ルルーシュの「なぜ母さんを守らなかった」という質問に対し、父上はV.V.くんに裏切られたという話をしていた。そう言えば母さんはV.V.に殺されたと言っていたけど、恐らく私が記憶改竄を受けた後の出来事なのだろう、その出来事に心当たりはなかった。
「ねぇ、ルルーシュ。話の腰を叩き折って悪いんだけど、8年前に母さんに何があったの?」
「?なぜお前が『母さん』と呼ぶんだ…?まぁ良い、今から8年前、俺とナナリーの母親…マリアンヌはテロリストである何者かに殺された…そして俺は父親であるそこのボロ雑巾に『なぜ母さんを守らなかったか』を尋ねたんだ。…母さんの暗殺の後、俺とナナリーはその男に日本に捨てられたんだ!」
なるほど、母さんの言葉が正しいのであればそのテロリストはV.V.くんと言うわけだ。V.V.くんは見た目こそ子供だが父上の兄…つまり私やルルーシュの叔父である。構造や何かしらの細工は可能だろう。
「ワシはァ…お前達を捨てたわけではァ…無い…」
「何を今更!」
「ワシはすぐにィ…暗殺者の正体が兄さんだとォ…気付きは、した。故にィ…お前達を守る為にィ!ワシは、真実に辿り着けぬようにとォ…遠ざけたのだ。」
大切な子供達だからこそ突き放し、親子関係を破壊…これも恋、いや愛の形ということか。
「だが!お前は俺たちが日本にいること知りながら戦争を起こしたじゃ無いか!」
「それはァ…ワシの子供であるお前ならばァ…筋肉で解決できると思ったのだァ…」
流石は筋肉…筋肉は全てを解決する…!戦争の災禍も弛まぬ鍛錬を持ってすれば…。あ、そうか…そう言うことか…。
「ルルーシュ、貴方とナナリーが日本に送られ、その後戦争に巻き込まれた理由がわかったわ」
「何!?」
「きっと全ては私のせいよ。」
絶対鍛錬…このギアスは自分や相手を鍛える為に過酷な苦難を与えるギアス。ギアスを授かってばかりの幼い私がルルーシュに無意識に使っていてもおかしくは無い。
「なぜお前が出てくる!?」
「ねぇ、ルルーシュ。四肢を脱臼するくらい引っ張られるなんておかしいことだと思わない?」
「それは…」
そう、アレも私のギアスが原因…四肢をもがれるくらい引っ張っても耐えられるようにと苦難を与えた…。そして私のギアスが原因であるならばネリ姉も四肢を引っ張るのに参戦してもおかしくは無い。
「ふっ…ふはは…は…。ワシすらもォ…ギアスの影響下に置きルッルーシュ達に過酷な人生を歩ませるとは…。マーヤよ…今更ながらァ…これほど逞しく育ったのであればァ…あいつも自慢であろう…。そしてェ…ルッルーシュは見事過酷な苦難に耐え…見事なマッスルガイになりよったァ…流石は…」
「結果論だろうそんなものは!マーヤのギアスなんて関係ない!お前は…俺とナナリーを捨てたんだよ!!」
だが、ルルーシュの叫びは父上にはもはや聞こえていないようだ。私がボコボコにブチのめしたせいで最早虫の息…意識も朧げといった様子だ。
「マリアンヌ…今…」
「おい!勝手に死ぬな!まだ訊いていないことがある!謝らせたい人がいるんだ!ルルーシュ ヴィ ブリタニアが命じる…"死ぬな"!」
「…」
ルルーシュは父上の胸倉を掴み、何度も何度も揺さぶっているが既に事切れているようだ。
「クソ…!一人で勝手に満足して死ぬとは…!」
悔しそうなルルーシュを私はただ見つめることしか出来なかったが、ふと後ろから背中を叩かれる。驚いて振り返るとVV.くんが私の側までやってきていたようだ。
「今のルルーシュは僕に何をするかわからない…守ってくれるよね?マーヤ」
先ほどまでの様子を見ればルルーシュが父上に対して激しい怒りと憎悪を滾らせていたのがわかる。それが消化不良気味にいなくなったとなれば…どこかに怒りの矛先を向ける可能性はあるだろう。特に現在母さん殺害の黒幕説が濃厚なV.V.くんは格好の的だ。
「…おい、マーヤ…V.V.を渡せ…。」
「断る、と言ったら?」
「"その男をこっちに渡せ"!」
どうやらルルーシュは冷静さを欠いているようね…。
「私にギアスは効かないわ。」
「だったら!」
ルルーシュは瞬時に強く踏み込むと、思い切り私の顔面に拳を突き出してくる。…しかし、プロテインを服用し、父上を超えるレベルの筋肉にドーピングされた状態で肉体が固定された今の私にとっては欠伸が出るような速さでしかない。
「無駄よ。」
私はルルーシュの拳を受け止めつつ、その勢いを殺さないように腕を引き、引っ張られて前に出てきたルルーシュの顔面に拳をブチ込む。
「ぐぬぅ!?」
「ルルーシュ、頭を冷やしなさい。」
「何を偉そうにッ!」
どうもルルーシュは頭に血が昇ってしまっているようだ。私はルルーシュのお姉ちゃんなのだ…ここは一肌脱いで弟にしっかりと教え込まなければ。そういえばクラリスさんもよく私に言っていたものだ。
『マーヤ!貴方が!謝るまで!殴るのを!やめない!』
と。自分が悪いのだと反省するまでボコボコに打ちのめせばきっとわかってくれるはずよ!…それに何だか遠い記憶の母さんも同じようなことを言っていた気がするわ…あ、思い出してきた。
『うーん、マーヤがどうしても泣き止んでくれないわね…とりあえず気絶させよっかな。えい、当て身』
なるほど、今思えば暴力による私の反抗の意思を破壊する殴打や当て身による意識の破壊も全ては恋…いや、愛によるものということか!
今のルルーシュはきっと長年母からの愛情を受けられずに愛に飢えているはず…。ルルーシュのプライドも、反骨精神も、骨も何もかも破壊して愛を叩き込んであげなくちゃ!
「まずは腹に拳を叩き込むわ!腹筋に力入れなさい!ルルーシュ!!」
「何!?」
言った通り私はルルーシュの腹部に拳を捩じ込む。圧倒的筋肉を用いることで私は肘関節を外し、筋肉による錐揉み回転を加える。高速回転するドリルのようになった拳は易々とルルーシュの腹筋を破壊し、後方へとブッ飛ばした。外れた肘関節はコードユーザーの不老不死の力で元に戻るし、痛みは気合いで和らげれば問題はない。
「ば、馬鹿な…!俺の腹筋が…!」
ギュピギュピと足音を鳴らし、ルルーシュへと近づくが、ルルーシュはジリジリと距離を取ろうとしているようだ。姉からの愛を拒むとは…!意地でも愛を叩き込んでやる為、まずは捕まえなければ…だが、本気で逃げるマッスルガイを捕まえるのは一苦労…ここは相手の虚を突くしかないだろう。まずは己の左腕の骨を右手で砕く。
「!?何をしてるんだお前は…!」
そして思い切り振りかぶって…砕けた左腕をルルーシュへと伸ばすッ!
「ッ!そういうことかッ!」
私の手はしっかりとルルーシュを掴み離さない。砕けた左腕が治るに従い私とルルーシュの距離は詰まっていく。そしてその顔面に拳をねじ込むッ!!
「…咄嗟に腕を掴んで威力を抑えるなんて中々やるわね、ルルーシュ」
「黙れマーヤ…!貴様の目的は何だ…!」
「前にも言ったでしょ?ルルーシュ、あなたに恋を…いえ、愛を叩き込むのよ!」
「お前は本当にいつも何を言ってるんだ!?」
会話に気を取られるとはまだまだ甘いわねルルーシュ。いや…これはつまり本能的に実の姉である私に家族愛を感じ甘えてしまっているということ…ルルーシュも口では何だと言っているがまだまだ甘えたりない年頃ということか。
私はルルーシュの爪先を思い切り踏み付け、掴んでいた左手でルルーシュの胴体を突き飛ばす。
倒れたルルーシュに対して私は思い切り跳躍し、両脚で勢いよく踏みつける!!
…が、流石に避けられてしまったようだ。
「クソ…勝てない…!C.C.!この場は撤退だ!幸い目的は達成している!」
そういうとルルーシュは緑髪の女性を抱えて行ってしまった。私にもV.V.くんを守るという目的がある為深追いせず、暫くしてから出る事になった。出た先は何故か神根島ではなく、私がV.V.くんを助けたあの施設だったわ、
「あっちの扉はルルーシュに待ち伏せされる危険があるからね、こっちを直して置いて正解だったよ。…それにしても嚮団員も随分減っちゃったね。…おや?君もいたのかい…フェネット」
「…。」
フェネット…?聞き覚えがある名前だと思い、見てみると確かにシャーリーのお父さんのようだ。そういえばジェレミアさんをどうこう言っていたっけ。
「シャーリー…だっけ?君の娘は…元気そうでよかったね?」
「…お陰様で」
どうやらシャーリーの事をV.V.くんも知っているようだ。シャーリーはお父さんとも仲がいいみたいだし、きっと職場の人に自慢の娘だとかで顔写真でも見せびらかしていたに違いない。シャーリーは可愛いし明るいから父親としては自慢もしたくなるだろう。
…自慢の娘、か。私もそう言って貰えるように成長出来ているだろうか?
そこからの数日、私は崩れた建物の復旧作業をする事になった。V.V.くん曰く、ここの施設建物は黒の騎士団とルルーシュによって攻められてこうなったらしい。戦闘の痕跡を見れば殆ど一方的であったことが分かる。…これじゃ虐殺じゃない…!
「済まないマーヤちゃん、この瓦礫もどかしてくれないか!」
「分かりました。」
ギュピギュピと歩みを進め、瓦礫をどかす。
「何…コレ…」
私の目の前に居たのは…瓦礫に潰されめ亡くなった子供達だった。
「…この施設の子ども達です。嚮主V.V.は…こう言った子ども達を集めて親の代わりに育てていたんですよ。」
「…そうですか。どこか、どこかにお墓を…」
そうだ…自分の弟だからと私は忘れていた。ルルーシュは陽菜達を殺したのだ…何の罪もない、懸命に生きていただけの…!それにこの施設でもこんな虐殺を…!ルルーシュがゼロになったのはナナリーのためだと聞いたが、だからなんだというのだ。こんな虐殺をナナリーが望むのだろうか?いや、望むはずがない…!ナナリーならばきっと一緒に折り紙を追ったり、歌を歌ったり、腕相撲をしたり、そんなふうに遊ぶ事を望むはずだ…!
やはりルルーシュを許すわけには行かない。私のこの凄まじい筋肉と不老不死の肉体を使って二度とこんな惨劇が起きないようにしなければ…!でなければ何のための筋肉なのだ…!
すると施設の奥から一人の研究員らしき人が慌てたようにやってきた。
「申し上げます!ルルーシュ ヴィ ブリタニアが神聖ブリタニア帝国第99代皇帝に即位しましたァ!」
「何ィ!?」
ルルーシュが…皇帝に…?
「早速確認しに向かうわ!案内して!」
「はい…」
案内されたモニター室ではルルーシュが空気椅子で腰掛けている様子が見える。おそらく周りに散らばっている何かは玉座なのだろう。さらに現れたのは新たなるナイトオブラウンズなる人物達…
『紹介しよう。我が騎士、枢木 スザク。彼には私が新たに定めるナイトオブラウンズのナイトオブワンに任命する。…ついでだ、皆も入ってきてくれ』
モニターに映し出されているルルーシュがそう言うと、男女が三人現れた。
『順番に紹介しよう。彼女のことは知っている者も多いのでは無いか?元第三皇女にして現在は名を改めたユフィ タダノだ。彼女にはナイトオブスリーの称号を与える。』
『我々に逆らうものは撲殺です。』
ユフィ…!?おかしい…ルルーシュのギアスは一人につき一度のはず。どんな手を使ったかはわからないが、ユフィまで奴隷にしてしまったようだ…。
次に紹介されたのはマッスルガイ…
『彼は我が弟!名をロロ ランペルージと言う。彼にはナイトオブエイトの称号を与える。』
『ブラザーはボクが守りマス!』
かわいそうなロロ…操られて奴隷になり、今もあんな見事なキレのダブルバイセップスをさせられているのね…!
そして最後に紹介されるのは私も知らない日本人の男性だろうか?
『彼は枢木 スザクと同じ日本人だ。名前を卜部 巧雪と言う!前ナイトオブトゥエルブを討ち取った実力者だ。彼にはナイトオブイレブンの称号を与える。』
『ナイトオブラウンズは虚名にあらず。』
モニカを倒した…!?モニカは確かにモニモニ言って跳ねてる変人残念美女だが、ナイトメア戦闘に関しては私にも引けを取らない実力者…それを打ち破るなんて…!でも私は今ここの瓦礫撤去をしているし、最早ナイトメアも無い。私には何も出来ないのが悔しく思えてくる。
「マーヤ、ルルーシュを止めたいんだよね?でもナイトメアが無いから行けない…そう思ってるんじゃ無いかな?」
「…!どうしてそれを…」
するとV.V.くんはニコリと笑う。
「用意してあるよ。新しい君専用の機体がね」
クラリス式教育方法やマリアンヌ式教育方法については強くオススメをしません。
※マーヤやルルーシュは特殊なギアスによる鍛錬を受けています。真似しないでください。
【悲報】マーヤの脳筋思考、ギアス関係ない
「V.V.が親代わりに育てていた」→嘘は言っていない()
Q.マーヤがコードユーザーになったらどうなる?
A.知らんのか?不老不死を悪用したトンチキ格闘術を披露し始める。