ジノとアーニャの協力もあり、私とV.V.くんは無事にE.U.からエリア11に戻ることができた。どうやら私達がエリア11に戻るまでの間にゼロが超合衆国憲章なる物を打ち立て、超合衆国の軍隊…黒の騎士団がエリア11に攻め込むと宣言があったらしい。それに対してシャルル皇帝陛下は正面から受けて立つと宣言、エリア11は再び戦場になると言う事だ。
政庁にV.V.くんを連れて行き、取り敢えず私の執務室に連れて行く。
「じゃあV.V.くん、この執務室は自由に使ってて貰って構わないから」
「…執務室?ジムか何かの間違いじゃないのかな。文字の書かれた紙なんて壁に貼ってある『気合い!』ポスターだけじゃないか」
「…最近はユキヤが書類仕事片付けてくれるから…」
最近のユキヤの成長は目覚ましい。特に腹筋が割れてきた辺りが。ユキヤ本人も鍛えれば鍛えるだけ筋肉がつくように体質が変わったことに興奮している節があり、自慢のネットを駆使してさまざまなトレーニングをしているとか。突然執務室のドアが開き、雪崩れ込むようにアヤノが入ってくる。
「居た!マーヤ!一体どこ行ってたの!?心配したんだよ!」
「え?あー…うん、V.V.くんが誘拐されたから…ね。取り返しにちょっとE.U.まで…」
「はぁ!?」
ジノ達に吐いた嘘を再利用し、アヤノを誤魔化すと、今度はリョウが雪崩れ込んできた。
「…リョウ、マーヤの執務室とは言え女性の個室にノック無しで入るのは失礼だよ。」
今更のノックを三度してから部屋に入ってきたのはユキヤ、うむ…また少し見ない間に筋肉のキレが上がっているような気がする。良いわね。
「…ん?なんでこのガキが執務室に居るんだ?一応ここ執務室だろ?…トレーニング機材置き場だけど」
「確かに。ナイトオブラウンズとはいえ個室に男の子を連れ込むなんて…ねぇ?ここトレーニング機材置き場だけど」
「誘拐されてたから取り返して、その事後処理のためにつれてきたんじゃない?トレーニング機材置き場だけどここ一応執務室だし。」
うん。酷い言われ様ね。きっとこれも私の絶対鍛錬のギアスのせいに違いない。そうであってほしい。
「ところでリョウとユキヤは何しにきたの?もしかして私が心配だったの?」
「まさか!殺してもお前は死なねえよ」
「確かに。シュナイゼル宰相が及びだからさ。探してたってわけ」
シュナイゼル殿下が?取り敢えずアヤノとリョウにはV.V.くんと居てもらい、私はユキヤと二人でシュナイゼル殿下のもとに急ぐ。私が廊下で出すことを許可されている制限速度の早歩きにユキヤはなんとか食らいつけているようだ。うんうん、スタミナも付いてきたようね。
通された部屋ではシュナイゼル殿下がいつもの微笑みを浮かべ、優雅に座っていた。
「やぁ、よく来てくれたねマーヤ。早速で悪いんだけど、君には枢木卿を追ってほしい。」
「…スザクをですか?」
「そうとも。ゼロの狙いはこのエリア11、キュウシュウブロックには本国からの増援でヴァルドシュタイン卿が、エリア11からはブラッドリー卿が向かってくれている。彼らであれば敵軍の本隊は抑えられるだろう。だが、黒の騎士団の…いや、ゼロの狙いは恐らくこのトウキョウ租界。太平洋での闘いでそうだった様に、皇族であるナナリーや私を狙って動くはずだ。だから残りの少数精鋭でこのトウキョウ租界を守る…はずだったんだがね、このタイミングで何故か君に続いて枢木卿が突如租界を出てしまったんだ。」
スザクが…?あのスザクがそんな無責任なことをするはずはない。一体何故…?
「海中から回り込んでくるだろう黒の騎士団の奇襲部隊が到着するまでにマーヤには何としても枢木卿を連れ戻してほしいんだ。やってくれるね?」
「イエスユアハイネス…ですが手掛かりなどはありませんか?」
私は別にスザクのストーカーなどではない。流石にヒントも無しに人一人を捕まえるのは難しいだろう。
「君には優秀な部下がいるだろう?」
…優秀な…そうか、ユキヤだ。私が背後に控えるユキヤに振り向くと、ユキヤは頷き、すぐさま手元の端末を操作し始めた。
「…見つけたよ。枢木卿はナイトオブラウンズだし日本人、それにマーヤほどじゃないけど筋肉も逞しくてイケメンだ。そんな人気のある有名人ならネットから簡単に目撃情報が拾える。どうやらこの辺りに向かってると思うよ」
「分かった。ユキヤはナビゲートをお願い。私は今から向かうわ!」
私はシュナイゼル殿下の横をすり抜け壁をブチ抜いて直ぐにトップスピードに乗る。ユキヤの案内に従い野を駆け山を駆けていると、枢木神社と書かれた鳥居を見つけた。
「枢木神社…?」
石段を上がって行くと、何やら声が聞こえてくる。
「見合って」「見合って」「「はっけよーい…のこったッ!!」
今のはスザクとルルーシュの声だ。こんなところで呑気に相撲とは…。しかし、こんな時に相撲を取ると言うことはきっと漢と漢の真剣勝負に違いない。私はマーヤ ディゼル…得意な事は筋肉を育てることと空気を読むこと!私は階段ではなく近くの林から二人の真剣勝負を見守ることにした。
スザクの初撃は突っ張りだった。やはりと言うべきか、それはフェイントではなかったものの、残念ながらルルーシュにはバックステップで躱されていた。きっとこの場合、スザクならルルーシュの攻撃を避けるために距離を取るはずね…。移動座標は…X23辺りかしら?予想通りルルーシュはそこに突っ込み、攻撃を仕掛けていた。
「くっ…!式根島の時よりも強くなって居る…!」
「鍛えてるのはお前だけじゃないんだよスザク!」
二人は互いの学生服をがっちりと掴み、離さない。…あれ?スザクとルルーシュはいつ式根島で相撲を取ったのだろう?確かスザクと式根島で相撲を取ったことのある人物はゼロ…まさかゼロの正体って…!?いや、もしかしたらプライベートで相撲をとっていたのかもしれない。憶測で疑うのは失礼だ。
「答えろ…ルルーシュ!君がユフィにギアスをかけたのか!」
「あぁ、そうだ!」
一瞬、スザクがルルーシュの身体を持ち上げていた様に見える。しかし踏ん張られた様だ。…ん?ルルーシュがユフィにギアスを…?それってやっぱり…
「日本人を殴り殺せと?」
「俺が命じた!」
ルルーシュがジリジリとスザクを石段の方へと押し出していくが、スザクも踏ん張り、やがて拮抗した。ルルーシュが…ゼロ…?だとしても一体何故日本人を殺せなどと言う命令を…ゼロにとって日本人は味方ではないのだろうか?
「なぜそんなギアスを…!ふんっ!」
「どっせい!…日本人を決起させるためだ!はっ!行政特区日本が成立すれば…どすこい!…黒の騎士団は崩壊して居た!」
ルルーシュはスザクを持ち上げ投げ飛ばそうとしたものの、スザクはスザクで体を捻って見事に着地していた。…しかしルルーシュは何で残酷なの…!?そんな理由で日本人を…!
「君にとっては…ぐぬぬっ!…日本人もユフィも!どすこい!野望のための駒に過ぎないのかァ!!」
スザク達は身体と身体をぶつけあい大きな音を撒き散らしている。しかし、やはり相撲は日本文化と言うべきか、筋肉量で劣るスザクが見事にルルーシュと互角の戦いを演じている。
「全ては盤上のことだ!どすこい!全ての罪はこの俺にある!ふっ!はっ!だが、ナナリーは関係ない!」
「卑怯だ!うぐっ!ナナリーをだしにして!!」
…?ナナリー総督?何故ここでナナリー総督の話が…?そして、スザクとルルーシュの攻防は階段際になっていた。流石にあの階段を転げ落ちれば私やルルーシュでも打撲くらいするはず…。二人は必死の攻防を繰り返していた。
「ルルーシュ…!きみはっ!どすこい!許されるとどすこい!思ってどすこいどすこい!居るのか!どすこい!」
「どすこいどすこい!許す許さないじゃない!どすこい!俺はナナリーを助けたいだけだ!どすこいどすこい!そのためには!どすこい!お前に頼むしかないんだ!」
「それは人に物を頼む態度じゃないんだよ!!」
「お前が口で言っても分かってくれないからだろ!!」
ゼロがナナリー総督を助ける…?一体何を言っているのだろう…?
ふと、スザクの手が緩んだように見えた。もしかしてスタミナ切れ…?まさかスザクが負けるなんて…!そう思った瞬間…
「ルルーシュッ!」
ルルーシュの顔面にスザクの拳が突き刺さっていた。
「おい!パンチは相撲じゃ反則だろう!」
「うるさい!ギアスなんてものを使って人を操る君に反則だとか卑怯だとか言われる筋合いはないよ!」
確かに、ルルーシュ…いや、ゼロにだけは反則だなどとは言われたくはない。スザク…やっちゃいなよ、そんな悪者なんか!
「スザクッ!」
ルルーシュの拳がスザクの顔面をブチ抜いたが、スザクは反撃に蹴りを繰り出していた。とはいえルルーシュもそんなに黙って殴らたり蹴られたりされるほど柔な鍛え方はしていない。蹴りを腕で防御し、スザクを突き飛ばして距離を取っていた。
「かかってこいルルーシュ!君はなぜ僕に鍛えろとギアスをかけた!?」
「…?何の話だ!」
二人は同時に走り出し、スザクはルルーシュの顔面に一撃を、ルルーシュはスザクの顔面に一撃を叩き込んでいた。お互いに顔面への殴打は中々キツかったのか、ふらふらと距離をとっている。…一度呼吸を落ち着かせるつもりだろう。
「クロヴィス殿下殺害の時、俺を助けたのは何故だ!?」
「日本人を信用させるためだ!」
やはりそういうことか…!ルルーシュ…いや、ゼロめ、許せない!もしかしたらルルーシュは友人であるスザクを助けるためにやったと思ったのに!
スザクはルルーシュのボディに一撃を、ルルーシュもスザクのボディに拳を一撃ずつ叩き込んでいた。
人間、顔面に対する殴打による脳震盪ばかりをイメージしがちだけど、あのボディへの一撃というものは中々来るものがあるはず。そして一度距離をとって互いに睨み合っているようだ。
「ホテルジャックの時、生徒会のみんなを助け出したのは何故だ!?」
「黒の騎士団のデビューに使えると思ったからだ!」
やはりそういうことか…!ルルーシュ…いや、ゼロめ、許せない!もしかしたらルルーシュは生徒会のみんなを助けるためにやったと思ったのに!
三度目の正直というべきか、二人は再度同時に走り出し、スザクはルルーシュの顔面に回し蹴りを叩き込み、ルルーシュは膝蹴りをスザクの腹にブチ込んでいた。
お互いノーガードでの殴り合いに体力がつきたのか、仰向けになって倒れてしまった。
「…嘘だな。君の拳を受ければわかる。君は本気じゃない、わざと僕に殴られて罰を受けて居るつもりか」
…え?そうなの…?いや、そんなはずはない…だってルルーシュは…いや、ゼロは陽菜達を殺したのだから…!
やがて、体力が回復したのだろう、二人は起き上がり、再び向き合っていた。
「嘘なら…ルルーシュ、君の嘘を償う方法は一つ、嘘を本当にしてしまえばいい。君は正義の味方だと嘘をついた…だったら、本当に正義の味方になってみろ!!ついた嘘は最後まで突き通せ!この戦いを終わらせるんだ!君はゼロ、僕よりも頭が良くて筋肉もある、そんな君にしか出来ないことを!世界を平和に、みんなが幸せになるやり方で!!」
そう言うとスザクは少しだけバックステップを踏み、ルルーシュを睨んでいた。ルルーシュは何故か頷き、仁王立ちをしている。
スザクはそこから助走を取ってルルーシュの顔面にドロップキックを叩き込んできた。ルルーシュはそれを甘んじて受け、吹き飛ばされている。石段を転げ落ちたがしばらくすると登ってきてまたスザクと対峙していた。
「ナナリーを守りたいのは僕だって同じさ、ルルーシュ」
「ありがとう、スザク…」
スザクから差し出された手にルルーシュが手を伸ばしている。突如感じた気配に背後を振り返るとカノンさんが口に人差し指を当てて立っていた。…静かにしろということか。我ながら二人の真剣勝負に魅入ってしまい気配に気が付かなかったらしい。よく見れば数人の歩兵が居り…ふむ、どうやら囲まれている様だ。
そしてスナイパーが現れた、ルルーシュの脇腹を狙撃せんと銃を構え始めた。
「ディゼル卿は我々が発砲したらゼロの確保に向かってください。」
「分かりました。」
スザクは何故かルルーシュ…ゼロに納得している風だが、私にはそれが理解出来ない。確かにルルーシュはマッスルガイで、付き合いも2年ほどにはなる。だが、ルルーシュは私達を欺いてテロリストとして活動していたのだ。許せることではない。
そしてルルーシュに向けた発砲が行われたので私もすぐに飛び出す。
「そこまでよルルーシュ…いえ、ゼロ!」
流石のマッスルガイであるルルーシュも腹に風穴が開けば思わず痛みでうずくまってしまったようね。というよりも、我々の様なマッスルガイは普段痛みというものにかなり耐性を持っている。故にいざ痛みを感じた際にパニックに陥ってしまうのだ。
私がルルーシュを地面に押さえ付けると、他の歩兵達も出てきだようだ。ルルーシュはそんな状況に心底驚いたのか、左右を見渡している。
「スザク…!俺の踏み心地はそんなに良かったか!?一度ならず二度までも俺を踏み台にするのか!!」
「ち、違う!ルルーシュ!」
ルルーシュは押さえつける私を力を振り絞り跳ね除けようとするが、今のルルーシュはスザクとの相撲で体力を消耗し、腹に風穴が開いているのだ。万全の力など出せようはずもない。
「スザク…俺が馬鹿だったよ。お前にだけは…使いたくなかったんだがな!!」
一体…何を?まさか…!
「ルルーシュ ヴィ ブリタニアが命じる!スザァク!!貴様は…"私の奴隷となれ"!!!」
補足説明
・式根島にてスザクに鍛える様に仕向けたのはマーヤの絶対鍛錬のギアスです。
・上記により、ルルーシュはまだスザクにギアスをかけていませんでした。