一瞬の油断だった。ルルーシュを押さえ付ける私は放たれたスザクの回転蹴りをモロに喰らい、吹き飛んでしまった。
「ふふ…ははは!ははははは!最初から…最初からこうしていればよかったんだ。何が友達だ。馬鹿馬鹿しい…我が奴隷よ!ここにいる目障りな者達を蹴散らせ!」
「イエスユアマジェスティ…」
吹き飛ばされた私が駆けつける頃には半分以上の兵士がスザクによりタコ殴りにされていた。
「ははははは!いいぞぉ!スザク、お前のマッスルパワーでこの場のブリタニア兵を消し去ってしまえ!」
流石の私もルルーシュとスザクを同時に相手にするのは難しい…!何か手はないだろうか…!
そうだ!目には目を!拳には拳を!ボディーブローにはボディーブローをだ!つまり、ギアスにはギアス!私はスザクに意識を向ける。
「スザク!貴方ならギアスになんて負けないはずよ!意志を強く持って!貴方は"鍛えられているのだから"!」
「…う!うぅ…俺は…!僕は…!」
よし!スザクの動きが止まった!今のうちに…
スザクを鍛えないと!
スザクの腹にさっきのお返しとしてドロップキックを叩き込み、吹き飛ばされている空中のスザクに追いついてからの!アームハンマー!
落下地点に先回りして、膝を背骨に叩き込むッ!!
…っあれ?私は一体何を…
「馬鹿な…!この一瞬でスザクが…!?」
…そうか、スザクを鍛えようとした結果…『私がスザクをボコボコにする』という困難を与えてしまったようね…よし、生きてはいるわね…。
「今よ!ナイトメア部隊!」
カノンさんの号令で突如ナイトメア部隊が現れ、ルルーシュに対して発砲を開始した。ルルーシュはスザクを庇う様に前に立ち、ナイトメアのアサルトライフル弾を何と拳で弾いていた。
「おい!マーヤ ディゼル!」
…はっ?今私…?
「ディゼル卿!今の話は本当ですか!?」
…どうやらまた"質問に答えて"しまっていた様だ。
「まさかお前もギアスユーザーだったとはな…!自他を鍛えさせるとは何で羨ましいギアスを…こうなったら…!」
ルルーシュ…いやゼロは突然その全身の筋肉を膨張させ、ダブルバイセップスのポージングを決めた。腹に風穴が開いているはずなのに見事な筋肉のキレだ…!
そしてそれが合図かの様に援軍に来たナイトメア部隊は突然の銃撃に沈み始める。現れたのはグロースターだったが、背中のフロートシステムは何故か黒の騎士団などが使っている物と同じだ。
『ルルーシュ!』
「その声はコーネリア皇女殿下!何故ゼロと…!?」
『マ、マーヤ…!…これには事情が…!』
何ということだ。おのれゼロ…!スザクだけでなくコーネリア皇女殿下まで奴隷にしたのか…!
コーネリア皇女殿下の駆る空飛ぶグロースターが瞬く間にブリタニアのナイトメアを無力化していく。流石はコーネリア皇女殿下、奴隷になってもその実力は本物ということだろう。
『姫様!どうして裏切ったのですか!?』
『訳は話せぬ!許せギルフォード!』
そう言ったコーネリア皇女殿下はギルバートGPギルフォードさんの乗っているヴィンセントを蹴り飛ばし、ルルーシュとスザクを乱暴に掴んでから飛んでいく。
「ディゼル卿…一先ずトウキョウ租界に戻りましょう。このことをシュナイゼル殿下に報告しなければ」
「じゃあ私は先に帰ってますね!」
一足先にダッシュでトウキョウ租界に戻ると、すぐにシュナイゼル殿下のいる部屋に向かう。ノックをしたら勢い余って扉を破壊してしまったが…まぁそっちは後で弁償すればいいだろう。
「枢木卿がゼロの…ルルーシュの手に堕ちたのは残念だ。それにコーネリアもね。…今は兎に角君だけでも戻ってきてくれた事を喜ぶべきだろうね、マーヤ。…今君にまで居なくなられてはナナリーも悲しむだろうから。…ゼロのギアスなるもの、マーヤは知っているんだよね?君の知っている事を全て聞かせてくれないか?」
「はい。…ルルーシュ…いえ、ゼロの持つギアスは相手を操る事ができます。実は私も『質問に答える』というギアスをかけられている様で…」
「なるほど、だから君はゼロに『今何をした』と訊かれて『何って…絶対鍛錬のギアスを使っただけだが?』と答えたのか…。君のギアスについてはまた詳しく聞くとして…ゼロは枢木卿に奴隷になる様に命令したんだよね?」
私は頷く。…というか私そんな風に回答したのか。
「…君のその様子だとどうやら君は質問の内容を覚えていない様だね?」
「はい。…というより質問された…いえ、何をされたのかも分からず、ただ少しぼうっとしてたなと思う程度です。」
「なるほど、どうやらゼロのギアス…相手の思考を封じて無理矢理命令に従わせるというプロセスには大脳への介入がある様だね。その副作用とでもいうのか、ギアスの効果の前後では記憶に不具合が生じるのだろうね。」
…そういう原理だったのか。流石はシュナイゼル殿下、限られた情報からすぐにそんな仮説が立てられるとは。
「それにしても枢木卿には奴隷になれとギアスをかけ、マーヤには質問に答えろと…。ふむ、恐らくゼロのギアスは一人につき一度しか使えない様だね。でなければマーヤにも奴隷になれと命令するはずだからね」
「確かに…」
それから私の絶対鍛錬のギアスについても説明をするとシュナイゼル殿下は何かを確信した様に頷いた。
「ありがとうマーヤ。君のお陰で全ての手札が私の手の中に集まったよ。」
それと同時に破壊されたドアからナナリー総督が入ってきた。しかも車椅子を押しているのはユフィである。二人ともシュナイゼル殿下が呼んだのだろうか?
「やぁユフィにナナリー、呼びつけてしまって悪かったね。」
「いえ、私は構いません。シュナイゼルお兄様」
「私も久し振りに牢屋から出られて嬉しかったです。」
皇族の方だけで話でもするのだろうと思い、私は部屋を出ようと扉の方に歩き始めるとシュナイゼル殿下に呼び止められてしまった。
「待つんだマーヤ。君にも聞いてほしい話なんだ。」
「それは失礼しました。」
改めてシュナイゼル殿下のそばに戻ると、シュナイゼル殿下は一枚の写真を取り出した。
「まぁ、これは写真ですか?」
「写真?」
ユフィはともかく、目が見えないナナリー総督に写真を見せても意味はないだろうと思いつつ、写真を見てみるとどうやら子供を含む4人の人物の写真…家族写真だろうか?黒髪の少年と…栗毛の少女…それに黒髪の女性が写っている、そして…
「まぁ!これはルルーシュですね、ナナリーも写ってますよ」
「お兄様と私が?」
…?ナナリー総督のお兄さんが…ルルーシュ?言われてみれば確かに面影がある。ナナリー総督も目が見えている頃なのかクリクリとした可愛らしい目を見開かせている。…今とは想像ができないほどにアグレッシブなポージングを決めてるのが気になるけど。
「それにこちらはマリアンヌ様ですね。」
「お母様の…私も見たかったです。」
…正直言って目の見えないナナリー総督の近くでナナリー総督の家族写真を見るなんて新たな嫌がらせなのではないだろうか?しかし気になることがある。
写真には4人の人物が写っているのだ。
黒髪の少年、ルルーシュ。栗毛の少女、ナナリー総督。黒髪の女性、ナナリー総督達のお母さんであるマリアンヌ様。最後の一人は…。
黒髪の少女。
「…私は宰相ということもあってね、色んな報告書類に目を通す機会がある。でもね、ブリタニアでは度々書類と人々の記憶が異なる場合があるんだよ。例えば…E.U.攻略のために派遣されたニクアツ マッスルガイなる人物…確かに存在する記録はあったものの、彼の来歴を辿っても彼が存在したという人々の記憶は存在しない。彼の高い能力と筋肉があればいくらでも噂が立ちそうなものだよね?でも、それが無い…」
記憶と記録が食い違う…。そういえばV.V.くんが皇帝陛下には記憶改竄のギアスがあると言っていたっけ…。まさか…。
「今回ゼロの正体がルルーシュだと分かった今、ある仮説が立てられる。ニクアツ マッスルガイの正体はルルーシュだよ。ニクアツ マッスルガイの高い能力も正体がゼロであるならばおかしくは無い。ゼロやマーヤがギアスを持っていたなら…そうだね、記憶を改竄する様なギアスをブリタニアの誰かが持っていてもおかしくは無いんだ。…例えば父上とかね。…ここまでの話を聞いて何か言いたいことがあるんじゃ無いかい?ナナリー」
ここでナナリー総督の話…?一体なんだろうか。
「マーヤさん。私は昨年までアッシュフォード学園に通い、生徒会にもよくお邪魔していました。…マーヤさんとも会っています。マーヤさんは覚えてませんか?」
「私が総督と…?」
何だそれは…全く覚えがない。…あれ?そういえばさっきの写真にロロが写ってなかった様な…
「ルルーシュの弟にロロって人はいますか…?」
「ロロ…?初めて聞く名前だね。…なるほど、ナナリーの代わりにルルーシュに与えられた偽りの弟と言うことか。恐らく監視役だろうか」
そんな…。
「でもロロとルルーシュはとても仲が…あっ…」
そうか、ルルーシュには人を意のままに操るギアスがある…!
「監視役のロロにギアスをかけ本当に弟にしてしまったのだろうね。恐ろしい力だよ」
なんて卑劣なんだ…!ルルーシュめ…許せない…!
「…さて、話を戻すとね、見えてきたんだよ。この写真に写る黒髪の少女の正体が。…君はルルーシュの双子の姉。マーヤ ヴィ ブリタニアだ。」
「なっ…!?」
「まぁ!マーヤがルルーシュの…?」
「つまりマーヤお姉様…ってコト!?」
私は事故のせいで過去の記憶がない。言われてみれば写真の少女は確かに私。まだ鍛え始める前の…貧弱な美少女時代の私と言えるものだ。
「私も初めて見た時は驚いたよ。それに失礼だがマーヤだとは思わなかった…年月も経っているし、今とは別人だからね。」
確かに髪色と髪型、髪飾は同じだがそんなものいくらでも変わるものだ。顔に面影があると言ったって今はこんな立派なマッスルウーマンになっているのだ…気付けなくてもおかしくはないだろう。
「そっか、じゃあ私達と一緒にルルーシュの四肢を引っ張った最後の一人はマーヤだったのですね!」
「え?」
「学園祭の時にお話ししたんです。昔お兄様と結婚するって言い争って私、ユフィ姉様、コーネリアお姉様でお兄様の四肢を引っ張って四肢脱臼をさせたって思い出話を」
学園祭の話も思い出せないし、そんなルルーシュを引っ張った思い出もない…というかコーネリア皇女殿下、あの人…小さい子に混ざって何やってんの!?
「…両手てに花を通り越して両手両足に花とはルルーシュは羨ましいね。ははは」
「まぁ!では今からでも…」
ユフィはシュナイゼル殿…あー…ゼル兄の腕を掴もうとしたが、ひらりと躱されてしまっていた。
「冗談でもやめてくれ」
しかし、私が仮にルルーシュの双子の姉だとして…父親はシャルル皇帝陛下ということになる。ここまではいい。だが、このマリアンヌさんなる人物が母親…。では私をエリア11に連れて行ったあの科学者の女性はどうなる?…ダメだ。事故やギアスのせいで全く思いだせない…。
…考えてみればお父様の記憶改竄のギアスはコードを持っていてギアスの通じないV.V.くんには効いていない筈。そしてV.V.くんはお父様のお兄様なわけだから叔父様である。…え、私、ずっと実の叔父にくん付けして呼んでたの…?そして、V.V.くんは私のことを姪だと分かった上で…今まで交流していたの…?
実の叔父を女装させたり抱き抱えたりと無茶苦茶だけど…怒ってたりはしないよね…?
はい、というわけで作者です。
原作を忠実に無視し続けた結果、なんとマーヤはルルーシュの双子の姉になってしまいました。夢女みたいだなぁ()
マーヤがルルーシュ並みのマッスルウーマンなのはブリタニア皇族の血を引いていたからなんですね〜
因みにちゃんとマーヤがブリタニア皇族という伏線は張ってます。時間があれば確認してみてください。
・アーニャ(マリアンヌ状態)の反応
・V.V.の反応
・ナナリーがルルーシュとマーヤを間違える
・マーヤがオデュッセウスの顔を殴りたいと思ってしまう
等