ミートギアス 〜筋肉のルルーシュ〜   作:ベルゼバビデブ

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深刻なツッコミ不足。



増量版 第十三話

「…この手もダメか…!」

 俺の拳は空を切った。そう、避けられたのだ。

「あのさぁ、君が『今から奴の顔面を殴る』って考えてるんだからさぁ、僕が大人しく殴られるわけ無いよね?…まぁ、確かに、君のその筋肉…大抵の人間は殴られるとわかっていても避けられる速さじゃ無い。」

 そう言って奴はダブルバイセップスを決め、筋肉の膨張で服を破り裂いた。俺は反撃にモストマスキュラーを決める。

「「ナイスバルク!」」

 くっ…!俺の筋肉のキレが悪い…!「心の動揺が筋肉に現れているねぇ、そんな状態で僕に勝てるのかな?」コイツ…!

「さっきからコイツだなんてやめてよね、僕にはマオって言うちゃんとした名前があるんだからさ」

 そう言って奴はステップを踏み、右腕を引き絞った。右に「避けるよね?ならこうさッ!!」マオは左手によるパンチを俺に喰らわせるとニヤリと笑った。…大した威力では無い、だが…

「そう何十発も受けられるほど非力でも無い。だろ?」

「…あぁ、モーションこそ小さいが相手がどう避けるか、心を読み的確に隙を突く、いやらしいパンチだ。」

 性格の悪さが滲み出ている攻撃だが、相手の心を読み瞬時に攻撃を切り替え的確に攻める…心が読めていればできると言うわけでは無い。研鑽を積んだ、歴とした奴の武術だ。

「単純な筋力勝負じゃ君に敵わないだろうけど、僕にはC.C.から貰ったこのギアスがある。それにッ!」

 蹴り…いや違う!「これはブラフさ!」くっ…!本命は右の手刀…これは避けられない…!防御するしか無い…!

「フンッ!!」

「ぐっ…!?やはり手刀は鋭い切れ味か…!」

「家を建てるために木を沢山切っているうちに宿った…僕の関刀(グアンダオ)の威力はどうだい?」

 ただの手刀では無い…!奴は鍛えた己の肉体で手刀を超高速で微振動させ切れ味を増しているのだ…!まるでチェーンソーだな…

「ほらほら!避けてばかりじゃ勝てないよ!!」

 反撃の殴打は避けられ、奴の攻撃を避けようにもノーモーションのパンチが飛んでくる。「かと言ってそちらに気を取られてると!!」本命のパンチを貰ってしまう、か。コイツ、強い…!打開策は何か無いか…!?「あるわけが無いよ!ルルーシュ、君は脳まで筋肉…つまり脳筋!全身が物凄い筋肉であると同時に全身で一つの巨大な脳味噌と同じ!そんな君は天才であり、とてつもない思考速度を持っている…だが!それ故に必ず思考してしまう!!」ぐっ…!?鍛え過ぎたこの身体がまさか不利に働くとは…!!

「ほら!また君の腹に拳が刺さったよ!あと何発耐えられるかなッ!!」

 …まだあと十数数発はいけるだろう…だが、本命のパンチを喰らえばもう1.2発程度と言ったところか…!

「終わりだルルーシュ!喰らえ関刀ッ!!」

 奴の手刀、あれは喰らえない…!避けっ…

 

 瞬間、俺の右脚に痒みが走り、俺の意思とは関係なく俺の身体は右に傾いた。

 

「何ッ!?」

 奇しくもそれは奴の関刀とノーモーションのパンチを避ける動きであったのだ。

「どうしたルルーシュ!何を手こずっている!(援護するつもりがルルーシュに当ててしまったか…まぁいい。いい気味だ。)」

「C.C.!?」

「…?お前、誰だ…?」

「僕だよ!マオだよ!」

「…は?」

 C.C.…奴の手にあるのは…対戦車ライフルか、それで狙撃したが風で逸れて俺の脚に当たったと言うわけか。

「C.C.、お前は下がっていろ!」

「…勝てるのか?マオのギアスはお前と相性が…」

「…問題ない、活路は見えた…!」

「活路だって?そんな物!」

 マオ、さっき俺はお前の攻撃を避けようとしたが、外的要因で俺が意図とは異なる動きをしたが為に攻撃を外したな。「…それが何だって言うんだ…?」

 先ほど俺がとった動きは身体への違和感に対する反射的行動…つまり!「…まさか!?」

 瞬間、マオの攻撃を躱した俺はその拳をマオの腹に捩じ込んでいた。

「カハッ!?…ば、馬鹿な…!思考ではなく反射で行動だと!?」

「己の肉体だ。己のポテンシャルなど俺が一番理解している。俺が数多の強敵を屠って来た闘いの記憶が宿ったこの身体であるならば…最早俺が考えずとも勝手に最適な行動を取れるようだな」

 元々純粋な筋力量では俺の方が上だ。つまり…

「純粋な殴り合いで負ける…!?この僕が…!?」

「マオ、確かにお前の思考を読むギアスとそれに合わせた武術、見事だった。だが、それに頼り過ぎたのがお前の敗因だ!」

 そう言い切る前に俺の拳は奴の顔面を捉えていた。終わっ…「まだだ…まだ終わっちゃいない…!」…!?何…こいつ…まだ立てるのか…!?

「昔僕はC.C.と一緒に暮らしてたんだ。いつも側にはC.C.が居てくれた。子供の僕をいつも守ってくれていたんだ。…でも、ある日突然姿を消した。」

 …なるほど、C.C.はコイツを達成人にし、自分のコードを押し付けるつもりだったのだろう。だが、それは出来なかったらしい。

「僕はずっと理由を考えていた。そして理解したんだ…僕がいつまでも守られるような弱い男だから去ったんだと!」

「いや、違うぞ?」

 C.C.の言う通り違う気はするが、まぁわざわざ訂正する意味もないだろう。この声も耳には入っているだろうが、聞いては居まい。

「だから僕は己を鍛えたのさ…C.C.を守る為にね…!」

「お、おう…それはなんか悪いことしたなすまん…」

「C.C.お前はしばらく黙っていろ。」

「そうだな…」

 マオ…コイツの強さの秘訣がよくわかった。ナナリーを守る為に鍛えた俺と同じ、誰かを守る為に鍛えた男だからだ。己を鍛える時、己の為の理由であれば必ずどこかで手を抜いてしまう。人間とは弱い生き物だからだ。だが、誰かの為であれば話は別、俺も恐らくブリタニアへの復讐という理由だけではここまでの肉体になっては居ない。ナナリーを守らんが為に鍛えた結果が今なのだ。

「僕はC.C.を取り戻し、守り、共に生きる…行くぞ!ルルーシュッ!!」

「いや悪いが私はお前と共に生きたくはないぞ…」

「C.C.は今や俺の計画に不可欠、重要なピースなのでな、渡すわけにはいかん…来い!マオォッ!!」

「私をモノ扱いするな」

 俺とマオは同時に走り出し、相手の顔面に向けて拳を振るう。俺は反射ではなく俺の意思で拳を振るっているが、マオにそれを避ける素振りは無い。「ここでその拳を避けたら僕の負けみたいになっちゃうからねェッ!!」…ふっ、マオ…潔い男ッ!!

 マオの拳が俺の顔面に突き刺さるが、それは一瞬のこと、直様マオは俺の放つ拳が顔面に突き刺さり吹っ飛んでいったからだ。だが、一瞬ではあったが良いパンチだった。

「ぐ…(指すら動かない…僕の負けか。)」

 マオは最早アンチ筋肉読心術を保つ事すら出来ぬほどのダメージを負ったようだ。マオは大の字で仰向けになったままである。

「…(ルルーシュ、君の心を通じてC.C.の心を読んだよ。)」

 …そうか、C.C.にギアスは効かないんだったか。だが、俺の筋肉読心術ならC.C.の心を読むことができる。

「C.C.、僕のもとから去ったのは僕のことを嫌いになったからじゃ無かったんだね…」

「あ、うん。まぁな…」

 幼い子供を自分の目的の為に利用しようとして、失敗した。ギアスという危険な能力だけを残して…だが、処分…つまり殺すことも出来ない、非情になりきれない女、それがC.C.だったのだ。

「…僕はオーストリアの家に帰るよ。そこで静かに、鍛錬に勤しみながら暮らすことにするよ。…ルルーシュ、C.C.の事は頼んだよ。」

「あぁ」

 暫くして回復したらしいマオは首跳ね起きで起き上がった。俺とマオは握手を交わし、握力を強め、互いに白い歯を見せ笑い合う。

「「ナイスバルク!!」」

 マオは俺の正体こそ知っているが、元々C.C.が狙いで俺を攻撃してきただけなので、ブリタニアに俺を売る心配はない。そして俺も個人的にマオのことは気に入ったので最早危害を加えるつもりもない。つまり和解である。ナイスバルクで始まりナイスバルクで終わる。過去は汗とともに水に流すのがマッスルガイの流儀である。

「…そうだ、もしも君の目的が達成されたりして…暇になったら遊びに来てくれよ。僕の家は空気も澄んでいて気持ちがいいところだからさ」

「わかった。」

 そしてマオは海を泳いで帰って行った。…心を読むギアスなんて持って飛行機に乗れるのかと心配してたが、どうやら行きもああやって来たのだろう。密入国だが…とやかくいうのは野暮というモノだな。

「…しかしギアスか、俺の筋肉でも防げぬ特別な力とはな。」

「刃物や銃とやり合ってるお前の筋肉も相当特別だと思うがな」

 この先、ブリタニアにもギアスを持つものがあるかもしれない…一層身体を引き締めなければな…!

「引き締めるのは気だけにしろ。それ以上身体のどこを引き締めるんだ」

 

〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜

 

「…本当によろしいのですか?ジェレミア卿、まだ研究は完全では…」

「構わん。皇族に仇をなすゼロを倒すためには…あの人間の限界をも超えた超人的マッスルテロリストを倒すには私も人間であることを捨てなければならん…!」




筋肉のおかげでマオはルルーシュと和解(?)ルートに入ったので生存しました。

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