スザクの寝返りにより、トウキョウ租界の守備が手薄になってしまった。その為、比較的余裕のあったキュウシュウからルッキーが戻ってきてくれるらしい。とは言え、それまでは私とワイヴァンナイツが主力、キュウシュウではカレンを倒した星刻という人物と、卜部と呼ばれるモニカと関わりの深いパイロットの存在が確認できたものの、ゼロや藤堂と言った主力は見られなかった。更に、シュナイゼル殿下が潜ませている『ウルフ』からもゼロら主力によるトウキョウ租界への奇襲が報告されているとか。
私も出撃のために格納庫に行くと、スザクの裏切りにより乗り手不在になったランスロットが目に入る。
「まさかスザクくんがゼロに寝返ったなんて…」
「はーぁ…最高のパーツだったのにな…彼。でもまぁ、戦術兵器のランスロットに戦略兵器を撃たせる事態にならなくて良かったのかもねぇ」
「ふん…結局スザクもイレブンだったってことですよ」
我々の頭がおかしくなったと思われないためにもギアスのことは一部の秘密となっている為、スザクの意思で裏切ったとも言えず、スザクが悪く言われるのは少し心苦しい。…が、おそらくきっとこれも私のギアスにより無自覚にスザクへと困難が向かっているに違いない。そんなものがあるかは分からないが、ギアスが解かれた暁にはきっとスザクは今よりもずっと鍛えられ…てると良いなぁ…。それにしてもニーナの所属するインヴォーグはエリア11にはない筈。何故ここにいるのだろう?どうやらニーナもこちらに気付いたらしく、こちらに手を振ってきた。私も小さく振り返し歩み寄る。
「中華連邦以来ね。こんなところで何やってるの?」
「前に話した爆弾の話覚えてる?」
「えぇ、勿論。…あぁ、それが完成したってことね?」
なるほど、それで戦術だの戦略だのと言っていたのか。…ん?戦略兵器?
「マーヤにも約束したでしょ?だから用意したの!マーヤのために作ったフレイヤ…名付けて『フレイヤ・ボール』!」
「フレイヤ・ボールね…」
見せられたそれはナイトメアの手にいい感じに収まりそうな大きさの球体にしか見えないが…バツの悪そうなセシルさんとロイドさんを見れば危険な代物なのだとわかる。…特にあのロイドさんにすらそんな表情をさせるのだ。普通の兵器なはずがない。
「起動してから3秒後にて内部のサクラダイトが起爆して核分裂反応を起こし半径1kmの球体状のエネルギーを発生させてね発生させたエネルギーに触れたものを跡形もなく消滅させるんだけどこの時球体内部の空気すら消滅してしまって球体の縮小・消滅後は真空となった圏内に周辺の空気が流入して第二次第三次影響圏内に強烈な突風が発生しちゃうから広範囲に甚大な被害を及ぼすんだけど放射能とかは残らないのでとっても安全なの!」
…なるほど、要約すると3秒後に半径1kmを跡形も無く消し飛ばす爆弾ということらしい。安全とはいうが、強烈な突風をトウキョウ租界周辺で起こそうものなら何が起こるかわかったものではない。
だが、いざという時ゼロを差し違えても倒す為にこれは有効だ。
「ありがとうニーナ。大切に使うね」
「ううん!気にしないで!フレイヤ・ボールは10個作ったの!」
…そんなには…要らないかな…。こうしてサグラモールに2個のフレイヤ・ボールを携帯させ、私は出撃した。
第二次トウキョウ決戦とでも言うべき戦いにおいて、恒例とでも言うべきゼロの秘策はゲフィオンディスターバー…式根島で見せたサクラダイトに干渉するあのシステム…だった。だが、『ウルフ』によりシュナイゼル殿下はゲフィオンディスターバーを知っていたため、歩兵部隊の爆破処理により早々に復旧、これならば俄然こちらの方が有利…ルッキーが援軍にこれば決定打となる…!
『これは…まさか!読まれていた!?俺の策が…!』
「残念だったわねルルーシュ…いいえ、ゼロ!貴方の相手は私よ!」
お互いにそんな自覚は無かったとしても…双子の弟なのであれば姉である私が止めるのが務めだろう。
『ディゼル卿、姫様は我々で抑えます、ゼロの相手はお願いします。』
『マーヤ!青いやつと黒いやつは俺達が抑える!お前はゼロを頼んだぜ!』
敵の主力はギルバートGPギルフォードさんとワイヴァンナイツが抑えてくれる。残りは守備部隊が抑えてくれるはずだ。ならば私はゼロのみに集中すれば良い…!
『…なるほど、中華連邦でのリベンジマッチと言うことか…だが!』
ルルーシュのナイトメアの胸部が開いた…あのビームが来る!
『受けよ!』
「そんな攻撃が私に…」
『当たらない…か?避けてみるが良い、政庁への攻撃が看過できるならな!』
残念だけどルルーシュ…その手は効かないわ。ゼル兄が教えてくれたことだけど、政庁への攻撃をするなと部下に命じていることをこちらは知っている…つまり狙いはナナリー!そのナナリーに危害が加わる恐れのある攻撃をルルーシュはできない!
『…チィ!こいつ…!』
狙い通りルルーシュはビームを撃つことができず、その間に私は距離を詰めることに成功する。
「ルルーシュ!」
『マーヤ!』
スパイク型MVS付きのガントレットを展開した拳での殴打は当然の如くルルーシュの絶対守護領域に塞がれてしまった。だが!
「ハーケンフィストォ!」
副腕の一つのハーケンフィストを射出し、ルルーシュの背後へと拳を飛ばす。
『チィ…!後ろからも拳が!』
これも絶対守護領域で防いだけれど、それは想定内…『ウルフ』の情報ではルルーシュのナイトメア…蜃気楼は破壊力、機動力、防御力の全てが備わった最強のナイトメアではあるが、弱点がある。だから今回はその弱点を突かせてもらう。
ルルーシュもこちらの猛攻に耐えかねたのか、拳に絶対守護領域を展開し、ハーケンフィストを絶対守護領域で器用に防御しながらこちらにラッシュの連打を繰り出してくる。だが、私はその動きを一度見ている…だから!
「ルルーシュ、その技は既に見切ったわ!」
『何!?』
自身の策が読まれて動揺し、更にハーケンフィストによる攻撃への防御で集中力を欠いている…そんな不完全な状態なのであれば攻撃を見切る事は可能!ルルーシュの拳を開始して反撃の殴打を見舞う。…流石に絶対守護領域で防がれているけれど
『貴様…まさか蜃気楼のエナジー切れを…!?』
そう、ルルーシュの蜃気楼の唯一の弱点…それは攻撃、防御、高速移動のいずれにも絶対守護領域を使用すること。当然これだけのものを使用するには相応のエナジーを消費する。故にこちらの狙いはエナジー切れだ。攻めて攻めて攻めまくりエナジーを消耗させる…!補給なんてさせない!更にここでダメ押しというやつよ!
「ルルーシュ!私は本当は貴方の双子の姉よ!」
『何…?何を馬鹿な…』
「ルルーシュが幼い頃四肢を脱臼したことがあるでしょう?ナナリー、ユフィ、ネリ姉、そして最後の一人は私よ!」
『そんな馬鹿なことが…』
その瞬間、ハーケンフィストが蜃気楼の脚部を破壊することに成功した。本当はコクピット狙いだがギリギリで避けられたようだ。
『…チィ!戯言で俺を惑わせて奇襲とは…!』
卑怯な手だが、ルルーシュはそれほどの強敵、私には分かっている…あらゆる手段を使い確実に仕留める…!勝てば良かろうなのよ!
「行きなさいハーケンフィスト!」
私は全てのハーケンフィストを射出し、四方向からの同時攻撃を仕掛けた。
『舐めるな!』
ルルーシュの取った行動は的確な防御、だが甘い…!
「まだ脚が…残ってるのよ!」
『いけない…エナジーが!』
要約私は蜃気楼に蹴りをブチ込むことに成功した。流石にこれでやられてはくれないが、かなりの優勢だ。このままいけば勝てる…!
『避けろ筋肉女!』
…!私がフロートシステムにより高度を上げると、ハドロン砲とは別の赤い光が通過した。一体今のは…?
『ゼロは私が守る!』
赤い…ナイトメア…あれは!
『筋肉女!何をぼさっとしている!』
ルッキーのパーシヴァルが赤いナイトメアの射出された右腕を弾き返し、私の前にやってくる。あの赤いナイトメアは紅蓮聖天八極式…乗っているのはカレンだろう。一体何故戦場に…まさか奪われたのか…!
「…ッ!」
咄嗟にその場から退避すると、真上から蜃気楼のビームが降ってくる。ルルーシュはこの一瞬の隙にプリズムを射出し、反射を利用して攻撃してきたのだろう。だが、今の蜃気楼はエナジー切れ寸前…私がカレンを抑えてルッキーにゼロを攻撃して貰えば…。いや、待てよ…?紅蓮が強奪されたってことは…!
咄嗟に肘側のニードルブレイザーのガントレットからブレイズルミナスを展開して背後を防御すると、MVSの剣が二振り振り下ろされた。ランスロット…!やはり!
『ふははははは!どうやら戦局は逆転のようだな?マーヤ ディゼル!』
しまった…完全に失念していた…!まさか政庁にカチコミを入れ、ランスロットを強奪するなんて…!こうなったら…これを使うしかない。フレイヤ・ボール…!跡形も無く消し飛ばすしか…!
『ゼロさえ倒せば!』
ルッキーがハドロンショットを放つものの、絶対守護領域を破壊することはできず、更にその絶対守護領域を蹴る事で大きく加速…逃げる気か…!
「逃がさない…!」
『我が奴隷のスザクに命じる!マーヤ ディゼルを殺せ!』
『イエスユアマジェスティ…』
どうにかしてルルーシュを追いかけたいが、カレンとスザクがそれを許すはずはない。
『おい筋肉女!枢木は私が抑える!お前は紅蓮を破壊しろ!』
「でも!」
『早くしろ!ゼロに戻られたら我々の負けだぞ!』
そしてこのやり取りの中でも、スザクは構わずMVSで切り掛かってくる。サグラモールのニードルブレイザーからブレイズルミナスを展開して防ぎ、ルッキーが背後から攻撃するものの、素早く躱されてしまう。更に紅蓮の射出された右腕…!サグラモールのハーケンフィストは試験運用であり、完成形があれなのだ。輻射波動と呼ばれる必殺の右腕のリーチは今までと比べ限り無く長い…!更に恐ろしいのは紅蓮自身もエナジーウィングと呼ばれる新システムで高い機動力を持っていると言う事…だが、私がやるしかない!この苦難、乗り越えてみせる…!
『一気に決める!』
「させない!」
射出された紅蓮右腕を回避しつつ、一気に距離を詰める。カレンもエナジーウィングにより距離を取ろうとするが、サグラモールのハーケンフィストのブースターを起動する事でこちらも加速が可能だ。
『へぇ…!流石ね、やるじゃない!』
ハーケンフィストの一つを後方へ防御の為に回し、残りの三つでカレンを攻撃する。しかし、その圧倒的機動力を前に拳はいずれも空を切ってしまう。
「決めきれない…!サグラモールの性能も上がってるのに…!マシンポテンシャルの違いなど言い訳にしかならない…紅蓮に搭載されたマッスルデバイスにより恐らく今の紅蓮は60%ほどの性能しか引き出せていないはずだ。60%の相手に私は全力で負けている…これは私が鍛え足りないからに違いない…!更に、ルッキー達がいた筈の方向からヴァリスが飛んで来た。
『悪い…筋肉女…!』
ランスロットを見ると左手と右脚を失った目に入る。ルッキーでもスザクは抑えきれなかったようね…。
『マーヤ、12時の方向に最大限の防御を!』
突如入った通信に反応し、私は四基のニードルブレイザーからブレイズルミナスを発生させる。そして次の瞬間、私の眼前にはハドロン砲の赤い光が広がる…これは…シュタルクハドロン…!?サグラモールの出力が上がっていた為、なんとか防げたがかなり危険だった。しかし、私をも巻き込みかねないそれにカレンも流石に反応できなかったようで紅蓮のエナジーウィングを片翼だけ破壊することに成功していた。
「どうしてエリア11に…。E.U.にいた筈じゃ!」
『娘のピンチだもの。母親として当然でしょ?なんてね…』
…?アーニャは一体何を言っているのだろう?
「アーニャ?」
『いいえ、今はマリアンヌ。貴方のお母さんよ』
親子(母娘)共闘とか熱くないですか?(作者の趣味)