ミートギアス 〜筋肉のルルーシュ〜   作:ベルゼバビデブ

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PHASE09′(Final)

 ヴァイスヴォルフ城攻防戦…先日のユキヤの爆弾投下により、敵部隊は約1/3に減らすことができている。とは言え、それでも人数としては彼方の方が圧倒的に多い。偵察に行っていたアシュレイの話では三騎士なる部隊長達は生きており、シン ヒュウガ シャイングの腹心とも言える女騎士、ジャン ロウも生きているとのことだ。

 それに対してこちらの戦力は日向中尉、アシュレイ、私、リョウ、アヤノ、負傷中のユキヤ、アレクサンダドローンが10基とオスカー ハメル少佐率いる警備隊と合計で30にも満たない。相変わらずマッスルガイさんからの連絡はないため、このヴァイスヴォルフ城攻略戦はゼロの協力者であるシン ヒュウガ シャイング率いるミカエル騎士団の独断という事になのだろう。ここで敵の侵攻を許せば私の功績が無くなってしまう。なんとしても守りきらなかれば…。特にアポロンの馬車…ゼロがここの情報を全て知っているならば、ペンドラゴンにも手が届くアレを欲さないはずはない。

 みんなにとっては司令部のあるヴァイスヴォルフ城の死守が大事であろうが、そういう意味では私にとってはアポロンの馬車こそが本丸だ。みんなには悪いが、私は私の目的のために動くとしよう。

「…という訳で、守りの布陣は以上になります。何か質問がある方は居ますか?」

 丁度レイラが説明を終えたらしいので、私はすかさず手を挙げる。

「レイラ、アポロンの馬車の守りはどうするの?」

「アポロンの馬車ですか…?これだけの戦力差ですから余り其方に戦力を回す余裕はないのですが…」

 やはりそこまでは考えが回っていないか、いや…当然か。

「アポロンの馬車周辺はいざという時の脱出ルートとして必要だと思うの。」

「…確かに、余り考えたくはありませんが、逃げ道はあった方が良いかもしれませんね…」

 よし、それらしい言い訳でうまく誘導できたようだ。

「数が割けないのも分かるわ。だから私一人で守ろうと思うの。」

「マーヤ一人でですか…?それは…」

 心配だと言いたげなレイラに対し、私はサイドチェストを披露する。

「任せて。私ほどの筋肉なら一人でも余裕よ!」

「…わかりました。ではアポロンの馬車の防衛はマーヤ…ディゼル少尉にお願いします。…ですが、危険だと思ったらすぐに放棄してくださいね。」

 よし、計画通りだ。

 

 そして作戦の開始前、私のところにアシュレイがやってきた。

「…何か用?」

「いや。一つお前に頼みたいことがあってよ。…もしお前の方に女騎士が…ジャン ロウが来たらよ、なんとかあいつを救ってやってほしいんだ。」

 …救う?おすすめの筋トレでも教えれば良いのだろうか?

「俺とあいつの境遇は似ててよ、親から見捨てられた後に拾ってくれたのがシャイング卿なんだ。だから…あいつはきっとシャイング卿のためならなんでもやる。それが間違ってることでもだ。」

 …ふむ、好きな人のオススメする間違ったトレーニング方法を実践してしまうタイプという事らしい。確かにスロニムで見たシン ヒュウガ シャイングは細かった…私の経験上、素人がやりがちな間違ったトレーニングはスクワットだ。取り敢えず私は白い歯を輝かせつつサムズアップを返す。

「任せて!ジャン ロウって人は私から正しいスクワットの仕方を教えておくわ!」

「は?」

 

 アシュレイと別れ、一人でアポロンの馬車の防衛として待機をしていると、通信からヴァイスヴォルフ城の戦闘が始まったことが分かる。通信を聞く限り、予想よりも侵攻スピードは早そうだ。かなり苛烈な攻め…しかし、相手の背後にゼロがいるならば…これは囮。

『ちっ!ここに守備部隊がいるとは…!』

 アポロンの馬車を破壊させるわけにはいかない。恐らくここを攻める敵こそが本命だろう。見た限り新型が一機に他はサザーランドのドローンのようだ。報告ではヴェルキンゲトリクスは城の攻防戦に参加していることから自らを囮にしているということか。そしてこの新型…恐らくシン ヒュウガ シャイニングにとってかなり信の厚い相手…つまり…

「…貴方がジャン ロウね?アシュレイから聞いているわ。」

『何!?』

「いい?スクワットはね?まず、足を腰幅に開き、つま先は膝と同じ向きにするの。」

『は?』

 うん?あ、そうか…まずは間違いを糺すところからか。

「ごめんなさい。多分だけど、スクワットの時に膝から動いてないかしら?それは間違いよ。スクワットは股関節を…」

 おっと。何故この人は突然切り掛かって来たのだろう?…それにこのナイトメア、腕が伸びるらしい。私のように凄まじい筋肉を鍛え、動体視力と反射神経を鍛えた者でなければ今の不意打ちは防げなかっただろう。

『こんなふざけたやつに!』

 まさか…この人は既に正しいスクワットの仕方を知っていながら間違ったやり方に従っているのだろうか?なるほど、釈迦に説法、私に筋トレ方法だったようだ。

「ごめんなさい…。貴方は…間違っていると知りながらもそれをやろうとしているということね?でも、それは…良くない事よ!」

 間違った筋トレ方法は筋肉が鍛えられないどころか体を壊す原因になってしまうのだ。間違ったスクワットでは膝を痛めてしまうかもしれない。

『お前に何が分かる!』

「分かるわ!」

 ナイトメアに乗っているから分からないだろうけれど、私は自他共に認めるマッスルウーマン!筋トレの方法など熟知している!もはやこの体に染み付いている!

 伸びる腕の斬撃をトンファーで弾き、直様そのトンファーを投げ付ける。不意打ちとはこう行うのよ…!!

『ぐっ!?』

 そしてよろけたその一瞬を私は逃さない。一気に距離を詰めてドロップキックを叩き込み、トンファーでコクピットブロックの側面を思い切り引っ叩く。

『ぐあぁっ!?』

 コクピットハッチを無理矢理引き剥がすとアシュレイと余り歳の変わらなそうな少女の顔が露わになった。

「相手が大事な人だからと言って…間違ったことを続けるのは良くない。それは貴方にも、相手にとっても良くないことよ!」

 筋トレをするというその心意義は立派なのだ。あとは方法さえ間違っていなければ立派なマッスルボディが手に入れられるのだから。

「五月蝿い!」

 何やら発砲してきたので弾丸を摘み、そのまま指で弾丸を潰して見せる。

「これが正しいトレーニングで身につけた筋肉よ。」

「ひぃ…!く、来るな!化け物!」

 更に発砲してきたので今度はそれを噛んで受け止める。そのまま歯で弾丸を砕き咀嚼する。うん、不味い。吐き捨てつつ彼女へと歩を進める。

「!?」

「本当に相手のことが大切なら…止めてあげるべきよ。」

 そう、間違った筋トレで体を壊すなどあってはならない事だ。

「う、うわぁぁぁぁぁあ!!!やだ!!怖い!!!」

 彼女は踵を返すと走り去っていく。ふむ、正しい走り込みのトレーニングがしたいようだ。私も一気に加速し、彼女に並走する。

「いきなり走り出すのは体に良くないわ。まずはウォーミングアップでしっかり体を温めないと。それにちゃんと水分は取ってる?汗をかいたら塩分も補給もしっかりね」

「うわあぁぁぁぁぁあ!?」

 …先ほどから彼女は叫んでいるが…もしかして走る時は叫ぶ方が効果がある等と言われているのだろうか?

うーん、そんなの聞いたことはないが…。

「あ、ペースが落ちてきてますよ。ファイトです!」

 彼女はペースを落とさず走り続け、やがてヴァイスヴォルフ城に到達

「もうすぐゴールですよ!」

「うるさい!!」

 相討ちになったような日向中尉のナイトメアとヴェルキンゲトリクスの脇を抜け、やがて私達は今にも刀に刺されそうな日向中尉と刀を構えるシン ヒュウガ シャイングのもとまでやってきた。

「ふざけるなァ!!死ねェ!アキトォ!!」

 叫ぶシン ヒュウガ シャイングと倒れるアキトの間に私はダッシュで割り込み刀を両手で挟み込んで止める。

「ぬぅ!?舐めるなよッ!!」

 なんと、シン ヒュウガ シャイングは自ら刀をへし折る事で行動を再開、私よりもよほど日向中尉を殺したいのか、折れた刀を日向中尉に向けて突き出した。

 しかし、それを受け止めたのはジャン ロウ。普段の運動不足が祟ったのか、全力疾走を続けた彼女の脚は急には止まらず偶々刀の餌食になってしまったようだ。そして最も呪うべきは彼女の筋肉量の無さ、私やレイラほど鍛えていれば折れた刀による刺突など欠伸をしている時程度の緩んだ筋肉でも弾く事が可能だ。しかし、残念なことに彼女は華奢であり、完全に心臓部を貫通している。

「ジャン…馬鹿な女だ…うぐぅ…!」

 不幸な偶然とは重なるものであり、何故手に持って居たかはわからないが、ジャンの持っていたピストルは恐らく刺された時に衝撃で引き金を引いてしまい、それがシン ヒュウガ シャイングの胸部を貫通していた。銃に対する防衛術など鍛えた筋肉があれば筋肉で弾く、筋肉で止める、掴む、避けるなど様々な手段があるのだが、シン ヒュウガ シャイングはあまりにも華奢すぎた。ギリギリ心臓こそ貫かれていない様だが、もはや止血も意味を成さないだろう。

「こんな、はず…では…」

 私としてもシン ヒュウガ シャイングはゼロにつながる手がかりだった為、彼の死は望ましく無い。

 

 E.U.側はスマイラス将軍を始めとする軍部が多大な被害を受け立て直しを迫られている。しかし、ユーロブリタニアもまた、シン ヒュウガ シャイング率いるミカエル騎士団の裏切りによりラファエル騎士団以外が壊滅、立て直しを迫られている。

 皇帝陛下も流石の軍師派遣も立て直しまでは不要と思ったのか、ニクアツ マッスルガイさんは本国に戻ることになり、それに伴って私の潜入任務も終わりとなった。残念ながらヴァイスヴォルフ城等をブリタニアの手に渡るようには出来なかったものの、ジャン ロウが運び込んでいた爆薬でアポロンの馬車を破壊せよとの指令を受けた私は命令通り破壊した。自らの手に入らないのであれば使えないようにしろと言うことだろう。

 私は私の分のアレクサンダ…つまりマッスルデバイスのみを手土産に本国に帰ることになる。防衛システムをほとんど使い切り、司令部を放棄したヴァイスヴォルフ城にもはや残る事も出来ず、そもそもの支援者たるスマイラス将軍を亡くしたため、wZERO部隊は実質的な解体となった。

 引き上げの際にランドル博士に呼ばれ、彼女の旦那さん…謎の容器で眠っている…を紹介された。とりあえず謎の機械から引っ張り出して思い切り頬をぶっ叩いてやると、なんか飛び起きたのだが、彼はマッスルデバイスの考案者で試作システムの実験中、筋肉に対して大き過ぎる負荷を受けた事で意識を無くし、それからずっと目を覚まさないらしかった。ただのビンタで叩き起こせただけなのだが、ランドル博士には泣いて喜ばれたのでどうせならと私と共にブリタニアに引き込むことにした。これでマッスルデバイス関連の技術を取り込むことができるだろう。

 この際だ。いつか話したみんなで日本に行くと言う話を…現実にしてみたいと私は思った。どうせあとはブリタニアに帰るだけである。潜入任務終了と共に伝えられたスザクとの合流地点に戻るだけなら正直身一つで走って向かうことだってできる。だが、手土産は多い方が良い。

「ねぇ、レイラ…みんなはこれからどうするの?」

「…私は…ワルシャワで出会ったお婆さんたちのところに行こうかと思います。マーヤも一緒にどうですか?」

 ワルシャワの…あぁ、それも悪くはないのだろう。しかし、私は首を横に振る。

「…そうですか。」

「ごめんなさい、レイラ…私ね…レイラにだけじゃなくて、みんなに、ずっと黙ってたことがあるの。…私ね、実はブリタニアの軍人なんだ。」

「…え?」

 目を丸くするレイラだが、その反応は当然だろう。ずっと仲間だと思っていた相手が実は敵だったのだ。当然そう言う反応になる。

「私の正体はね、皇帝陛下直属のナイトオブラウンズ。ナイトオブツーなの。E.U.には潜入任務でやってきた…まぁ、スパイなの。」

「そんな…。でも、マーヤは今まで沢山のユーロブリタニアの兵士を…」

 レイラは本当にお人好しだ。私が裏切り者だったことに怒るわけでもなく、ただ味方を殺し続けた私のことを心配してくれるとは。

「それが私の任務だったから。それにしてもレイラは…怒らないのね?」

「…マーヤが私達に直接危害を加えたと言う実感はありませんし、マーヤが命懸けで戦ってきたことは知っていますから…でも…悲しいです。その、仲間…だと、思ってましたから。でも…」

 レイラは少しだけ涙を流し、震えながら手を差し出してきた。私はそれを力強く握り返す。

「…私たちは…友達、よね?」

「…そうね、そうかも」

 仲間ではない…でも、友達ではあったかもしれない。一緒に筋トレをしたり、お茶会をしたり、筋トレをしたり、筋トレをした…きっと…友達だ。

 

 結局、レイラと日向中尉…じゃなくて、アキトと多くのwZERO部隊の隊員はレイラと共にワルシャワのあのお婆さん達の元に行くらしい。本音を言えばアキトにも来て欲しかったが、アキト自身、シン ヒュウガ シャイングのと斬り合いで、兵士としては致命的な箇所の筋肉や神経を切断されてしまった為に無理は言えない。…それと同じくらい彼にはレイラと支え合って生きてほしいとも思える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…で、3人は来てくれるのね?」

「まぁな。ババア達とまったり暮らすのも悪くねぇが…お前と一緒に行けばいけるんだろ?日本に」

「ついて行った方が楽しいゲームになりそうだからね。」

「二人が行くなら私も行くに決まってるでしょ!」

「そう…ありがとう」

 こうして私はリョウ、ユキヤ、アヤノ達日本人3名とランドル博士とその旦那さん、アレクサンダを手土産にブリタニア本国に帰国することになった。

 本国に戻るための合流地点に到着し、そこでスザクを待ったのだが、現れたのはスザクではなく、別の人物であった。

「久しぶりだな筋肉女…。」

「ルッキー!どうしてここに?」

 そこに居たのはスザクではなく派手髪ナイフペロペロマンのルッキーであった。直属の親衛隊であるグラウサム・ヴァルキリエ隊も一緒のようだ。

「筋肉女…!貴様何度言ったらそのふざけた呼び方を改めるつもりだ…!?ヘマをした枢木卿の代わりに突如スマイラス討伐任務に呼ばれてその帰りにこの任務も受けさせられただけだ。」

 そんな訳で私はルッキー達と共にE.U.を後にし、ブリタニア本国へと帰還した。




マーヤが亡国のアキト編で収穫したものは以下の通りです。
・リョウ ユキヤ アヤノ
・マッスルデバイス(ランドル博士)
・アレクサンダ
・ヴェルキンゲトリクス

ランドル博士の旦那さんが復活した理由?筋肉です。文句は…ないよな?(殴打)

BRSとか時空の管理者とかあの辺は基本的にカットしているのでアシュレイワープは行っていません。代わりにナイフペロペロ吸血鬼さんがスマイラス将軍を殺害したことになっています。
多分「命を飛び散らせろォ!」したんでしょうね。
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