増量版 第一話
戦争を機に俺とナナリーはスザクとは離れ離れになってしまった。そしてその後、かつての後ろ盾だったアッシュフォード家に匿われた俺たちは特に大きな問題もなく過ごし、今の俺は高等部、ナナリーは中等部の学生としてアッシュフォード学園に通っていた。
ミレイ会長は俺達の秘密を知った上でよくしてくれているし、リヴァルやシャーリーという友人もできた。しかし…それも今だけのこと、俺達の正体がブリタニア皇族…それも現皇帝に捨てられた皇子だと知られればこの関係は簡単に崩れ去るだろう。今やナナリーの友であるアイツらとナナリーを引き裂くのはナナリーを悲しませることになる。俺はナナリーの幸せを守る為に戦わなければならない。そしてその為に身体を鍛えてきた。母さんの事もナナリーの事も守れなかったあの時とは違う。昔以上に負荷の高いトレーニングを続け、徹底的に鍛えてきたのだ。
「そろそろナナリーを起こさないとな」
一通りのトレーニングを終え、シャワーで汗を流したらナナリーを起こす時間だ。
「おはようございますルルーシュ様。本日もナナリー様を起こすのはお願いしてしまっても?」
「…おはよう、咲世子さん。ナナリーは俺が起こすから朝ごはんの用意をお願いします。」
「かしこまりました」
俺の筋肉を持ってしても探知できない完璧な気配消しと、にこやかに笑っている…つまり、無表情ではないはずなのに何を考えているか全く読み取れない…害悪がある雰囲気は無いが、ただのメイドではない事は確実だろう。俺の筋肉もまだまだという事だな。
「おはよう、ナナリー」
「おはようございます、お兄様」
いつものようにタングステン製のベットごとナナリーを片手で持ち上げリビングへと運ぶ。天使の羽のように軽いナナリーだけでは負荷にならないので仕方がないとはいえ、ナナリーの成長を感じられないのは残念なところだな…。
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「いやぁ、今日も手伝ってもらって悪いなルルーシュ」
「何言ってんだリヴァル。水臭い事言うなよ」
今日もバイト先の店長からSOSの連絡が来た。あの人、チェス弱いのに賭けチェスにハマり過ぎなんだよなぁ…。まぁ、お陰でこの割の良い"アルバイト"が出来るんだけどさ。
「リヴァル、もう少し急ごうか、あの人チェス弱いから」
「あぁ、分かったよ」
そう言って俺はバイクのアクセルを強め、速度を上げた。うん、当たり前のようにそれに並走してダッシュしてるルルーシュに関して考えるのは出会ってから3日目で辞めた。筋肉って普通は付けばつくほど重くなるから陸上選手みたいな鍛え方じゃないと足遅くなると思うんだけど、見事なるゴリマッチョのルルーシュは何故か時速80キロ以上でフルマラソンを走り抜けるのだ。訳がわからないが気にしてはいけない。そう言うものだと思えばルルーシュは頭が良い割に悪ノリも良い俺の親友に他ならないから。因みにルルーシュが交通事故を起こすと車両の方が大破する、それが仮に軍用車であってもだ。
「おや、代理人のご到着かな?」
「あぁ!助かったよ…!」
チラッとチェスの盤面を見れば完全に遊ばれているのがわかる。何せ盤上には黒のキングしか残ってない。逆に白の駒はポーンが2つほど減っているが、残りは健在である。俺もチェスは詳しくないが、真面目にやってこんな盤面にする方が難しいだろう。ここから逆転などどう頑張っても不可能である。だが、ルルーシュならばそれが可能だ。
「なんだ、学…生?学生、か?学生…なのか…?」
対戦相手は俺とルルーシュの制服を36度見して困惑したように呟いていた。気持ちはわかる。ルルーシュの顔は誰もが認めるハンサムフェイスだが、首から下はなんと言うかもう凄いのだ。筋肉が筋肉着て鍛えてるようなゴリマッチョなのである。
「あぁ、学生だ。そっちは…フン、貴族か」
ルルーシュの尊大な態度が気に食わなかったらしい。貴族は明らかに不機嫌になった。凄いな貴族、プライドだけでルルーシュの圧倒的筋肉から放たれるプレッシャーを跳ね除けてやがる。
「…それで?この盤面と残り時間から代打ちをするのかね?」
貴族は勝ちを確信したようにニヤけているが、どうやら勘違いしているらしい。
「代打ちはしない」
「…何?なるほど、踏み倒す気か。学生は良いな、時間がたっぷりとある…後悔する時間が!」
貴族が合図を出すと屈強な男達が現れた。賭けチェスは違法行為だからトラブルが起きれば当人間でなんとかしなければならない。つまり、賭けで負けた側が踏み倒す場合、それを阻止できるだけの武力が無ければ周りから舐められると言う訳だ。こんなことを考えている間に屈強な10人の男達はルルーシュの腹パンで地に伏した。その間わずか3秒。
「店長、これで例の件は」
「あぁ、こっちで対処しておくよ」
多分…店長の賭けチェス癖が治らないのは困ったらルルーシュが踏み倒してくれると思っているからだろう。この人は一度痛い目にあったほうがいいと思う。
普通、賭けチェスなんていう違法行為を踏み倒せば裏社会の住民が黙っていないが、今回は相手が貴族、しかも私兵を雇っている。そんな奴がたかが一人の学生に全員再起不能にされたと知られればどうなるだろう?学生にやられた貴族の方が裏社会のカモである。プライドにその後のメンツ、そもそも違法行為であること、それらを考慮するとルルーシュという圧倒的筋肉による暴力的解決は非常に理に適っている…のだろう。多分。
「じゃあリヴァル、俺は走って帰るから。今からなら午後の授業にも間に合うだろうし」
「分かった。俺も安全運転で帰るよ」
そう言ってルルーシュ右手逆立ちして走り出していた。…。片手の逆立ちで走ると言う目の前の事象に危うく意識を手放しそうになるが、深く考えるのはやめよう。
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片手逆立ちで学園に向かっていると、人だかりが出来ているのを見つけた。視線の先を確認すると、どうやら高速道路でトラブルがあったようだ。
「…まさかリヴァルか?」
…先程まで居た場所からの距離とリヴァルのバイクが出す速度を考えれば十分にあり得る可能性だ。もしもリヴァルがトラブルに巻き込まれているなら助けてやる必要があるだろう。高速道路を見てみると案の定リヴァルのバイクが見えた。その場にリヴァルが居ないのは気になるがとりあえず現場に向かわなければ何もわからない。一気に跳躍し、高速道路に着地するとリヴァルはバイクの側で屈んでいるだけだったようだ。
「うぉっ!?…ってルルーシュか、困ってたんだ助かったよ。バイクのエナジーの線が切れちゃったみたいで動かないんだ」
リヴァルが指差した先をみると確かにエナジーの線が切れてしまっているらしい。だがこの程度なら問題はないだろう。
「悪いんだけどバイク運んでくれないか?ルルーシュの筋肉なら担いで走っても授業間に合うだろ?」
「確かにその手もあるが、簡単な修理ならこの場でも出来る。少し待ってろ」
俺は親指と人差し指を高速で擦り合わせた。
「そうか!ルルーシュの圧倒的筋肉があれば摩擦熱を起こして切れたエナジーの線を溶接できるってことか!」
「あぁ、だがあくまでも応急処置だからな。ちゃんと後で修理に出せよ。俺はトラックの方を見てくる」
さて、これでリヴァルの方は問題無い。次に対処すべきはリヴァルが事故を起こした原因の方だろう。少し遠くに停止したトラックが見えたが、道路のブレーキ痕やバイクの損傷具合から直接接触したわけでは無いはずだ。しかし、急停止に伴い首などを痛めている可能性はある。病院に連れて行くべきだろう。取り敢えずトラックの荷台に飛び乗ったが、それと同時にトラックは発進してしまった。どうやら運転は出来るらしい。だからと言って油断してはいけない。その時は大丈夫でも後になって急に痛みが出る事は珍しく無いからな。
「…この音はヘリコプターか?」
『逃亡者に告ぐ!直ちに停車せよ!』
すると、発砲音と同時にトラックが左右に揺れた。まぁ俺は体幹を鍛えているのでビクともしないが…どうやらトラブルに巻き込まれたらしい。まずいな…このトラックの持ち主が捕まろうが俺の知ったことでは無いが、今捕まれば俺も捕まる可能性がある。そうなると不味い…
「…!」
扉が開く音がしたので咄嗟に物陰に潜む事になってしまった。…ところでこの荷台の妙な形の装置はなんだ?形状からして気密性が高そうだが
「…大丈夫!そのために私がいるんでしょ!私がグラスゴーで時間を稼ぐ!」
…驚いたな。俺の前を通り過ぎたのは同級生のカレン・シュタットフェルト…病弱と嘘を吐いて学校をサボっている不良女だとは思っていたがこんな事に足を突っ込んでいるとは。しかもグラスゴーで出るだと?ナイトメアの操縦も出来るなんて普通じゃ無い。カレンが上着を脱ぎ捨てていったが、その落下軌道と落下時の音からして何か硬いものが入っているらしい。ポケットを探ってみると案の定トランシーバーが入っていた。
「熱くなり咄嗟に証拠となるような物を置いて行くとは…あまり冷静な性格とは言えないようだな」
そうなれば如何に腕が立っても限界は来るだろう。筋肉ならば兎も角、ナイトメアにはエナジー切れによる活動限界があるからな。それにしてもこの路面状況、それに走行距離と曲がった方向および大体の速度から概算すると旧地下鉄構内を走っているらしい。カレンが仲間に向けて日本語で喋っていた事、俺のような人間以外でそう言った道に詳しく、反ブリタニア的行為をしているとなると日本人がメンバー、つまりはレジスタンスだろう。
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…見つけた。目標のトラックだ。ブリーフィングで見た荷物も載っている。…む、熱源探知…なんて熱量だ…!ただのテロリストなのか…!?幸いこちらには気が付いて居ないようだ。このまま抵抗はさせない、この陽昇流誠壱式旋風脚で意識を刈り取るッ!
「はァッ!!」
「む?」
!?直撃したのにびくともしない…!?ならッ!!
「たァッ!!」
馬鹿な…!頸椎をへし折るつもりで放った蹴りを受けても微動だにしない!?…まさか…
「ルルーシュ!?」
「この蹴り、やはりスザクか。久々に痛みを感じたよ」
振り返った相手の顔をよく見れば幼い頃共に過ごした友人のルルーシュだと瞬時に分かった。それにしても…
「数年前とは比較にならないほどの筋肉、ナイスバルク!」
「お前こそナイスバルク!」
僕のサイドチェストも軍じゃキレキレと評判だったけどルルーシュのモストマスキュラーを見ると恥ずかしくなってくるな。なんてキレだ…!肩にタングステンでできたベッドでも背負ってるのかい?それにしてもまさか戦争で死んだとばかり思っていたルルーシュが生きていたなんて…もしかしてナナリーも…「あぁ、ナナリーも生きてるよ」…ッ!しまった!
「フッ、すぐにアンチ筋肉読心術を展開するとは流石だな。だがまだ常時発動とはいかないようだな」
「…まぁね」
忘れていた…ルルーシュはその圧倒的な感知的筋肉と洞察力、頭脳により相手の表情、汗、心音、呼吸と周辺の環境や事象から推察し、心の声をほぼ正確に読み取ってくるのだ。お陰でじゃんけんはいつも僕の負けだった。だけど逆に言えば表情や汗、心音や呼吸をこちらも筋肉で制御し、律すれば筋肉読心術を無効化することができる。僕はまだまだ意識しないと発動できないけど、ルルーシュの口振りからすると無意識レベルで常時発動しているようだ。蹴りを防がれた事と言い、どれだけの鍛錬を積んだんだろう
「その格好、お前軍人になったんだな」
「軍の施設なら効率的なトレーニングが出来るからね。栄養のある食事も出るし…君は?まさかテロを!?」
ルルーシュの事情は良く知っている。現皇帝に捨てられ人質として日本に送られてきたものの、その日本が戦争の舞台になった。普通なら殺されていて当然の立場だし、実際父さんの刺客に殺されかけている。全員ボコボコに殴られて返り討ちに遭ったから父さんも諦めたんだけど…。そんなルルーシュがブリタニアへ復讐を考えるのはなくは無い話である。というかルルーシュの性格からして確実に考えているだろう。ルルーシュにはそれができるほどの頭脳と筋肉がある。
「馬鹿を言うな。巻き込まれただけだ」
本当だろうか?ルルーシュの筋肉量ならば巻き込まれてもフィジカルで突破できそうな物だけど
「なんだスザク、お前疑っているのか」
「悪いけど今の君にはそれが出来るほどの筋力があるからね」
するとルルーシュは突然服を脱ぎ出し上裸になった。うーむ、服の上からも分かっていた事だけれどなんという筋肉、腹筋なんて板チョコなのかと間違えて思わず齧り付いてしまったほどだ。
「この筋肉を見ても俺が嘘を吐いていると思うのか?」
「…思わないな」
筋肉に全く澱みがない。ルルーシュがテロリストでないということは口よりも筋肉が雄弁に物語っている。
「疑った僕が馬鹿だった。すまない」
「何、わかれば良いんだ」
すると、突如カプセルが開いた。
「いけない!毒ガスが!」
チラりとルルーシュを見ると、カプセルが開く際の微小な音を即座に感じ取り瞬時に息を吐き切って空気を吸い込んでいたのだろう、呼吸を止めて涼しい顔をしている。流石だと思いながら僕は小型マスクを咥えた。これには短時間のガスマスクの機能もあるからね。
しかし、カプセルの中に入っていたのは毒ガスなどではなかった
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カプセルに入っていたのは毒ガスでは無く緑髪の女だった。その衣装は拘束着であり、女の表情はどこか虚気だ。そもそも中が液体で満たされていたことを考えると…
この女、俺以上の肺活量の持ち主なのでは…?
まさか自らを拘束し、液体で満たされたカプセルの中には閉じ込められることで極限状態に達し、自らを鍛えるトレーニングを行うとは…。見た目は華奢だがなんという鍛錬への執念だ。素晴らしい心掛けと言わざるを得ない。しかし、虚気な表情から察するにいささかトレーニング負荷が強過ぎたようだ。トレーニングは大切だが死んでしまっては意味がない。彼女の鍛錬の邪魔になるかもしれないから心苦しいが、まずは拘束具を引きちぎるとしよう。
「ちッ!この猿!名誉ブリタニア人にそこまでの権限は与えていない!」
「しかしこれは…!」
俺が彼女のストイックさに感心している間にどうやら誰かやってきたようだ。現れたのは軍服の男達、やり取りと態度から察するにスザクにとっての指揮官に当たる人物のようだ。軍人とは言え名誉ブリタニア人であるスザクはカプセルの回収を命じられていても中を見る事までは許可されていなかったらしい。そうなれば毒ガスと偽られていたこの女は見られてはまずい物なのは想像に難くない。そう、例えばこのストイックな鍛錬方法を真似して名誉ブリタニア軍人達が全員筋力を向上させた場合、ブリタニアへの反乱のリスクがあるからな。
「まぁいい、その成果を評価して慈悲を与えよう。この銃であの学…生?学生かアレ…?取り敢えずなんでも良い…あの男を撃て。」
「待ってください!彼を撃つ事は無意味です!」
その通り、上官の男が持っていたのはブリタニアで一般的に用いられるタイプのピストルだ。ピストルの弾丸では俺の肉体を傷つける事は出来ない。俺の肉体は既に硬質的筋肉による防御壁を標準搭載しているのだからな。
「ならば死ね」
突如撃たれたスザクだが、先程蹴りを喰らっているので分かる。鍛えられた今のスザクはいくら至近距離でもピストルの弾如きで死ぬ程やわな筋肉では無い。不意打ちなので衝撃による気絶程度はするだろうがな。俺がこの場で暴れても良いのだが、スザクの今後の立場と、未だに意識がはっきりとしていない女の事を考えれば逃げるべきだろう。
「む、ガソリンか?…トラックから漏れ出たのか」
これは都合がいい。俺は運転手の男…どうやら怪我をしていて出血があるようなので俺の圧倒的な筋肉で止血しておき、抱え上げ、更に女を担ぐ。そして思い切り指を擦り合わせ着火し、ガソリンに火を付けその場を後にした。トラックの爆発が予想以上だったが、テロリストなら自爆用の火薬を積んでいたのかもしれないな。なんにせよ上手く撒くことができた。
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くそ、バトレーめ…私をあんな物の中に閉じ込めるとは。不老不死とは言え溺れて死ぬのは苦しいんだぞ。それにしてもようやく意識がはっきりとしてきたな。どこかはわからんがこの整備されていない通路は恐らくブリタニアの非管理区域といったところか、ならばどこかのゲットーなのだろう。私を荷物のように担いで走っているのは気に食わんが…まあ暫くはしおらしくして可愛そうな美少女を演じておくか。
「風…。出口が近いな。一度降ろすぞ」
荷物のように担ぐ癖に丁寧な降ろし方だ。女性の扱いは心得てるらしい。
「む、女の方は意識が戻ったか。お前、喋れるか?何故追われているか心当たりとかはあるのか?」
「…」
ここは黙っていよう。『私はコード所持者のC.C.、不死身だから実験としてクロヴィス総督に捕まっていたの』なんて言っても私にメリットは無いからな。「何!?お前不老不死なのか!?」…コイツ何故それを知っている!?まさかマオと同じギアス…いや、ギアス能力は私には効かないはず。では一体…
「俺が何故お前の心を読めたのか…その答えが知りたいか?」
「…あぁ」
「その答えは…筋肉だ!」
なっ…コイツ、なんというかキレのあるモストマスキュラーを披露するんだ…!触りた…いや、今はそんなことを考えている場合ではない…!「触りたいなら触るが良い!」やかましい。クソ、こいつの前で変な事を考えるのは得策ではないな…!
「さっきお前ギアス…とか言ったな?」
「あぁ。正確には心の中で思っただけだがな。」
「ふむ、そのギアスとやらはお前の心は読めない、と言うことは俺のような鍛錬で身に付けた『筋肉読心術"マッスルリーディング"』のような技術ではなく、何か特別な…超能力のようなものという事だな」
なんでコイツそんなことまで分かるんだ。怖。…超能力か、まぁ大体そんなものだろう。目を合わせた相手の記憶を改竄したり心を読んだり、人の心を渡ったり、物理や科学で説明できるものではないだろうからな。
「…ふむ、目から何か光情報のようなものを相手の目に放ち、相手の大脳に干渉する仕組みか…?いや、情報が足り無いな。…俺の筋肉読心術はあくまで相手の表情、呼吸音、筋肉の振動、汗や脈拍から情報を会得して俺の圧倒的頭脳と筋肉で予測するだけだ」
それにしては精度が良すぎるだろう。なんで固有名詞のギアスまで分かるんだよ。「それは」黙れ。筋肉と言うつもりだろう。ならば黙れ。「筋肉だ!」だから黙れ。
「…ここなんだな?出口の一つは」
「はい」
む、追手か…厄介だな
「よし、お前はここでコイツと待っていろ。俺は奴らを片付けてくる。」
「…分かった。」
逃げようとしても無駄だろう「その通りだ」うるさい。心の声に話しかけるな。
その後、目の前からクソ肉だるまが消えたかと思うと銃声と凄まじい殴打音と突風、そして男達の悲鳴が聞こえてきた。
『俺を撃っていいのは…俺にぶたれる覚悟のある奴だけだ!!!』
居るのかそんな奴。それにしても心を読む、か…あいつの前でマリアンヌやシャルルの事を考えるのはまずいな。
「う、うぅ…」
「ん、起きたのか」
「ここは…?」
「私に聞くな。それに止血こそされてるが黙ってた方が良いぞ。」
おそらくこの男は私が収容されたカプセルを強奪した一味の一人だろう。クロヴィスのところから連れ出してくれた分の恩くらいは返してやっても損はないだろうな
「…これでよし。…大人しく待っていたようだな。」
あんな化け物じみた暴力を見せつけられたら逆らう気なんぞ起きるわけがない。それにしてもここに戻ってくるまでわずか10秒か。…いや、そうはならんだろう。
「銃声がしたが無傷なんだな」
「当たり前だろう。全て空中で殴り返した」
…。掴むとか筋肉で弾き返すとかそう言う次元でもないのか。呆れるな…
「む、男の方も気が付いたか」
「う…」
何かを言いかける男に対し筋肉ダルマは手でそれを制す。
「『筋肉止血"マッスルメディケーション"』はしたが無理は禁物だ。お前はただ俺の質問に対し、答えを思うだけで良い。良いな?」
「…」
男は黙って頷いていた。どうやら目も開けてられないほど弱っているらしい。
「お前の名前は…そうか、ナガタと言うのか」
心が読めるからと言って名前がわかるのはおかしいだろう。それから筋肉ダルマはナガタに幾つか質問をしていく。私は暇だったので階段から少し頭を出して様子を伺っていた。すると、突如ナイトメアが突っ込んで来た。
「おい、筋肉ダルマ。ナイトメアが来たぞ。どうする」
「何?」
『これは…クロヴィス殿下直属の親衛隊…!?どうなっている…生存者は居ないのか!』
「ふむ、お前はナガタと一緒に隠れていろ」
そう言うと筋肉ダルマは飛び出して行った。
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「ナイトメアのパイロット!」
『なんだお前は…!学…生?学生…その服装、まさか学生なのか…!?学生…だとしたらこんなところで何をしている!答えろ!!』
ナイトメアのパイロットはこちらに銃撃を行ってきた。だが、明らかに照準が外されている辺り、威嚇射撃と言ったところか。まぁ俺はブリタニア学校の学生服を着ているからな。
「私はニトゥーキン・ジョーワン!父は侯爵だ。貴族の息子である事からテロリスト共に誘拐されていたが、彼ら親衛隊が命賭けで救助してくれたおかげで生きている。保護を頼みたい。」
俺がサイドトライセップスをしつつ答えた。
『モニター越しでもわかるなんと言うキレのある筋肉…!…いや、今はそれより侯爵だと…?分かった。IDを確認するから手を挙げていろ』
降りてきた褐色肌の女が右手で銃を構えたままこちらに近づいてくる。そんな豆鉄砲で俺を傷つける事はできないが…まぁ言われた通りにしてやろう
「…父上殿にはこの私が保護をしたとちゃんと伝えてくれよ(家族の子供を保護したとなれば私の評価は上がるはず。それに息子を助けたとなればそこから私が有利になるように取り図られるかもしれ無い)」
…なるほど、この女パイロットは手柄に飢えた人間のようだ。貴族ではないため功績を上げ地位が欲しいと言ったところか。
「えぇ、もちろんです。それにしてもナイトメアのハッチが開けっぱなしですが良いのですか?」
「フッ…イレブン共に奪われるのでは無いか、と言うことか。心配は無用だ、(専用のキーにパスワードが必要だからな)」
「なるほど、貴方が左手に持つソレと…パスワードは…例えばXG2-IG2D4といった?」
「なっ…!?(何故この男はそれを知って…!?)」
俺は即座に距離を詰めてから女パイロットの腹に拳を捩じ込み、その直後にこめかみに対して手刀を叩き込んだ。これにより10分程度は記憶をぶっ飛ばせるはずだ。
「…女の腹を殴るとは酷い奴だな」
「俺に逆らうならお前もこうなると言うことだ。」
「それは勘弁願いたいところだ」
俺は女パイロットからキーを奪い、ナイトメアに乗り込もうと歩を進めようとして足を止めた。
「?どうした?」
「いや、そろそろシャーリーから電話が…あ、掛かってきた。C.C.、お前は黙っていろよ。…もしもし」
心優しく心配性なシャーリーの事だ。俺がリヴァルと別れて行方が知れない状況となり、午後の授業の開始時間となれば俺の単位を心配するはずだからな。さて、今気になるのはシンジュクゲットーのこの騒ぎがそのままニュースになっているか、隠すための周辺閉鎖のみであるかだ。
『ちょっとルル!?今どこにいるの!?』
「あぁ、ちょっと散歩をね。それより少し頼み事をしていいかい?れ
『頼み事?』
「あぁ、ニュースを見てくれないか?」
『ニュース?ちょっと待っててね…えーっと、シンジュクゲットーに潜伏するテロリスト達の一斉摘発作戦を実行中って流れてるよ』
なるほど、つまりIFFで確認できる盤面上の敵に加えて援軍もあり得る訳か。テロリスト側も援軍が来る可能性はあるが、ブリタニアの包囲網を突破しなければなら無いからあっても少数だろう。つまり大事なのはいかに包囲網の1角を崩すか…流石に俺の筋肉を持ってしてもナイトメアに勝つことは不可能。であればやるべきはこちらも駒を揃える事。ナガタの命を助けてやった礼くらい返してもらわ無いとな。
「C.C.、お前も乗れ。クロヴィスに追われているのだろう」
「…チッ…クソ狭いな」
ナガタはナイトメアの手に乗せて運ぶとしよう。
お試し版なので続きはありません。
と言うか最近はモチベーションが低下気味です。
発汗のロゼはYouTubeのお試し版(?)で2話まで見ました。DVDとかのレンタルが始まったら頑張って書こうとは思ってます。