私がダモクレスの鍵とやらを真っ二つにへし折ると、丁度ナナリーのいる部屋に通信が入った。
『さぁ、ナナリー…フレイヤを。………………ナナリー?』
どうやら声はゼル兄のもののようだ。生きていてくれたことは嬉しいが、ナナリーにフレイヤを撃たせるようとしていたとは…!
「それが…シュナイゼルお兄様…さっき突然お姉様がやってきてダモクレスの鍵を壊してしまったのです。」
それにしても、ナナリーだけではなくゼル兄もあのフレイヤに耐えていたとは…もしかしたらブリタニア皇族にはフレイヤに対する耐性であるのだろうか。
『マーヤが…?しかし彼女はフレイヤに巻き込まれて粉微塵になったはずでは…』
「ゼル兄!もちろん私もフレイヤには巻き込まれたわ。でもナナリーやゼル兄と同じような方法で無事だったのよ」
『そうか、流石はマーヤだね。』
そう、筋肉で耐えると言う方法でね。だが、私の事などどうでも良い。ダモクレスの鍵とやらを失ったナナリーにこれ以上戦闘に介入する力はないだろう。となれば残る問題はゼル兄だ。
「ねぇ、ゼル兄がどこにいるかわかる?」
「シュナイゼルお兄様ですか?下の方のフロアにいると思いますけど…」
「わかったわ。ありがとうナナリー」
ナナリーの頭を細心の注意を払って撫でてから私は床をブチ抜き下層へと降りて行く。しばらくすると脱出用だろうか?小型の飛行機らしき物が置いてあるフロアに辿り着いた。
「まさか床をぶち抜きやってくるとは…予想外だったよマーヤ。もう少し時間がかかるものだと思っていたけど…」
ゼル兄はカノンさんと金髪の男の人、そしてもう一人を連れており、どうやら今から脱出するつもりだったようだ。だが、今度は床から突然ルルーシュが飛び出てくる。
「ここだったかシュナイゼル…!…うん?何故マーヤまで居るんだ?」
ルルーシュは私を見て心底驚いたような顔をしているけど、ルルーシュに耐えられて私にフレイヤが耐えられないはずはない。
「ダモクレスを止める為よ。フレイヤの恐怖による世界の支配なんて私は認め無い!」
それにフレイヤでは圧倒的筋肉を持つルルーシュには通じ無いのだ。使う意味がないと言える。すると、今度はゼル兄が口を挟んできた。
「ではマーヤ、ルルーシュによる独裁は許すのかい?」
「私はルルーシュによる支配も認め無いわ!」
ルルーシュは人をギアスで操り、その筋肉でわからせ、虐殺を働く…フレイヤと同じである。到底許すことはでき無い。
「では君はどうしようというのかな?」
「私は皆が皆に優しい世界を作るの。」
「ほう?それはいい考えだね。でもそれは理想論だよ。君は現実を見ていない。君はどうやってそんな世界を実現させる気なんだい?まさか筋肉だとは言わないよね?」
?ゼル兄は何を言っているのだろう?筋肉は全てを解決するのだから当然方法など筋肉一択である。
「勿論筋肉よ?」
「あぁ、うん、まぁ…だとは思ったよ…」
人が人に優しくできるのは自らに余裕があるからだ。そして筋肉はあらゆる物事を解決する…つまり筋肉は人生に余裕を与える。結果として人々は筋トレの果てに優しくなる。そして筋肉は全てを解決する…人々の争いも筋肉があれば解決するはずだ。筋肉のより高みを目指す為には争いなどをしている暇はないのだから。
きっと、世界の全てが筋肉の魅力を知った時、世界は筋肉を求め争いを止めるだろう。争いに向けられていたエネルギーは筋トレに回され、兵器や武器に充てられていたお金はトレーニング器材やジム建設に回されるはずだ。
だからこそ世界に知らしめる必要がある。筋肉こそが至高…何度でも言おう!
筋 肉 は 全 て を 解 決 す る !
まずは手始めに私の筋肉でダモクレスを粉砕する。そうすればあらゆる兵器など圧倒的筋肉の前には無力と思い知るだろう。一旦その場にいた全員を圧倒的筋肉で殴り飛ばし、私は壁を破壊してダモクレスの外壁まだ突き進む。
「まてマーヤ!どこへ行く気だ!」
流石はルルーシュ…あれほどの殴打を受けてもまだ意識があったとは。
「今からダモクレスを破壊するのよ。…あ、ナナリーなら上のフロアに居るわ」
「お前…まぁいい。ナナリーを助けにいかなければ…!」
天井を突き破って去っていくルルーシュを見送り、私はダモクレスの破壊を続ける。壁を突き破って外に出てみると、多くの人が争っているのが見える。なんと悲しいことだろう。みんなが筋肉を鍛えていればお互いにお互いの筋肉を褒めてより筋肉の高みを目指すだけの友人になれたかもしれ無いのに。しばらくすると、ダモクレスから先ほど見た小型飛行機と、蜃気楼が離れていくのが見える。引き続きダモクレスを破壊していると、突如ダモクレスはフレイヤの光に包まれてしまった。勿論私もフレイヤに身を包まれるが、最早二度目である。痛くも痒くもない…いや、なんだか逆に心地よくすら感じ始めてきた。なるほど、圧倒的筋肉であれば様々な苦難を乗り越え、その極端には安らぎがあるということらしい。やはり筋肉、筋肉は全てを解決し、人々に優しさと安らぎを与える…!実に清々しい気分である。まるで全身が風に包まれているようだ。
今まで私が救えなかった多くの人は私が鍛え足りなかったのがいけなかったのだ。私は最早自らを鍛えることを許されない肉体、ならば私のやるべきことはみんなを…世界を鍛える事ではないだろうか。
もしもみんなが…私のように鍛えていればシンジュク事変で私が間に合わなくても陽菜達はその筋肉で瓦礫を跳ね除け、その後もゲットーで肉体の研鑽を続けていただろう。
もしもみんなが…私のように鍛えていればブラックリベリオンでフロアパーツがパージされても瓦礫に押し潰されず、空気を強く踏む事で落下せず、無事に生きていただろう。
もしもみんなが…私のように鍛えていればユフィによる日本人の撲殺も起きず、ユフィと日本人が見事に鍛えた己の肉体を用いた素晴らしい筋肉のぶつかり合いを演じ、ブリタニアと日本の友好が深まったはずだ。
そうだ。私は皆んなが死んでしまったことをルルーシュのせいにしていたが、真の罪は私にある。私がみんなの鍛錬を怠ったのが良くなかったのだ。私には折角『絶対鍛錬のギアス』があったのに。
ダモクレスの一件の後、世界はルルーシュにより支配された。ゼル兄もルルーシュにより捕まったと報じられていた。黒の騎士団も壊滅したらしく、最早ルルーシュに対抗できる勢力はいないと。
だが、私がここにいる。ニュースを見れば明日、日本でルルーシュが制圧記念のパレードを開くとか。私は夜の闇に紛れてクラリスさんのいる自宅へと帰宅した。
「ただいま。クラリスさん」
「マーヤ!今までどこ行ってたの!心配し…なんで全裸なの!?」
…しまった。フレイヤに飲み込まれたからまた全裸になってるの忘れてた…。道理で風を感じるわけである。
「クラリスさん、心配かけてごめんなさい。全裸なのは…うん、そう…アレよ…新しい健康法よ。」
「きっとそれは騙されてるわ…マーヤは昔から思い込みが激しいから…!」
そんな風に思われていたのは少し心外だった。とりあえず自宅に上がるとなんだかとても落ち着いた。本当は皇族だとか、ルルーシュの双子の姉だとか、そんなことは関係ない。ここが私の家なのだと思う。
「…クラリスさん、今までありがとう。お世話になりました。」
「マーヤ?何を…」
今までクラリスさんには一度も有効打を与えられなかった。でも今の私は圧倒的筋肉を持つ。クラリスさんの背後に瞬時に移動し、その延髄を手刀で叩き斬る。
「当て身!」
最初で最後の有効打を与え、私は自室から目当てのものを取り出した。
そして迎えたルルーシュのパレードに私は乱入する。捕まった人達を見せつけるような悪趣味なパレードだった。手始めにダブルバイセップスを決める。
「ゼロ…!」「体脂肪ゼロだ!」「背中にエナジーウィングでもつけてんのかい?」「なんか仮面のデザイン違くね?」「間違いない!あの肩幅、あのポージング!」「ゼロだ!ゼロが来てくれたんだ!」
そう、私が身に付けたのは謎の仮面拳闘士『ツー』のもの。しかしみんな仮面の筋肉=ゼロと刷り込まれているようだ。だが、それはこの際どうでも良い事だ。この圧倒的筋肉を持ってしてルルーシュを倒す…そうすれば世界は筋肉が全てを解決すると理解するはずだ。騒然とした会場を駆け抜け、放たれたヴィンセントの銃撃を圧倒的筋肉で受け止める。
「お返しするわ!」
筋肉により弾いた弾丸によりヴィンセントは大破、やはり筋肉…筋肉は全てを解決する!
「止まれい!」
私の前に現れたのはジェレミア卿だった。久しぶりの再会がこんな形とは残念だが、とりあえず顔面を殴ると吹き飛んでいく。
「この拳…まさか君は…!?」
そんな声が聞こえたが、気にせずに私は再び駆け抜け、カレン達やゼル兄、ナナリーの横を通り抜け、ルルーシュの前の坂へとやって来た。この坂を駆け上がればルルーシュに拳が届く…!
「なんだ貴様…その格好…ロ…ゼロではないな!?誰だ…!?まさか…!?だが、お前はフレイヤに飲まれて死んだはず…!」
「何を驚いているの?筋肉で耐えたのよ。ルルーシュだってジャンヌダルクの自爆の時に筋肉で耐えたんでしょう?」
「馬鹿を言うな!俺はあの時…卜部、スザク、ユフィの三人がその身を呈して庇ってくれたからギリギリ逃げられたんだ!筋肉でフレイヤが耐えられてたまるか!!」
…筋肉でフレイヤが耐えられない…?そんなはずは…いや、そうか…
「ルルーシュ、まだまだ鍛え足り無いってことね!」
「そう言う次元じゃないだろう!?」
私は即座にルルーシュの背後に移動する。
「チィ!なんと言うスピード…!」
ルルーシュの拳は明らかに遅く、私はそれを易々と躱す。まずは手始めにと渾身の腹パンをルルーシュにブチかますと、なんと私の拳はルルーシュの胴体を鉄板でも殴るかのように容易に貫通した。おかしい…ルルーシュほどの腹筋であれば貫通などはし無いはず…。
「ルルーシュ…貴方まさか…!」
「…あぁ、そうだ…これで俺の計画は達成される…ゼロ・レクイ…」
「筋トレをサボったのね!?」
なんと言うことだ。私を倒し、世界に自らを超える筋肉が居ないからと油断したに違いない。なんと不甲斐ない弟なのだ…!
私はそんな情けない弟から拳を引き抜き、ダブルバイセップスを決める。とりあえず今は筋肉を見せつけ、世界に筋肉こそが全てを解決するのだと知らしめなければ。
すると、周囲の建物からギルバートGPギルフォードさんやネリ姉が現れた。
「人質を解放しろ!」
そして私の拳が応えたのか、両脇を抱えられたジェレミアさんが指示を飛ばしていた。
「いかん、ここは退却しろ!」
そんなやりとりがなされる中、民衆によるゼロの名前を呼ぶ声が響き渡る。
…私ゼロじゃないんだけどなぁ…。
「貴方が契約すれば力をくれるって言う筋肉の悪魔?…私は復讐するための力が欲しいな。だから力を頂戴!」
私のところを訪れた少女は復讐のために力を手に入れたがっているようだった。復讐…つまり私はまた誰かを助けられなかったと言うことだろう。もっともっと世界を鍛えなければこの悲劇は無くならない。
「えぇ、分かったわ。貴方に力を上げる…この力は王の力…王の力は貴方を孤独にし、その人生に困難を授ける。でも問題ないわ、筋肉よ。筋肉があれば大体の困難は解決するわ。」
そして私は目の前の少女にギアスを与えた。この生活を始めて何年が経ったかは覚えていない。私は私を頼る人々にギアスを与える。そして彼らがギアスを持ったがために降りかかる困難の中で人として、心と体の筋肉が鍛えられて成長すればきっと世界は優しい世界になるだろう。そんな私の住処が襲撃を受けた。また引っ越しの準備をしなければいけないわね…。襲撃者を拳で捩じ伏せ出ていくと、私の前に一人の男が現れる。
「見つけたぞM.M.…!…またこんなにギアスユーザーを…分かっているのか!」
ルルーシュ…いや、今はC.Cからコードを授かりL.L.と名乗っているのだったか。あの時死んだものと思っていたが、パレード参加前にコードの継承を済ませていたらしく、私の拳に腹を貫かれたのもあそこで死ぬことが目的だったからのようだ。
「分かっているわ。この程度じゃまだまだ足り無いってことは。でも世界を優しくする為には地道にやるしかないのよ。」
マッスルボディは1日にしてならず…日々の地道な努力こそが最大の近道だ。
私は世界を優しくするためにギアスを与え続けている。陽菜達を守れなかった私の罪を償う為に、私は世界を強くする。皆に困難を与え、皆が困難を乗り切った時、世界はきっとより強く、優しくなるだろう。そしてこれにはルルーシュにも手伝ってもらっている。
「俺は…ゼロとして世界を守り続ける…!平和を見出すのであれば姉であっても許さない!」
争いがあれば人は鍛える…鍛える事で人は優しくなる。私は世界にギアスを与え、ルルーシュはそれを止めようと動く。そこには自然と争いが生まれる。全ては今までの私が守れなかった事への罪滅ぼし。世界をより強く、優しく、筋肉に…
それが…
『ミートギアス 〜筋肉のルルーシュ〜 MACHO STORYS Fin』
はい、というわけでミートギアスシリーズはこれで完全完結とさせて頂きます。綺麗に終われたかは微妙ですね()
今までご愛読ありがとうございました。長かったですね。…日数的にはそうでもなかったですね?
●マチョスト版のダモクレス〜ゼロレクイエムの解説●
・スザク、ユフィ、卜部はジャンヌダルクの自爆フレイヤにて消失済み
・ラウンズ唯一の生き残りのロロが気合いで絶対停止を使用。カレンを抑える。
・ルルーシュがダモクレスを制圧…のはずだったがマーヤによる破壊及びシュナイゼルによる自爆フレイヤでダモクレス消滅)。ルルーシュは蜃気楼で脱出済み
・C.C.からコードを継承し、自らが世界を守り続ける事を決意する
・一応ルルーシュに世界の憎しみは集まっているのでロロにゼロをやらせてゼロレクイエム。…が、ツーに扮するマーヤにより腹貫通。一応世間がツーをゼロと勘違いしてくれている為、ゼロレクイエム自体は成功
●裏話●
因みに作中で未回収なのですが、『ウルフ』の正体は玉城です。マチョストではウルフである玉城がゼロに対する疑念を団員に与え続けている為、騎士団による見限りイベントが発生します。プロットを決め切れておれず、マーヤが騎士団に潜入するシナリオも考えていた為、そちらで回収しようとも思っていたのですがそうならなかったので…
ヒントは1話から出ています。MACHO STORYSのSTAGE01′の玉城の名乗りの名前をよーくみてみてください。あれは誤字ではありません。
そしてマチョスト裏話。実はマオはV.V.かシュナイゼルにより処刑されたように見せかけられて生きている展開にし、後半でマーヤの味方ポジション+V.V.を見限るきっかけにする予定だったのですが、没になりました。「生きてるだろ」予想の方、お見事です。