今回のガンマ作戦はワルシャワに駐屯しているユーロピア共和国軍の援護…。東の前線である24Aエリアに進撃する際に同エリアに居るユーロブリタニア軍の後方に降下し、その背後を奇襲攻撃する。それによって混乱する敵軍の正面を味方の103軍団が攻撃すると言うもの。言葉で聞けばあたかも素晴らしい作戦に聞こえるが…
「敵のど真ん中に降下する…普通じゃ考えられない作戦ね」
敵陣のど真ん中に少数であるwZERO部隊が降下する、これでは物量で簡単に押し潰されてもおかしくは無い。
クラウス副司令はこの作戦内容を改めて聞いた時のユキヤとリョウに悲観するなと言い、進撃してくる第103軍団と合流できれば帰還できると言っていたが、四方八方敵だらけの中で生き残るのは至難の業だ。ユーロブリタニアには私のことは伝わっていないため、私だって死ぬ可能性はある。
…ナイトオブツーとして、何より私の秘密を知るまでは死ぬわけにはいかない。必ず生きて帰る…。今回与えられたナイトメアは前回同様アレクサンダ…タイプ02らしいが正直変化はあまり分からない。レイラのアレクサンダにはドローンオペレーターとしての機能が、リョウにはハンドアクスが、ユキヤには狙撃用ライフルが、アヤノにはブレードが追加装備であるらしいが日向中尉には特別な装備はないらしい。私は事前の要望として投擲式グレネードを3発用意してもらった。
『聞こえるかい、マーヤ』
聞こえてきたのはスザクの声、アレクサンダのコクピットでは通信が傍受されている可能性があった為、二度指で叩くことで反応を返す。
『うん、聞こえてるみたいだね。あと…大体12時間でペテルブルクに到着するんだ。ようやく君と仕事ができるね。…まぁ、僕らがそちらについても暫く合流はしないみたいだけど。』
そうなのか…私としてはこれ以上こちらにいるのはバレるリスクなどを考慮して辞めたいところだが…
『僕としてはリスクが大きいからね、早めにマーヤを回収したいところなんだけど、ル…マッスルガイ卿がヴァイスヴォルフ城を攻める段階になるまでは待機らしいんだ。取り敢えず今回もマーヤは全力でE.U.の兵士として闘ってくれって言ってたよ。それじゃあ、頑張って』
私は再度二度指で合図を送る。
『スザク…プロテインを…』
…通信の切り側にマッスルガイさんの声が聞こえたけど…マッスルガイさんはトレーニング中だったのかな?何にせよ今はまだこのwZERO部隊の一員として戦わなければならない。ヴァイスヴォルフ城を攻めてくる時まではスパイとして居なければならないし、こちらでの生活を考えれば司令であるレイラを失うのはまずい。スザクとの通信の間に作戦は着地の段階まで進んでおり、他のみんなとはぐれぬように滑空し着地を行う。…あれ?レイラのアレクサンダは?
『ディゼル少尉、司令のアレクサンダは流されて着地が難航した様だ。俺がカバーに入るから周囲の警戒を頼む』
日向中尉の発言から察するに別にレイラは負傷したとかでは無さそうだ。良かった…。
「了解しま…」
瞬間、アレクサンダでその場を跳び退くとその場を弾丸が通過する。
「敵…じゃ、無い!?」
『ナイトメア戦なら筋肉は関係ねえ!今までの恨み晴らさせてもらうぞ筋肉女ァ!』
なるほど、敵では無くリョウ達か、安心した。全く、こんな戦場のど真ん中で強者である私に挑むとは…
「こんな状況で私という強者に挑んで己を鍛えたいとは!リョウも中々熱心なのね!」
『は…?』
そんなに私の胸を借りたいと言うならば貸してあげよう。私はトンファーを両手に持ち、リョウのアレクサンダに接近する。
『突っ込んでくるなんて間抜けな奴だぜ!』
放たれるライフルをトンファーを回転させることで弾き、さらに距離を詰める。
『何だよその動き…!あり得ねえ!!』
そして一気に距離を詰めてドロップキックを叩き込み、衝撃の瞬間にアレクサンダの脚部を延長させて更に衝撃を加える。
「アレクサンダはインセクトモードの時に太腿が伸びる、そのシステムを流用した蹴りよ!覚えておくと良いわ!」
『できるかァ!そんな操作ッ!!』
さて、トンファーを寸止めでもしてこのトレーニングを終わらせるとしようかな
『リョウから離れろ!』
次の瞬間、私がその場でインセクトモードになることで屈むと、またしても弾丸が通過した。
『僕らとは比べ物にならない変形速度…!筋肉量の違いか…!』
「筋肉量に応じてマッスルデバイスがリミッターを掛けてるからね、でも今の狙撃は中々正確だったわ!でも奇襲をするなら…」
私はその場に落ちていた手頃な岩を持ち上げ思い切りユキヤのアレクサンダに投げ付ける。
「静かにすることねェッ!!」
『ユキヤッ!』
躍り出てきたのはアヤノか、ふむ、本来はアヤノも隙をうかがって奇襲する手筈だったのかもしれないが…阻止できたようね。そして私は狙撃手であるユキヤと私の間にアヤノがいるこの瞬間を逃さない。未だに伏しているリョウのアレクサンダをヘッドロックして盾代わりにユキヤ達に向ける。
『リョウを盾に!?』
『俺ごと撃てユキヤ!』
『クソ!マーヤ ディゼルッ!!』
突っ込んでくるアヤノに対してリョウのアレクサンダを投げつけてぶつける。
「真正面から挑むなんてまだまだね。三人とも実力はあるのに連携が出来てないわ。だからこうやって利用されるのよ」
アヤノとリョウが揉み合っている隙に、ユキヤの狙撃を掻い潜りつつ距離を詰める。
『なんで当たらないんだ…!』
「そんなの簡単…筋肉よ!」
『そんな訳あるか!!』
狙撃手を倒す方法は簡単、距離を詰めて殴る事だ。
「ユキヤ、近付かれたらどうするかまで考えて狙撃手をすることね!」
ユキヤのアレクサンダの腹を蹴り飛ばし、すぐさま跳び掛かる…と同時に凄まじい爆発が起きた。
直様通信が入った為、二度指で合図を送る。
『ふむ。久し振りだなディゼル。君に死なれては私の作戦に差し支えるので教えておいてやろう。感謝すると良い』
どうやらリョウ達もこの状況で鍛錬を積む気は無いらしく動きはなかった。
『現在ユーロブリタニアはお前がいる周辺…つまり前線の背後に対して闇雲に長長距離砲を撃ち込んでいる。非効率的だが、凡人にしては上策だ。当てずっぽうだが今現在お前達を苦しめているだろう?』
なるほど、どうやっているかはわからないがいきなり背後を取られるなら背後に適当に砲弾をぶち込んでしまえということらしい。
『北北西へ向かえば着弾範囲から出られます!マーヤも早く!』
レイラからの通信を受けその通りに進むと正面にはブリタニアのナイトメア部隊…とは言え今更ただのサザーランドに遅れをとる私ではない。トンファーを回転させサザーランドのアサルトライフルの弾丸を弾く。暫くするとサザーランドは何者かに狙撃され大破した。…ユキヤかな?
『このまま前方にあるスロニムに全速前進です!』
マッスルガイさんからの通信はなかったが、この布陣でこの砲撃、確実に進行方向を誘導されているように感じられる。とは言え、事実あの場にいては砲撃の餌食になるのは時間の問題であった。ならば罠と分かっていても進むしかないだろう。
スロニムという街に着いて最初に感じた違和感は誰もいないということだ。これだけの規模の街に人が一人もいないなどあり得ない、やはり罠だったということか。
『お前がハンニバルの亡霊か!さぁ!殺し合いを始めようかァ!!』
現れたのは赤いグロースターソードマン。マンフレディ卿から聞いた事がある。確かからの部下のシン ヒュウガ シャイングのお抱え部隊、アシュラ隊の隊長が赤いナイトメアに乗っていたはずだ。つまりこの作戦にはマンフレディ卿が絡んでいるということか。直接戦うのは勘弁願いたいところだ。
『どうした!ハンニバルの亡霊!この程度かよ!!』
彼の二刀流はスザクに比べれば非常に遅く、まだまだ拙い。欠伸を噛み締めつつ軽く受け流す。
任務的にはユーロブリタニア軍の殺害は認められているが、相手を知っている今回は話が別だ。直接手を下すのは流石に躊躇してしまう。
『どうしたァ!?守ってるだけじゃ勝てねぇぜぇ!?』
五月蝿いなぁ…。
『ディゼル少尉、平気か?』
通信先は…日向中尉か。丁度いいや押し付けてしまおう。
「日向中尉!相手は隊長機かと!私では歯が立たず…!」
『お前が…?まぁいい、それならマルカル司令の護衛を交代してくれ。』
「了解」
よしよし、上手くいったようだ。
『マーヤ、日向中尉を援護しなくて良いのですか!?』
レイラにそう言われたが、日向中尉と赤い彼の戦闘はかなり縦横無尽に動き回るものだった。下手に援護に入れば邪魔になってしまうだろう。
「下手に手を出せば返って日向中尉の邪魔になると思うわ。今は周辺の警戒を」
『…わかりました。』
警戒しながら周辺を巡回していると機体を降りているアヤノを見つけた。
『香坂准尉…!?大丈夫ですか?こちらへ…私のアレクサンダで運搬します。』
どうやらアヤノも流石に複数相手には勝てず期待を放棄したらしい。他にもレイラの話ではドローンは悉く破壊されているとか。暫くするとリョウを連れたユキヤのアレクサンダと合流した。ユキヤのアレクサンダも酷く損傷しておりまともに戦えそうにはない。道中で現れたナイトメアは取り敢えず邪魔なので全てボコボコに捩じ伏せて蹴り飛ばす。
「これで一先ず周辺の敵は掃討し終えたかと」
その時…私達一機のナイトメアが頭上を超えた。
「あれは…!?」
金色のナイトメア…見間違えるはずがない、マンフレディ卿のヴェルキンゲトリクス…!あの人がわざわざ前線に出てくるとは驚きだが不味い事態になった。しかも走り去った方角には日向中尉がいるはずだ。
『マーヤ!我々も行きましょう!』
レイラは私の返事を待たずに行ってしまった為、私も後を追う。
私たちが日向中尉のところに辿り着くと、四肢をもがれた日向中尉となぜか攻撃をせず棒立ちになっているヴェルキンゲトリクスが見える。
『…誰か立ってる…?』
レイラの呟きでよく見てみればヴェルキンゲトリクスの肩に誰かが立っている。そのシルエットは細く、マッスルガイであるマンフレディ卿ではないことは確かだ。…誰だ?
続けて日向中尉もコクピットから出てきて二人は何かを話している。
『…兄さん』
…日向中尉のお兄さん…?
『アキト…お前は我がミカエル騎士団と…』
ミカエル騎士団…マンフレディ卿の指揮している軍のはずだ。それなのに今コイツは我がと言った?マンフレディ卿はどうしてしまった…?こちらからスザク達には連絡が取れない為事情は分からないけど…。
『…お前は死ね、私の為に…』
…そうか、シン ヒュウガ シャイング…『ヒュウガ』…日向か、成程。そして今の日向中尉への言葉で確信に変わった。
この男、マンフレディ卿を殺害してミカエル騎士団とヴェルキンゲトリクスを奪ったに違いないわ!
「レイラは日向中尉の回収を!私が時間を稼ぎます!」
『マーヤ!?』
まずは日向中尉と距離を取らせるか。手持ちの投擲式グレネードは流石に威力がデカ過ぎるのでユキヤから剥ぎ取り没収しておいたユキヤボムを取り出し、投げ付ける。
『なんだ?兄弟の再会を邪魔するとは…無粋だな』
ヴェルキンゲトリクスのカタログスペックは頭に入っている。あの機体の持つSDAアックスはかなりの切れ味を誇る。恐らく日向中尉のアレクサンダの四肢をもいだのはのその斬撃だろう。
『無粋者は死ねェ!』
横薙ぎをジャンプで躱し、グレネードを投げつける。
『ふん、投げ物とは野蛮な』
グレネードを切り裂いたことで発生した爆煙を利用して一度姿を眩ます。
『…ふん、野蛮かと思えば中々の知恵者か?』
…取ったッ!背後から仕留める!
『奇襲をするなら背後からなど誰でも思い付く…やはり愚者か!』
ヴェルキンゲトリクスの四つ足の後脚による蹴り…しかしヴェルキンゲトリクスのカタログスペックを知っている私にはその程度の攻撃は容易に見切っている!
『躱された…!?』
トンファーを構えコクピットに叩き込もうとしたがどうやら腕を犠牲に防いだようだ。
『貴様…!』
四つ足を使って一気に距離を取られてしまった。おまけに今の攻撃で警戒されてしまっている。次の一撃は中々入れさせてはくれないだろう。だが、マンフレディ卿の仇だ…!
しかし、ヴェルキンゲトリクスは突然踵を返して去っていく。
「追います!」
『不要です!マーヤ!』
「…わかりました。」
ここに残っている戦えるナイトメアは私以外では戦闘初心者のレイラのものだけ、流石に損傷の激しいユキヤや機体を降りている日向中尉達を残してはいけないか…。
それから暫くの後、ユーロピア共和国の本隊と合流した私達は前線かれ退がることになった。しかし、それから30分もせず前線が後退、結局奪還したスロニムも取り返されてしまった。一体何をしてるのやら…。
スロニムにはアレクサンダの残骸が多く残っている…ブリタニアに回収さているだろうから私の功績がかなり減ってしまうことになった。ドローンにアレクサンダの技術…。うう、アポロンの馬車くらいしかもう献上できるものがない…頑張らないと…。
ニューロデバイスやブレインレイドはないので死ね死ね団は本作には存在しません。
名探偵マーヤの数少ない名推理シーン(ただの勘)