中華連邦のとある場所、砂漠の一角にその施設はあった。崩れた神殿のような外観をしており、二人の男が話をしていた。
一人は砂漠には不釣り合いな椅子に腰掛けた男。
もう一人は神殿の階段らしき段差に腰をかけた男。
「うん、ゼロの本当の目的がここなら厄介だからね」
「あぁ、それで私の為に手配を?」
「そうだよ。」
「ありがとうございます。調整さえ済めばC.C.もルルーシュも敵ではありません…このジェレミア ゴットバルト…」
「ご期待には 筋 肉 で」
「君は半分機械だからそんなに筋肉関係ないと思うけど…」
「これは失礼を…」
それでは本編スタート…の前に一言。
私自身ロスストの話を出したりネタにするのであまり強くは言えませんが、ロスストの話だけの感想はやめてください。せめて1行分だけでも本編に対する感想をください()
それでは改めまして本編スタートです!
「星刻ぅ!」
我ながらナナリーより幼い女の子を人質にするのは心にくるものがある。しかし耐えなければならない!幼子の政略結婚を認めればナナリーまで簡単に政略結婚させられてしまう…!いや、むしろ俺が…ゼロがナナリーと政略結婚させられれば良いのでは…!?しまった、その手があったか
「くっ…!ゼロ!天子様を返す気は無いのか!」
「星刻、君なら天子を自由の身に出来るとでも?違うな…」
よし、時間稼ぎはできた。背後の壁が崩れ、卜部の暁が現れる。よし、このままあの厄介なシュナイゼルを拘束し、周りのラウンズを始末すれば…!
「卜部!シュナイゼルを!」
『うむ、分かった』
しかし、卜部の攻撃は飛んできたスラッシュハーケンらしきものに止められてしまう。チッ…ブリタニアのナイトメア…やはり読んでいたかシュナイゼル…!
『殿下は渡さないモニ!」モニ!
『モニカ殿か!』
『そっちは卜部さんモニ!?」モニ?
仕方ない、こうなれば俺が拳で…いやダメだ、あちらにスザクが居る…数的有利が望めない上に天子を抱き上げるために片腕のままスザクとやりあうのは危険だ。
「兄上、行きましょう」
「どこへ行こうと言うんだい?シュナイゼル…」
「逃げるんですよ。考えればわかるでしょう兄上」
クソ、またシュナイゼルを取り逃がすことになるとは…!
『ゼロ、こちらは予定通りです。』
「よし、ならばサードフェイズに入る」
千葉の暁がコンテナを用意する間、俺は神楽耶を回収し、抱き上げる。
「カレンも早く乗れ!」
「う、うん…」
そしてカレンを肩車し、跳躍してコンテナに入る。
「ゼロ様ったら女性を同時に三人も…英雄だからといって色を好みすぎですわーーー!!!」
「誤解を招く言い方はやめていただきたい」
「あの、三股は良くないと思います…」
「天子様も戯れが過ぎますよ」
カレンを紅蓮に乗せて警戒させ、俺達を乗せたコンテナを千葉に運ばせる。現れたカマキリの相手は卜部に任せておけば大丈夫だろう。
『行かせないモニ!』モニッ!
モニカ殿のブレードと廻転刃刀がぶつかり火花を散らす。だが、ラウンズ相手にもこの機体なら押し負けない…!
「空飛ぶカマキリか、だがこの暁なら…!」
数度の斬撃を交えた後、カマキリの蹴りで距離を取られた。アレがくる…!
『これで決めるモニ!ハドロンブラスター発射モニ-!!」モニニーン!
今までは避けるしかなかった飛び道具だが、この暁ならば!
「輻射障壁展開!」
紅蓮の右腕ならともかく、輻射障壁では流石に真正面から受けるのはまずい、だが。敵のビームを受け流す事はできる!…これで距離は詰まった!
『ハドロンブラスターを受け流したモニ!?』モニ⁉︎
「貰ったッ!」
渾身の一太刀は本体には直撃しなかったものの、フロートシステムを破壊することには成功した。
『しまったモニ!』モニーン!?
『よくやった卜部!カマキリのフロートを壊したのならば十分だ!これで奴は追ってこれない。そこは一先ず退け!』
「分かった」
ゼロから教えられたレーダー監視網の間隙を突きつつ撤退する。
『卜部さん、補給は千葉の暁から行います』
「分かった杉山、俺と紅月は斑鳩に戻ってから受けよう。」
追ってきた航空部隊は紅蓮の輻射波動を受けて全滅して居た。
『あっち行ってな!』
流石に輻射波動は凄まじいな。
「天子よ、先程は怖がらせてしまい申し訳ない。しかし…」
未だにビクつく天子の頭を撫でつつ…
「妬きますわーーー!!!私も撫でて欲しいですわーーー!!!」
神楽耶がそんなことを言うので俺は両手でそれぞれの頭を撫でる。…うーむ、両手に幼女を侍らせているようなこの現状、なんか色々とヤバい絵面な気がする。-私も撫でてほしいのに-…!?
「今はこんな箱の中ですが、落ち着き次第あなたにもお見せしましょう、外の世界というものを」
「あ、あなたも私に外の世界を見せて下さるのですか…?」
「勿論です。本当はこんな乱暴なやり方であなたの夢を叶えたくはなかったのですが」
天子のことは神楽耶から聞いている。この幼子の夢は外の世界を見ることのはず、つまりそこから話を持っていくべきだ。
「勿論、あなたにも天子という立場はあるでしょう、しかし!だからといって不自由なのはおかしい!あなたにだってこの世界を楽しむ権利がある!」
「そうですわーーー!!!そうして私みたいに素敵な殿方と出会い、恋に落ち、愛し合うのですわーーー!!!」
「こここ恋!?す、素敵な殿方なんて、わ、私は…」
よし、このまま天子が自由な権利を欲しいと思えば合衆国制の受け入れに話をつなげられる…!
「黎星刻…あの男はあなたの事を真に想われているように見えました。…特別なお方なのですか?」
「えっ!?ど、どうなんでしょう…私は…7年前に外の世界を見せてくれると約束してもらっただけで」
7年前の約束…なるほど、これは思った以上に黎星刻は見所のある男のようだ。天子のように力の無いものを助けようとする者…できれば天子共々我々の協力者にし、対ブリタニアの戦力を残したいところだが…
『ゼロ、前方の橋がなくなってる。停車するぞ』
やはりそうきたか。橋を落として足止め、後ろからの奇襲…だがそんな三流の策がこの俺に通用するとでも?
「藤堂、朝比奈!」
『承知!』『分かってますよぉ』
策にハマったのは奴等の方、両翼と渓谷に軍を待機させておいた。逆に囲んで叩き潰してやる。
「朝比奈、新型の調子はどうだ?」
『この新兵器凄いよぉ!流石はラクシャータの輻射波動だ!』
ラクシャータの奴、労いに今度肩でも揉んでやるか。
敵の追跡部隊を返り討ちにし、俺達は斑鳩に回収をさていく。あとは蓬莱島のインドの連中と合流するだけだ。
『ゼロ、トラックが斑鳩へ収容されるぞ。揺れても私は知らんからな』
「ふむ、天子様。難しい話は落ち着いた後でやりましょう。まずはあなたを安全な場所にお連れしなければ」
揺れに備えてなのか、天子…と神楽耶は俺にしがみついてきた。この反応、一応の信頼は得られたようだな。
それにしても道中何事も無い運転で何よりだ。中華連邦で過ごして居ただけあってC.C.に運転を任せて正解だったな。まぁ、運転中にピザを食べるのはあまり褒められないが…杉山が「C.C.さんが運転した後は運転席がピザ臭いしたまにハンドルがギトギトしてる」とぼやいていた。普通にやめような。
俺がブリッジに行くと、前方のナイトメア部隊が突破されているという報告を受ける。おかしい…早すぎる。俺の計算ではまだあと1時間は掛かるはずだが…まさかこちらの作戦を読んだ奴が…?
「敵ナイトメアを捕捉しました!モニターに出します」
全身青に金色フェイスというド派手なナイトメアが映し出された。しかし注目すべきは飛翔滑走翼…中華連邦にそんなものが作れるはずがない
『聞こえているか?ゼロ!ここは通さん!』
まさかアレに乗っているのは星刻か?
「なっ!?あれは…!」
ラクシャータのチームの研究員が反応をした。こちらと同じ飛翔滑走翼…なるほど、どこからか流れたか。
「今はあのナイトメアの情報が欲しい。教えてくれないか?ラクシャータ」
「…あれはうちのチームが作ったナイトメア…ハイスペックを追求しすぎて誰も扱いきれなかった神虎よ。…輻射波動こそ装備してないけど紅蓮と互角に戦える機体よ」
そんなものが敵の手に渡っているとは…
「インドも一枚岩ではないということか、まぁ良い。私の蜃気楼は用意できているか!」
『申し訳ありませんゼロ、要望箇所の最終調整が…』
『さぁ、天子様を返してもらおう。今ならば命までは取らん!』
まずい…千葉の暁が突破されたということは四聖剣では止められない…!藤堂は補給に入ったばかりで動けない。朝比奈も少し前に補給に入ってまだ出られない。俺が出られればと思ったがそれも無理とは…
『ゼロ、俺と紅月で出る!』
卜部!?いけない…!あいつらは補給をまだしていない上に長時間戦闘でエナジーもロクに残っていないはず!そう思っているうちに二人は出てしまった。
2対1なのに互角だとは…なんだあのナイトメアは…いや、パイロットの星刻の腕もあるか…!
「どうやら紅月も卜部もエナジーを気にしてあまり派手に動けていないようです…!」
というより二人はエナジーを出し惜しみせず戦っても決めきれないと分かったから遅滞戦闘に切り替えているように見えるが…それでもまだ整備に時間がかかるとは…
「まだ補給は終わらないのか!?」
『い、急がせてはいるのですが…』
「ゼロ!戦闘に動きが!」
「何!?」
見ると紅蓮と暁が黄色い紐に捕まっている様子が見える。
『捕らえたぞ!勝敗は決した!』
『それはどうかな!?』
卜部は自ら拘束された部位を切り落とし、蹴りをブチ込んでいた。
『蹴りだと!?小癪な!』
『捕まえた!これであなたの負け!』
更に蹴られたことで体勢を崩し、それを紅蓮の右手が捕らえていた。流石はともに黒の騎士団の残党を率いて逃亡生活を続けていただけはある。中々の連携だ。…通常ならば勝ちだろう、だがエナジーが…!
『直に叩きこ…しまった!エナジーが!!』
その一瞬の隙に絡め取られた紅蓮と、絡めとった紅蓮でそのまま殴りつけるという意表を突く攻撃に卜部機もフロートを破損、ようやく出られた千葉と朝比奈が食らいつくが、中華連邦の大規模な追撃部隊により阻まれてしまった。
捕虜になる…カレンが…!?まだだ、もうすぐこちらの補給は終わる。ならばカレンを助け出せるはずだ!
「カレン!まだ無線は生きているか!?」
『は、はい、すみません失態を…』
失態だと?寧ろ敵の伏兵を警戒せずに杜撰な補給計画を立てた俺にこそ責任はある。
「そんなことはどうでもいい!必ず助けてやる!いいな!下手に動くなよ!」
『はい、分かっています。諦めません!』
「だが筋トレは欠かすなよ。」
『はい、欠かしませ…』
くそ、切れたか…!
「斑鳩を反転させろ!」
「しかしゼロ、ここは撤退すべきでは?」
俺の指示にディートハルトが反論をしてきた。ええい、邪魔をするな…!
「ゼロ、紅月カレンは一兵卒に過ぎません。」
「いいや、違う。間違っているぞ。」
「ゼロ…?」
俺はマストマスキュラー、サイドチェストからのダブルバイセップスを決める。
「ゼ、ゼロ…何故ここで急にポージングを…」
「私はゼロ。エリア11では多くの団員を私一人の手で戦況を覆し救い出したことがある」
「それは…」
ダブルバイセップスを維持しつつ、筋肉を更に隆起!特殊繊維で作ったこのスーツすら破き、俺は筋肉を露出する。
「ゼロ、だから何故ここでポージングを…」
「私は地位で人を判断はしない。その者の行ってきた行動と筋肉で判断する。カレンは私の数々の窮地をともに乗り越えてきた仲間だ。それに最近筋肉を付けてきている。それを取り戻せるのに諦めることは私には出来ない!」
「しかしそれは贔屓、偏愛では?それでは組織は崩れます!」
さらに、さらに俺は筋肉を隆起させる。最早全身から溢れる熱量は真夏の室外機の如し、俺は口からシュウシュウと煙を吐く。
「ゼロ、一体何を!?」
「贔屓?結構。偏愛?だからどうした。私の仲間達にカレンを見捨てようとする者は居ない!黒の騎士団はこの程度で崩れるような柔な組織ではないのだ!」
ブリッジ内のディートハルト以外の全員が頷き、斑鳩は反転、決着を付けんと動き始めた。
「何を馬鹿な…!」
「インドも一枚岩ではない…裏切って挟撃される危険性がある。ならばここは攻めるべきだ。星刻に教えてやる。筋肉量の違いを!」
「ゼロ…ナイトメア戦に筋肉量は関係ないのでは…」
とは言え、地形は高低差が無く、地位的優位は望めない状況…さらにこちらの軍は言ってしまえば急拵え。俺が指揮するしかないだろう。数は劣るがナイトメアの性能はこちらの方が上だ…
「蜃気楼の整備を急がせろ」
『了解です。』
相手は俺の策を読める男…更にエナジー不足とは言え卜部とカレンを相手に戦える男だ。奴を前面に押し出しての中央突破をされれば苦しい。そして急拵えの軍、つまりこれは兵の練度で負けているということだ。
「藤堂!神虎は任せて良いか?整備が済み次第私も蜃気楼で加勢する。」
『無論だ。だが、倒してしまっても構わんのだろう?』
「…ふっ、それは残念だ。楽しみが減るな。」
神虎を藤堂に抑えさせれば射程で劣るとはいえ懐にさえ入ればこちらの方が有利のはず!
「暁隊、撃ち続けろ!」
しかし敵の突破力が予想以上だ。中央が突破されつつある…が、これは想定通り。敵の先行部隊を囲んで攻撃しつつ、援軍を送る。
「星刻をエナジー切れに追い込めばこちらの勝ちだ…!」
「ゼロ!大変です。右方向から川の水が!」
川の水?運河の決壊か。だがあらかじめ川の水量は減らしてある。残念だが意味は…
『大変ですゼロ!地面が!地面がうわぁ!!』
「何!?」
何故地面が想定以上に泥化している!?なんだこれは…!
「新妻の登場ですわーーー!!!」
こんな時に何故神楽耶様がブリッジに…!それに天子様まで…!おい南!何を何ぼーっとしている!
「あ、ここは確かかんがえ…かんたくちの…」
かんがえかんたくち…?いや、灌漑開拓地か?
「天子様、そのお話を詳しく聞かせていただいても?」
「あ、えっと…確かここは、その…沢山の男の人たちが手作業で湖を埋め立てたって…」
『富を平等にした中華連邦は筋トレしない怠け者ばかりだ。』
…!つまり、怠け者だらけの中華連邦で手作業の灌漑開拓?うまく行くはずがない!確実に手抜きがされている…!まさか…星刻が先行したのもこちらの足止めを…!?この俺が読み負けた!?馬鹿な…!
『…まだ決着はついていない!そうだろうゼロ!?』
と、藤堂…!そうだ…まだこちらは全滅したわけではない…!とはいえ敵の全軍が進軍を始めている…こちらの輻射障壁も無尽蔵に張れるわけではない、確実こちらの燃料切れが先に来る…!ならばこの場は一度立て直すしかない…!
「艦首ハドロン重砲で敵両翼を一掃しつつ、動力部を守って後退!藤堂と四聖剣は残存ナイトメアの回収と指定ポイントへの撤退を援護しろ!」
『ゼロ…この撤退先は…』
まさか星刻がここまでの男とは…!ますます欲しくなった。この俺並みの知略とこの俺並みの戦闘力…逸材だ…!あとは……………
筋肉が欲しいところだな。
天は二物三物を与える(例:脳筋のルルーシュ)。つまり筋肉で歪められたこの世界の星刻は健康体です。
一応、ルルーシュがその場にいない場合は原作とほぼ同じ流れの部分はカットしているのですが、今後は時によってどこぞの死にそびれた四聖剣と担当エリアほっぽってモニモニしてるラウンズのせいで1話の文字数が長くなる傾向にあります。
●オマケ● 唐突な次回予告(偽)
ディートハルト「援軍は存在する!この国の鍛えられたマッスルガイ!その全てが援軍!」
●オマケ● 最近頻発の次回予告(真)
ルルーシュ「この蜃気楼は強靭!そして無敵!即ち最強ッ!!」
TURN11「筋 肉 の 力」