ふと気がつくと、先程まで寂れた…古い遺跡に居たはずなのに空に浮かぶ謎の空間に私は立っていた。
「ここは…神殿…?」
「神殿…まぁ確かにそんな見た目だよね。でも違うよ、ここはね…武器」
武器…?私は周りを見渡し、この空間にあるものを観察する。階段状の浮遊する板、神殿らしい柱、そして神殿本殿らしき屋根のある建物…なるほど
「確かにあの柱を振り回せば武器にはなりそうだけど」
「あぁ、うん、物理じゃないんだよ…。これはね、神を殺すための武器なんだ。」
「神を…殺す?」
神とは…神様のこのだろうか?それとも…。いや、まぁこの年頃の子供はこういう秘密基地でこういう事を考えるものだろう。
「そう言えばなんで私をここに?」
「うん、ここは中継地点でね。連れていきたい場所は別にあるから」
なるほど、ここはV.V.くんの秘密基地の入り口らしい。
「次はどんなところにエスコートしてくれるのかな?」
「ふふ、きっと喜んでくれると思うよ」
「ふーん?それは楽しみ」
再び景色が変わったかと思うと、オレンジ色の溶液に浸されたジェレミアさんが見える。
「ジェレミアさん!?」
「安心して?命には別状ないんだ。紆余曲折あってね、今は僕が面倒を見てるんだ。」
命に別状はないと言われても今のジェレミアさんの肉体には何か様々な機械が取り付けられている。それに顔面も3分の1は機械が付けられているように見える。
「ふふ…」
「…V.V.くん、君は一体…」
「そんなことはどうでも良いじゃない。わざわざ君にあんな遠回りでここに来れる方法を教えたのはね、もしも僕がピンチになったら君に助けてもらおうと思ってるからなんだ。」
ジェレミアさんを助けて貰っている訳だし、V.V.くんは私の友達だ。まだ子供で非力な彼がピンチになることがあるのならば私もこの筋肉を振るおうと思った。
「うん、分かったわ。約束する。」
「ありがとうマーヤ。じゃあこれは契約だね。」
約束だと思うのだが…まぁ、子供って難しい言葉を使いたがるものね。私は微笑んでV.V.くんの手を優しく握る。
「うん、契約する。」
「必ず守ってね…ふふ…」
彼の手を握った瞬間、私の頭に衝撃が走り、脳内に何かイメージが映し出された。
「うぅ…これは…!?」
二つの…惑星、沢山の少女たち、それに…
「大丈夫、それは君にとって害のあるものじゃないから。これまでだってそうだったろう…?」
気がつくと私は神根島の…不思議な模様の壁の前に倒れていた。なんだか変な夢を見ていた気分だ。…V.V.くんは…もう帰ったのだろうか?
学園に戻る途中、シャーリーから連絡が入った。
「もしもしシャーリー?」
『もしもしじゃないよマーヤ!また学校サボったでしょ!それに今日はルルとロロの生還記念パーティーって言ったじゃん!料理準備するの大変だったんだよ!?』
「ごめんごめん、私も仕事の用事があって」
正確には仕事ではないが、まぁこう言っておけばシャーリーには誤魔化しが効くだろう。
学園に戻り、生徒会室に入ると空気椅子に座り足を組んでPCを操作するルルーシュと弟のロロを見つけた。
「二人とも何見てるの?」
「マーヤさん、今ブラザーと写真データの整理をしてるんデス」
「そういうこと。見ろよこれ、失恋コンテストって言うんだ。皮肉だよなぁ、優勝したリヴァルにトロフィーを渡すのが会長なんてさ」
3人揃ってHAHAHAと笑っていると、ロロが唐突に話を変えた。
「よく逃げ出せタネ。バベルタワーは軍に完全に包囲されていたのに、ブラザーはどうやって包囲網を突破したんダイ?」
「うん?おかしなことを言うなロロは。それを言うならどうやってテロリストから逃げたか、だろ?立ち塞がるテロリストどもを全員拳で黙らせただけだよ。ピストルの弾なんて俺には効かないし…お前にも連絡しようとしたんだけど、ジャミングが酷くてな」
そんな兄弟の話題に水を差すのも気が引けたが、一つ疑問があるので私もロロに質問するとしよう。
「ねぇ、ロロってなんで途中から私とはぐれたの?」
「あー…それは…実はボク、方向音痴なんデス」
「そっか、なら仕方ないわね」
方向音痴ならはぐれても仕方ない。…いや、おかしくない?
「待って、私の後を追うのに方向は関係なく無い?」
「えー…あぁっと…ま、マーヤさんの背中を見ていたらやっぱりブラザーが心配になって…それで探しに行こうと戻ったんデス」
なんだ、それならおかしくないわね。
「それなら声をかけてくれればよかったのに。」
「そうだぞロロ。たまには他人を頼れ。」
「オーケーブラザー」
そんなルルーシュのお兄さん風に私は少し笑ってしまった。
「何がおかしいんだマーヤ」
「いや、ルルーシュってちゃんとお兄ちゃんなんだなって思って」
「…あぁ、そうだよ。俺は…兄なんだ。」
その時、ふとロロの携帯に受けられたロケットが目に入った。…ハート型?
「…ねぇ、ロロ。そのロケットって」
「…?これは…ブラザーがくれた大切な物なんデス。ボクの誕生日にくれタ…」
そう言って目を細めるロロを見ていると先程まで『男にハートのロケットなんておかしい』と言おうとした自分が恥ずかしくなる。
「そう。素敵な…大事な物なのね」
「イエス!これは…ボクの物デス!大切なボクの宝物デス!!」
贈ったものをこれだけ大切にしてもらえているのだから贈ったルルーシュもさぞご満悦だろうと顔を見ると、何故か難しい顔をしていた。一体、どうして…?
そして次の日、ギルバートGPギルフォードさんに呼び出された私はある決断を迫られることになる。
「…黒の騎士団員の一斉処刑ねぇ…」
「はい。総領事館に逃げ込んだゼロを誘き寄せるための罠です。…自分もこんなことはしたくは有りませんが、ゼロが出て来れば拘束し、こなければ奇跡の起こせないゼロとして信用を失うかと」
その為の大量処刑…それを全てユフィの拳にやらせるとなると非常に気分が重い。とは言え、丸投げしたのは私である。…責任は取らないとね。
「わかったわ。ナイトオブツーのマーヤ ディゼルが承認します。…処刑した後はキチンと弔う事だけは徹底して」
「イエスマイロード!」
私にやれることはそれくらいだ。私はできるだけメディア露出を控えている為、後のことはギルバートGPギルフォードさんに任せ、私は計画の確認作業に入った。
「…ユフィ専用のグロースターね。」
あれだけの人数を処刑する為に用意された機体、既に何度か使用されているためか拳には…色々と付着している。スペックを見るとただのグロースターではなく、かなり実用的にチューンナップされているようだ。装甲は薄いがその分機動力が高い上、殴る事に特化している。私の専用ナイトメアは間に合わないので空いているナイトポリスでも借りて会場警備を立ち会うとしよう。メディア露出を控えるため当日の段取りもギルバートGPギルフォードさんに任せてある。
「ディゼル卿、ショッピングモールにて爆破予告が!」
このタイミングで…?ゼロが何か準備のための仕掛けをしているのだろうか?ゼロの目的の一つに皇族への復讐がある。…今このエリアにいるのはユフィだけだけど、彼女は既にゼロによって精神を破壊された後だ。ならば黒の騎士団員の解放が目当て…ここで本当にショッピングモールの爆破を行えば二度と支持は得られないだろう。
「ショッピングモールの爆弾は恐らくブラフだ!但し万が一を考え利用客を直ちに避難させるように!残りの人員は全力で処刑予定の黒の騎士団員達の見張りを行いなさい!絶対にゼロを接触させるな!」
「「「イエスマイロード!」」」
結果として、やはり爆弾はブラフであったらしく、ゼロの本命であろう黒の騎士団員への接触も厳重な警備で防いだ。
「…しかし、何か引っかかるわ」
「何がでしょうか」
「何かはわからないの…でも、本物のゼロだとするならば私は必ず出し抜かれている…そんな気がしてならないの」
「考えすぎでは?今回の奴の囮である爆破テロを見抜き、警備を厳重にしたことで奴は完全に救出の手立てを失ったかと」
そうなら良いのだが…
こうして、黒の騎士団員の一斉処刑が開始される時刻となった。ゼロは現れ無いようだ。
『イレブン達よ!お前達の信じたゼロは現れなかった!あの筋肉以外全てはまやかし。奴は私の望んだ正々堂々の勝負から逃げたのだ。それではユフィ執行官、よろしくお願いします』
『撲殺です!日本人は全員撲殺です!今日はグロースターで撲殺です!』
張り切るユフィだったが、それにはすぐさま待ったが掛かった。
『待て!間違っているぞギルバートGPギルフォード!お前たちが処刑しようとしているのはテロリストでは無い…我が合衆国日本の国民たちだ!』
なるほど、後ろに回ったのか。私はすぐにユフィに通信を入れた。
「ユフィ、処刑は一時中断よ。」
『そんな…残念です』
だがゼロはここからどうするつもりなのだろう?状況は既に決定的、ゼロは単騎な上にこちらは多数、総領事館に控える部隊もこちらに干渉するには位置が低すぎる。…低すぎる?何か引っかかる…。思い出せ、今までのゼロの手口を…!ナリタ…ブラックリベリオン…。
「…!まさか!」
『ならば私はこの拳で闘う』
ゼロのナイトメアがナックルガードを展開している。対してギルバートGPギルフォードさんは武装を外し、槍のみになっている。これは罠だ!
「総員退避!ゼロは足場を崩す策をとるはずよ!!総員今すぐ…」
『まさかコチラの策が見抜かれているとはな。肉を切らせて骨を断つ!!』
何故今そんな諺を…いや、違う!
「早く退避しろ!!足場が崩れるぞ!!」
叫ぶ私の忠告も虚しく、殆どの兵が足場崩しの混乱に巻き込まれ撃破されている。ギルバートGPギルフォードさんのグロースターもゼロに不意を打たれて破壊されているようだ。いけない…!みすみすここで逃げられては…!
「ユフィ!出番よ!予定通り黒の騎士団員の処刑を!」
『任せてくださいマーヤ。…撲殺です!!』
よし、ユフィに任せておけば大丈夫だろう、後はコチラだ…!
「ゼロ!マッスルガイさんの仇ィ!!」
『まさか…これに乗って居るのは!?』
ナイトポリスのシールドでタックルをかまし、ゼロのグラスゴーもどきを吹き飛ばす。
『この戦い方…やはり貴様か!マーヤ ディゼル!!』
「あら、私のこと覚えててくれたのかしら?嬉しいわ!」
足場が崩れ、斜面となった地面を滑り落ちつつ私はゼロと対峙する。私の事を脅威と見てくれて居るとは光栄!だが、当然手加減などしない!
ナイトポリスが格納して居る武器にナイフがある。それを取り出し、シールドの裏に隠しつつしっかりと構える。
『クソ…邪魔をするな!』
「平和の邪魔をしているのはあなたの方よ!」
私はナイフを投擲した。しかし…
『マーヤ ディゼル!貴様の類稀な投擲センスは私もよく知っている!』
「そう、ならこれはどうかしら!」
私はすぐさま取り出したピストルを放った。
『この程度!』
ナックルガードで弾いたか、流石ね…!しかし、そこで邪魔が入った。
『ゼロは私が守る…!』
この赤いナイトメア…まさかカレンが黒の騎士団員だったなんて聞いた時は驚いたけど…残念だわ。
「カレン!今なら私の友達として減刑くらいはしてあげられるわ!」
事前情報であの右手には注意を払う必要があることを私も知っている。しっかりと十分な距離を取りつつ、ピストルの残弾数を確認しつつ盾でコチラの動きを隠しながら周囲を確認する。…ゼロの機体はキンニク卿のヴィンセントが追ってくれているようだ。私はジリジリと距離を詰めるとカレンのナイトメアが一気に踏み込んできた。
『はっ!お生憎様!それだけの筋肉がありながらブリタニアに尻尾を振る弱虫がァ!』
右手による攻撃…!きっとカレンはこう思うだろう、後ろに下がって距離を取ろうとする…と、だが甘い!右の大振りに対して私は踏み込んで距離をさらに詰める!シールドでタックルをかまし、突き飛ばした。
『舐めるなァ!!』
なっ!?この奇襲を受けて尚攻撃を…しまった、胴体を掴まれたッ…!?
『弾けて飛び散れ!!マーヤッ!!!』