ミートギアス 〜筋肉のルルーシュ〜   作:ベルゼバビデブ

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TURN13′

 エリア11は今の所は平和だ。しかし、その平和はいつ崩れてもおかしくはない。中華連邦…改めて合衆国中華の詳しい内情はあまり入って来ないが、統一は間も無く成されるだろう。

 そもそも、合衆国中華及び黒の騎士団側にはゼロやカレンを倒すほどのパイロットがおり、黒の騎士団は高い技術力を有している。そして中華連邦を纏めるための天子様はゼロ側が保有しているため、旗印を抑えられていることになり、反抗勢力は纏まらず各個撃破され終わりだ。…と、ルッキーが言っていた。

 

 そんな訳で私とワイヴァンナイツはエリア11において、対中華連邦…改めて合衆国中華に重要な土地とされるキュウシュウブロックに赴き、守備部隊の抜き打ち監査を行うことになり、出発の準備が整った頃、政庁内でスザクに出会った。…確かスザクは今日は非番だったはずなのに。

「やぁ、マーヤ。これからキュウシュウだよね?」

「えぇ、合衆国中華…いいえ、黒の騎士団が攻めて来ても大丈夫な様に備える意味でも、これが大切な監査だってのはわかってる。…ところでスザクって今日は非番じゃなかった?」

「うん。そのつもりだったんだけどね。イケブクロでちょっとした事件に鉢合わせたんだ」

 非番の日まで仕事に巻き込まれるとはスザクも運が悪いわね…。それから私はキュウシュウに向かい、監査を行った。一年前に澤崎等の唱えた独立主権国家日本の事件からキュウシュウの脆弱性は見直されている。本国を含む援軍へのスムーズな受け入れ態勢などが最たる例だろう。1日掛かりの監査を終えエリア11に帰り、監査結果を纏めて提出し終えると電話が鳴っていることに気がつく。相手は…V.V.くんのようだ。

「もしもし、V.V.くん?どうしたの?」

『やぁマーヤ』

 V.V.くんが今どこにいるのか分からないが、何故か戦闘音のような物が聞こえる気がする。…ゲームとかかな?

『契約は忘れてないよね?僕は今少しピンチでね…助けに来てくれないかな』

「分かったわ」

 確かにそう約束した。今のV.V.くんがどんなピンチに見舞われているかはわからないが、私自身丁度今仕事も終わったのだ。約束したからには助けに行かないわけにもいかない。

『それと…そうだね。できれば僕が良いって合図を出すまでは何があってもどこかに隠れていてくれると嬉しいな』

「合図ね。分かったわ」

 話を聞く限りきっとそういうごっこ遊びか何かだろう。大したピンチでは無さそうで安心した。

 とは言え、遅くなるのも申し訳ないので私は租界を走り、海を走り、神根島に行き、V.V.くんの秘密基地を訪れる。神殿のような部屋を抜けると、何故か広場が大きく崩れている。それに目の前には傷だらけのV.V.くんが地を這うようにこちらに向かって来ていた。だが、彼が言うには合図があるまでは隠れていろと言うことだったので、近くの瓦礫の背後に身を潜める。暫くすると私が入ってきた入り口から別の人物が現れた。

「やっぱり来てくれたんだね、シャルル。やっぱり最後に頼りになるのは兄弟だね」

「兄さん…ルルーシュに刺客を送ったと言うのは本当ですか?」

 …?現れたのはどう見てもシャルル皇帝陛下…それなのに今彼らはなんと会話した?V.V.くんが…皇帝陛下のお兄さん…?

「お陰で仕返しされちゃった。」

「…兄さんはまた、嘘を吐いた。」

 目の前の事態が全く理解できず、私はそのまま物陰から二人のやりとりを観察することしか出来ない。

 すると、皇帝陛下はゆっくりとV.V.くんに近付いていく。

「我々の契約は世界の嘘を壊し…神を殴り殺すこと。それなのに兄さんは嘘を吐いた…それも、二度も!」

「嘘、ね…シャルルだって自分の嘘には目を瞑ってる癖に。僕の嘘だけを許容しないつもりかい?」

「何…?」

 皇帝陛下は拳を振り上げ、V.V.くんを殴打しはじめた。あんな小さな子供を皇帝陛下ほどのマッスルガイが何度も殴打すれば簡単に死んでしまう。なんと酷いことを…!

「…昔からシャルルは図星を突かれると暴力に頼るよね。」

「ぬぅ…!」

 流石に首の一つや二つ取れてもおかしくないように見えてが、どうやらきちんと手加減をしていたらしく、V.V.くんは話が出来るくらいには元気なようだ。

「…今から兄さんのコードを奪う。兄さんとワシの夢はワシが、叶える…。」

 皇帝陛下はV.V.くんの背中に手を当て何かをしたかと思うと、再びその場を立ち去っていく。それからすぐにV.V.くんから弱々しいこえが聞こえてきた。

「良いよ…マーヤ、来てくれ…」

 言われて駆け寄ると、V.V.くんの怪我はかなりひどい者だった。瀕死と言えるレベルまで拳で痛めつけたような状態であるのだ。

「僕の…胸、ポケットに…プロ…テイン…」

 きっとV.V.くんの胸ポケットにプロテインがあるから取り出してくれと言うことだろう。取り出してみると、それはあの日私が飲んだ物と同じような液体が入っていた。

「これを…飲ませれば良いの?」

 私が訊くと黙って頷いたのでV.V.くんにゆっくりと服用させる。すると、先ほどまで折れていたのではないかと思える腕は忽ちまっすぐになり、酷いあざのあった顔は艶を取り戻し、全身の筋肉はスザクほどに膨張してリトルマッスルガイが爆誕した。

「ありがとうマーヤ。助かったよ。」

「う、うん…」

 そういえば私もゼロとの戦いでプロテインを服用したときに全身の筋肉の膨張以外にも怪我が治ったような感覚があった。なるほど、V.V.くんはそれを利用して自らの怪我を治癒させたようだ。

「色々言いたい事はあるだろうけど話は後にしよう。今は脱出が先だよ。一先ずE.U.方面に行こうか」

 突然の事態に困惑しつつ、私はV.V.くんの後に着いていく。V.V.くんは私を菱形のトンネルまで案内してくれたが、そこでV.V.くんの様子に変化があった。突然苦しみ出し、膝をついたのだ。

「くっ…時間切れか…!」

「大丈夫…?」

 結局、リトルマッスルガイであった肉体は元の身体に戻り、肉体的疲労から立つこともままならないらしい。私はV.V.くんをおんぶして歩く事にし、一先ずE.U.方面に続くらしい菱形のトンネル内を移動していた。やたらと瓦礫や何かの残骸が落ちているが、私はマッスルウーマン、排除することなど造作でもない。

 ある程度進むとトンネルの中には残骸などはなく、ただただ菱形のトンネルが続くだけだ。

「そういえばV.V.くん、皇帝陛下とお知り合いだったの?」

「…あれ?会話の内容聞いてなかった?シャルルは僕の弟だよ?…まぁ、そう言っても信じられる訳ないか。僕の見た目は子供だものね」

 確かに見た目は子供…だが、皇帝陛下も手加減していたとはいえ、ごっこ遊びに付き合って子供を殴るなど異常だ。それに、V.V.くんとは1年の付き合いになるが、言われてみれば陽菜達と比較して、外見に変化がない。これくらいの子供ならもっと成長していてもおかしくはないのに。

 …もしかして筋肉とは別の何かを鍛える事で己の老化を防いだのだろうか?そういば昔、何かの本で読んだことがある気がする。人間の心臓の鼓動は1日で約10万回…つまり、1年で心臓の鼓動を10万回程度に抑えることができれば実質1年を1日にすることができる。1年で100万程度に抑えれば10日…具体的にいつからどれくらい抑えていたかは知らないが、きっとそう言うことだろう。

「…マーヤ、また変なこと考えてるでしょ?君は変わらないな…」

「変わらないって言ったって…1年じゃそんなに変わらないわよ」

 小さな子供ならば1年で大きく変わることもあるだろう、だが私ほどの年齢になればもう1年での変化など筋肉量以外は微少だろう。

「そっか、マーヤは覚えてないものね。僕らはね、8年前に会ってるんだよ。」

 …8年前…?私にとっては全く記憶のない時期だ。つい先日思い出せた記憶も何年まえのものかは定かではないが…

 

「マーヤ、思い出して?君と僕は8年前に契約をしているだろう?」

 

 契約…。なんだろう、頭が痛くなってきた…?

「その時確かに授けたはずだよ?君に、『ギアス』を」

「ギアス…?私に…?でも、私に人を操る力なんて…」

「あぁ、マーヤにとってギアスはそう言うものになってるのか…僕の説明不足だったね」

 頭痛に思わず私は足を止めてしまう。何か、頭の中にビジョンが浮かんでいるような…?どこかは分からない綺麗な建物の中で…目の前にV.V.くんが佇んでいる…。

 

『君に力をあげるよ。“みんながみんなに優しくなる世界"を作るための。その代わりに僕が困った時に助けて欲しいんだ。』

『分かった!』

 幼い私はよく分からないままその話を受け入れたのかな…?

『でも気を付けて?王の力は君を孤独にするんだ。力を得れば君は人とは異なる世界を歩む事になる…異なる時間、異なる摂理…でも大丈夫、マーヤは強い子だからね。だってマーヤは僕の…』

 

 あぁ…そうだ…。だから私…。

「マーヤ、君のギアスは『絶対鍛錬のギアス』他人や己に鍛えざるを得ない状況、つまり苦難を与えるギアス。…もっとも、君はほとんどその力を他人に使ってこなかったようだけど」

「苦難を与えるギアス…?」

 言われてみれば私の人生は苦難というか、困難というか、トラブルに見舞われることが多かった気がする。連子として再婚した両親が事故死し、記憶が混濁し、自分をハーフだと思い込むなど言われてみれば普通ではない。それからも何かにつけて私にトラブルが降り掛かるような…何かに仕込まれたような人生だったようにも思える。

「心当たりはあるようだね。」

「…えぇ、まだ少し…信じられないけど」

 それから、E.U.への道中、私はV.V.くんからギアスとコードについて説明を受けた。

 不老不死のコード、V.V.くんが持っていて、皇帝陛下に奪われたもの。そしてもう一つはC.C.なる女性が持っているらしい。不老不死のコードは文字通り所有者を不老不死にする。いくら鍛えても筋肉が付かないという呪いの類らしく、その影響でV.V.くんは不死身で不老だったようだ。私の心臓の鼓動がどうこうという考察はなんだったのか、恥ずかしくなってくる。

 そしてギアス、私やゼロが持っていて、V.V.くん曰くシャルル皇帝陛下も持っていたらしい。不老不死のコードを持つ者には効かないそうだ。故にV.V.くんと皇帝陛下は不死身の肉体とギアス所有者というパワーバランスが取れていたらしい。

「でもシャルルは僕を裏切った。僕が協力者を生み出そうにもシャルルの『記憶改竄のギアス』は厄介でね。だからあえてコードを渡してシャルルのギアスを封じたんだ。それにこれでシャルルは僕がもう死んだと思い込んでるからね」

 私はこれからV.V.くんに協力してシャルル皇帝陛下からコードを奪う必要があるようだ。…この困難もギアスによるものなのだろうか?正直、ギアスを持っていたなんていきなり聞かされても実感などないし、扱い方などもってのほかだ。

「ギアスの使い方はこれから覚えていけば良いよ。僕が思うに決着が着くにはもう少しだけ時間が必要だからね。」

「ええ」

 それから私たちはE.U.側のトンネルから脱出、偶々E.U.方面に牽制を仕掛けていたアーニャとジノに合流することができた。

「マーヤ久し振り…再会の記念、記録。」

 アーニャを抱き抱えての自撮り、うん盛れてる盛れてる…良い感じの上腕二頭筋ね…!

「でもマーヤってエリア11に居たはずだろ?なんでこんなところに居るんだ?…それにその子供は?」

「えっ?あー…その…この子が黒の騎士団に誘拐されて…そう!追いかけて走ってたらいつのまにかE.U.まで来ちゃってたのよ!」

「なんだ、そうだったのか!エリア11から中華連邦…あ、今は合衆国中華だっけ?を抜けてE.U.方面までやってくるなんて凄いスタミナだなぁ!ははは!」

 よし、ジノがアホで助かったわ…!いや、これも全て筋肉のお陰…?やはり筋肉、筋肉は全てを解決するわね…!

 …そう言えばV.V.くんは私はギアスを“ほとんど自分にしか″と言ったけれど…

 

 一体いつ、誰に使ったのだろうか?

 

 




誰得か不明のV.V.生存ルート。無事に逃げられてシャルルから姿を隠せたね!やったねV.V.!

という訳でミートギアス作者による忠実な原作無視により、マーヤがギアスユーザーになってしまいました。なんで???
●オリジナルギアス紹介
『絶対鍛錬のギアス』
・幼いマーヤが(半ば悪質に)V.V.と契約して手に入れたギアス。
・ギアスの効果は「他人や己に鍛えざるを得ない状況、苦難を与える。」こと。但し、どんな困難か具体的な事は指定できず、周囲の人間や環境が不自然のない範囲で困難を強いるように変化する。
・マーヤはギアスの効果を知らず知らずのうちに己に使用し続け、鍛えざるを得ない状況に身を置き続けた結果、非常に鍛えられた。それはもう、ナナリーを守るために鍛えたルルーシュ並みに。
・マチョストにおけるマーヤに降り注ぐシナリオイベントはマーヤの絶対鍛錬のギアスにより操作されている。

・なお、鍛える状況…つまり困難に耐えられる身体でない場合、対象は最悪死に至る。
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