ミートギアス 〜筋肉のルルーシュ〜   作:ベルゼバビデブ

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そう言えばルルーシュがカレンのこと見てないんだよね。ルート破綻してない?


STAGE03

「こーらルルーシュ!今こっそり筋トレしてたでしょ!」

 空気椅子しつつ机の下で握力トレーニングしていたのが会長に見抜かれたようだ。丸めた紙で頭を叩かれてしまった。

「本当ルルーシュは隙あらば鍛えるよなぁ…この前バイクに並走された時はビビったよ」

「それより昨日何やってたの?」

「はいはいはい!話を脱線させない!」

 俺達生徒会は今部活の予算審査を行なっている。因みに今日中に終わらせないと予算が降りないのだ。

「予算が降りないとなるとウェイトリフティング部はマジ怒りする事になるな」

「その非公式の部活、所属してるのルルだけだからね…?」

 バレたか。

「せめてもう1日早く思い出してくれればよかったんですよぉ会長…」

「もう1日遅くが正解!諦めがつく」

「それは困る。ウェイトリフティング部に予算を…」

 すると会長が突然大声を出した。

 

「ガーッツ!!」

 

 また会長お得意のガッツの魔法だ。俺は筋トレを諦めて本腰を入れて予算審査に取り組む事にした。但し空気椅子はやめない。

「会長!私もかかった事にします!」

「うむうむ、ルルーシュとシャーリーの肉体派コンビは素直でよろしい!」

「鍛えてるって言ってくださいよ、会長」

 俺はサムズアップを決める。一方シャーリーは複雑そうだ。

「ルルと一緒にされるのは複雑…」

 肉体派として俺と一括りにされるのは不満らしい。確かにまだまだ彼女は鍛える余地があると分かっているのだろう。彼女の向上心の高さに俺は感心した。その後、俺の圧倒的筋肉のおかげもあって予算審査は間に合った。そして結局ウェイトリフティング部に予算は降りなかった。3回隙を見て申請したんだが…ダメだったか。

 

 生徒会のみんなとクラスに向かうと、クラスメイト達が昨日のシンジュクでの毒ガステロのニュースについて話題にしていた。シンジュクというワードで引っかかったのか、シャーリーはこちらを見ているようだ。

「シンジュク?」

「あぁ、昨日はこの件で電話したんだ。知り合いからリアルタイムで聞いてさ」

「そうなんだ」

 ブリタニア側はこのタイミングでのクロヴィスの死は隠すらしい。まぁ、混乱を避ける為だろう。

 

 俺が自分の席で…空気椅子と握力トレーニングに勤しんでいると珍しいクラスメイトが入ってきた。赤い髪の女だ。

「おや〜?ルルーシュくん、な〜に見てるのかなぁ?」

「別に。珍しいと思っただけだよ。彼女、始業式以来来てなかっただろ?」

 リヴァル曰くカレン・シュタットフェルトは体が弱いらしい。だが、そんなことは嘘だと見れば分かる。あの筋肉のつき方…どう考えても身体の弱い人間のトレーニングでつくものではない。では何故体が悪いなどという嘘を吐くのか?恐らく学校に来ない口実を作る為だろう。つまり、学校に来ないことを不思議には思われたくないということか。

「ソフィちゃん心配してたよー!」

「うん…あんまり無理はできないけどね」

 

 そして点と点が線につながった。

 

 赤いグラスゴーのパイロットは女。そして今のカレンの声…似ている…?いや、機械越しの声の記憶など当てにならないが…調べてみる価値はある。

 

 昼食時、カレンの様子を伺っていると蜂に襲われているようだ。すると蜂から逃げる為だろう、茂みへと逃げ込み、結果としてこちらに近づいて来た。カレンの近くを飛んでいる蜂を指で掴み、遠くへ放り投げる。蜂に罪は無い。

「あ、ルルーシュくんだったっけ?ありがとう…」

「"質問に答えろ"」

「…はい。」

 俺は早速ギアスを使い聞き出すことにした。

「昨日シンジュクで赤いグラスゴーに乗っていたのはお前だな?」

「はい。」

「どうしてテロを?」

「私は日本人だから、半分ブリタニアの血も入っているけれど」

 なるほど、ハーフなのか。しかしブリタニアの学生もやっていると言うことはブリタニア人という立場を使ってやれることもあるのだろう。リヴァルの話では金もあるようだしな。

「…あの?私に何か…?」

 いつもならぶん殴って意識を刈り取るところだが、学園でそれをやるわけにはいかない。だが、保険のためにもう一度ギアスを使っておくとしよう。

「いや、用は済んだよ。でも念の為に…"シンジュクのことは忘れろ"」

「シンジュク?シンジュクがどうかしたの?」

「…"教室に戻れ"」

「あなたが質問に答えてくれたらね!」

 ギアスが効かない…?まさか一人につき1回なのか…?不味いな…こうなれば不本意だが脳に大きなダメージを与えて…

「ルルー!カレンさーん!次理科準備室だよー!急がないと!」

 シャーリーに見られていたか、危ない危ない。一先ずはこの場を立ち去り解決法を考えなければ…

 因みに理科準備室までは俺のダッシュなら間に合わない距離では無いが、今日は教師に言われて大型実験器具の運び込みを依頼されてるのだ。予算を抑える為に業者に運ばせず俺に運ばせる魂胆らしい。

 

 授業後、久し振りに落ち着いた時間が取れた為、改めてギアスの性能を調べる事にした。最初はC.C.に聞けば分かるものだと思ったが、ギアスとは人によって性能が異なる為どんな性能でどんな条件かは分からないという。つまり…他にもギアスを持つ者が居るという事だろう。その事についてC.C.に尋ねてみたところ、そこまでいう義理はないと断られてしまった。

「先生、"今度の論述試験の問題、教えて下さい"よ。」

「… エディンバラの屈辱と新大陸への遷都、北南戦争についてだ。」

 どうやらギアスが消えたわけではないらしい。

「先生、"今度の論述試験の問題、教えて下さい"よ。」

「馬鹿なこと言ってないで身体だけじゃなく頭も真面目に鍛えろ。お前はやればできるんだからな。」

「はーい!」

 やはり同じ人間には二度効かないらしいようだ。他にも持続時間のテストや距離、具体的な内容などを調べる。それにしてもカレンについてはヘタを打ってしまった。なんとかしなければ。

 

 …いけない、実験に夢中になり帰るのが遅くなってしまった。

「遅くなってごめん。ただいまナナリー、咲世子さん」

「おかえりなさい、お兄様!」

 咲世子さんの用意してくれたナナリーの食事、今日はステーキ肉のようだ。肉はいいぞ!タンパク質が摂れるからな。ナナリーの分は食べやすい大きさに切り分けておこう。

「それでね、一枚の紙を何度も折ると鳥や船になるんです…あっ…」

 俺が待たせてしまったせいで話したいことが沢山溜まっていたナナリーは急いだように喋り、結果としてスープを垂らしてしまった。俺はそれを優しく拭き取ってやり、声を掛ける。

「ほらほらナナリー、そんなに焦って喋らなくても大丈夫だよ。俺はどこにも行かないから」

「はい、お兄様。でも良かった、昨日のお兄様、初めてスザクさんにあった時みたいにどこか怖かったから…」

「そうかい?ごめんよ」

 スザクと初めて会った日はナナリーを守る為には筋肉が必要だと悟ったからだろう。

「そうそう、面白い話を聞いたんです。この鳥…鶴をね、千羽折ると願いが叶うんですって!もしお兄様に叶えたい夢があるのなら…」

 ナナリーはなんと人思いの優しい子なんだろう。俺の願いを叶えようとしてくれるとは…俺はナナリーを撫でながらその優しい申し入れを断った。

「いいんだよ、俺は。それよりナナリーは?」

「うーん…優しい世界でありますように」

 ナナリーはなんと人思いの優しい子なんだろう。己の願いまで自分のことではなく世界が優しいようにとは…ナナリーを守る為に俺は必ず作らなければならない。みんながみんなに優しい世界を…その為には今のブリタニアは壊さなければならない!

「約束するよナナリー。ナナリーの目が見えるようになる頃には必ず」

「本当!?」

 ナナリーが笑ってくれた。なんと愛らしいことか!

「あぁ、約束する。俺が約束を破ったことあるかい?」

「うーん、約束は破ったことないですけどシャツはしょっちゅう破ってますよね?」

「何故それを…」

 くすくすと笑うナナリーは俺の小指と自分の小指を絡ませてきた。

「嘘ついたら針千本のーます!指切った!ふふっ!」

「針を千本も飲まなきゃ行けないのか、それは痛そうだな。」

「お兄様なら耐えられると思いますけど…だからといって破っちゃダメですよ?」

 確かに針を飲み込む程度で死ぬほど俺はやわではないが…痛いものは痛いだろう。

 

 次の日、授業中にカレンがチラチラとこちらをみている事に気がついた。

 

 さては…俺の身体の鍛え方に興味を持ったな?

 

 病弱設定のせいで大っぴらにそれが聞けないのだろう。やれやれ、仕方のない奴だ。…それか、俺の正体に気が付いたかだ。与えた情報こそシンジュクの一言だが、リスクは排除しなければならない。俺の鍛え方への興味か、正体に気づいたか、どちらにせよ二人きりで話す必要があるな。

 

 授業後、俺はカレンを呼び出した。クラスの女子は何やら騒いでいたが気にしなくて良いだろう。

 クラブハウス、ここなら二人きりで話せる…と思ったが、当てが外れた。どうやらカレンの歓迎会をやるらしい。…副会長である俺に話が来ていないのは問題ではないだろうか。

 リヴァルがシャンパンを持ち出した為、取り上げる。未成年の飲酒は肉体に悪影響を及ぼす。こんなものをみんなに含ませる訳には行かない。

 

 …あ。力み過ぎて砕けた。

 

 力み過ぎて砕けた瓶は破裂、中に入ったシャンパンは当然液体なので、持っていた俺の服がビショビショになる。まぁ、それは仕方が無い。

「会長、ちょっと着替えてきます。あとシャワーも浴びてきます」

 濡れた服を洗濯機に入れ(流石に下着は履いたまま)廊下を歩いているとC.C.と出会った。

「丁度よかった。悪いが今から…そうだな。10分後にクラブハウスのシャワールームの電話に電話をかけてくれないか?内容はこのボイスレコーダーを流すだけでいい。」

「ふん、私を顎で使うとは生意気な奴だ。まぁいい、報酬のピザは忘れるなよ」

 因みにC.Cのことは住み込みのメイドとしてナナリーとミレイ、咲世子には紹介済みである。人見知りで臆病、身寄りがないなどの設定を盛り付けなるべく人前に出ないように言いつけてある。

 

「着替え…ここに置いておけばいいかしら?」

 しばらくしてやってきたのはカレンだった。やはりな。リヴァルは恐らく瓶の破片の片付け、そうなると俺に服を持ってくる人間は女性陣に限られる。俺の部屋へと案内が出来るのは身内であるナナリーだけだ。しかし、ナナリーだけで移動させるとは考え難い。優しいナナリーの事だ。クラブハウスの案内を兼ねて慣れないカレンを連れていくだろう。ミレイは普段はあんな風だが皇族の後ろ盾、アッシュフォード家の娘であるため、俺達のプライベート空間に足を踏み入れることは無い。シャーリーは何かと俺を避ける傾向にあるし、ニーナはなんか俺を恐れているので来ることはないだろう。

 

「ナナリーちゃんに案内してもらったけど、あなたここに住んでるのね」

「あぁ、ナナリーが寮で暮らすのはちょっとな…友達はみんな仲良くしてくれるようだが」

 シャワーを止め、カーテン越しに俺とカレンは話をする。

「ところでルルーシュくん。シンジュクの件だけど…」

 その時、電話が鳴った。

「悪いけど俺今濡れてるし…電話、出てくれないかな?」

「…良いけど」

 カレンが電話を取り、何かを喋っている。

「もしもし…はい、ええ、私ですけど…なに?お前は…!停戦協定を出させたのもお前なのか!?おい!電話を切るな!」

 録音なのだから反応するはずがない。

「停戦?なんだ、随分物騒なお友達だな?」

「それは…」

 普通の生活をしていれば停戦協定などという言葉は出てこない。

「当ててやろうか?テロリストだろ?お前」

「な、何を言ってるの…?私体が弱いからそんな…」

 この期に及んでそんな嘘がまかり通ると思っているらしい。俺はカーテンを開け、カレンを睨む。

「俺の体を見ろ。」

 俺は自慢の肉体をサイドトライセップスを決め見せつける。勿論筋肉を見せつけるためだけではない。

「俺くらい身体を鍛えた人間ならな、お前の体が鍛えられ絞られたものだと言うことは服の上からでもわかる」

「ッ!」

「だからシンジュクのことは言うなと言ったんだ。迂闊に口を滑らせれば正体がバレるぞ」

「くっ!」

 カレンはポーチに仕込んだナイフで俺に攻撃を仕掛けてくるが俺は人差し指と中指で受け止め、そのまま捻って刃をへし折る。

「嘘でしょ!?」

 更に手首を掴み力を込める。カレンは痛みで握っていたポーチを離したようだ。

「お前では俺は殺せない。別にお前がテロリストだろうと構わない。俺は誰にも言うつもりはない」

「黙れ!信用できるかそんなもの!」

「ナナリーを見ただろう?目も見えず足も不自由だ。弱肉強食などと言うブリタニアでは生きて行けない。」

「それは…」

 カレンは視線を落とす。俺も握っていた手を離し、拘束を解除する。

「お前に協力する気はないが、邪魔をする気も無い。わかったらさっさと行け。あまり遅いと怪しまれるぞ。但し…ナナリーに何があればお前を捻り殺してやる。」

 カレンは俺を睨みつけた後、少し視線を落とし、急に慌てたように去っていった。…?

 

 

 

 

 

 …しまった。俺今全裸だ。

 




カレンのサービスシーンがまるまるルルーシュに差し変わる放送事故

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