モニカが敵のナイトメアを抑えてくれている為、相手がゼロとは言えこちらは十分殿下達を護衛可能だ。するとシュナイゼル殿下が出口に手を向け、オデュッセウス殿下に進むことを促している。
「兄上、行きましょう」
「どこへ行こうと言うんだい?シュナイゼル…」
「逃げるんですよ。考えればわかるでしょう兄上」
流石のゼロとて天子様を抱えたまま私やスザクと肉弾戦を行うのは無謀と考えたようで手出しはしてこなかった。会場を離れる際、ふと後ろを振り返ると両脇に天子様と神楽耶さんを抱え、カレンを肩車しているゼロが見えた。あの状態で人並外れた跳躍ができるのだから驚きだ。
屋外に出ると空中でモニカと黒の騎士団のナイトメアが戦っているのが見える。
『行かせないモニ!』モニッ!
モニカのフローレンスのブレードと敵のナイトメアの刀がぶつかり火花を散らしている。モニカはいつもモニモニと跳ねている変人だが、その変人度合いがあってなおラウンズになるくらいにはパイロットとして実力がある。そのラウンズ相手にも押し負けないとは敵も中々やるようだ。
モニカは敵と更に数度の斬撃を交えた後、フロレンスの蹴りで距離を取っていた。勝負を決めようとアレを使う気ね…!
『これで決めるモニ!ハドロンブラスター発射モニ-!!」モニニーン!
しかし、必殺のハドロンブラスターは敵のナイトメアが発生させたバリアのようなもので受け流されていた。
『輻射障壁展開!』
『ハドロンブラスターを受け流したモニ!?』モニ⁉︎
『貰ったッ!』
いけない…!距離が詰まっている!
『しまったモニ!』モニーン!?
咄嗟の回避が間に合ったようで、敵の一太刀は本体には直撃しなかったものの、フロートシステムには刃が届き、破損してしまったようだ。
これで我々は黒の騎士団を取り逃がしてしまうだろう。しかし、シュナイゼル殿下の微笑みの表情からは余裕が見て取れる。
「問題ないよ。私には黒の騎士団の動きが分かっているからね。ただ、これ以上の介入は中華連邦からの要請が必要だ。それまで我々は次の戦いの為に備えようじゃないか。」
フロレンスを修理しつつ、私達はアヴァロンにて次の指示を待つことになった。やがてシュナイゼル殿下によってラウンズの私達が呼ばれると、畏れ多いことにシュナイゼル殿下直々に説明があるようだ。
「先程ゼロ達はこの渓谷にて中華連邦軍を待ち伏せし、追手を撃破したようだ。その後は蓬莱島に戻りインド軍区との合流を目指しているようだね。」
「…中華連邦も一枚岩ではないということですか。では我々は黒の騎士団とインド軍区を相手にする訳ですね?」
スザクの問いかけにシュナイゼル殿下が答える前に、カノンさんが焦ったように室内にやってきた。そしてシュナイゼル殿下に耳打ちをするとシュナイゼル殿下が一瞬だけ驚きの表情を見せる。
「…どうやら私でも予測できないことがあったようだ。中華連邦にゼロの作戦を読んだものがいたようだね。彼らは今この地点で闘いとなっているようだ。」
示された地点は地形的にはあまり特徴の無い土地…平坦な場所のようだ。しかし、シュナイゼル殿下はどのようにしてそんな情報を…?
「シュナイゼル殿下、先程からただの先読みとは思えぬ情報をお持ちのようだ。…一体どんな手を?」
ルッキーの態度はかなり挑発的だが、シュナイゼル殿下は眉一つも動かしていない。
「何、私には『ウルフ』という優秀な部下が居てね。」
…なるほど、黒の騎士団には既にE.U.での私のようなスパイを送っているということか。
それから暫くすると、なんと中華連邦があのカレンとそのナイトメアを捕縛したと連絡があった。
「…シュナイゼル殿下、お願いしたいことがあります。」
カレンが捕まったことに対し反応を示したのはスザクだった。
「おや、何かな?」
「捕虜となった紅月 カレンとそのナイトメアをブリタニアに引き渡すように中華連邦へ交渉していただけないでしょうか」
「ふむ…。可能だとは思うが、それは何故だい?」
いくら中華連邦でも引き渡せと言って大人しく引き渡すとは思えない。カレン本人だけであれば国外追放したとはいえブリタニアの犯罪者だから可能だろう。だがナイトメアは別だ。現状中華連邦のナイトメアはお粗末なガンルゥと呼ばれるものだけ、高性能の赤いナイトメアを欲してもおかしくはない。
「彼女とあのナイトメアは危険です。もし中華連邦に寝返られ活用されれば脅威となります。」
それは確かにそうだ。今は中華連邦もブリタニアに従うそぶりを見せているが、仮に我らがブリタニアと再び敵対する時に備え、人質なり報酬なりで飼い慣らせば…いや、あのカレンが飼い慣らされるはずはないか…?
「なんにせよ引き渡しについては交渉してみよう。」
そう微笑んで部屋を去るシュナイゼル殿下を見送り、私達は一時的に待機となった。
「マーヤ、僕は生徒会のみんなに会長の無事を連絡してくるよ。」
ロイドさんの婚約者として参加していたミレイ会長も今回の騒動に巻き込まれており、現在アヴァロンにて保護をしている。中華連邦に関する情報統制を考えればミレイ会長の安否が報道されるはずもない。
「分かったわスザク。お願いね。」
スザクと別れ、艦内をうさぎ跳びで周っていると、ニーナと鉢合わせた。
「あ、マーヤ…ひ、久し振り…」
「うん。ニーナ久し振り。」
…気不味い。正直あまり話してこなかったし、彼女はどこか私を見て怯えているようにも思えるのだ。取り敢えず話題を…そう言えば私今ニーナが何してるかよく知らないのよね。
「…ニーナは最近何してるの?」
「わ、私はその…シュナイゼル殿下のお陰でインヴォーグって開発チームのリーダーをやらせてもらってるの…」
「開発リーダー?ニーナって凄いのね!どんなものを開発してるの?」
貧弱な身体をしていると思ったが、私と同い年で開発リーダーに抜擢されるとは、どうやらニーナは頭脳を鍛えしマッスルウーマンだったようだ。私はまだまだ目に見えないマッスルガイやウーマンを見逃してしまうが、それを見逃さなかったとは…やはりシュナイゼル殿下は凄いお方だ。
「うーん、詳細はまだ機密だから言えないんだけど、爆弾…かな」
「ば、爆弾…」
ニーナっておとなしい見た目に反して結構物騒なもの開発してたのね…。
「シュナイゼル殿下から聞いたんだけど、マーヤってものを投げるのが得意なのよね?」
「え、えぇ。そう言えばそうかも」
「ならフレイヤが完成したらマーヤの為に手投げタイプも作ってあげるね!」
…フレイヤ…?それがニーナの開発している爆弾の名前だろうか?それにしても手投げ爆弾ならボールスやアレクサンダで使ったことがあるから私にも扱いやすいかもしれない。
「うん、ありがと!無事に完成するといいね」
「うん!」
…どうやらニーナは私に怯えてたわけじゃなくて少し人見知りをしていただけのようだ。話してみれば案外普つ…いや、兵器の話で盛り上がる女子高生って考えると普通じゃないのかも…?
「じゃあ私はそろそろ行くね。」
「うん、またねマーヤ」
ニーナと別れ、再びうさぎ跳びをしていると格納庫帰りのモニカがモニモニと跳ねていた。
「モニカ、フローレンスはもういいの?」
「モニ〜!幸い予備パーツで簡単に修繕できたモニ」モニモニ
することも無いし二人で跳ねながら作戦室に戻る。道中でスザクを見つけたので一緒に跳ねないか提案したが断られてしまった。
「黒の騎士団の捕虜の件だけどね、問題なく引き渡してくれるそうだ。ナイトメアもね。代わりに私は第宦官の彼らにブリタニアの貴族としての地位を約束することになったよ。」
仮にブリタニアの貴族になれたとしても能力がなければすぐに転落する。怠け者の第宦官にそんなことができるはずはない。…良い条件に見せかけて交渉を取り付けるとは流石だ。
「ただね、それとは別に国土の割譲を条件に反乱軍の鎮圧をしなければならなくなったんだ。…ただ、これは黒の騎士団を壊滅させる好機だね。中華連邦のお陰で黒の騎士団は天帝八十八陵に追い込むことができた。援軍のない籠城戦…これは勝ったね。」
映し出された図面に表示される黒の騎士団の戦艦と天帝八十八陵、艦首の砲門は連射は効かないがかなりの射程と範囲を誇るそうだ。迂闊には攻められないが、それだけの兵器を使うにはかなりのエナジーを消費するはず。かつてのブラックリベリオンでは実質的に政庁周辺での籠城戦ではあった。しかしあればブリタニア本国からの援軍を考慮してのことだ。今回とはそれが異なる。
カレンの引き渡しは無事に終わり、拘束されたカレンを見る。
「…何よ。言いたいことがあるならハッキリ言いなさいよ。」
「いや、残念だと思ったのよ」
「残念?」
首を傾げるカレンに私は頷く。
「えぇ、私がカレンを倒したいなって思ってたから。」
「ふん…あっそ」
まだ出撃には時間があるし、もう少しカレンと雑談していても良いだろう。私はカレンの秘密を知っていたし、私はカレンに秘密を秘密にしたままだった。今や敵とはいえ、ここで打ち明ける義理くらいはあるはずだ。
「ねぇ、カレン。私ね、実はブリタニアと日本のハーフ…だと思っていた時期があったの」
「…思ってたってことは違ったってワケ?自分のことなのに変なの。」
「えぇ、私は幼い日の事故で少し記憶が混乱してて、母の連れ子だってことを忘れてたみたい。」
「そう。…だから私がハーフってことを明かした後に何かバツが悪そうにしてたわけね。自分もハーフなのに打ち明けないから」
やはりカレンは頭がいい。察しが良くて話の流れがスムーズだ。
「で?なんで今更そんなこと?」
「…さぁ?なんでだろ。今なら全部言えるって思ったのかも」
「ふん…。すぐにゼロが助けに来てくれるわ。私はもうあんたと話すことなんて無いから」
そう言ってカレンが顔を反らしたのと、そろそろ出撃の時間だったこともあり私も背を向ける。
「…ゼロは助けには来ないわ。私が倒すもの」
私がサグラモールに乗り込み出撃すると前方に反乱軍のナイトメアを打ちのめすルッキーの姿が見えた。
『さぁ!戦場に咲かせてやろうお前達の命の華を!!』
反乱軍の鎮圧はスザクとルッキーが担当。私もモニカは黒の騎士団を相手にすることとなっている。
「モニカ、援護をお願い。」
『任せるモニ!』モニモニ
私のサグラモールは遠距離攻撃には対応していない。だからハドロンブラスターを持つモニカのフローレンスに援護射撃をして貰い、一気に攻める!
シュナイゼル殿下の情報によると、敵の航空戦略は限られている。黒いカスタム機が1、青いエース機が3、一般機が1と合計5だ。しかし、こちらの航空戦力を考えれば3機は必要。私とモニカが1機ずつ相手すれば抑えられる!
『ナイトオブツーのマーヤ ディゼルだな?ここでェ!』
私の前に現れたのは黒いカスタム機だ。振るわれる斬撃をMVS付きガントレットを展開して迎え撃つ。
「拳は、二つあるのよ!」
もう一方の手にもMVS付きガントレットを展開して殴るが、バリアのようなもので塞がれてしまった。MVSでダメなら…!
肘側に展開していたニードルブレイザーを拳側に、拳側に展開していたMVS付きガントレットを肘側に展開し直して殴り付ける。
『ぐぅ…!?』
流石にニードルブレイザー1基分では突破できないか。
「だったら…2つならどう!?」
私は副腕の一つを展開して二つのニードルブレイザーで殴り付ける。
『何ッ!?』
よし、このままガラ空きになったところにもう一撃…!
『藤堂さん!』
!思っていたよりも敵が強いのか、航空部隊だけで3機は抑えられなかったようで、一機が加勢にきたようだ。余らせていた副腕のニードルブレイザーからブレイズルミナスを展開して斬撃を防ぐ。一度黒いナイトメアには蹴りを叩き込み距離を取る。すると、反乱軍のナイトメアが戦場を大きく移動しているのが見える。その背中を追い、ルッキーのパーシヴァルが攻撃を仕掛けるがフロートユニットを掠めた程度のようだ。だが、それを契機に明らかに中華連邦の攻撃は強まっている。
私は黒の騎士団のナイトメア2機からの攻撃を四つの腕でいなすが、どうやら天帝八十八陵に何かがあったようだ。途中からやってきた青い方の顔面に踵落としをブチ込み黒い方の刀を白刃取りで防ぎつつ見てみると、反乱軍のナイトメアに対する集中砲撃を黒の騎士団の物と思われるナイトメアが防ぎきったようだ。…あんな機体が有るとは聞いていないけれど…恐らくあれをやったのはゼロ…!
『隙有りィ!!』
敢えて自ら剣を折って私への奇襲としたのだろうが、残念なことにそういう攻撃はE.U.で経験済みだ。
「遅いッ!!」
副腕のブレイズルミナスで防ぎ、サグラモールの両腕によるアームハンマーを叩き込むことで黒いナイトメアは落下していった。私の相手は恐らくゼロが乗っているであろうあの機体だけ…。
「ゼロなんでしょう?お前をここでッ!!」
『こい、マーヤ ディゼル!生身でも…!ナイトメアでも…ー殴り合いが強いのは私の方だと!その肉体に刻み込んでやるッ!!』
『ウルフ』の正体ですが、既に伏線は張ってあります。
次回、マーヤのサグラモール(四つの腕で殴る機体)VSゼロのミートギアス版蜃気楼(絶対守護領域を展開した拳で殴る機体)
ナイトメア戦とは…?