「おいお前」
またもや声を掛けられるが、今回は女の声。振り向けば俺が助けた女だった。
「なんだ、お前喋れたのか。」
「あぁ、取り敢えず助けられた。礼を言う。」
礼を言うと言っている割には随分と偉そうである。本当に感謝してるのだろうか。
「助けてくれた礼に…そうだな。力をやろう。」
「…ダンベルならもう間に合ってるぞ」
「女性に向かって失礼だなお前。さては童貞だな?」
ブリタニアを壊す為に体を鍛えたり、軍資金を稼ぐ為に時間を取られているので俺に恋愛にうつつを抜かす余裕は無い。故に童貞なのは当然であろう。
「私の渡す力はそういう物理的な力ではない。王の力だ。だが、これを手にすればお前は力を得る代わりに他人とは異なる摂理で生きることになる。王の道はお前を孤独にするだろうな。だが…お前には叶えたい夢があるのだろう?覚悟があるならばこの手を取れ。あとついでに私の願いも叶えて貰う。」
「ブリタニアを倒す為だ。頭脳も身体も鍛えた。更に力が手に入るというならば貰うとしよう…………ドーピングとかじゃないよな?」
女はドーピングとかではないと言ったので手を取るすると、さまざまな映像が脳裏を駆け巡った。
「なんだ…これは!?」
呆然とする最中、一つのナイトメアがやってきた。…というかあの女さっきしれっと願いを叶えろとか言ってきたな?全然礼になってないじゃないか。
『なんだこれは!どうなっている!ここで何が起きた!ブリタニアの学…生?学生か?学生…だよな…?お前、ここで何をしている!』
流石の俺もナイトメア相手に素手で向かうほど愚かではない。早速貰った力とやらを試してみるか…
「"そこから降りろ。今すぐにだ"」
『なんだと?貴様偉そうだな。何様のつもりだ!』
…どうやらこの力とやらは直接相手の目を見なければ使えない様だ。思ったより不便だな。ならばまずはナイトメアから引き摺り降ろすとしよう。
「私はニトゥーキン・ジョーワン!父は侯爵だ。保護を頼みたい。」
『保護?見る限り保護が必要そうな見た目ではないが…?』
「使えん軍人だ。父に言って抗議して貰うとしよう」
普通に考えればこんなところに貴族の子供がいるはずがない。しかし、仮に何かの事故で迷い込んでしまい、それを見捨てたとなれば…軍人であるあいつは処分を免れないだろう。そして奴はこのリスクを無視できないはずだ。
『待て!保護しないとは言っていない!』
馬鹿め…。降りて来た女に対し俺は力を使った。
「"お前のナイトメアを寄越せ"」
「…分かった。ナンバーはXG2-IG2D4だ。」
キーを奪った後、念の為手刀で意識を刈り取った。
「お前も乗れ…えーっと…そういえば名前を聞いていなかったな。俺はルルーシュ・ランペルージと名乗っている。お前は?」
「名乗っている…?ニトゥーキンとやらと同じ偽名か…まぁいい。私はC.C.だ。」
「そうか。C.C.早く乗れ、少々狭いだろうが我慢しろよ」
俺が乗りこんでからシートの後ろにC.C.が乗り込んだ。
「狭い上にお前のせいで暑苦しい。カプセルの方がマシだな」
「我慢しろ。ワガママを言うとお前も…」
俺はC.C.を見やる。しかしC.C.は余裕の表情を浮かべていた。
「効くかな?私に」
「…じゃあ。」
俺は力瘤をつくり見せつける。するとC.C.の顔から余裕が消え去った。
「…少しふざけるくらいは許せ。私の個性だ」
ふむ、殴れば黙らせられるらしい。とは言え無駄に人を殴る趣味はないので状況把握に専念する。しかし、流石に情報が足りないと思っていると電話が掛かってきた。相手は…シャーリーか。C.C.に静かにしていろと言ってから電話に出た。
「もしもし?シャーリーかい?どうしたんだ?」
『もールル!今一体どこにいるの!?授業サボってばっかりで…このままじゃ留年しちゃうよ?』
そういえば今日は授業をサボってるんだった。リヴァルに頼んだとはいえ、現状帰れる見込みなどつかない。となれば改めてナナリーのことも頼まないといけないな…。良い機会だから取り敢えず情報を集めよう。
「シャーリー、今そこにテレビとかはあるか?ニュースを知りたいんだが。シンジュク辺りの」
『え?ちょっと待ってね……………うん、ニュースね…うーん、特に何もやってないよ?交通規制があるだけで』
大っぴらな報道はしていないようだ。
「交通規制の理由は?』
『わかんない』
どうやら全て終わってから軍に都合のいい報道をするつもりのようだ。つまり援軍は呼び難いはず。奪ったサザーランドで戦況を見てみれば周りは敵だらけ、盤上の駒だけとは言え囲まれているのだ。一人で切り抜けるのは不可能だろう。
「C.C.お前ナイトメアは動かせるか?」
「動かすくらいなら…なんだ?私にも戦わせるのか?こんなただのか弱い乙女に?」
ただのか弱い乙女が拘束されてカプセルにぶち込まれるとは思えない。動かすことができるなら駒としては十分だろう。
「お前の願いを叶えてやる代わりにお前も俺に協力しろ。」
「…良いだろう。これは契約だ。お互いにお互いの目的のため協力する…我々は契約者にして共犯者だ。」
共犯者か、ふむ…悪く無い響きだ。
C.C.のサザーランドを手に入れようと周りを見渡していると、輸送列車を見つけた。これは使える。軍人が見張っているが、まさか味方のサザーランドが奪われているなどと思うまい。友軍の様に振る舞いつつ接近し、降りた後、C.C.から貰った力…ギアスを使うことでサザーランドを奪うことに成功した。あと、念の為兵士たちには1発ずつ顔面にパンチをブチ込み意識を刈り取っておく。とは言えC.C.一人に渡すにしては数が多過ぎるな…そう言えばテロリスト達が居たんだったか。それに通信機を手に入れていたことを思い出し、包囲網突破のための作戦を思いついた。
「俺を巻き込んだ借りは返してもらおうか。」
テロリストの通信機を使い、まずは赤いグラスゴーを助ける。どうやらサザーランドに追いかけ回されているらしい。型落ちな上、片手な癖によく耐える。余程パイロットが優秀なのだろう。ならば駒として活用しない手はない。
「赤いグラスゴーのパイロット!西口だ、線路を利用して西口へ回り込め!」
『誰だ!?どうしてこのコードを知っている!』
「私が誰かなどどうでも良い。私の指示通りにすれば勝たせてやる!」
『勝つ…!わかった!』
少々反抗的だったがどうやら従ってくれるらしい。それにしてもパイロットは女のようだ。強力な女…よし、Q"クイーン"は決まりだな。
女を追うサザーランドを俺とC.C.の十字砲火で叩きのめした。
『助かったよ。でもどうやってサザーランドを?』
「そんなことはどうでも良いだろう。それよりお前たちに列車の積荷をプレゼントしよう。勝つ為の道具だ。」
C.C.は俺の護衛として周りを見張らせ、俺はテロリスト達に指示を出した。
早々に包囲を崩したところまでは良かった。問題が起きたのは白いナイトメアの登場。テロリスト達が言うには白いナイトメアは実弾を弾くシールドを持ち、信じられない速さで動くと言う。
『ルルーシュ!例の白いナイトメアがこちらに来るぞ!』
「お前はナイトメアを捨てても良いから逃げていろ!合流地点はポイントσ7だ。」
『分かった。但し死ぬなよ?お前に死なれると困る』
「ふん、誰に言っている」
C.C.は先に離脱し、その直後視界に白いナイトメアが現れた。こいつかイレギュラーは…!そしてその動きは…回転クルクル空中ローリングキック。このナイトメア…乗っているのはスザクか…!?スザクの動きを完全に模倣出来る機体などサザーランドで勝てるはずが無い!逃げに徹しつつ、直接攻撃ではなく周りの建物を破壊して進路を妨害する。姑息な手だが仕方がない…!
『ルルーシュ、援護するぞ』
遠くからC.C.が援護射撃をしてくれるおかげもあり、なんとかスザクを振り切ることができた。
「これからどうするんだ?ルルーシュ」
「丁度いい。今頃本陣が手薄だろうからな。クロヴィスが何か知っていないか聞いてくるとするよ」
ナイトメアを隠しつつ、C.C.を残して俺はその辺の兵士から装備を拝借しG1へと向かった。
「止まれ!」
「ようやく検問か」
「お前テロリストの仲間だな!?」
何故コイツそれを…だがそう思うなら躊躇わず撃つべきだったな。俺は拳を叩き込み黙らせる。その後も視界に入る人間には何故か正体を見破られたので仕方無く全て拳で捩じ伏せ黙らせた。
「なんだお前は…!」
一先ず銃をちらつかせ、停戦命令を出すように脅す。クロヴィスは怯えながら首を縦に振り、言われた通りに停戦命令を出した。
「これでいいか…!?次は何をすればいい?踊りか?それとも歌でも歌えばいいか?チェスのお相手でも…あ、サンドバッグ代わりはやめてくれ!良い感じの肉壁は将軍のバトレーという男の方が向いている…」
「チェスですか、懐かしいですね。昔はよくお相手しましたし…まぁ、いつも俺の勝ちでしたが」
「貴様…誰だ!?」
俺はヘルメットを脱ぎ捨て素顔を晒す。
「お久しぶりです兄上」
「…いや、貴様誰だ!?私の弟にお前のようなゴリラは居ない!」
俺如きの筋肉量でゴリラさんだと?ゴリラさんに失礼だ。俺はクロヴィスに近づき、思い切りビンタする。
「ヒィィ!!やめろ!やめてくれ!何でもする!何でもするから許してくれ!」
「腹違いとは言え実の弟の顔すら忘れるとはな。俺の質問に答えて貰うぞ?俺の前では誰も嘘は吐けない!」
まずは一発ビンタを叩き込む。
「止めろ!やめてくれ!何でも話す!話すから暴力は!」
「俺の母は立場こそ皇帝の妃だったが出は庶民だった。他の皇族からしたらさぞ目障りだったろうな」
「…お前ルルーシュか!?う、嬉しいよ…生きてたんだな…!それにこんなに逞しくなって…だが、お前の母親…マリアンヌ様のことなら私じゃ無い!私じゃないぞ!本当だ!信じてくれ!」
暴力はやめてくれと言われたので俺はギアスを使う。
「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる!"俺の質問に答えろ"」
「…わかった。」
「誰だ。母さんを殺したのは!」
「第二皇女コーネリアや第二皇子シュナイゼルが知っている。」
知っている?つまり犯人かどうかは知らないのか?
「そいつらが首謀者か?」
「………」
どうやらそこまでは知らないらしい。
「…はっ!?私は本当に知らない!!頼むから暴力はやめてくれ!私が出来ることなら何でも協力する!そうだ!私と一緒に本国にでも…」
醜く泣き喚きながら命乞いとは… 腹違いの兄弟とは言え恥ずかしくなってくる。とは言え、コイツにもう利用価値はない。
「お前には俺の覚悟を、引き返す道を無くすための生贄になって貰う。」
「止めろ!やめてくれ!その脚みたいな腕を振り上げるな!うわぁ!やはり嫌だ!嫌…」
俺はクロヴィスに拳を振り下ろした。
「腹違いとは言え!実の兄だゴフェ!」
何度も…何度も……
「残虐なやつだな。殺すなら銃で撃てばいいだろうに。」
「それではダメだ。この手で、この拳で殺す事に意味がある…ブリタニアを破壊する、その覚悟を決めるために俺は…!」
我ながら悪趣味だが、俺の復讐を果たすための覚悟を己自身に示す為にはこれしか無い。俺が人をぶって良いのは、俺が撃たれる覚悟があるからなのだから。
やったねスザク!銃という証拠品が残らないから容疑は掛からないぞ!
20220715修正:ルルーシュの用いた偽名を「ニトゥーキン・ジョーワン」に変更
20220729修正:ルルーシュへのゴリラ呼び名怒る理由を変更
ネクストジェレミアヒント!「人を殴り殺せる身体能力」