シャルルはまず、マストマスキュラーで力強い指導者であることをアピールした。
「人を殴るな、蹴るな、締め上げるな、ウェイトリフティング部に勧誘するな…全ては嘘。まやかしに過ぎん。」
シャルルは次にダブルバイセップスバックでその鍛えた大きな背中を見せつけ、民衆に安心感を与えんとした。
「殴られたくない、蹴られたくない、逃れられないから締め上げられたくない、辛く苦しい筋トレを続ける胆力がないからウェイトリフティング部には入りたくない…だから暴力反対や着れる服が無いといった嘘で、弱いその身を守っておるのだ!!」
そして振り向きつつのサイドチェストで筋肉を見せつけるとシャルルは言葉を続ける
「このワシの肉体は筋骨隆々なり、鍛えるのだ胸も腹も脚力も!身体そのものを!!」
そして一段と筋肉に力を込め、その膨張を激しくさせ、褐色に輝く身を震わせるとラッドスプレッドを披露する。
「我らブリタニアこそが筋肉を壊し更に強い筋肉をもたらすのだ!!オールハイルマッスル、オール ハイル ブリタァァァァニアァァァァ!!!!」
そんな訳で本編スタートです。
俺としたことが、今まで長い間ナナリーを摂取していない状態でナナリーを摂取できると思った矢先にお預けを食らってしまった為に気絶してしまっていたようだ。どうやらロロがベッドまで運んでくれたらしい。
「ブラザー、うなされてるみたいだったケド、何があったんデス?」
「…俺は、何か言ってたか?」
「…ずっとボクの名前呼んでたヨ」
「…そうか…心配かけたな、ロロ」
多分嘘だ。一瞬間があったし目も泳いでいた。…きっとナナリーと呼んでいたに違いない。しかしナナリーは総督として赴任している以上、シャルルも簡単には手が出せないだろう。何より側にはあのスザクがいる。あいつならナナリーは守ってくれるはずだ。…だが、もはや今の黒の騎士団に総督であるナナリーを奪い去る戦力は残っていない。
アーニャのブログによるとナイトオブトゥエルブはエリア11を離れたそうだが、逆に言えばまだ3人もラウンズは残っていることになる。やはり一度中華連邦で再起を図るか…しかし、どうやって…?結局以前言っていた民衆を納得させる方法は思いついていない。せめてブリタニア側からなにか仕掛けてくれれば…
一通り授業を終えた俺は普段通りに過ごす為、生徒会室を訪れていた。シャーリーはガイドブックと睨めっこをしている。どこに行くかを決めているんだろう。
「ミレイ会長…それ、なに用意してるんデス?」
「えっと、網、蝋燭、チャンピオンベルト、カツラ、ダンベル、サンオイル、花火それにタンバリンも!」
何で修学旅行にそんなものが必要なんだ…?
「あの、修学旅行ですヨネ…?」
「任せて!私2回目だから!」
それは寧ろ不安しかない。
「どうしたの?ルル、今日なんかキレがないよ?筋肉の」
「え?そうかな…シャーリー」
「そうだよ。いつもはもっとこう…ムキムキムキって感じなのに」
流石に態度に出過ぎていたか
「ほほーう?シャーリーはルルーシュのことよーく見てるのね」
「なっ!そ、そんなんじゃ無いですって!」
すると、放送がかかりエリア11の新総督…つまりナナリーの着任挨拶がなされることとなった。俺達は体育館へと移動し、整列する。
『皆さん、初めまして。私はブリタニア皇位継承権代87位、ナナリー ヴィ ブリタニアです。』
可愛い。
『先日亡くなられたカラレス公爵に代わり、この度エリア11の総督に任じられました。』
可愛い!
『私は見る事も歩く事もできません。ですから皆さんの』
「可愛い!!」
あ、しまった…つい声に出してしまった…
『…どうか、よろしくお願いします。』
ナナリーはそう言って頭を下げていた。可愛い。
『尚早ではありますが、皆さんに協力していただきたい方があります。』
可愛い。…ん?今モニターに写っているスザク達の反応を見ると、どうやら予定にないことを話そうとしているのか?それはそれとしてナナリーは可愛い。
『私は、行政特区日本を再建したいと思っています。特区日本ではブリタニア人とナンバーズが平等に扱われ、イレブンは日本人という名を取り戻すことになります。かつて、行政特区日本では悲しい行き違いがありましたが、目指すところは間違っていないと思います。等しく、優しく、逞しい世界に。黒の騎士団の皆さんもどうかこの特区日本に参加してください。』
可愛い。…しかし、なぜナナリーは特区日本を?そんなことをすればゼロである俺が窮地になると分かっているはず…ナナリーは目こそ見えないが賢い子だ。そんな事がわからないはずは…いや、寧ろ分かっているからやっている?何か狙いが…
『互いに過ちを認めれば、きっと人々は分かりあえる。ゼロ、あなたに罪があることは承知しています。ですが…』
可愛い。
『私は、いつまでもお待ちしております。』
可愛い。俺はその一言を聞き、確信した。これはナナリーからの手助けだ。スザクをはじめとする防御を突破してナナリーを取り戻すのは難しい。ナナリーはあえて「いつまでも待っている」と言ってくれた。これは時が来るまで耐えるという意思表示だ。あとはどうやって黒の騎士団で国外へ逃亡するかだが…
「それじゃあ修学旅行にしゅっぱーつ!」
結局答えは出ぬまま俺は修学旅行に行くことになってしまった。
「会長、2回目なのに張り切ってますね」
「なに言ってんのよルルーシュ、2回目だからこそ前回の反省を活かすために張り切ってるんじゃ無い」
なるほど?そういうものか。確かに2回目ならば前回の反省を生かさないとな
「ルルーシュ、修学旅行中は一緒に回ろう。」
「当たり前だろスザク。道案内は任せるぞ」
スザク…修学旅行中に俺が何か仕込まないか監視する気か。無駄な事をこちらにはロロが居る。お前の体感時間を奪えば問題ない話だ。
「しかし昨日の総督の発言にはびっくりしたよ。行政特区日本をまたやるって話」
「…僕も聞かされてなくて正直驚いたよ。でも、間違ったことはしてないと思う」
やはりあの反応、聞かされていなかったのか。日本人のスザクくらいには言っても良さそうなものだがな。それにヨコスカ港に停泊している黒の騎士団はまだ見つかる恐れはない、さて行政特区…どう活かしてやろうか…
目的地への道中、窓の外に自然が見え始めるとミレイ会長が窓を開けた。
「うーん!やっぱ自然の空気って良いわよね!」
「わかるんですかぁ?会長…」
「こういうのは雰囲気よ、雰囲気!あはははは!」
みんなも真似をして窓を開けると、悲鳴が起こる。
「キャー!蜂よ!蜂!」
「みんな落ち着いて!」
蜂の登場に大パニックになる車内、落ち着かせようと声をかけるスザク。
「俺が対処してくるよ。スザク」
蜂を2本の指で挟み、そのまま外へと出してやった。
「はい、追放完了」
「ルルーシュの事だからてっきり空中で鷲掴みにして粉々にするのかと思ったよ」
リヴァル…お前の中で俺ってどういう存在なんだ…?
「確かに蜂は危険だけど、バスの中から出しちゃえば後は別に良いだろ?」
…二度目は反省を活かして…。危険な蜂を追放…?バスの中から…。そうか、あったぞ。ナナリーの手を汚さず、黒の騎士団が中華連邦へと逃れる手が…!しかも民衆の支持を得たままに!前回の失敗は特区日本を日本人の決起に利用しようと妨害しようとしたことだ!今回は受け入れてしまえば良い!
スザクに怪しまれないように会話をしながら、見えない角度で密かに南へとメールを送る。南を経由してディートハルトに協力を要請、ディートハルトならば上手く手を回してくれるはずだ。
「そういえばルルーシュさぁ、この前幼女皇女に向かって可愛いって言ってたよな?あぁいうのがタイプなのか?」
リヴァル…お前…!
「えっ!?ルルーシュがいつもつれない反応なのってもしかして…!?」
「シャーリー、違う誤解だ!」
「そんナ!ブラザーがいつもそっけないのハ!?」
「いや、お前男だろ何言ってんだロロ…」
「ルルーシュ、君はロリコンだったのかい!?失望したよ…!最低だ!」
スザク…!お前まで乗るんじゃ無い…!!そんなこんなで度々仕込みをしながら修学旅行を楽しんだ。
俺とスザクとロロが目的もなく街の中をふらふらしていると、急にスザクの目つきが変わった。だが、それは俺に向けてでは無い。視線の先は…路地裏か?
「?どうしたスザク」
「静かに!今、違法な薬物を取り締まっている疑いのあるブリタニア人を見た気がするんだ」
「何!?」
違法薬物…まさか違法プロテインか!?
「ルルーシュとロロはここに居て、僕が見てくる」
「待てよスザク。一人で行くなんて危険だ、俺もついていく。ロロはヴィレッタ先生にこの事を伝えておいてくれ」
「オーケーブラザー」
俺とスザクは頷くと路地へと入っていく。
「金が先だって言ってんだろ!」「この貧乏人が!」「このヒョロガリめ…」
「やめてくれ…お前達だって俺と同じイレブンじゃ無いか…」
俺とスザクは二人で角から様子を伺った。一人のイレブンが周りのイレブンからリンチを受けているようだ。
「これが欲しければ、金を持ってくることだ。」
そう言って金髪の男、ブリタニア人は何かの薬品らしきものを取り出した。
「ルルーシュ、あれは違法プロテインだよ。」
「違法プロテイン?」
「ルルーシュ、僕が壁を蹴って回り込むから挟み撃ちにしよう。」
スザクは角から飛び出すと、左右の壁蹴りを繰り返して奥へと降り立った。
「何だお前は!」
「自分はナイトオブセブン、枢木スザクです。違法薬物取引の現行犯容疑で…殴打します!」
「ナイトオブラウンズだと!?嘘に決まっている!お前たちやってしまえ!」
「あの筋肉量…間違いない、本物だ!」「逃げろ!!」「助けてくれ!筋肉に殺される!」
一人の男が逃げようとして俺の体にぶつかってきた。そう、この狭い路地は俺とスザクによって完全に封鎖されているのだ。
「どこへ行くんだ?」
「だ、脱走の準備だ…」
「仲間を置いてか?」
俺が一人の胸倉を掴み男を持ち上げる。男はジタバタするが、そんなことで俺の手からは逃げられない。
「無駄な事を…今楽にしてやる」
そのまま男を他の男たちに投げつけた。
しかし、ブリタニア人はこちらを睨みつけ、なんと自身にプロテインを打ち込み始めた。
「何!?何て奴だ…!」
「私はこんなところで捕まる訳にはいかんのだ!」
男は壁蹴りを繰り返して屋上へと登っていく。
「ルルーシュ!ここは任せた!」
スザクも同様にブリタニア人を追っていった。挟み撃ちでなくなったイレブン達は逃走を開始し始め、バラバラに逃げ始めた。おそらくどこかに集合場所があるに違いない。
「ブリタニア人が雇ったイレブン達…アジトでもあるのか?無事に帰れると良いなぁ?」
俺に体力勝負を仕掛けるなどその時点で敗北なのだよ。
俺は一人の男の逃走ルートを予測して待ち伏せをした。予測通り男が息も絶え絶えに走ってくる。俺が姿を表すと恐怖に顔を歪ませた。
「回り込まれた!?」
ダッシュで間合いを詰め、男にラリアットを叩き込む。男は壁まで吹っ飛び、壁に巨大なクレーターを作って停止した。
俺は男の顔面を鷲掴み、顔を固定する。そして俺は男と目を合わせた。
「終わったな。クズは所詮クズなのだ。さぁ、吐いてもらうぞ?"お前達の落ち合う場所はどこだ"?」
ギアスを使い落ち合う場所を聞き出し、俺は男達の落ち合う場所に向かった。
「大人しく捕まっていれば怖い目に遭わずに済んだものを」
ギュピッギュピッと足跡を鳴らし、俺は男達を壁際に追い詰めていく。
「HAHAHAHAHAHA!!!よく頑張ったが、とうとう終わりの時が来たようだな?」
「あ、悪魔だぁ…!」
「俺が悪魔…?違う、俺はマッチョだァ!」
男達は最早恐怖に顔を歪ませ、身を寄せ合うことしかできないだろう。
「「「「うわあああああ!!!!!」」」」
こうして俺とスザクによる違法薬物取引の現行犯逮捕は終わった。コルチャックとかいう男もスザクによってのされたらしい。俺は表に出るわけにはいかないので全てスザクの手柄ということになった。
そして楽しい時はあっという間に過ぎ、帰り道となった。
「あーあ、もう帰るだけになっちゃったかぁ」
「折角ならみんなで行きたかったね、修学旅行。」
「会長?みんなって…?」
「私、シャーリー、リヴァル、ニーナ、カレン、ルルーシュ、ロロそしてスザクくん」
俺としてはそこにナナリーを加えたいところだがな。
「会長…カレンはその…彼女はテロリストですから」
「あー…そうよね、ごめんねスザクくん」
スザク、お前は空気とか読めないのか…?
クラブハウスに戻って早々に事が起きた。ヨコスカ港から作戦位置に移動をしようとしていた黒の騎士団の偽装船がブリタニアにバレたのだ。
『ゼロ!大変です、ブリタニアにバレました!』
「現在位置を送信しろ。まずはタンカーを爆破して潜水し、時間を稼げ!私が打開策を考える!」
棚の資料集から海底図を引っ張り出しつつ、ロロにヴィンセントを用意させる。
『ゼロ!先程現在位置を送信しました。我々は現在囲まれて…艦内各部に浸水が!』
「焦るなカレン。敵は当てずっぽうだ。ダウントリム50、ポイントL14に急速潜航しろ。」
『分かりました!』
運がいい、ブリタニア軍の布陣している海底にはメタンハイドレートの塊がある地域…そこに魚雷を打ち込めば大量の泡で浮力を失い敵艦隊は壊滅する。
「正面に向けて魚雷全弾発射。時限信管にて40秒。埋まっているメタンハイドレードにより敵艦隊を壊滅させる!アンカーでの固定を忘れるな!」
ヴィンセントによりポイントL14に向かう。
予定通り、海底からの泡によりブリタニアの艦隊は壊滅していた。
『ゼロ!これがお前の答えなのか!』
スザクはこちらにヴァリスを向けていた。いいや、違うなスザク。答えは今からだよ。
「撃つな!撃てば君命に逆らうことになるぞ?」
『何…!?』
「私はあの世界で最も愛らしく、透き通る声と笑顔が素敵なナナリー総督の申し出を受けようと思う。そう、特区日本だよ。」
これでスザクは簡単に攻撃できない!そして俺はダブルバイセップスを決める。
「ゼロが命じる!黒の騎士団は全員、特区日本に参加せよ!!」
原作でも聞かされてませんでしたが、多分ミートギアスの場合はいろんな理由からスザクに話さなかったんでしょうね
尺稼ぎの修学旅行パートを作り、それでも尺が足りなくて仕方なく修学旅行中にプロテイン騒動を突っ込んだら悪ノリで大変なことになりました。反省も後悔もしてません()
●オマケ● 唐突な次回予告
ゼロ「そうだ。つまり、どんな場所、どんな環境であろうと日本人として恥ずべきことのないように鍛え続ける心をもてばそれは日本人なのだ。」
TURN08「百万のキンニク」