「さぁ!兵士の皆さんも早く!日本人を殴り殺してください!」
それが如何におかしな命令でも副総督の命ならば従わなければならない。兵士達は困惑しつつ、各々日本人を殺し始めた。命令は殴り殺せだが、兵士の多くは皆銃を構えてそれを放った。抵抗する若い日本人を肘打ちからのコンビネーションパンチで圧倒し、マウントをとって的確に顔面を殴り続けるユーフェミアの狂気に日本人は闘争よりも逃走を選んだ。
「いけません副総督!おやめください!なぜ急にこんな事を…」
狂気に負けず行動できたのは将軍だからか、それとも鍛えた筋肉故か、ダールトンはユーフェミアを止めに入る。
「マ°ッ!?」
が、ゼロ同様に金的を喰らい地に伏した。
それでは悲劇の本編スタートです、
「さぁ!兵士の皆さんも早く!日本人を殴り殺して下さい!」
こんなの嘘だ。あのユフィがこんな命令を出すはずが無い。ルルーシュ、君を信じた僕が馬鹿だったよ。やはり君はシャーリーのお父さんを殺し、シャーリーをぶん殴り、更にはユフィまで殴りしばいたんだろう。結果ユフィはおかしくなり、こんなことをさせているんだ。それよりも僕がユフィを止めないと。ダールトン将軍は倒れてしまったけれど、僕がやらなくちゃいけないんだ!…ユフィの騎士として!
『枢木スザク…お前は日本人だったな?』
ふと、そんな声が聞こえた。即座にその場を横跳びで退けるとグロースターの拳が降ってきた。
『ユーフェミア様は日本人を殴り殺す事をご所望だ。』
「馬鹿を言うな!」
みんな何を考えてるんだ!?こんな時にすべきことはユフィを止めることじゃないのか!?
『…済まない。でも軍人は命令に従わなければならないんだ。』
…そうだ。僕は、僕はあの時…。これが、これが僕への罰なのか?命令だからと従ってきた…だからってこんな…
『" "』
…そうだ。僕はこんなところで死ねない。僕がユフィを補佐して、鍛えて、ユフィの夢を叶えなくちゃいけないんだ!
「どけぇぇぇぇ!!!」
放たれたグロースターの拳を回避し、そのままグロースターの腕を駆ける。そして一気にユフィの所へ飛び降りつつ、両手を組んで振り上げる。ユフィには悪いけど気絶してもらう!
「まぁ!スザク、会いたかったですよ!…あなたも日本人でしたよ…ねッ!!」
こちらに気付いたユフィは僕のアームハンマーを躱すと、容赦ない肘打ちを仕掛けてきた。甘いよユフィ、僕はルルーシュに鍛えられてるからね。肘打ちを腕で弾いて無力化し、こちらも拳を打ち込む。しかしステップで躱された。
「!」
何かまずいと思いその場を離れると、ユフィの蹴りが空を切った。あの軌道…睾丸を的確にブチ抜くつもりらしい。
「丈の長いスカートだと足元の動きが分かりにくい…!」
袴と同じで足運びが隠されている。動きが読みにくくてやりにくいな。
「流石ねスザク。簡単には殴り殺されてくれないなんて」
トントンとステップを踏んでからのコンビネーションパンチ…!?
「ユフィ、君は一体いつそんなにボクシングの腕を磨いたんだい!?」
驚くべきはパンチだけじゃない、こちらの攻撃を的確に避け、受け流すその動きだ!
「ネットで調べたら出て来たの、L.L.って方が書いてくださっててね?教え通り鍛えたらこんなに鋭いパンチが打てるようになったの!それにシュナイゼルお兄様が君も皇女なら受け流しの技も磨いたほうが良いって!」
しゃべりならがらも鋭い拳が飛んでくる。それをなんとか捌きつつ、頭を回らせる。L.L.…ルルーシュ ランペルージ…?まさかルルーシュの奴、ここまで計算して!?というか、そんなちょっとボクササイズしたくらいでこんなになるとは思えない、皇帝陛下もルルーシュもムキムキだし、もしかして血筋なのだろうか。それにシュナイゼル殿下…!何で余計な事を教えるんです…!
そんなことより、これ以上ユフィの手を汚させるわけにはいかない!覚悟を決め、ユフィの放った拳を敢えて受ける!
「あは!やっと当たった!」
甘いよユフィ。さっきも言ったけど、僕はルルーシュと殴り合ったことがある。彼の拳はこんなものじゃなかったよ。
僕はユフィの腹に膝をブチ込んだ。
「かはっ…!?どうして…?スザク………」
崩れ落ちるユフィを抱え、僕はアヴァロンへと急いだ。
くっ…まだ痛みで体が上手く動かん…!ユフィを止めるのは…スザクに任せるしかない。俺はガウェインに乗って退散するとしよう…
「ま、まて…ゼロ…!」
この声は…ダールトンか…!こんな時に…!俺が声のした方を見ると…俺と大体同じような姿勢のダールトンが居た。あぁ…なんとなく察した。ご愁傷様だ。こうなれば先を見据えでギアスを使っておこう。
「"コーネリアを生きたまま俺に差し出せ"」
「…わかった」
よし、これで上手く行けばコーネリアは我が手に落ちる。ユフィに掛けたギアスは幸い俺を殺すものではないからこちらを追ってくることもないだろう。なんとかガウェインに乗り込み、今回ばかりはC.C.に操縦を頼み俺は砲手を務めるとしよう。
「驚いたぞルルーシュ、まさかこんなことになるとはな」
「俺じゃない…俺はギアスを掛けていない」
「何?」
驚いたようにC.C.が振り返る。あいつは俺の左目を見て察したようだ。
「俺はギアスを掛けていない…いや、掛けたつもりは無かった」
「そうか…」
「こうなった以上は仕方がない。最大限利用させてもらう。俺だってクロヴィスを殴り殺したんだ、スザクにも怪しまれている、俺に退路はない、ならば進むだけ、全速前進だ!」
俺は黒の騎士団に出撃命令を下す。
「行政特区日本は我々を誘き寄せる卑劣な罠だったのだ!自在戦闘装甲騎部隊は式典会場に突入せよ!ブリタニア軍を壊滅し日本人を救い出すのだ!急げ!」
こうなったらユフィも始末するしかない。既に情報は得ているのだから生かす必要もないからな。スザクとは決裂する事になるだろうが、この際構うものか。俺は既にあいつを歪めている。今更この程度…!この、程度…!
ユフィの始末はできなかったが、行政特区日本の制圧に成功した。ユフィは恐らくスザクが気絶でもさせて連れて行ったのだろう。無駄な事だ、ギアスの力には逆らえない。スザクが日本人である以上、ユフィはスザクを殴り殺そうとするだろう。…いや、それが狙いか?ユフィの最も近くに居る日本人がスザクならこれ以上ユフィが日本人を殴り殺すことは無くなる。
まぁ良い、既にユフィは人を殴り殺しているところは映像に残っている。ディートハルトにはネットに映像をアップするように伝えてあるし、藤堂には今のうちに戦力を整えるように伝えた。扇にも資材の管理を命じてある。これからどうするかを考えていると、どこか見覚えのある女と男達が俺の前に現れた。
「やっとお会いできましたわーーー!!!」
あぁ、いつぞやのラブレターの主か。…昔スザクの家で何度か見た覚えがあるな。
「ゼロよ、これからの事だが我らの下で…」
この集団で桐原が話すということはキョウト六家の様だな?しかし桐原達の下?我々が?考えが甘いな。
「逆だ。こうなった以上キョウト六家の方々は私の指揮下に入っていただく!反論は許すがその場合は俺の拳が唸る事になるぞ!」
「それって実質的に反論許してないですわーーー!!!」
準備が整ったとディートハルトに言われ、俺は生き残りの日本人達の前に姿を晒す。そこからはブリタニアへの抵抗と日本解放の意志、そして最後に
「私は今ここにブリタニアからの独立を宣言する。だがそれはかつての日本の復活を意味しない。歴史の針を戻す愚を私は犯さない!我らがこれから造る新しい日本はあらゆる人種・歴史・主義・筋肉量を受け入れる広さと強者が弱者を虐げない享受を持つ国家だ!」
そう、今こそ建国の時!俺はサイドチェストをしつつ全身の筋肉を膨張させ、膨張に耐えられなくなった服は引き裂かれ、禍々しいほどに膨れ上がった筋肉を直に見せつける。そしてとどめにダブルバイセップスを決める。
「その名は!合衆国日本!」
ユフィという撲殺皇女の登場はまさに絶望、その後に現れたゼロという希望。日本人達のボルテージは最高潮だ。このままブリタニア政庁を陥落させコーネリアを始末してやる。
\ゼロ!ゼロ!ゼロ!ゼロ!ゼロ!体脂肪ゼロ!ゼロ!ゼロ!ゼロ!/
これで後は進むだけだ。一度鹵獲したG-1の司令部に向かい指示を出す。
「コーネリアさえ殴り倒せば我々の勝ちだ!全軍!作戦配置図に従い待機せよ!」
こんな事になるのなら神根島で始末しておくべきだったか…いや、過ぎたことを考えるな…!全ては過去だ、後悔や懺悔なんて後でいくらでも出来る…!
「ディートハルト。前線は藤堂に。ここはお前に任せる。」
「分かりました」
俺はガウェインに戻ろうとするが、こちらが扉を開ける前に扉が開いた。
「よかった、間に合いましたわーーーー!!!」
「皇の…?」
「私をおいてさっさと出陣しちゃうなんて酷いですわーーー!!!あなたのデビューから私ずーっとファンだったんですわーーー!!!ようやくちゃ~んとお話できると思ったのに。肩幅思ってた以上に広いんですね。でも大丈夫。すぐに追いつきますわーーー!!!」
…ほう?なかなか見どころがあるな。
「キョウト六家の方々はフジに残られたはずでは?何故ここに?」
「夫の戦いぶりを見るために追いかけてきたんですわーーー!!!」
ふむ、どうやら婚約者がいるらしい、そんな身分の奴がいたか?まぁ、そんなことよりも早くガウェインに戻らなくては。
僕は気絶させたユフィをアヴァロンの一室に閉じ込めるという事で対処した。ベットの上に鎖でぐるぐる巻きにして拘束だなんて、コーネリア総督に見られたらタダじゃ済まないんだろうな…。
「…あ、スザク…」
どうやらユフィは目覚めたようだ。
「ユフィ…教えて欲しい、どうしてあんな命令を?」
「命令…?…そんなことより、スザクは日本人…でしたよね?」
ユフィはおかしくなってから、やたらと日本人である事に拘るな…ルルーシュの奴どんな殴打をすればこんなことができるんだ?
「…駄目、そんなこと、スザクの睾丸を蹴り飛ばすだなんて…考えちゃ、いけない…!」
やはり睾丸を狙った攻撃を…ロイドさんに頼んでファールカップを作ってもらわないと。
「…スザク、式典は、どうなったかしら?」
「覚えていないのかい…!?君が無茶苦茶にしたんじゃないか」
「私が…?私、日本人を…そう、日本人は殴らなきゃ…スザク…」
なんだ?鎖が…ひび割れている?まさか…ユフィ!?
「私があなたを大好きになります!ですからスザク、私と殴り合いなさい!」
「理論が破綻してるよユフィ!」
パリンと鎖が引きちぎれた音がすると同時に、ユフィは寝た姿勢からブレイクダンスのような動きで起き上がりつつ僕に蹴りを放ってきた。
「スザク、私は日本人を殴り殺さないといけないの。でも今のままではスザクを殴り殺すことは出来ないわ。スザク…日本人を、あなたを殴り殺すために私に力を貸していただけませんか?」
「ユフィ?何を言って…」
気がつくとユフィの体は視界から消え…下か!僕は思い切り地面を蹴り跳びあがることでユフィの下段攻撃を躱し、そのまま天井を蹴り勢いをつけながら回転し、ユフィの後頭部に踵をブチ込む事に成功する。後頭部に踵落としをくらった事で顔から地面に叩きつけられたユフィは直様立ち上がり、こちらに顔を向けてきた。
「ッ…!スザク、力を貸して下さいますね?」
は、鼻血…鼻血を垂らしながらユフィはこちらに殴り掛かってくる…一体ルルーシュはユフィに何をしたんだ…!?それに、さっきよりも拳のキレが…!僕だってユフィの力に放ってあげたい、だけどそれは…
『"鍛えろ!"』
…!?そ、そうだ、僕は…俺は、鍛えなくちゃいけないんだ!もっと俺自身が肉体を鍛えて、そしてユフィを鍛えなくちゃいけないんだ!
「ユフィ!」
さっきまでは女の子だと思って手加減していたけれど、ユフィを鍛えるためだ、本気で行く!
「あはっ!スザク!ようやく本気を出してくだ---」
俺の拳がユフィの鳩尾を抉り、ユフィは再び気を失った。
「ユフィ、赦しは乞わないよ。」
…?僕は今何をした?ユフィが倒れている…これは、僕がやったのか?息はしているようだ。生きてる、でも…いや、今はまず医務室に向かおう。後のことはドクターに任せるんだ。僕はユフィを抱え、医務室に突っ込む。
「ユフィを助けて下さい!」
「助けろって言ったってこりゃただの痛みによる気絶だよ。」
僕は再びアヴァロンの一室…ユフィを閉じ込めようとした部屋で砕け散った鎖を片付けながら呟いた。
「ユフィ…僕には分からないよ…どうして君があんなことを」
「教えてあげようか?」
僕が振り返るとそこには見覚えのない子供がいた。どことなく幼い頃のルルーシュに似てる…?それにしてもどうして子供がアヴァロンに…
「初めまして枢木スザク。僕の名前はV.V.」
「V.V.くん?変わった名前だね、イニシャルだけだなんて…あ、ごめん。人の名前をこんな言い方は良く無かったね。反省するよ」
彼は先程までユフィが寝ていたベッドに腰を掛け、僕にも腰を掛けるように促してくる。言われた通り腰掛けると、彼は僕の方を見ずに口を開いた。
「ゼロは超常の力を持っている。」
「確かにルルーシュは常人離れした筋肉を持っているけど…」
「あ、いや、筋肉とか身体能力で言えば君も大概だからね?」
「え?そうなの?」
彼はうんうんと頷いている。うーん、僕なんてまだまだなんだけどなぁ…
「ルルーシュはね、ギアスという人を従わせる力を持っているんだ。」
「まさか、そんなものがあるはずがないよ」
彼はふるふると首を横に振る。
「命令に従おうとした君は式根島で何故鍛え始めた?優しかったユーフェミアは何故突然人を殴りだした?」
「…それは…」
確かに彼の言う通り辻褄が合う。そんな、ユフィのあれはルルーシュの望みだとでも…?いや、信じたくはない、信じたくはないが…ルルーシュはシャーリーのお父さんを抹殺し、シャーリーの記憶もそのギアスとやらで消したのだとすれば?そもそもシャーリーのルルーシュに関する記憶だけが消えてるのは不自然だと思った。僕を助ける時に見逃せと言ったのも?まさかクロヴィス殿下が急に停戦協定を出したのも………
「ルルーシュ…君が…?」
君くらい賢い人間ならもっとやりようがあったはずだ。なのにこんな…こんな犠牲を出すやり方を平然と…ルルーシュ、君は人の痛みがわからないのか…?ナナリーを世話する君が?
「ルルーシュ、これ以上悲劇を産まない為にも、僕が君を止めるよ…!」
はい、スザクにかけられたギアスは「鍛えろ」です。これによりスザクはピンチになると主に自分や親しい人を「鍛え」ようとします。
ユフィとスザクが殴り合い始める前代未聞作品、「ミートギアス 〜筋肉のルルーシュ〜」を皆さまどうか引き続き応援ください。
●NGシーン●
ユフィの振り下ろした拳は老人の顔面に直撃した。
「のほぉ!?ありがとうございます!」
「爺さん!?」
ユーフェミアは更に続けてもう一発を老人の顔面に叩き込んでいた。
「うっほぉ!!ありがとうございます!!若くて綺麗な女性に殴っていただけるなんてご褒美です!!!」
「爺さん!!!」
なんだこれは…。ダールトンがユフィを羽交締めにし、ジタバタするユフィを引きずるようにして退場していった。なんだこれは!この惨状は俺が作ったのか!?