結論から言うと、修学旅行には行けなかった。
「…そんなに拗ねないでよマーヤ、僕だって学園生活の思い出は残したいよ?」
「だったら…」
「でもゼロを…黒の騎士団が潜伏してるのに、総督を放って行くわけにはいかないよ。」
そんなぁ…。こうなったらスザクに色仕掛けを…
「…そんなに睨んでもダメなものはダメだよ」
くっ…!やはり朴念仁のスザクに色仕掛けは通用しないか…!
「…って事なの。ごめんねシャーリー」
一緒に周ろうと約束したのだが、シャーリーとの約束を破ることになってしまった。
『仕事なら仕方ないよ。じゃあスザクくんにもよろしくね。お土産期待しておいて!』
携帯を仕舞い、溜め息を吐く。修学旅行、行きたかったなぁ…
仕方が無い、幸い私には総督補佐の仕事はないし、租界から出るなとスザクには言われているが、手持ちに仕事がある訳でも無い。それにルッキーが真面目に仕事をこなしてくれるので、私は荒事以外は手出しする必要がない。…というかルッキーがさせようとしない。なんだか扱いが酷い気もするが、政治のことはよく分からないしまぁ良いとしよう。
暇しているのもなんなので政庁の外でランニングをしていると、モニモニと跳ねる金髪を見た気がする。…モニモニ?うん、つまりモニカだ。
「マーヤ!久し振りモニ!」モニ!
「…言われるほど久しぶりではない気がするんだけど…こんなところで何を跳ねてるマヤ?」マヤマヤ
とりあえず私もモニカの真似をして跳ねてみる。…うん、案外足腰は鍛えられるのかも。
「モニ!実は旅行に来たモニ!河口湖に泳ぎに行くモニ!」モニモニ
河口湖…そういえば私もユフィに一度誘われたことがあったがホテルジャックのせいで行かずじまいだったな。
「今日はアーニャは一緒じゃないマヤ?」マヤ?
「うん、アーニャは皇帝陛下のご命令でお仕事中モニ!」モニ~
…子供のアーニャにすら仕事が回されてるのに暇してるモニカって一体…。
「あ、居た居た。全く、いきなり跳ねてどっか行くその癖をいい加減なんとかしな。…それとマーヤ…跳ねるのを今すぐやめな。租界を壊す気かい?」
失礼な…地震対策の階層構造である租界を私ごときが揺らしたところで破壊できるはずがない。…それにしてもどうやら今回のモニカのお目付け役はノネットさんのようだ。
「言われてすぐ止める所は素直に褒めるよ…それに引き換えモニカは…いや、もう手遅れか。…久しぶりだねマーヤ。E.U.じゃあスパイをやってたんだって?アンタにそんな他人を騙すようなことができるとは思わなかったよ」
「む、失礼ですよノネットさん。私だってそれくらいできます」
「あっははは!ごめんごめん。しかしこんなとこで油売ってていいのかい?新総督就任で何かと立て込んでると思ってたんだけど」
立て込んでいるのは事実だが…まぁ私は戦力外という事だ。流石に気不味く目を逸らす。
「…ルッキーとスザクがいますから」
「…あぁ、まぁ、うん…。マーヤは戦場の方が活躍できるだろうね」
うん?それはそれで…なんか失礼なような…?
そんな話をしていると、政庁からユキヤが走ってこちらに向かってくるのが見える。
「…いたいた、やっぱり政庁の外に居たんだね。」
最近のユキヤはE.U.に居た頃に比べ少し筋肉がついたように感じる。今も息切れはあまりしていないようだ。
「私に何か用?」
「不審な船舶を発見したって連絡があってね、マーヤに出撃して指揮を取って欲しいってさ」
「早速荒事ってわけね。」
私がそう呟くとユキヤは不思議そうに首を傾げた。私は二人と分かれ、ユキヤを抱えて政庁に戻るとすぐにサグラモールを積み込んだ船に乗り込む。
暫く船で進むと、前方にタンカー船が見える。あれが不審な船舶らしい。手元の航行ルートが記載された申請書類と海図を比較すると、確かに事前の申請と航行ルートが大きく異なっているのが分かる。とは言え私は海の事や船のことはわからない。もしかして流されて道…?にでも迷ってるのかもしれない。
「ディゼル卿、どうなさいますか?」
「まずは注意勧告をして反応を見ましょう。不審な動きがあれば出られる様に準備をしておいて。相手の反応によっては私がサグラモールで空から対応するわ。」
「イエスマイロード」
私はマイクを手に取る。えーっと確か警告文は…
「こちらはブリタニア軍です。貴船の所属及び航路は申告と違っています。直ちに停船しなさい。これより強行臨検を行います。10分待ちます…それまでに全乗組員は武装解除し甲板に並びなさい。」
しかし、どうもこちらの指示に従う様子はない。と言うことは黒の騎士団だろう。
「時間と同時にポートマンⅡが出られる様に準備を進めて。私のサグラモールの準備はどうなっている?」
『ポートマンⅡの出撃準備は時間までに十分間に合うかと、サグラモールについてはいつでも出せます。』
よし、ならば準備は万端だ。指定した時間まではまだあるわね…。スクワットをしつつ海図を眺めているとちょうどこのエリアには資源採掘施設がある様だ。
「…ねぇ、この施設って何の資源を採掘してるかわかりますか?」
「…あぁ、メタンハイドレートですよ。」
メタンハイドレート…そんなものを誤って破壊してしまったら大惨事だ。
「作戦時は施設への攻撃が起こらない様に各艦及びポートマンⅡのパイロットに周知しなさい。…もし損害が出たらスザクに付けておいて」
「ブリタニア軍にそんな間抜けはいませんよディゼル卿。…どうやら時間です。」
余計な雑談が挟まったが案の定時間になってもこちらの指示は完遂されなかった。ならば仕方がない。
「全艦攻撃開始よ!」
私の指示で全艦から一斉に砲撃が行われ、いくつかの艦砲射撃がタンカーに直撃し、爆発する。
『ディゼル卿、目標に着弾…対象は轟沈します』
確かにモニターの映像を見ればそれは分かるが…どうにも違和感がある。
「…あの爆発、不自然に大き過ぎない?」
「そうでしょうか」
「ソナー、ちょっと貸しなさい」
ソナーマンから機材を奪い取り、海の中の音を聞く。爆発音と…これは…何かの駆動音?ブリタニア軍のものではない、ひとつだけ違う駆動音だ。
「敵は海中に逃れている…!予定通りポートマンⅡを全機出し、引き続きアスロックをタンカー周辺に集中させろ!当てずっぽうでもいい、その間にポートマンⅡで包囲網を作れ!私は敵のナイトメアを警戒してサグラモールで出る!攻撃を継続し包囲網は崩さないで」
「イエスマイロード」
私がサグラモールに乗り込み、空に飛び上がると魚雷発射音を捕らえたと報告があった。どうやらポイントL14にいる様だ。
「攻撃を集中させつつ包囲網を狭めて!」
…ん?黒の騎士団は何故今更魚雷を撃ったのだ?たかだか数発の魚雷でこの包囲網を突破できるはずはない。それに魚雷を撃たず隠れていればもしかしたら逃げられたかもしれないのだ。
「…敵が魚雷をどの方向に撃ったかわかるか!」
『敵の魚雷ですか?少々お待…う、うわぁ!!』
「!どうした!」
『ディゼル卿!泡が!あわわ…!』
これは…!?海底から大量の泡が…!これでは船もポートマンも、発射した爆発物も制御を失ってしまう…!やられた…!敵は敢えてメタンハイドレート採掘施設周辺に魚雷を放ったのだ…!
「行動可能な部隊はポイントをL12に集結!被害を報告しろ!」
私の指示と同時に私の眼があるものを捉える。ナイトメアと…あれは!
「ゼロ!」
ゼロ…許さんッ!!私はサグラモールを加速させ、一気に距離を詰める。
「いかにゼロの筋肉が強靭でもサグラモールの拳でならッ!」
よし、完璧に間合いに捉えた!
しかし、サグラモールの拳は空を切る。更に敵に背後を取られていた。
「馬鹿な…!神速!?」
こ、この私でさえ捉えられないスピードだなんて有り得ない…!
『ぶつな!マーヤ ディゼル!』
「ふん…!今更命乞い?」
『いいや、君が私をぶてば君命に逆らう事になるからな。』
君命…?一体何のことだ…?
『私はナナリー総督の申し出を受けようと思ってね。そう、特区日本だよ。』
「…降伏するってことかしら。…本気?」
ゼロは私に応えることはせず、ダブルバイセップスを決めていた。モニター越しでもその筋肉が鍛えられていることは容易にわかった。
『ゼロが命じる!黒の騎士団は全員…特区日本に参加せよ!!』
やがて浮上してきた潜水艦にゼロは飛び降り、見事な着地を決めていた。
…特区日本に参加するからといって貴方の罪は消えるわけじゃない…しかし、ここで私が決めていいことではないのも確かだ。行政特区はナナリー総督の発案なのだから。…こちらの被害も想像以上、カレンがまだいることを考えれば退く事が得策か…!
「…良いでしょう。」
それから暫く、行政特区日本に関連して私は機材運搬で忙しく働いていた。私のナナリー総督の為に働きたいという申し出をスザクが受け入れてくれたからだろう。
今日の分の運搬を終え政庁に帰り、暫く私の執務室…と言う名の仮設ジムで筋トレをしているとユキヤが入ってくる。
「ゼロからの連絡が入ったんだ。枢木卿がマーヤにも出て欲しいって」
「わかったわ。案内して」
そうしてユキヤに案内された部屋のモニターの前で待機していると、どうやら私以外の出席者も入ってきた様だ。
「やぁマーヤ、遅くなってごめん」
「スザクの方が忙しいんだし仕方ないわ。」
「そうモニ』モニ!
…なんでモニカが参加してるのだろう?
「何故ここにモニカがいるのか…という顔だな筋肉女」
「ルッキー…ノネットさんは?」
「エニアグラム卿は急遽本国に帰ったよ。お陰でモニカの世話を私にしろと…!一体私を何だと思っているんだ…!!」
なるほど、道理でルッキーの顔がやつれているわけだ。
「モニ…そんなに怒ると将来ハゲるモニ」モニモニ
「誰のせいだ…!」
すると、モニターにゼロが映し出された。
『これはこれは、ナイトオブラウンズが3に…んん?4人か…。まぁ良い。しかし総督のお姿が見えないが?』
いきなりテロリストとの話し合いの場に総督を連れてくるはずがないのに…分かって言っているな?
「これは事務レベルの話よ」
私に続けてルッキーが口を開いた。
「黒の騎士団の意見は纏まったのか?特区日本に参加すると言ったからには…」
『こちらには100万人を動員する用意がある』
100万人…!?かなりの大人数だ、一体どうやって…
「本当なのか」
『無論だ。但し、条件がある…私を見逃して欲しい。』
スザクの問いに対し、ゼロは見逃してほしいと言ってきた馬鹿な…!そんな事ができるがない!
『…とは言え、君達にも事情はあるだろう?ゼロを国外追放処分にするというのはどうだろうか』
自分だけ国外追放…?つまりそれは黒の騎士団を捨てる気だろうか…?
「モニ…!自分だけ騎士団を見捨てて逃げるなんて話がバレたら組織内でリンチモニ!…まぁ、ゼロの筋肉なら返り討ちかもモニ…」モニィ…
『だから返り討ちにして無駄な血が流れないように内密に話している』
すると、ローマイヤさんがペラペラと手元の本をめくっていた。あれは確か法律関係の本…内容は全て暗記はしたが、知識としては今のところ全く身につけられていないが…何かを探している…?
「あった。エリア特法代12条第8項…こちらを適用すれば総督の権限内でも国外追放処分は執行可能です。」
ローマイヤさんはゼロの意見に肯定的なようね、確かに組織を捨てて1人で逃げたリーダーなんてのは求心力を失うだろうし、そんな仮面の男1人が国外に逃げのびても何も出来ないだろうとは思う。…それがただの男であるのなら。だが、相手はゼロ!あのニクアツ マッスルガイさんの胴体を貫く鉄の拳を持つゼロであるならあるいは…!
「ゼロを見逃すモニ?」モニ~?
「法的解釈を述べてるだけです。」
『どうだろう?式典で発表しても良い。君たちにとっても都合が良いだろう?』
事前に知られて暴れられたり、放棄されるよりは直前に知らされて何もできない方がマシだけど…なんだか先程からゼロの話すタイミング、内容…誘導されてるような…
「ふん、ゼロは私が咲かせてやろうと思ったのだが、つまらないな」
「でも悪くない話モニ。トップが逃げたとなればイレブンのテロリスト達は空中分解モニ!」モニ!
モニカの言う通り少なくとも無血でエリア11のテロリスト達の勢力を大きく削ぐことは出来る…けど、ゼロを見逃すというのは危険にも感じる。それに相手はゼロ…国外追放をされたフリをして潜伏し、奇襲をかけるつもりなのかもしれない!よし、ここは問いただすしかない!
「何を企んでいるのゼロ!貴方本当に国外追放される気?どうなの?答えなさい!貴方はその筋肉に誓って本当に国外追放を受け入れるの!?」
『…。無論私は国外追放を受け入れるつもりだ。この!私のッ!筋肉に誓って!!』
ゼロは筋肉の膨張だけで服を破り裂き、ダブルバイセップスを披露してきた。マッスルガイは筋肉に嘘は吐かない…筋肉に誓って国外追放を受けると言うのであれば受けるだろう。
「スザク、ゼロは本気で国外追放を受ける気よ。」
「おい筋肉女、あんな戯言を本気にする気か?」
「私たちみたいなマッスルヒューマンはね、筋肉にだけは嘘を吐かない。筋肉に嘘を吐くということは己の存在そのものの否定と同義だからよ」
「そんな大袈裟な…」
「それに、筋肉に嘘を吐くようなゼロは民衆からの支持を失うもの。仮に国内に残っても民衆の支持のないテロ組織なんてブリタニア軍の敵じゃない、そうでしょう?」
こうして、私たちの話し合いの結果、ゼロの国外追放が決定した。
スザクに色仕掛けは通用しません()
ミートギアスにおける愉快なラウンズ達の常識度早見表
↑高い
ノネット(常識があり人間性も非常にまとも)
ルキアーノ(人格破綻者と言われるほどだったが苦労の果てに矯正。常識人になった。そして苦労人にもなった。)
ドロテア(但し筋肉に関係ない時に限る)
ビスマルク(若干脳筋のきらいはある。皇帝の命令には忠実)
スザク(基本的には常識人に該当)
ジノ(但し、お坊ちゃん気質で甘いところがある)
アーニャ(言うて年相応。モニカと絡む場合は非常に非常識)
マーヤ(基本的に脳筋)
モニカ(常にモニモニと跳ねている)
↓低い
そういえばノネットさんの出番全然無かったなって思って出しました。