先日騎士になったばかりの枢木スザクが命令違反で捕まったと言う報告を受けたコーネリアは呆れ果てた。勿論続く言葉は「これだからイレブンは」だ。すると、自身の騎士であるギルフォードが慌てたように部屋に入ってくる。
「…何事だ。」
「殿下!キュウシュウブロックの関門大橋が破壊されました」
「何!?」
「他4箇所で陸路が、さらに玄界灘に強襲揚陸艇が多数侵入してきています!」
コーネリアは次から次へとなんなんだ!と叫びたかった。ここのところユーフェミア成分が不足していたコーネリアはご立腹である。規模からしてテロ組織ではないのは明白、つまり考えられるのは中華連邦しかない。
「中華連邦か?しかし宣戦布告は…」
そう、宣戦布告がなされていないため、中華連邦のはずがない。そう思っていると驚きの事実が告げられる。
「いえ…それらの艇体には日本の国旗が!」
一体どこのどいつだと、すぐさまコーネリアはキュウシュウの奪還作戦を実行するものの、連日の嵐により上陸作戦は難航し、キュウシュウを纏める時間を与えてしまっていた。
それでは本編スタートです。
『我々は!ここに正当なる独立主権国家日本の再興を宣言する!』
テレビに映る澤崎がそんなことを宣っている。所詮お前は中華連邦の傀儡だろうに。
『なお黒の騎士団が関与しているかは調査中ですが…』
アナウンサーの言葉を聞き流しつつ、扇の話を聞けばキョウトも知らぬ独立宣言だそうだ。そして黒の騎士団は中華連邦とも繋がりがある。どう言うことか聞く必要がある。
「ゼロ!黎星刻と連絡が取れたぞ」
『私だ。』
「お久しぶりだな。黎星刻、ニュースは見たかな?」
『私も驚いている。だが、あれは中華連邦の総意ではない』
モニターの黎星刻は首を振り関与を否定していた。さて、どうだか…
「では我々黒の騎士団があれを潰しても問題はない、という事だな?」
『あぁ、構わないとも。」
その後の話から察するに、亡命してきた澤崎は中華連邦内でも日本解放を訴え続け、現在の主権グループからは鬱陶しがられていた。そして澤崎が日本を解放した暁には実権を得られると皮算用した非主権グループが澤崎と合流し、今回の作戦を実行。黎星刻の話をまとめれば中華連邦的にも程のいい厄介払いのようだ。
「澤崎とは合流しない。あれは独立ではなく傀儡政府だ。中華連邦のな」
「今まで中華連邦に亡命していた男のことだ。ろくな未来はないな。しかしブリタニアの行動も放っておくのか?」
「いいや、違うな藤堂。間違っているぞ。私がガウェインで出て澤崎を捕らえる。その間お前達はブリタニアの動きを見ておけ。将来我々が動いた時にどう動くのか…その予行演習にはもってこいじゃないか?」
「なるほどな、情報収集は戦いの基本だ。我々に任せてくれゼロ。」
藤堂は俺の意図を理解してくれたらしい。
「次に我々の行動目標を伝えておく。我々はトウキョウに独立国を作る。」
「国を!?」
「あぁ、そうだ。誰かがブリタニアを倒してくれるのを待つ余裕はない。誰かが自分の代わりにやってくれる。待っていればいつかはチャンスが来る、そんなことは有り得ない。自らが動かないかぎりそんないつかは絶対に来ない!俺の体を見ろ!」
俺はモスト・マスキュラーのポーズで団員達に筋肉を見せつける。
「俺はブリタニアを破壊するため、ここまでの肉体を仕上げた。自らの意思で、自らの行動で、掴み取らなければこんな体にはなっていない!国も筋肉も同じだ!諦めず、目的見据え努力する。それこそが我々の目指すものだ」
「確かに、ゼロだって最初は普通の人間だったはずだ。何も無いところからコツコツと筋肉を固めて今の姿になった…俺たちが国を作るのだってできなくは無いはずだ!そうだろみんな!?」
扇のおかげで組織は纏まってくれたようだな。
ブリタニアの行動記録は皆に任せつつ、俺はC.C.と複座のナイトメアであるガウェインに乗っていた。
「砲手は任せたぞC.C.」
「なんで私がお前なんかと」
「仕方がないだろう?シミュレーション結果で俺の操作で死なないのがカレンだけだったんだ。カレンはそもそも紅蓮があるからな、消去法でお前だけだ。」
C.C.がガシガシと後頭部を蹴っ飛ばしてくるがこの程度蚊に刺されたようなものだ。
「お前今なんて言った?シミュレーションで死なないのがカレンだけで消去法で私?それってつまりシミュレーションだと私は死んでるってことだよな?私は不老不死だから乗せられてるだけだよな!?」
「舌噛むぞ」
フルスロットルで加速し、一気にキュウシュウを目指す。
「ん"ん"ッ!!」
何やらC.C.から変な音が聞こえたが大丈夫だろう。スザクを確認すれば囲まれているようだ。
「相変わらず無茶をするやつだなスザクは。撃て、C.C.!」
「…はっ!?くそ、言われなくともわかっている!」
ラクシャータが気合いで収束させたハドロン砲をスザクを囲む中華連邦のナイトメアに向け放ち、敵を一掃する。
「C.C.次は航空戦力だ。薙ぎ払え!」
「人使いの荒い!」
中華連邦の航空戦力をハドロン砲の薙ぎ払いで一掃。これで邪魔者はいなくなった。
「枢木スザク、生きているか?」
『ゼロ!その機体は…』
スザクという単機で本陣を撹乱してイレギュラーを作る。失敗してもコーネリアは動きやすい。この策を考えたのはシュナイゼルだろうが今回は逆に利用させてもらおう。スザク単騎ならば俺も動きやすいと言うものだからな。
「エナジーが尽きているようだな。さぁ、受け取れ、新品のエナジーフィラーだ。これから私は敵の司令部を叩く。」
『僕は…』
僕は絶体絶命だった。中華連邦のガンルゥと呼ばれるナイトメアは一機一騎の性能は低いけれどとにかく数が多い。防ぎきれずにヴァリスやフロートユニットは破壊され、僕は遠距離攻撃も逃げるための翼も失ってしまった。
『投降したまえスザク君。枢木玄武首相の遺児として丁重に扱うことを約束するよ?』
そんな訳にはいかない。僕は…僕が殺した父の名で生き延びてしまったら僕はもう自分が許せないだろう。
『枢木スザク!』
誰かと思ったらユフィが通信を入れてきた。もしかしたら援軍でもきてくれるのかもしれない。
『えっと…わたくしを好きになりなさい!』
…?何を言ってるんだユフィは…
「もうなってます!」
『え?』
「え?」
いや、好きになれた言われても僕はもうユフィのことは好きだし…。
『な、ならもっと好きになりなさい!その代わり私があなたを大好きになります!私があなたの全てを大好きになります。だから、自分を嫌わないで!』
あぁ、そうか…僕は良かれと思って騎士の証を返したけれど、かえって心配させてしまったのか…。
「お願いがあります。僕に何かあっても自分を嫌いにならないでください。あとその時は僕の存在を全て消してもらえると…。友達に迷惑はかけたくないから転校したことにでもしてください」
『スザク、まさか…ダメよ!」
僕は再びナイトメアに囲まれてしまった。エナジーが尽きてしまってはいくらランスロットでも防ぎきれない。僕はここで死ぬみたいだ。
「ああいけない。セシルさんやロイドさん。それとシュナイゼル殿下によろしく。フッ…最後まで独りよがりだったな僕は…」
『スザク死なないで!生きていて!』
生きる…?そうだ、そうだ僕は…!この際ランスロットを捨てて素手で殴って戦うのもいいかもしれない。そんな風に思い始めた時だ。
突如周りのナイトメアが何者かによって殲滅させられた。上空を見ると神根島で盗まれたガウェインのようだ。
『枢木スザク、生きているか?』
「ゼロ!その機体は…」
どうやらルルーシュのようだ。助けに来てくれたらしい。
『エナジーが尽きているようだな。さぁ、受け取れ、新品のエナジーフィラーだ。これから私は敵の司令部を叩く。』
ルルーシュから受け取ったエナジーフィラーのお陰でランスロットは再度動けるようになった。これなら…
「僕は…悪いけどナイトメア操縦技術を鍛えるために君よりも先に敵の司令部を叩くよ。」
僕とルルーシュは共に進み、敵を蹴散らしていく。
『下がっていろスザク。壁に穴を開ける。』
ガウェインのハドロン砲で開けられた穴を使い、建物内に侵入していく、
『ゼロ!お前達は日本を憂いる同志ではないのか!?』
『我ら黒の騎士団は不当な暴力をふるう者全ての敵だ』
『不当だと?私は日本のために!』
「日本のためという割には澤崎さんには筋肉が足りませんね、鍛えてから出直して下さい!」
『脳筋がぁ…!!』
キュウシュウ最大の要害は僕とルルーシュによって制され、澤崎達の拘束に成功した。澤崎さんが抵抗したので顔面に膝を叩き込み気絶させたけどね。ルルーシュの…黒の騎士団の関与は表立っては報道されなかったけれど、噂は流れているようだった。これがルルーシュの狙いか。
僕はユフィの元に生きて、そして前よりも鍛えられて戻ることができた。
「スザク。私ね。分かったんです。理想の国家とか大義とかそういう難しいことじゃなくてただ私は筋肉が見たいんだって。今大好きな人とかつて大好きだった人の筋肉が」
そうしてユフィは僕が返してしまった騎士の証を差し出してくれた。
「それを実現するために私を手伝ってくれますか?」
今のままではユフィの願いは叶えられないかもしれない。だから、ユフィの願いが叶えられるように僕がユフィを鍛えなくちゃいけない!
「イエス ユア ハイネス!」
「ねぇ、ルルーシュ」
「なんだい?スザク」
「やっぱりこの課題、教えてくれないかな」
そして僕たち二人は夜の学園で補修を受けていた。
「自分で考えろ。身体だけじゃなくて頭も鍛えたらどうだ?」
…そうだな、いつまでもルルーシュに頼ってばかりじゃダメだ。僕も頭を鍛えないと。
「二人とも静かに!」
ドンと机を叩く音がする。
「確かに中華連邦の介入や黒の騎士団によるテロ行為によって世間はいろいろと騒がしい」
わなわなと手を震わせる先生の顔は般若のようだ。
「しかし!それとこれとは別問題!出席日数が足りないというこの事実!いくら成績がよかろうと!いくらユーフェミア様の騎士だろうと!いくらイケメンだろうと!いくらムキムキだろうと!出席日数が足りなければ留年しかないの!あ、でも私個人としては留年してくれた方がその目の保養的には…」
先生は留年してもいいと言ってくれているけれど、僕はユフィの好意で学校に通わせてもらってるんだ。無様に留年なんてしたらユフィに心配をかけてしまう。
「…であるからして、ここの答えは?ルルーシュ!」
「…です。」
「せ、正解。なんでお前授業出てないのにわかるんだ?」
歴史の授業…なんとなくだけど、ルルーシュって元皇族だし近年の皇族関係の歴史は先生よりよほど詳しいんだと思う。僕は…うん、さっぱりわからない。あ、この人リ・ブリタニアってことはユフィ達のお母さんかな。へー、こんな人なのか。
「こら枢木!ぼーっとするな!」
「あ、はい、すみません。」
半ば眠気との戦いとなってきた補習、最後は…
「最後は体育だ!」
こうして体育の補習として僕もルルーシュは夜のグラウンドに佇んでいた。なんで深夜一歩手前に体育の補習を…?
「先生こんな夜にわざわざ屋外でベースボールの補習なんて正気ですか?」
「しかもナイター仕様だしね。みんな明るくて目、覚めちゃうんじゃないの?」
「うるさい!体育の補習、ベースボールやるぞ!キャッチャーは俺がやる、ルルーシュが先にピッチャーやれ。枢木がバッターだ。」
「スザクくーん!がんばってー!」「ルルーシュが三振に抑えるに賭けるぜ!」「じゃあ俺はホームラン撃たれる方に賭けよう」「お兄様ー!スザクさーん!頑張ってー!」「頑張れルルーシュ!」
ほら、みんな起きちゃってるよ。…いや、ナナリーに明るさ関係ないよな…?なんでいるんだ?
「じゃあ行くぞスザク。全力で行くからな、お前も手を抜くなよ」
「分かってるよ。」
はち切れんばかりの体操着に身を包んだルルーシュがピッチャーマウンドに立ち、おおきく振りかぶって…投げた!そして体操着は爆ぜた。ど真ん中に投げられればボールにバットを当てることは可能だ。そう、当てるまでなら。フルスイングしたバットと全力投球されたボールは激突し、今なおギュルギュルとボールは回転し続けている。ルルーシュのボールと僕のスイング、どちらが強いか。
答えは不明何故なら
金属バットがへし折れたから。
折れた金属バットはルルーシュに直撃するが、バットは粉々に砕けた。そして僕のバットを突き破って尚ボールは勢いを無くさず、ミットに納まった。いや、納まったというのは語弊がある。
僕らの視線の先にはキャッチャー役の先生、ルルーシュの全力投球をミットに納めたは良いものの、そのまま吹っ飛ばされフェンスにめり込んでいる。しかも気まで失ってるようだ。
「先生が気絶してるってことは体育の補習終わりってことでいいんだよな?」
「え?いいのかな?」
まぁでも…起こすのも忍びないし、何よりも眠い。今日はもう帰ろう。
「もう今日は遅いしうちに泊まっていけよ。ナナリーも喜ぶ」
「うーん、じゃあそうさせてもらおうかな」
ルルーシュに従い補習を終えたけれど、普通に次の日怒られたよね。
露骨な尺稼ぎの補習パート。
19:40 一部修正(シミュレーション云々の箇所)