私の身体が…フレイヤの光に…破壊の光に包まれていく。
だ が !
や は り 筋 肉 !
筋 肉 は 全 て を 解 決 す る !
そ う ! 私 の 筋 肉 は ! フ レ イ ヤ に も !
負 け な か っ た の だ !
光に包まれた時はダメだと思った。だが、やはり筋肉に不可能は無かった。お気に入りのヘッドドレスを含め、ジャンヌダルク諸共周りの全てが掻き消えてしまったのは大変遺憾だが、筋肉さえあれば何の問題もない。走って海の上を渡り、私はヴァイスヴォルフ城を目指した。私の迷いのない晴れやかな気分に呼応してか、何だかいつもよりも風を感じる気がする。
「許さないわV.V.…!自分に筋肉がないからって他人の筋肉を憎むなんて…!」
世界から筋肉を滅ぼす計画は何としても阻止しなくてはならない。ヴァイスヴォルフ城への道中…森の中を走っていると、なんとレイラを見かけた。あまりの遭遇に私は思わず足を止めて声を掛けてしまった。
「久しぶりね、レイラ。」
「マーヤ…!?驚きました…」
どうやらレイラも私を見て非常に驚いてくれているようだ。それもそうだろう、何せ私がE.U.への潜入任務をしていた頃ぶりなのだから。
「その…何故森の中に全裸でいるのですか…?何か…新しい健康法なのですか…?」
…。しまった…フレイヤに掻き消されて私今全裸だ…道理で風を感じるわけだ。
「…ちょっと事情があって…。悪いんだけどおばあさん達から服を貰ってきてくれないかしら…?」
「え、えぇ…勿論。ちょっと待っててくださいね」
その場からダッシュで消え、ダッシュで戻ってきた(その間凡そ15秒)レイラから服を受け取り着用するとなんだかE.U.にいた頃を思い出す。
「…突然どうされたのですか?また、潜入任務ですか…?」
「ううん、今回は違うの。」
「そうですか…。佐山准…あ、リョウやアヤノ、ユキヤやランドル博士は元気ですか?」
「ええ、みんな元気よ。特にユキヤは最近リョウよりもマッスルガイになってきたの」
そうだ。V.V.を止めなければせっかく逞しくなったユキヤの努力が無に帰してしまう…!そんなことは許してはいけない…!
「そうですか、みんな元気でやっているのですね。こちらは私もアキトも元気ですよ。」
レイラが元気なのは見ればわかるが、どうやら日向…アキトも元気なようだ。
「そう。それはよかったわ…ごめんなさい、私はもう行かないと!」
「えぇ、また…今度はリョウやアヤノ達と遊びに来てくださいね。アキトと待ってますから!」
私は頷き、ダッシュ森の中を駆け抜け、ヴァイスヴォルフ城へ、そしてアポロンの馬車まで到着した。その辺りから武装した嚮団員の人達が立ち塞がってきたので全員をボコボコに捩じ伏せて突き進むと、また一人が私の前に現れた。私は迷わずに拳を振り上げ、その顔面に狙いを定める。
「マーヤちゃん!?ま、まま、待ってくれ!!」
拳が顔面に当たる直前、何とか止めてからよく見てみるとどうやらシャーリーのお父さんのようだ。危ないところだった。
「あ、ごめんなさい。」
「い、良いんだよ…寿命は10年くらい減ったけどね…。でもよかったよマーヤちゃん、生きていてくれたんだね…!フレイヤに巻き込まれたと聞いといたけど、流石はマーヤちゃんだ。フレイヤに巻き込まれる前に脱出できたんだろう?」
「いいえ?フレイヤに巻き込まれたけど筋肉のおかげで耐えたんです。」
「…」
すると、シャーリーのお父さんは急に周りを気にするような素振りを見せる。
「とにかく無事でよかったよ。フレイヤに巻き込まれてヘッドドレスが無くなったのは幸いだったね」
言われて気付き頭を確認してみると確かにヘッドドレスが無くなっていた。
「あれ、結構お気に入りだったんですけどね。」
すると、シャーリーのお父さんは首に横を振る。
「とんでもない…!あれにはV.V.によって盗聴器と発信器が仕込まれていたんだよ…!」
「え…?」
なるほど、道理で私と母さんが話した事などが筒抜けになっていたわけだ。そうやって保険である私をずっと監視していたらしい。
「V.V.と決着をつけにしたんだろう?案内しよう。こっちだ…着いてきてくれ」
「分かりました。」
そうして暫く進んだ後、シャーリーのお父さんは足を止めてこちらに顔を向けてくる。
「どうしたんですか?」
「…私はこれ以上は行けない。V.V.にはシャーリーのことを知られていてね…まぁ、ある意味人質さ…この先にV.V.が居る。だから…くれぐれも私のことは内密にしておいてほしい。」
「安心して、ヘマはしないわ」
私は頷いてからシャーリーのお父さんと別れて歩を進める。暫くすると椅子に座ったV.V.が嚮団員に指示を出しているのが見える。
「うん、それはあっちに運んでおいて。そっちは積み込みをお願いね。…それにしてもまだC.C.は見つけられないのかい?」
「申し訳ございません。嚮主V.V.」
私はギュピギュピを足音を鳴らして歩いていく。V.V.が驚いたようにこちらを見ているのがとても滑稽だ。
「マ、マーヤ…!?そんな馬鹿な…発信器では確かにフレイヤに巻き込まれたはず…!」
シャーリーのお父さんの話を疑っていたわけではないが、今ので本当に仕込んでいたと言う事がわかった。どうやら本当に私のことを道具としてしか見ていなかったようだ。とても…残念ね…。
「お陰でフレイヤには巻き込まれたわ。」
「ま、まさか…」
「そのまさかよ。そう、筋肉…筋肉は全てを解決するの。巻き込まれたけど筋肉のおかげで無事だったわ。…何か言いたいことはある?」
何も言わずV.V.はショットガンを取り出し、こちらに銃口を向けると迷わずに引き金を引いてきた。しかし、私の筋肉は最早フレイヤとて効かない圧倒的な筋肉、銃が効くはずが無いのだ。
そして私の筋肉はスラッグ弾を弾き返し、弾いた弾丸がV.V.の脇腹を貫通した。
「自業自得ね、V.V.…自分の引いた引金が原因で死ぬなんて。」
「…はは…マーヤに向けて銃を撃つだなんて…判断を間違えちゃったね…それに、余計なことを…ペラペラと喋っちゃった。油断したよ…でも、仕方ないだろう?後もう少しだったんだ。あともう少しで…全部…ふふ、自分の姪に殺される…これもブリタニア皇族の定め…か」
こうして、V.V.によるプロテイン散布は未然に防ぐことができた。これも全て筋肉のおかげだ。やはり筋肉、筋肉は全てを解決してくれる。
嚮団員達の内、幾人かはV.V.の死亡を知ると逃走したのだが、シャーリーのお父さんを始めとする何人かは残ってくれた。残ったメンバーの中にはニーナやランドル博士もいるようだ。ニーナ達には私の死をルルーシュ達による攻撃だと偽っていたらしい。
回収したプロテインはニーナが発明した小型フレイヤを用いたあらゆる産業廃棄物を粉微塵に消し飛ばせる画期的ゴミ箱により跡形も無く消え去ったのでとりあえずこれで世界から筋肉が失われることはないだろう。
だが、問題はまだ残っている…そう、我が弟のルルーシュだ。筋肉が全てを解決するのであれば、ルルーシュもフレイヤを耐え切っている可能性がある。ランドル博士やニーナを筆頭とした科学者には専門ではないものの頑張ってもらい、新たな機体を作ってもらっている途中である。故に私たちは暫くアポロンの馬車発射場周辺で隠れ住むこととなった。
そして、数日が過ぎニュースを見ていると、やはりというべきか…さすがというべきか、ルルーシュが生きていたことが発覚した。そしてルルーシュは超合衆国憲章に批准するために日本を訪れ、超合衆国の代表達に銃を向け人質とし、日本が占領されてしまった。すると、他の部屋から慌てたように誰かが部屋に入ってくる。
「どうしたんですか?」
「申し上げます!帝都ペンドラゴンにフレイヤ弾頭が撃ち込まれましたァ!」
「何ィ!?」
黒の騎士団がフレイヤを持っているとは考えにくい、では一体誰が…?すると、映像を見たニーナが驚いたような顔をしている。
「半径100kmに…リミッターが外されてる…?」
半径10kmでも…トウキョウ租界ですらアレだったのだ。一体どれだけの人が死んだのだろう?中には陽菜達のような幼い子も居ただろう。到底許されるべきことではない。
「マーヤちゃん、映像のここ…何か映ってないか?」
シャーリーのお父さんに言われた通りに画面を見てみると、たしかに何かが浮かんでいるのが見える。
「これは…何?」
「もしかしてダモクレス…?」
私には見覚えはなかったが、ニーナには心当たりがあるらしい。
「ダモクレスって?」
「えっと、シュナイゼル殿下が進めてた計画で…簡単に言えば天空要塞、かな。超上空からフレイヤを撃ち込んで一方的に制圧できるの」
事実、上空から一方的にフレイヤを撃ち込まれるようなことになれば誰もが恐怖してブリタニアに服従していただろう。しかし、今やペンドラゴンはルルーシュが抑えている…ルルーシュがやったのでは無いのならば一体誰が…?…ここで考えてもわかる訳も無いことだ。確かめる為にもアレに乗り込むことにしよう。…幸いここにはアポロンの馬車があるのだから。
全ての準備が整い、私はアポロンの馬車に乗り込む。アポロンの馬車を用いて直接ダモクレスに乗り込み、ダモクレスによる支配を阻止するのだ。アポロンの馬車の打ち上げを待っていると、ニーナから通信が入った。
『マーヤ、聞いて。ダモクレスの高度は徐々に上昇してるみたいなの。もう少し軌道計算に時間が必要になるわ。』
「高度が上昇してるってことはいずれこちらから手が出せなくなるってことね…そうなれば世界は何者かによるフレイヤに怯える事になる…。」
久し振りの打ち上げと無重力を感じ、私はダモクレスの上空に到達する。…何やらダモクレスは現在何者かに攻撃されている様だ。おそらくはルルーシュだろう。ルルーシュの手助けをするつもりはないが、フレイヤによる支配を許すわけにもいかない。ダモクレスは巨大なブレイズルミナスによって守られており、その出力は巨大が故に桁違いだ。だが常に全方向に張っている訳でもない。特に上空からなど予測していない方向ならば警戒されていないだろう。そのままダモクレスの外壁にへばりつき、壁を破壊して内部に侵入してみると、そこは庭園の様な場所であった。
「きゃっ…!?どなたですか…!?」
声のした方を見ると、そこには車椅子に乗ったナナリーが座っていた。フレイヤに飲み込まれて死んでしまったものだと思っていたが…まぁ、私とルルーシュの妹なのだ。恐らく何かしらの筋肉でフレイヤを跳ね除けたに違いない。流石は私の妹である。…しかし、そうなるとナナリーかダモクレスを…?
「ナナリー、生きてたのね。また会えて嬉しいわ」
「その声…マーヤお姉様ですか…?…今お外から壁壊して入って来ませんでした…?」
「えぇ、壁をブチ破って侵入したの。そしたら中にナナリーがいたんだもの。驚いちゃった」
「そうなんですね…。私もまさかお姉様が壁を突き破ってくるとは思いませんでしたから驚きました。」
ナナリーの様子を観察しでみても目や脚以外に特に外傷の類はないようだ。その華奢な肉体のどこにそれだけの筋肉を内包しているのかはわからないが、きっと密度がすごいのだろう。ナナリーとの再開を喜んでいると、ナナリーが手に何かを持っていることに気がついた。何かの…スイッチだろうか?
「ナナリー、大事そうに持っているけどそれは何?」
「これですか?これはダモクレスの鍵…フレイヤを発射する私の罪です。」
つまりこの装置を破壊すればフレイヤは発射できないということか。
「ごめんねナナリー」
「え?」
「フンッ!」
私はナナリーからダモクレスの鍵を奪うとそれを思い切り真っ二つに叩き折る。ボキッ!という音を聞けばナナリーも何が起きたのか察したのだろう。
「お姉様!?折ったのですか!?ダモクレスの鍵を…!どうしてこんなことを…!私がお兄様を止めなくちゃいけないのに!なんで酷い…お姉様は化け物です!」
「私が化け物…?いいえ、私は悪魔よ」
だが、ナナリーはナナリーでルルーシュを止める気持ちがあった様だ。とは言えルルーシュを止める為だからと言ってナナリーにフレイヤを撃たせるわけにも行かない。ルルーシュを止めるだけなら私が殴れば済むことなのだから。
フレイヤを筋肉で耐えるマーヤ
結局あっさりと退場するV.V.
ナナリー涙目の3本立てでしたね。