ミートギアス 〜筋肉のルルーシュ〜   作:ベルゼバビデブ

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PHASE7.5′

 ニクアツ マッスルガイ…皇帝陛下に絶対の忠誠を誓う天才軍師。ユーロブリタニア派遣に際してはインペリアルダンベルと呼ばれる皇帝陛下と同じ権限で命令が下せる見た目よりかなり重いダンベルを賜っている。

 …しかし、その正体は皇帝陛下のギアスで記憶を書き換えられたルルーシュだ。僕はその護衛兼見張りとしてこの任務に就いている。

「なぁ…スザク…プロテインを…プロテインをくれないか…プロテインを…」

 記憶の喪失が喉の渇きと感覚が似ているのか、彼はやたらとプロテインを要求してくる。その様子はまるで…鍛錬をした後にプロテインを要求してきた…日本にいた幼き日のルルーシュそっくりだ。…だが、ルルーシュはユフィにあんなギアスを掛け操り、多くの人を騙し、人を殺した…許す事はできない。

 …でも、僕も今マーヤを騙している。ギアスの存在を隠し、ゼロの正体も秘密のままだ。何度かマーヤと遊びに行き、一緒に遊んだ陽菜ちゃん達を失った怒りと悲しみをぶつけることもできていないであろうマーヤからその機会を奪っているのは紛れもない僕だ。

 

 ルルーシュの…いや、ニクアツ マッスルガイの取った世界解放戦線による箱舟の船団作戦は…どこかゼロの時のような作戦にも似ている。人格が異なっても考える事は同じというべきか…。

 ミカエル騎士団のシン ヒュウガ シャイング卿と手を組み、ヴァランス大公を謀り、実権を掌握。ギアスなどなくても結局ルルーシュはこうしてブリタニアに反抗を企てたに違いない。だが僕はナイトオブワンになってエリア11を…日本をもらう。その為にルルーシュを踏み台にしたのだ。今更迷うわけにはいかない。

 

「このユーロブリタニアは私が導いて行く!…チェックメイトだ。」

「お見事です」

 協力者であるシシャイング卿とマッスルガイのチェスはマッスルガイが勝利したようだ。

「君はこのゲームで…現実の世界を重ね合わせたのでは無いかな?…あの時、キミがクイーンを見捨てていれば私は負けていた。」

「どういう意味でしょうか?」

「君には見捨てることのできないものが…いる、違うかな?人は誰しもそのような弱みがある。親、兄弟、友人…それとも恋人?しかし、私は違う」

 普段のルルーシュならば真っ先にナナリーという見捨てられない誰かが居るのだが、皇帝陛下のギアスによりそのことは忘れているようだ。

「貴方は?」

「私が守るべきは!我が命を賭けて守るべきは!皇帝陛下ただ一人!」

 恐らく、本来のルルーシュならば口が裂けても思わないだろう発言だ。そしてそれが悪かったのだろう、ルルーシュ…つまりニクアツ マッスルガイは急に苦しみ始めたのだ。

「ぐぅ…!?皇帝、陛下…?皇帝…!……うがぁあああああ!!!」

 ニクアツマッスルガイは突然両拳を机に叩きつけた。そして机は粉微塵に消し飛び、暴風が巻き起こった。僕も体幹を鍛えていなければ吹き飛んでしまって居ただろう、証拠にシャイング卿は椅子ごとひっくり返っているわ、

「誰だ!!お前はッ!!誰だッ!!!」

 ルルーシュは大きく飛び跳ね、その場でフットスタンプ、これにより更なる暴風が僕を襲い、何とか耐えたものの窓ガラスは全て割れてしまっていた。シャイング卿も壁際まで吹っ飛んでしまっている。

「ち、違う!俺はッ…違う…こ、ここはっ!ここはどこだ!俺は…どこに居る…!?トウキョウ租界…?いや、神根島…?消えろ…!ニクアツ マッスルガイ…!!」

 元のルルーシュは父であるシャルル皇帝陛下を憎んでいた…そんな憎むべき相手に忠誠を誓うなどというのが間違いだったのだ。混乱したルルーシュが取ったポーズはダブルバイセップス…!いけない…!あれはゼロとしてのルルーシュがよく取っていたポージング…今の人格は完全にルルーシュになっている!

「ま、マッスルガイ卿…?」

 かつて椅子だった物の残骸から顔を出したシャイング卿に僕は出ていってもらうことにした。

「彼は気分が悪いようです。申し訳ありませんがシャイング卿、今日はお引き取りください」

 しかし、彼は残骸からゆっくりと体を起こし、体の汚れをはらっていた。

「箱舟の…船団の、作戦を聞いた時…。一人のテロリストのことを思い出した…。エリア11にいたテロリストの名をね。マッスルガイ卿の巧妙な作戦はそのテロリストのものと良く似ている…いや、そのものだ。彼は反逆者ゼロ…そして、ナイトオブラウンズのお前が護衛していることこそがその証拠だ。」

 …バレてしまっては仕方がない…こうなれば…!

「貴方のように勘のいい方は…ここで始末する!」

 僕がシャイング卿を殴ろうと構えた瞬間、ドアからナイトメアが入ってきた。これは…ミカエル騎士団か…!どうやら最初から裏切るつもりだったらしい…やられたな。だが、こちらが何も備えていないと思ったら大間違いだ!

 

「来いッ!ランスロットォ!!」

 

 僕はランスロットの起動キーのボタンを押す。振りかぶられたサザーランドの拳を躱し、現れたランスロットに騎乗する。

「シャイング卿、皇帝陛下の使者の間にナイトメアで踏み入る事がミカエル騎士団の礼儀なのか!」

 僕はMVSを構えて敵の数を確認する。数は多いがランスロットで対応できない数ではない!襲い掛かるサザーランドをMVSによる斬撃と蹴りをブチ込むことで撃退する。歩兵部隊はルルーシュが勝手に暴れるだけで撃退できるだろう。混乱してドラミングをしているルルーシュだが、銃撃はしっかりと躱すか弾くか掴むかしている上、背後に回り込んでジャーマンスープレックスを仕掛ける余裕すらあるらしい。

 敵のサザーランドのメイン装備は斧のようだが、このランスロットのMVSならガードごと斬り裂く事が可能だ。このまま押し切る…!スラッシュハーケンでアサルトライフル持ちのサザーランドを倒し、最後の一機まで減らすが、あれは確かグラックスと呼ばれる新型のナイトメア…かつてエリア11で戦ったあの赤いナイトメア同様伸びるだが特徴だ。とは言え、パイロットとしての技量も、ナイトメアの性能もこちらが上だ。物の数秒でボコボコにするが、生身であるルルーシュの方に問題が起きた。

 ルルーシュは混乱の最中、ナナリーの名を口にして気絶、スナイパーライフルを構えた歩兵により人質となり、僕とルルーシュはシン ヒュウガ シャイングによって捕らえられてしまった。

 筋肉による突破は不可能ではないだろうが、それをすれば秘密がバレてしまう。故に僕は大人しく捕まるしかなかった。

 

「997…998…999…1000!」

 

 捕らえられた部屋の中でルルーシュは1人黙々と腕立て伏せを続けている。今もなお多数のスナイパーライフルを向けられているのだろう。

「スザク、なぁスザク…今日の闘いも熱かったな…なぁスザク。ほら、俺たちの流した汗が蒸発して虹が…綺麗だな…綺麗だな…」

 破綻してしまったニクアツ マッスルガイとしての人格のせいか、今のルルーシュは日本に送られてすぐの頃まで記憶が退行している。そのせいで己に脱出できるだけの筋肉があるものの、そもそもとして捕えられているという状況を認知出来ていないらしい。

「なぁ、スザク…プロテインをくれないか」

「ルルーシュ…」

 僕がプロテインを手渡すと、ルルーシュはにこやかに笑いプロテインを飲み干した。




ランスロットを呼ぶのに叫ぶ必要はありません。
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