TURN01′
今回のE.U.攻略の任務について、私は報告のために皇帝陛下のもとを訪れて居た。
「ナイトオブツーよ…潜入任務ぅ…ご苦労で、あったァ」
「もったいなきお言葉です。皇帝陛下。」
「貴様の働きによりィ…ユーロブリタニアの立て直しまでE.U.が攻めてくると言うことも、無くなったであろう…ワシは成果を上げた者をォ…正当に評価する、主義だ…貴様が望むゥ…褒美を、やろう。」
私が望む褒美…。それなら…。
「裏切り者のシン ヒュウガ シャイングが所有していたヴェルキンゲトリクス…あのナイトメアを私に頂けないでしょうか。」
「…あんなガラクタを、なぜ欲するゥ?」
確かに今はヴァイスヴォルフ城攻防戦により破損してしまっているが、完全に壊れたわけではない。それに、元々は元ナイトオブツーであるマンフレディ卿の機体だったのだ。少なからず思い入れがある。
「まぁ、良い…貴様の望んだ褒美だァ…好きするがァ…良い。それと、貴様の連れてきたイレブン共もォ…貴様が好きにしろ。」
「イエス ユア マジェスティ」
皇帝陛下への報告を終えると、ようやくそこでスザクと会うことが出来た。たまに通信による連絡はできて居たが、こうして会うのは実に久しぶりである。
「やぁ、マーヤ…ごめんよ。ヘマをしてしまったから合流地点にも行けなかったんだ。」
「それは別に良いんだけど…いくらゼロへの対応があったからって言ってあんなに長い間連絡を寄越さないのはどうなの?」
「ゼロへの対応…?」
「ほら、あの…世界解放戦線の奴、あれってゼロでしょ?それにしてもシン ヒュウガ シャイングがゼロと協力してたなんて厄介よね。」
私の発言に何故かスザクは困惑したような表情を浮かべている…何か変なことを言っただろうか?
「…マーヤはゼロの正体を知ってるんだっけ?」
「何言ってるの?知らないわよ?スザクが教えてくれないから知らないままなんじゃない。」
「だ、だよね。…あぁ、そういうことか…。」
またまた不思議な事にスザクは一人で納得したような表情をしている…勝手に一人で解決しないで欲しいものだ。
「ちょっと、スザク?」
「あぁ、ごめんごめん…。悪かったよマーヤ、僕もマッスルガイ卿もゼロを捕まえるのに手一杯でさ。でもお陰で無事に捕まえれたんだ。」
なんと、逃走したままのゼロという私の懸念はマッスルガイさんとスザクによって解決していたらしい。流石はマッスルガイさんとスザクだ。伊達に筋肉を鍛えて居ないということらしい。
「そういえばマッスルガイさんは?一応任務が終わったことだし挨拶しておきたいんだけど…」
「あー…彼は…殉職したんだ。」
「えっ!?殉職!?」
「う、うん…ゼロとの壮絶な殴り合いでね…」
なんということだ。あのマッスルガイさんを殴り合いで殺してしまうとは…やはりゼロは恐るべき悪の筋肉の持ち主ということだろう。
「因みにマッスルガイさんはどんな最期を…?」
「えーっと…ぼ、僕を庇って腹部を貫かれたんだ。」
「腹部を!?」
やはりマッスルガイさんとスザクは仲良くなって居たらしい。しかし、友人を助けるためにその身を犠牲にするとは…マッスルガイさんはなんと立派なマッスルガイなのだろう!名前がマッスルガイなだけはあるということか…。
「…そうか!マッスルガイさんはわざと自分の腹部を貫かせた上で筋肉によって腕を固定して逃げられないようにしたのね!」
「う、うん。テロリストを絶対に許さないが為の勇敢な最期だったよ…」
聞けば聞くほど惜しい人を無くしたと思えてしまう。しかし、己の責務を全うせんとする姿勢は見習わなければ。
「そういえばスザクはこの後の任務どうなってるの?私は一度エリア11に戻れる事になったんだけど」
「僕はまだ戻れなそうかな。でもこっちに居る間はナナリーと過ごすつもりだよ。」
「ナナリー皇女殿下…確か、幼い頃に日本へ留学していてスザクと交友のあった方だったっけ?」
「…うん、そうなんだ。」
目も見えず足も不自由だと聞いている。…それにしても皇族相手に呼び捨てが許されているとは随分と仲が良いようだ。
「もしエリア11に戻って来れそうなら連絡してよね。」
「…うん。そうだ、生徒会のみんなによろしく」
「えぇ、伝えておくわ」
シャーリーからの連絡ではミレイ会長は一部の単位がお見合い絡みの関係で取れて居なかったらしく留年しており、生徒会長を続行しているらしい。リヴァルは相変わらずだらしなく、ルルーシュは度々弟のロロを巻き込んで賭け事に行ってしまうとか。良くも悪くも昔のままということね。
皇帝陛下曰く、私は暫くエリア11に滞在し、治安の維持に努めよとのことだった。エリア11は中華連邦に近いこともあり、重要なエリアである為の措置だろう。幸いな事にエリア11にいるのであれば基本的に自由行動とのことで学園への復学も許された。…まぁ、嫌な授業はサボるけどね。
E.U.から連れてきたリョウ、ユキヤ、アヤノは私の直属の親衛隊員とは言え、B.U.に居た日本人…つまり敵国から連れてきた他国人ということもあり、しばらくの間本国にて検査があるらしい。とは言え、ナイトオブラウンズである私が身元保証人なので最低限らしいが。また、私が回収したヴェルキンゲトリクスの改修も終わって居ない。ロイドさん達はランスロット関連や量産機のこともある為忙しいようで無理をさせるが…まぁロイドさんなんかは喜んで仕事をして居そうだ。
私がエリア11に戻って真っ先に向かったのはアッシュフォード学園、復学する事は事前に伝えてあるし、今日はもう授業は終わっている時間なので向かう先は一つしかない。生徒会室だ。
「みんな、ただいま」
扉を開けて挨拶をしつつサイドチェストを決める。
「おかえりマーヤ!」
最初に反応してくれたのはミレイ会長…というか会長以外いなかった。
「みんな今日は不在ですか?」
「そうなの!シャーリーは水泳部、リヴァルはアルバイト、ルルーシュとロロは賭け事なのよ。せっかくマーヤが帰ってきたのにねぇ」
少し残念だが、まぁこういうこともあるだろう。
「って訳で!はい。」
?なんだろう、この書類の束。というか山…いや、タワー?天井にまで届きそうである。
「これね、明日までの部活の予算の申請書類。」
「…え?」
なんで?なんでそんなものがこんなに残ってるの?
「お願いマーヤ!手伝って!!」
さっきまでのニコニコ顔が必死そうなものに変化し、ミレイ会長は私の腕にしがみついてきた。
「二人でこの量をやるんですか!?今まで何してたんですか!」
「ごめーん!なんか忘れちゃってたの!」
忘れちゃってたって…そんな大事なことを忘れるなんておかしいよ…。とは言え、やらざるを得ない…。
「分かりました。やりましょう…。…せめてシャーリーは呼べません?」
そしてなんとかシャーリーを水泳部から無理やり誘拐することができ、生徒会の仕事を手伝ってもらい、処理し切ることができた。
「ありがとう二人とも」
「会長…せめてもう1日早く思い出してください…」
急いで誘拐してきた為、未だにスクール水着に私の上着という、ギリギリなファッションのシャーリーが口を尖らせながら文句を垂れると流石のミレイ会長も苦笑いで誤魔化すしかないようだった。
「でも会長だけならともかく、シャーリーもこんな大事な書類仕事の締切日に水泳部行ってるんて珍しいね?」
シャーリーは掛け持ちではあるが、基本的には生徒会の仕事がある日はそちらを優先している。よくよく思えば妙なものである。
「まぁいいじゃない、終わったんだから」
「それもそっか」
そして私は生徒会室を出て2人と分かれた。そろそろ帰ろうと校門に向かっていると、校門から近づいてくる二つの巨大な影が見える。あのシルエットはルルーシュとロロだろう。
「マーヤサン!こちらに帰ってたんですネ!」
「久しぶりだな。…ってなんか顔が疲れてるぞ?大丈夫か?」
「誰かさんが賭け事に興じてる間に私は明日までの部活の予算の申請書類と格闘してたのよ…」
わざと恨みを込めて目を細めて言ってみる。ロロは困ったような顔をしているが、ルルーシュは予想通りというべきか、どこ吹く風と言った様子だった。2人と分かれて向かう先は家ではなく政庁。…私は政庁にも用があるのだ。
「こちらです。」
案内された政庁の一室、3つの扉で厳重に封鎖されたそこで私は部屋の主と対峙した。
「お久しぶりですねマーヤ。」
「お久しぶりです。ユフィ執行官。」
現在、ユフィはユーフェミア リ ブリタニアの名を捨ててユフィ タダノとしてイレブン専用の死刑執行官になっているらしい。これはゼロが掛けたギアスのせいであり、コーネリア皇女殿下は現在ギアスの呪いを解く為に奔走中である。
「お茶でもいかがですか?せっかく久しぶりの再会なのですからゆっくりしたいってくださいな。」
そう言いながらお茶を準備することユフィを私は扉の前で黙って見つめる。次の瞬間、ポッドが飛んできた為、弾くとその一瞬の隙にユフィの姿が見えなくなって居た。直様その場を右に避けると私の右横腹に拳が突き刺さる。…読み違えたか。
「あはっ!良い感触です!」
だが、たまの一撃が横腹に刺さったくらいで喜んでいるようではまだまだだ。私は弾いておいたポッドをキャッチし、ユフィを思い切りポッドで殴り付ける。
「お返しよユフィ!!」
「ぐぅ…!」
そしてポッドをガードするのに夢中になった為に疎かになった脚部に脚払いを仕掛けると、ユフィはステップで回避するが、私は思い切り振りかぶった拳をユフィの顔面に叩き込まんと振るう。
「この距離…ギリギリ当たりませんよマーヤ!」
「それは…どうかしら!」
私は腕の筋肉を操作し、関節を外す事でパンチのリーチを伸ばした。関節を外す際に発生する激痛は気合いで和らげると、拳は的確にユフィの顔面を捉える。
「ふんッ!!」
「くぅっ!?」
ぶっ飛んだユフィを追いかけてその足を掴み、両脇に抱えてのジャイアントスイング、このまま凄まじい遠心力をかけつつユフィの頭部を壁に叩き付ける。流石のユフィもこれには気絶したらしく、今日の手合わせは終了となった。
ユフィにかけられた『日本人を殴り殺す』という呪いにより、ユフィは定期的に死刑執行官として日本人を撲殺するか、ハーフである私か、スザク等の日本人が本気で手合わせしてねじ伏せないと暴走状態に陥る。その為、本来ならば一斉に執行して然るべき黒の騎士団の団員に対する死刑執行は私とスザクの両名が不在となる今回のE.U.攻略作戦終了までかなり延期されていた。逆に言えば私とスザクさえいれば日本人の社会を遅らせる理由もない為、恐らく数日の後に大規模な死刑執行命令がなされる事だろう。
一仕事終えた私は久方ぶりにクラリスさんの待つ私の家に帰る。ドアを開けて靴を見るとどうやらクラリスさんはもう帰ってきているようだ。
「ただいま。クラリスさん」
「マーヤ!お仕事お疲れ様…無事に帰ってきてくれて嬉しいわ」
駆け寄ってきてそのまま抱きついてくるクラリスさんを受け止め、そのまま抱き返す。こうしてクラリスさんと過ごしていると、やはりここが私の帰る家なのだと思わされた。
それからクラリスさんの作る料理を一緒に食べ…るが、突然の帰宅であった為量は一人分であった。
「ふふ、流石に量が足りないわね」
「クラリスさん元々少食だもんね。それに二人で分けたら足りるわけないよ」
そんな他愛のない事に笑い合い、冷蔵の中を確認して二人で再度晩御飯を作る。家族とはこういうものなのだろう。
…私は私のお母さんの料理もこうやって手伝いをしたことはあったのだろうか?…やはり過去のことは思い出せなかった。
再度食卓につき再び食事を行う中で私は私の秘密について覚悟を決めた。ハーフであると私はユフィに告げることができた。そしてE.U.ではレイア達に自らがスパイだと最後の最後に打ち明けることができた。…今の私なら、きっとどんな秘密も受け止められるはずだ。
「ねぇ、クラリスさん。お願いがあるんだけど」
「…?なぁに、マーヤ?」
「ずっと、クラリスさんが守ってきてくれてた秘密を…聞かせて欲しいの。」
私が告げると、クラリスさんは目を見開き、ゆっくりとフォークを置いた。10秒くらい目を瞑って居たクラリスさんが再び目を開けると、ゆっくりと私のことを見てくる。
「…本当に、良いのね?」
「ええ。」
「…分かったわ。」
実はクラリスさんが本当は姉だなどと言われても私は驚いたりはしないだろう。それくらい今の私には十分な覚悟がある。
「マーヤ、貴方はね…貴方は…本当はね…」
そこでクラリスさんは再度目を瞑り、再び目を開けた。
「ハーフでは、ないの。」
ミレイ会長というか、生徒会メンバーが予算書類を忘れてたのは皇帝ギアスのせいだったりする。