力を込めると首がミシミシと音を立てる。最早叫ぶ余裕すらないようだ。

「アヤノを離せ!」

 背後から声が聞こえ振り返ると体に何かを巻きつけた貧弱そうな男の子が叫んでいた。

「早く離せ!さもないとこの爆弾を起爆するぞ!」

 なるほど、さっきのレイラの車両の爆発はあの爆弾が原因なのか。

「レイラ!パス!」

 私は掴んでいた女の子をレイラに投げつける。

「なっ!?」

 それと同時に爆弾少年にダッシュで近寄り、その腹に膝を軽めに叩き込む。

「ごはっ!?」

 それと同時に男の子から爆弾をむしりとり、それを空高く放り投げる。

「ユキヤ!その筋肉女にスイッチを押させるな!」

 パスした後に抵抗したからだろうか、レイラに関節技…あれは海老固めかな…を決められている女の子が必死な表情で叫んでいる。確かにこのタイミングで起爆されれば彼らに最早武器はない。つまり絶対に押されたくない状況なわけである。だが、断る。

「いいえ、限界よ、押すわ!」

 先程これ見よがしに見せつけていた爆破スイッチを男の子の指ごと押仕込む。と、同時に空から凄まじい爆風が降りかかった。…予想よりかなり大規模な爆弾だったようだ…本気で投げておいて正解だったわ。

 

 それからレイラと私による説得が効いたのか、爆弾魔のユキヤ、刀使いのアヤノ、グラスゴーのパイロットのリョウがwZERO部隊の一員となった。彼らは居場所が欲しかったらしい。確かにこの国には日本人には居場所がない。狭い監獄のような一角に隔離収容されるか、ナルバ作戦で散って行った彼らのように肉親を犠牲に市民権を得るか、所謂アンダーグラウンドと呼ばれる無法地帯で生きていた彼らなりの精一杯の生き方だ。その賢明さにはどことなく陽菜達に似たものを感じた。

 幸い、w ZERO部隊はレイラが司令であり、今回スマイラス将軍もレイラに命を救われた形である。そんなレイラとついでに私と言う美少女二人から上目遣いでお願いされては流石のスマイラス将軍も首を縦に振らざるを得なかったらしい。

 それにしてもレイラって上目遣いとかそう言うテクニックは知らなかったようね。

『上目遣い…こうでしょうか?』

『そうそう!そんな感じ!一緒にスマイラス将軍に上目遣いでおねだりしましょう!』

 そんなやりとりをしたのだ。…あ、国防四十人委員会の潜入…できないけど大丈夫かな?

『やぁ、マーヤ。久し振りだね。』

 そんな突然の通信に私は二度軽く咳払いをする。

『マッスルガイ卿は今少し急用があってね…代わりに僕が対応するよ。マーヤの状況は理解してる。国防四十人委員会への潜入は中止だよ。引き続き任務頑張って。僕らもあと1ヶ月もすればユーロブリタニアに派遣されるから。それじゃ』

 1ヶ月…私はその間もずっと潜入してなくちゃいけないのかぁ…。

 

 ヴァイスヴォルフ城での生活、それは実に平和で何もない日々であった。朝早く、いつもの時間に目を覚まし、軽くストレッチをして全身を軽くほぐし、水分を補給。鏡の前に立ち筋肉の調子を確認し、今日の体調を確かめる。

「うん、今日もいい感じね。」

 まずは体力が落ちないようにヴァイスヴォルフ城周辺のランニングだ。レイラも都合がよければ来れるのだが、司令という立場ではやはりデスクワークが多いらしく忙殺されているようだ。靴紐を結び直し走る前に深呼吸をしていると警備部のハメル中佐が通りかかった。

「おや、ディゼル少尉ですか。今日も朝から鍛錬のランニングですか?精が出ますね。」

「えぇ、軍人は身体が資本ですから、オスカー ハメル少佐ー

「何故わざわざフルネームで?」

 ハメル少佐…真面目な印象を受けるメガネをかけた男の人。筋肉はさほどないようだが、どことなくギルバートGPギルフォードさんと似た雰囲気を感じる。

「我々も日々鍛錬を積んでいるつもりですが中々マルカル司令やディゼル少尉のようにはなりませんね」

「まぁ、体質もありますから仕方ありませんよ。でも体を鍛えると言う過程で心に刻まれた心の筋肉は体質に関係なくしっかりと鍛えられているはずですから大丈夫だと思います」

 私はサムズアップを返し、ハメル少佐と別れ走り出した。

 ランニングを終えた後はウェイトトレーニングがてらクレマン大尉のところに出向き資材の運搬を行う。

「マーヤさんがきてくれると資材の整理が早くて助かるよね、クロエ軍曹」

「作業用クレーンだけじゃ時間がかかるもんね、ヒルダ軍曹」

 アレクサンダを開発したクレマン大尉の部下であるクロエ軍曹とヒルダ軍曹、私がここを出るときに彼女達…いや、クレマン大尉だけでも連れ出せばブリタニアはさらに技術を進化させられるのではないだろうか。アレクサンダの装甲やフレームに使う素材を肩に背負い運びながらクレマン大尉に少しだけ視線を移す。

「あっ…何でしょうか?マーヤさん?」

 しまった、目があった…ここで変に話題を晒しても怪しまれるか…何かいい話題を…

『「お茶会に興味がある」と言え』

 突然の通信に驚きつつ、私は言われた通りに口を開く。

「…いえ、クレマン大尉はよくレイラ…司令とお茶会をすると聞きまして、少し興味があるな〜っと…」

「…!そうなんですか?でしたら今日の午後ご一緒にいかがですか?」

 私は正直そんなに興味ないけど言ってしまった以上行かざるを得まい…

「ええ、是非」

 ニコリと筋肉を無理やり動かして笑顔を作り言葉を返した。

 

「ジョウ ワイズ!データを!」

「やっぱり筋繊維の密度が異常です。太さも常人に比べて遥かに逞しい…すごいなぁ」

 今はマッスルデバイスの開発者であるランドル博士と助手のジョウ ワイズさんに筋肉を調べられている。マッスルガイさんはマッスルデバイスそのものをご所望だったが開発者の彼女がいた方がなにかと都合がいいだろう。そんな私の独断で潜入時の自由な時間を活用してこのようにランドル博士の研究に貢献して信仰を深めようと言う私の作戦である。

「この筋肉…ただ鍛えただけじゃない?なにか別の要因が…?」

 沢山の装置をつけられ謎の機械に入っては筋肉に力を入れてはデータを取る。そんなことの繰り返しで時間は過ぎ去っていく。

 

「マーヤさん、今日もありがとう。司令にも手伝ってはもらってたんだけどやっぱり複数の対象からデータを取得した方がより正確なものになるから。また来てちょうだい」

「はい、是非。」

 潜入して少しの間でわかったことが一つある。パンツァーフンメルやガルドメアなど、現在のE.U.の主要ナイトメアに対し、アレクサンダとマッスルデバイス、これらは明らかに技術力のレベルが逸脱している。更にこの前乗ったアポロンの馬車…間違いなくこのwZERO部隊にはE.U.の持つ現在の最先端技術が密集していると言っても過言ではない。ランドル博士とクレマン大尉をこのまま放置しておくのは…まずい。

「どうしたのマーヤちゃん…顔怖いけど…飴要る?」

「いえ、要りません。ジョウ ワイズさん」

「美味しいのに…」

 ちょっと申し訳なかったので棒のついたキャンディーを一つひったくり口にブチ込み噛み砕く。うーん、甘い…。包装を見るとどうやらこれは『トゥゴーパーソナルベンティダークモカチップクリームフラペチーノノンファットミルクに変更ライトアイスソイミルク追加クアトロショットチョコレートソース追加キャラメルソース追加バニラシロップ追加キャラメルシロップ追加アーモンドトフィーシロップ追加ヘーゼルナッツシロップ追加エクストラチップエクストラホイップエクストラパウダー味』らしい。…うん、もはや何なのかは分からないが、イラストを見た感じカフェラテか何かにマシマシになったホイップとその他諸々をイメージした味のようだ。…こんなもの常飲してたら病気になるんじゃないだろうか…。そしてそれを再現したこれも…。ジョウ ワイズさんのまるまると肥えた腹に一瞬だけ視線を移し、背を向ける。

「ご馳走様でした。」

 

 それから、約束通りクレマン大尉とレイラと私とでお茶会となった。まぁ、お茶を用意してくれたのはレイラだし、お茶菓子を用意したのはクレマン大尉だけど。

「…まぁ、そんなことが?」

「…えぇ」

 他愛のない話をしつつ、紅茶を口に含む。うん、普段飲んでいるものよりもかなり上品な香りがするし味わいも異なる。多分レイラのことだから良いお茶っぱでも使っているのだろう。そしてクレマン大尉の作ったお茶菓子、決して甘すぎずかと言って物足りなさもない。クレマン大尉曰くこれで砂糖不使用の低カロリーな代物だと言うのだから驚きだ。

「アンナはね、私とお茶会がしたくて、この味にたどり着くまで何度も試行錯誤してくれたの」

「ちょっとレイラ!」

 なるほど、ライラも私と同じで筋肉を気にする身、そんなレイラとお茶会がしたいがために努力したと言うことか。サクサクと心地よい音を響かせるお茶菓子を楽しみつつ、私は空気椅子でお茶会を過ごした。

 

 たまにはこう言うのも悪くはないのかもね。

 

 

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