「ラクシャータ博士、相談があるのですが」
「なんだいゼロ。肉体に似合わずそんなに畏ってさぁ…」
ラクシャータ・チャウラー…昔ナナリーの眼や脚を治してやれないかと医療サイバネティック関連の論文を読み漁った時によく見た名前だ。その割に最近のニュースなどには名前が出ていないことを不思議に思っていたが、まさか中華連邦のインド郡区でKMFの開発をしていたとはな…。
「…なんだい?そんなにジロジロ見て…。…私はアンタみたいなガチムチ趣味じゃないよ」
「勘違いさせて済まないが、そういった話では無いので安心して欲しい」
「そうかい」
…この女、大して筋肉があるというわけでも無いのに心が読めん。どうなっている?まさか俺の筋力が落ちてしまったとでも言うのか…!?ありえない…!毎日トレーニングは欠かさずにやっているはず…!
「…あぁ、筋肉読心術、だったっけ?他人に自分の心を覗かれるなんて真っ平だからね、対策させてもらってるよ」
なんだ、俺の筋力が落ちたわけではなかったか、安心した。ふむ、俺の筋肉読心術は鍛え抜いた目や耳、筋肉により相手の変化を情報として察知し、考察等を行い読み取る技、なんらかの手段で俺の読心術を妨害している?いや、俺の目も耳も筋肉も正常に稼働している。ならば、基となる情報の流出を隠しているのか?スザクやノネット達の様な筋肉によるものでは無い、かといって咲世子さんのポーカーフェイスめいた不思議な微笑みとも違う…ラクシャータ博士は技術者であり医療にも精通している…ふむ、さっきまでは気が付かなかったがラクシャータの見た目や心拍を感じ取ろうとすると僅かにノイズがあるような…?そうか…!
「ふっ…流石と言わせてもらおうラクシャータ。何かしらの装置で私と博士の間にジャミングを行っているのだな?」
フィルタリング機能とでも言うべきか、この俺でも詳しい仕組みまではわからないが、それだけ彼女が卓越した知識と優れた技術を持っていると言う証拠である。
「…心を読まれなくてもそこまでバレちまうなんてね。ただの脳筋って訳じゃなさそうだ。」
「昔医療サイバネティック関連の記事や論文を読み漁った時期がありまして、その時によく名前を拝見しましたので」
ラクシャータはキセルをやめ首を振る。
「その話は嫌い」
ふむ、彼女にとって触れられたく無い過去らしい。改めてナナリーの身体を治す手掛かりが得られたらと思ったが、そちらはどうやらやめておいたほうがよさそうだ。
「…分かりました。では、そろそろ本題を、ラクシャータ博士…貴方の発明にKMFを捕獲する為に使える装置などは無いだろうか?」
「捕獲?」
「えぇ、次の作戦では現地にナイトオブラウンズが3名ほどいる可能性があるのです。奴等はそのパイロットとしての腕だけで無く、ブリタニアの最新兵器を搭載している可能性が高い。」
本国からの客…もしかしたらあの男が…皇帝シャルルが来る可能性がある。その場合、護衛にラウンズ3人と言うのもありえない話ではない。
「なるほどねぇ、数でも劣る上に質まで負けてちゃ流石のアンタでもお手上げってことかい。あわよくば最新技術も頂きたいと」
俺は頷く。コーネリアと闘い消耗していたとは言えノネットに俺は負け、モニモニ言ってる変な奴は四聖剣数人がかりでも打ち取れなかった。いや、寧ろナイトオブラウンズと言う地位にあのチャランポランな言動でなっているのだから腕だけは非常に良いと言うことなのだろう。藤堂やカレンなど、こちらも使える札はまだあるが、あちらにも白兜というイレギュラーがある。恐らく奴もラウンズか、それに匹敵する人物だろう。アーニャとか言う奴の事も考えるとまともに戦えば仮に勝ててもこちらの被害は甚大、来たのがシャルルであったならばやつを打ち取れば勝ちになるが、そうでなかった場合リスクがデカ過ぎる。まだまだブリタニアには他の戦力があることを考えれば被害は少ないほうが良い。
「戦って勝つというのはあくまで手段の一つ。結果である障害の排除であれば他の手段もできるだけ欲しいのでね。」
「そうだねぇ…捕獲…。…あぁ、ゲフィオンディスターバーって装置が使えるかもね」
「ほう?」
「特殊な装置が必要なんだけどね、そいつで囲んだ空間には特別な力場を発生させることが出来るのさ。その力場内ではサクラダイトの動きは阻害される」
ふむ、KMFはサクラダイトで稼働している。力場内に誘い込めば機能停止に追い込める訳か
「…ただし、アンタならわかってると思うけどこの力場による干渉は敵味方無差別、味方のKMFだろうと止めちまうからね。…まぁ、アンタなら関係ないか?」
「あぁ、当然だが俺のこの強靭な肉体はサクラダイトで動いているわけではないからな、俺が無理矢理機体ごと力場内に引き摺り込み、道連れ的に相手を機能停止に追い込む。その後は俺がハッチをこじ開けて敵のパイロットを直接殴れば良い。」
「改めて聞くと野蛮ね…」
相手がノネットの場合はその手は通じないから注意が必要だが、モニモニ言ってた奴や見た感じ非力なアーニャとか言う奴相手ならば通用するだろう。…ナナリーと変わらない年頃の相手を暴力で捩じ伏せると言うのは俺もあまり好かんが…
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「迎えはアーニャだけで良いのかねぇ」
「アーニャはアレでもしっかり者モニ!問題ないモニ!」モニモニ
あ、うん。そりゃアンタなんかよりゃ余程しっかり者だよあの子は。寧ろあんたにもう少ししっかりして欲しい。ナイトオブラウンズと言う制度が無ければとっくの昔に精神病棟行きなんじゃないかね…。
「クルシェフスキー卿はいつもあんな風に跳ねてらっしゃるのですか?」
「え、えぇ…、ユーフェミア皇女殿下の前だと言うのに申し訳ありません…」
「いえ、お気になさらず」
コーネリアの妹の割に随分おとなしい子だね。…いや、寧ろコーネリアの事だから過保護が過ぎてこうなったのかね?すると、ユーフェミア皇女殿下はそわそわとし始め、モニカの方をまたチラチラと見始めた。やはり気になるのだろう、ダメ元でモニカの奴を止めてみるか
「ちょっとモニ…「私も混ざります!!」…は?」
そう言ってユーフェミア皇女殿下はモニカと一緒に跳ね出した。ふうん、色の髪とピンクの髪が上下に揺れてこれはこれで華やかじゃないか。…ってそうじゃないよなんだいこの混沌とした光景は。ユーフェミア皇女殿下のSP達は…あー、駄目だ。みんな目が死んでる。
「エニアグラム卿、諦めてください。ユフィは天然なんです。」
「枢木…」
あぁ駄目だね、コイツも目が死んでる。苦労してんだね、お互い。すると、突如通信が入った。
『報告します!式根島防衛基地に黒の騎士団が現れましたァ!』
「モニィ!?」モニィ⁉︎
モニカは真っ先に反応すると直様走り出し、KMFへと乗り込んで居た。こう言う行動の速さは流石だねぇ。
『早速成敗しに行くモニ!着いてきて欲しいモニ!ノネット!』モニ!
「あいよ!…枢木はここでユーフェミア皇女殿下の護衛を頼んだよ!」
「え、あ、はい!」
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『ゼロ、ナリタで相手したモニモニしているラウンズが現れた。C地点への移動を開始する。』
ほう、ここまでは作戦通りか、藤堂にラウンズを引き付けさせ、誘い込んだ先で旋回活殺自在陣を展開して四聖剣達の月下に取り付けたゲフィオンディスターバーで四方を囲んでしまえば無力化が可能だ。問題は他のラウンズと白兜だが…
『その機体、ゼロだね?今度こそトドメを刺させてもらうよッ!』
「これはこれは、ナイトオブラウンズ、ノネット・エニアグラムか…!」
ふん、相手はノネットか、ゲフィオンディスターバーの力場に引き摺り込んだ後は殴り合いで勝つ必要があるが、やるしかない…!
『どうしたゼロ!アンタにしては逃げ腰じゃァ無いかッ!』
くっ…!KMFは万全なのにこの俺が押されているとは…!以前よりも強くなっている…これがラウンズか…!だが、この場合寧ろそれが都合良い、奴に競り負ける俺が演技ではない分、この作戦に気付かれることは無い…!
『装備も無く砂場に追い詰めたッ!これでアンタも逃げられ無いねェ!!』
奴のランスを防げずに受けるが、既に奴は術中にハマった!
「流石はノネット・エニアグラム。しかし!」
『ッ!?まさか自爆する気かい!?だったら…。…!?なんで動かないのさッ!』
既に俺はコクピットハッチを蹴飛ばし脱出済み、ゲフィオンディスターバーにより第一駆動系を含む全ての動きを停止されては至近距離でのKMFの自爆から逃れられまい!
やがて、俺の乗っていた先行試作型の月下はノネットの機体ごと爆散し、その爆風の中からノネットが飛び出してきた。
「チィ…!やってくれるじゃないか…!」
サクラダイトにより威力を高めた爆破にもかかわらず消し炭になっていない辺り、ギリギリでこちらの狙いに気付きハッチを蹴飛ばしたのだろうが、流石に全く爆発に巻き込まれなかった訳では無さそうだ。強がってはいるがダメージとしては十分。
「貴方には以前腹に風穴を開けられた借りがありましたね。…ここで死んでもらう。」
「くっ…この砂地では…!」
ふっ…!その通り、砂地は足腰のトレーニングに最適なほど足場としては悪い部類、爆破の影響で肉体に傷が付いている上にこの足場では俺の攻撃を躱すにも限度があるだろう。終わりだノネット・エニアグラム…これで…
『おしまい』
たまにロスストとかでモニカのボイス聞くとミートギアスとのギャップで脳みそがバグりそうになります。