私は現在、E.U.の軍人としてw ZERO部隊に潜入している。そしてE.U.の立場として戦えば敵は当然ブリタニアということになる。特に私が直接刃を交えるのはユーロブリタニアと呼ばれるブリタニアのヨーロッパ支部のような軍。そして私にはとある事情でユーロブリタニアに知り合いがいる。それはミカエル騎士団団長…ミケーレ マンフレディ卿である。彼は元ナイトオブラウンズであり、私と同じくナイトオブツーの名を冠していた。そのために就任後わざわざ私のところに挨拶に来てくれたのである。
『初めましてだな。私がミケーレ マンフレディ、君と同じナイトオブツーだった男だ。』
『初めまして。マンフレディ卿、私はマーヤ ディゼルと申します』
『そう畏まらずとも良い!立場だけで言えば我々はそこまで変わりはないのだからな!しかし、噂には聞いていたが凄まじい筋肉だ。さぞ鍛錬を積んだのだろう?』
マンフレディ卿とは不思議と気が合った。そしてナイトメアの話になり、マンフレディ卿から画像データを見せられた。それはもう派手な金色のナイトメアであった。ヴェルキンゲトリクス、金色のボディに四脚形態を持ったナイトメアだ。とても格好いいと思ったし、戦場で目立つ金色というカラーリングは、常日頃から凄まじい筋肉で人々から注目を集める身なので性に合っていた。
『ふふ、その目…どうやらこのヴェルキンゲトリクスの魅力に早くも取り憑かれたようだな』
『ええ』
『しかしこいつはユーロブリタニアに運んである。それに、もうこいつを継承させる相手は決まっているのだ。』
その時は心底がっかりしたものだ。だが、よくよく考えればマンフレディ卿のナイトメアを貰うということはマンフレディ卿に余程の何かがあったということになる。私は考え直し話題を変えることにした。
『その継承先というのは?』
『私の部下でな?シン ヒュウガ シャイングという男だ。』
…どうやら夢を見ていたらしい。そこで目が覚め、日課のトレーニングをこなして今日も1日を過ごす。鍛錬こそ欠かさずやっているものの、こうも何もないと鈍ってしまわないかと心配になる。この1ヶ月、リョウ ユキヤ アヤノの日本人三人組は従順であり、シミュレーターの成績も良好らしい。マッスルデバイス的にはユキヤとアヤノはかなりセーブがかかるようだが、ナルバ作戦での実動戦闘データが役に立ったらしく駆動系やプログラミングがより最適化され高性能になったらしい。ついでに聞いた話ではどうやらwZERO部隊の慢性的な人手不足はドローンによって補う方向性になったそうだ。ドローン技術…これまた持ち帰ったら喜ばれそうなものが出て来たわ…。
そんな風に思っているとレイラから声を掛けられた。
「マーヤ、日向中尉と今日の15:00に中庭まで来てください。少し話したいことがあります。」
「分かったわレイラ」
今日はあまり筋肉のキレがない…何か悩み事だろうか?最近筋トレする時間がない…とか?いや、それならば日向中尉を呼ぶはずがない。日向中尉にその事を伝えると少しだけ考えるような顔をしてから
「アイツらのことだろうな」
「…アイツら?…あぁ、リョウ達?」
「他に司令は何か言ったたか?」
私は首を横に振ると日向中尉はわかったと短く答えて去っていった。
約束の時間、少し早めに着くと紅茶を勧められた。うん、良い匂いだ。レイラは紅茶を淹れるのが上手いらしい。きっと私ではこうはいかないだろう。直ぐに日向中尉もやって来た…時間前に到着する辺り、日向中尉って結構真面目なところがあるみたいね。
「日向中尉、わざわざ来て頂いてありがとうございます。」
「いえ、上官の命令ですから。お気遣いは無用です。」
多分だけど、レイラのこれは気遣いとかではなく素である。1ヶ月共に過ごして分かったのだ。レイラはその鍛え上げられた私に匹敵する筋肉を見れば分かる通り自分には厳しいが、その反面他人にはかなり甘い節がある。だが、そこが彼女の魅力なのだろう。こんな形で出会っていなければ本当の意味で友達になれていたのかもしれない。
「あぁ…そうですね…。お茶でも如何ですか?」
レイラは再び空気椅子に座ると私に薦めたように紅茶を薦めている。日向中尉は何も言わずに席についた。まぁ、レイラは気付いていないけれど上官の薦める紅茶を部下が断るわけにもいかないだろうに。
「…司令、彼等のことですか?」
日向中尉…私にはアイツら呼びだったのに。
「えぇ、日向中尉とディゼル少尉の意見を参考に聞かせていただければと。あ、どうぞ」
日向中尉は紅茶を飲み始めた。これはつまり私から言えと言うことだろう。
「ではまずは私から。まずは佐山 リョウ准尉。まだまだ荒削りですがアンダーグラウンドを生き抜いていただけはあってベースとなる筋肉は中々付いています。恐らく十分な栄養を摂れていないのが主な原因でしょうが、少々身体に不具合が見られるかと。…ただ、ここ1週間でほぼ完全な状態に戻りつつあるのでこれからも適度な運動とトレーニングを積めば彼も立派なマッスルガイになれると思います。」
「なるほど」
「次に香坂 アヤノ准尉。ご存知の通り剣術が得意なようですし、所持していた刀の手入れを見る限り何か特別な思い入れがあるのだと思います。私との組手でかなり洗練されていますので剣術については実用に足るかと。ただ、体質がそうさせるのか、余り筋肉が付いていないようです。…と言うかあれはワザと手を抜いて筋肉がつかないようにしているようにも思えました。ここは私に是非教育的指導をさせていただきたいです。」
「暴力はいけませんよ少尉。」
「最後に成瀬 ユキヤ准尉。彼は…何かを隠しています。顔の筋肉の動きを見れば常に何かを画策しているのが見て取れました。彼は恐らく体質だと思いますが、筋肉がほぼ有りません。しかし、爆弾製造やアンダーグラウンド内でナイトメアを入手した経緯を考えると中々稀有な人材ではないかと。」
「…わかりました。」
そこで私が日向中尉を見ると、日向中尉はゆっくりとカップを置く。音を立てない辺り、もしかしてかなり育ちが良いのではないだろうか?
「ディゼル少尉の意見は概ね事実ですね。…マルカル司令は彼等がこのまま大人しく出撃するとお思いですか?」
「…?承知してくれたと思っています。」
「フッ…それは司令な願望であって事実ではありません。」
「彼等は…ここから出て生活は出来ません」
さっきも言ったが、レイラはかなり人に甘い。それに、ゲットーで陽菜達を見てきた私とは違い、整った世界の上でしか暮らしたことがない…それ故にアンダーグラウンドを生きていた彼等の事を正確に予測できていないのだろう。
「彼等が犯罪者であり…イレブンだからですか?」
「私は…」
「構いません。ディゼル少尉同様、お互い事実だけを話しましょう。…司令の考えは彼等も分かっているでしょう。」
で、あるなら…
「彼等は必ず反乱を起こす…ってことですか、日向中尉」
私の発言にこちらに視線だけを送り、日向中尉は頷いた。
その次の日の事だ。私が最近始めたトレーニングにヴァイスヴォルフ城の外壁をボルダリングの要領で登ると言うものがあったのだが、その道中レイラの飼い猫であるエリザに出逢った。
「にゃあん」
「あら?エリザ…こんにちは、こんな所でお散歩?落ちないように気を付けてね」
「なーご」
エリザが通るのを待ち再びボルダリングを続ける。
「…あれ?」
…エリザって確かレイラが部屋から出ないように飼ってるんじゃ無かったっけ?壁面の細い道出っ張りを慣れたように歩いていたところを見るにどうやら初めてと言うわけではなさそうだけど…。そしてボルダリング中、廊下を歩くアヤノを見かけた。アヤノは壁面に何かをすると壁の中に入っていった。更にその後をレイラが追…おうしたようだが、どうやら隠し通路への入り口は狭く、入れなかったようで、日向中尉を呼び付けて追わせるようだ。私もこのまま呑気に筋トレをしているわけにもいかないと思い、壁面を移動してこのまま部屋に帰ることにした。しかし、私の部屋の中に窓に背を向けて座るユキヤが居るのを見つけた。…私に何か用だろうか?とりあえず窓を開け部屋に入ると、驚いたようにユキヤがこちらを振り返る。
「うわっ!?えっ!?窓から…!?こ、ここ5階だよ!?」
「壁を登ってきたのよ。」
「壁を!?」
「それにしても白昼堂々女の子の部屋に来るなんて…ユキヤって見た目と違って結構大胆なのね。確かに私は美少女だし、ナイスバディだとは思ってるけど…」
三人の関係をみるとアヤノはどちらかというと妹って感じではあるが、女の子と常に一緒にいるがために距離感の取り方が苦手なのかもしれない。
「は…?何を言ってるんだマーヤ!?というかおいやめろ!近づくな!!爆弾を…」
よく見ればユキヤは体に爆弾を巻き付けていた。これは危険だ。私は手刀を叩き込み意識を狩り取った。
「ドアからでは届かなくてもこの距離なら流石に押させないわ。…って聞いてないわよね。」
…というか、なんでユキヤが私の部屋にいるのだろう?自由に出られるようにでもなったのだろうか。念のためにレイラに連絡を取ると、風切り音が聞こえる…走ってるのかな?
「レイラ、聞こえる?今ね、ユキヤが私の部屋に居たんだけど」
『やはりですか、日向中尉は香坂准尉を、私は佐山准尉を追跡中です。マーヤはそのまま成瀬准尉を拘束してハメル少佐に引き渡してください。但し、彼等には生きてもらいます。マーヤもそのように動いて下さいね』
「分かったわ」
私はユキヤを担ぎ上げ部屋を出てハメル少佐にユキヤを引き渡した。暫くすると日向中尉がアヤノを、リョウをレイラが連れてきた。これで三人仲良くお縄ということである。
「何故逃げようとしたのですか?」
問いただすレイラをアヤノが睨みつけると悪びれもせずに口を開いた。
「アンタ、私達を使い捨ての駒にするつもりだろ!お前の作戦で何人死んだ!?言ってみろ!!」
「それは…。」
事実、レイラの立てた作戦…まぁ、そもそもの注文が無茶だったっていうのもあるけど…では多くの日本人が命を落としている。私の様な筋肉を持っていない中では唯一日向中尉が奇跡的な生還をしたのだ。
「戦争である限り…生還率が100%だとは言えません…しかし、私は必ずみんなで帰ってきたいと思います。」
…うん?みんなで帰ってきたい?その言い草ではまるで…
「みん?なんだ、まるでアンタも行くみたいな言い方だな」
すかさずリョウが野次を飛ばしてきた。しかしレイラは動ずることなく言葉を続ける。
「えぇ、次の作戦では私も出撃します。」
「はっ…アンタ、それ本気で言ってるとしたら余程おめでたい性格か馬鹿だぜ」
レイラは馬鹿ではないが、どちらかというとリョウの言う通りめでためな性格をしているのは事実だ。さらにいくらレイラに筋肉があると言ってもその実レイラの筋肉はかなり観賞用に傾向している節がある。弾丸キャッチなどの基本的なスキルは持っているが、ゼロのクラウチングスタートからの膝蹴りや私のドロップキックなどの攻撃的な技を体得していないのだ。
「それは危険よレイラ!」
今回口を開いたのはクレマン大尉。友人が戦場に行くと聞けばそれは驚いて当たり前だろう。しかし、レイラの表情を見ればそれは無駄なことがわかる。仕方がない、ここは一肌脱ぐとしよう。私は主に上半身の筋肉を重点的に力ませ膨張した筋肉で服を破りさる。
「マーヤ!?」
驚くクレマン大尉に笑顔を見せ、そのままサイドチェストを決める。
「安心してクレマン大尉。マルカル司令は私が守りますから」
「マーヤ…」
クレマン大尉は頷き、上着を脱ぎそれを差し出してきた。
「とりあえず…前だけ隠して…下着が丸見えよ…」
「あ、はい。」
マーヤの下着は特別性なので破れません。残念だったな男子諸君。