「マーヤ、貴方はね…貴方は…本当はね…ハーフでは、ないの。」
「…は…?」
クラリスさんが何を言っているのか、私にはわからなかった。
「だって…私のお母さんはブリタニア人で…お父さんは日本人…」
「…貴方は…貴方のお母さんがブリタニア本国から連れてきた連れ子なの…。貴方のお父さんが誰なのかは私も知らないわ…」
そんな…だって、だって私は…。ハーフで…ハーフ…だから…。
「…じゃあ、私は今まで何のために…?」
私は自分がハーフだと思っていた。だからこそ、ゲットーに行って…陽菜達に自己満足の施しをしてきた…。ハーフだから…
「…だから、言えなかったの。あ、貴方の行動を見ているうちに…!」
呼吸が荒くなるのを自分でも感じる。クラリスさんが秘密にすべきだと考えた理由にも納得がいく…。…思えば、かつてカレンがハーフだとしるキッカケになった中学からの成績証明…。同じハーフであるならばあのタイミングで発覚してもおかしくはないのだ。それを私は運良くバレなかっただけだと思って居たが…そもそもハーフでないのならバレるもクソもない。
「最初から私は…?なら、なら一体…一体今まで私は何のために…」
私は窓を開け、風を身に浴びる。やはり夜風に当たっても気分転換にはならないようだ。…ここ、10階なのよね。
「クラリスさん、行ってきます。」
「待ってッ!!」
クラリスさんの叫び声を無視し、私は手摺を飛び越えて重力に身を任せる。
そのまま直立不動のまま地面に突撃するが地面に穴が開くだけで私は死にはしなかった。生きる意味もなく、死ぬこともできない、醜いな…私は。
結局その後は普通に階段で10階まで戻り、クラリスさんと言葉を交わすこともなく眠りについた。
次の日、学園に向かい授業を受ける。ブリタニアの歴史、普通に受けるのは久し振り…いや、初めてかもしれない。
授業が終わってもそのまま座っていると、シャーリーが話しかけてきた。
「ねぇ、マーヤ」
「うん?どうしたのシャーリー。あ、ノート見る?私自信あるよ?」
久しく真面目に受ける授業ではあるが、私の筋肉をフルに活用すればリアルタイムで板書し、先生の話を全て記録し、要約して要点を絞り込むことができるのだ。しかし、シャーリーは首を横に振った。…まぁ、シャーリーは授業を真面目に受けるタイプだから板書はしてるか…
「…何か、あったのかなって。…マーヤが歴史の授業を真面目に受けてるの初めて見たから…。それに筋肉のキレも悪そうだし」
「…そうかな」
「そうだよ。」
作り笑いで誤魔化そうとするが、シャーリーは不安そうな顔をしている。まぁ、もう秘密にするほどのことでも無いか。
「屋上に来て。全部話すから」
シャーリーを連れて屋上に向かい、屋上にたどり着くと私は空気椅子に腰を掛ける。
「シャーリーも座ったら?」
「…私はいいかな。スカート汚れちゃうし」
「そう?…私ね、実は日本人とブリタニア人のハーフ…」
「えっ!?マーヤがハーフ!?」
予測通り驚くシャーリーだが、私の話は終わっていない。
「ってずっと思ってたの。」
「…思ってた?」
「そう。だから歴史の授業は嫌いだったし、ゲットーで日本人の子供たちの世話もしてた、ハーフだと思ってたからクラリスさんとも喧嘩した。でもね、全部私の勘違いだったみたい。」
「そうなんだ…。でも、マーヤがハーフでもハーフじゃなくても…そんなのどっちでもいいじゃない。」
…どっちでも良い…?
「だってマーヤはマーヤだもの。今は…ナイトオブラウンズなんて凄いお仕事してるけど…。マーヤはクラスメイトで、同じ生徒会のメンバーで、私の友達だよ?」
友達…。レイラだって私がスパイで…裏切り者だったとしても友達と言ってくれた…。
「それに、マーヤがこれまでやってきたことが無くなるわけじゃないだもの」
「…!」
そうだ、レイラだって言ってくれたではないか。『マーヤが命懸けで戦ってきたことは知っている』と。それが自分の自己満足の為だったとしても、陽菜達と過ごして来たことに変わりはないはずだ。
仮に人を殴る為に鍛えた筋肉でも、魅せる為に鍛えた筋肉でも、守る為に鍛えた筋肉でも、あの日崩れ落ちる瓦礫から陽菜達を救えたことには変わりはない。その意図はどうにせよ、してきたことには変わりはない。
「ありがとうシャーリー。なんか…吹っ切れたわ!」
「あ、なんかキレが戻ったね?ふふ、良かった」
それからシャーリーと二人で屋上を離れ、廊下を歩きつつE.U.での思い出話をしているとヴィレッタ先生が何かを探す様に走っているのが見えた。
「あれ?ヴィレッタ先生、何してるんです?」
「あー…シャーリーにディゼルか…いや、ルルーシュの奴を見なかったか?」
「すみません、見てないです先生」
「そうか…クソ、なんで私がこんなことを…」
そう言ってヴィレッタ先生が走り抜けていく。先生も大変そうだなぁ。
次の日、今日も真面目に授業を受け、帰ろうと廊下を歩いていると前方にルルーシュが見えた。ふむ、昨日のこともあるし少し話しかけてみるか。
「ルルーシュ、昨日ヴィレッタ先生が探してたけど、何かしたの?」
「ん?あぁ…何かしたというか、なにもしてないからというか」
うん?なんだか要領を得ないなぁ…。すると、廊下の向こうからヴィレッタ先生がこちらに駆けてくる。
「ルルーシュ!」
すると、私の横のルルーシュはすぐさま踵を返して走り出した。流石はルルーシュ、凄まじい反応速度とスタートダッシュだ。
「またですか、粘り強く根気のある人は男女問わず嫌いじゃ無いですが…しつこいですよ」
「もう逃がさないぞ!…ディゼル!頼む、ルルーシュを捕まえてくれ!補習を受けさせなくちゃいけないんだ!」
補習を…あぁ、確かに何かをしたというわけではなく、何もしてないから終われてるのか。
「先生、体力勝負を持ちかけた時点で先生の負け…って、マーヤ!?卑怯ですよ先生!他の人を巻き込むなんて!それにマーヤもマーヤだ、俺達生徒会の仲間だろ?」
「ごめんなさいルルーシュ!先生からの命令だからね!」
「顔が笑ってるじゃないか」
バレたか、今の私がルルーシュにどれだけ通用するか…試してみたいと思っていたのだ。
流石にスタートで出遅れたためか、走れども走れどもルルーシュの背中は大きくならない。流石ね…!
「二人ともー!頑張れー!」
ミレイ会長がルルーシュに何かを投げて渡した…しめた!今のでスピードが少しだけ緩んだ…!
「マーヤ…これだけの速度を出してなお振り切れないとは…!」
「逃がさない!」
するとルルーシュは廊下の窓を突き破って外に出て行った。
「待ちなさい!」
そして私も後に続き破れた窓から外に飛び出る…が、落ちる瞬間、窓枠にぶら下がっているルルーシュを見つけた。
「やられた…!?」
「残念だったなマーヤ。純粋な体力勝負に捉われたお前の負けだ」
ルルーシュはそのまま壁を登って屋上に…。くそ、コレじゃもう追いつかない…!
「ディゼル!ルルーシュは!?」
「すみません、逃げられました」
「ディゼルでもダメか…」
うーむ、やはりルルーシュはただのマッスルガイではなく、頭脳もマッスルガイと言うことがよく分かった。思えばいつも出し抜かれてばかりだ。
そんなことを思っていると、携帯に連絡が入る。クラリスさんかな?
「…あれ、ギルバートGPギルフォードさんからだ。…もしもし?」
『マーヤくんか?まだ学園だっただろうか?突然の連絡すまない。』
「いえ、もう授業は終わりましたから。…何か用ですか?」
正直言って余り絡みのない相手だけど…どうしたのだろう?
『ユーフェミ…じゃなくて、ユフィ執行官が壁を破壊して脱獄及び逃走した。現在我々も行方を追っているが見つからず…』
「ユフィが!?私も探してみます!」
『すまないが宜しく頼む。』
壁を破壊しての脱獄とは…流石はユフィ、大胆なことをするわね…でも、探してみるとは言ったが手がかりはない…どうしたものか。
すると、再び携帯に連絡が入った。こんな時に…もしかしてユフィかとも思ったが、別の人物からであった。
『もしもし?マーヤ?僕だよ。』
「ユキヤ?どうしたの急に」
『マーヤの部下ってことで身元も保証されたし、携帯端末も貰えたからさ、僕らの声も聞きたいだろうと思って連絡したんだけど…迷惑だった?』
ユキヤは捻くれ者に見れるのだが、実を言うとかなり身内には甘い。どうやら私もその身内入りしたらしいがそんな律儀に連絡なんてしなくても…いや、待てよ…?
「ねぇ、ユキヤ。早速頼み事があるんだけどいい?」
『えっ、いきなり…?』
「今ね、ユフィ特別死刑執行官が逃走中なんだけど、居場所を特定したいの。何か手はない?」
ダメ元でお願いしてみると、ユキヤは少しだけ悩む様にして再び声を出した。
『ユフィ特別死刑執行官…あった。うわ…日本人を撲殺で…?メディア露出も多いし、外見特徴も…うん、多分行けると思うよ。SNSで関連する発信と位置情報を利用すれば…あった!えっと、バベルタワー…ってところに向かってるみたいだ。』
流石はネットのマッスルガイ…こんな短時間で手がかりを得られるとは…!
「ありがとうユキヤ!リョウとアヤノにも宜しく言っておいて!」
私はユキヤとの通信を終えるとバベルタワーに向かって走り出した。
バベルタワーに到着したのであとは各階を調べて回るだけだ。いくつかのフロアを走って調べるものの残念ながらユフィの姿はない。
「次はここね。」
入り口を何故か屈強な男が守っている…怪しいわね。でもことを荒立ててユフィに逃げられるわけにもいかない。幸い相手は男だ。ここはお得意の色仕掛けでいこう…!
「あの〜…」
「招待状はお持ちですか?」
「ううん、私持ってないです…。でも、入れて欲しいな〜って…」
いつもの上目遣いによる色仕掛け、これで落ちなかった男はいないわ…!
「お引き取り下さい」
なっ…!?私の色仕掛けが…!?ますます怪しいわね…こうなったら
「私はナイトオブツーのマーヤ ディゼルよ。今からこのフロアを強制捜査するわ!ガッデム!!」
「なっ、ナイトオブラウンズ!?いきなり何を…うわっ!!」
私が扉を蹴破ると、中はどうやら賭場の様だ。…うーむ、人が多いわね。
「お、お客様。困りますねぇ扉を蹴破られては…」
「すみません、ユフィ特別死刑執行官がこちらにきてると思うのですが」
「話を逸らされては困ります。弁償していただかないと」
…生憎そんな待ち合わせは無い…が、こちらはナイトオブラウンズ!弁償の必要はないわ!
「捜査の邪魔よ!」
阻む男を張り倒し私は中へと進む。すると、フロア内に吹き抜けの部分があることに気がついた。
『誰かこいつを止めてくれ!謎の仮面女闘士、既に10連勝中!マスク ド ユフィー!!』
あれは…ユフィ!?なんと言うことだ。ユフィが闘技場の様なところで男の人をボコボコに殴っている…!なんとかして連れ出さないと…!しかしどうやって…
「お前がここで暴れてるって女か。丁度いい、試合前のウォーミングアッ…」
「うるさい!」
私の思考を邪魔した男の股間に蹴りを叩き込む。…しまった、やりすぎた…?
「ちょっとちょっと!あんた困るよ!コイツは今から闘技場に出る予定の選手だったんだ!一試合でどれだけの金が動くと思ってる!」
「え、あ、すみません」
「弁償してもらうよ弁償!…ってあんたよく見たらすごい身体だね…決めた!あんたがコイツの代わりに出場しな!」
呆然とする私をよそに凄まじいスピードで話が進められている…気がつくと私は正体がわからない様にダサい仮面とスーツとマントを着せられ、控室にて出番を待っていた。
「…どうしてこんなことに?」
というかこの私の衣装デザイン…なんだかゼロに似てるような…?
『会場に御来場の皆様、お待たせ致しました。続いての試合です。』
私の出番が来た様なので私も闘技場に足を踏み入れる。
『今度こそマスク ド ユフィを止められるか!?』
私は事前に言われていたポーズ…そう、ダブルバイセップスを披露する。会場は凄い賑わいだ…しかしこんなゼロ紛いの格好で戦う羽目になるなんて…
『こちらも謎の仮面闘士…ツーの登場です!!』
マーヤはハーフではないため、たこ焼きなどの日本食文化に地味に疎かったんですね〜
ミートギアスは原作準拠、今回も忠実に原作を無視していきます()