ミートギアス 〜筋肉のルルーシュ〜   作:ベルゼバビデブ

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 雨の中、買い出しに出ていたシャーリーは目に見えない力を受け、掛けられたギアスが解除された。そう、調整の完了したジェレミア ゴットバルトによるギアスキャンセラーが発動したのだ。
「思い出した…私のお父さんを殺したゼロは…ルルーシュだ…」

 全ての記憶を思い出し、困惑するシャーリーの前に一人の男が現れた。その男こそジェレミア。顔の左目を仮面で隠した男、怪しさは満点である。
「なっ、なんですか…!?わ、私は…」
「失礼ですが貴方様はフェネット氏のご令嬢、シャーリー フェネット様では?」
「…え?なんで私の名前を…」
「やはり…!」
 ジェレミアは突然雨の中シャーリーに対して頭を下げる。
「な、なんですかいきなり!?」
「シャーリー様、私は貴方様にずっと伝えなければならないことがあったのです…!」
 突然思い出した記憶、そして突然現れた男、シャーリーの頭の処理機能はパンク寸前…というか既にパンクしていた。パンクした処理機能が導き出したのは…
「雨の中話すのもなんですからお店でお茶しながら話を聞かせてくれませんか?」

 それでは音楽こそ明るいけれど何故かシャーリーが登場しない不穏なOPアニメーションを思い出していただきつつ、本編スタートです!


TURN13

 剣門関を落とし、マカオの空軍施設も抑えることができた。カザフスタンの守りには朝比奈と洪古を回せば良いだろう。抑えた土地の内政担当は南と杉山が適任だろう。

「順調みたいですネ、ブラザー!」

「敵と言っても我々を受け入れない地方軍閥が別々に兵をあげているだけだからな。まとめ上げられる旗印となる天子は先にこちらが抑えている。こちらには星刻のように土地に精通したものが居るしな。」

「宿題見てくれてありがとうブラザー。そろそろイケブクロに行く時間でショウ?」

 そういえば今日はイケブクロのゲフィオンディスターバーを確認しに行く日だったか。

 

 イケブクロに向かう電車の中、たまたまシャーリーと出会った。

「やぁ、シャーリー奇遇だね」

「あ………ルルーシュ」

 うん?いつもと様子が違…いや、気のせいか?

「俺はイケブクロに行くつもりだけどシャーリーは?」

「うん、私も。気が合うね」

 イケブクロにシャーリーがなんのようだ…?いや、イケブクロを経由してもっと遠くに行くという線も…だがその場合はもっと別の言い方をするか?

「スザクくんと会うの。最近話せてなかったから」

 スザクに…?シャーリーがスザクとなんの用事があるんだ…?

「…それ、ついていっても?」

「え?…うん、良いけど。ルルは用事いいの?」

「あぁ。必ずしも今日じゃないとダメなわけじゃないから。」

 電車を降りるとスザクとの待ち合わせ場所へと向かう。暫く歩くとシャーリーは立ち止まりこちらを振り向いた。

「シャーリー?どうしたんだい?」

「うん、ルルには伝えたいことがあって。」

 やはり…なんだかシャーリーはいつものシャーリーでいていつものシャーリーじゃ無い気がする。そう、例えるならブラックリベリオンの時のような…………まさか

「…なんだい?」

「私はね、ルルが好き。ルルがお父さんを殺したゼロだって知った時も嫌いになれなかった。それに、お父さんを殺したのは別の人だって教えてもらえたから。…ルルに記憶を消されてもまた、好きになった。そしてまた、皇帝陛下に何かをされたけど、また…好きになった。これって運命なんだよね?」

 何が…シャーリーに一体何が起きた…?ギアスが解かれている!?俺のだけではない、シャルルの物まで…

 だが、シャーリーの発言を聞く限りこちらには敵意が…いや、寧ろ協力者にでもなってくれそうな口振りだ…が、それは出来ない。

「済まない、君の気持ちは受け取れない。…シャーリーを巻き込みたくはないんだ。俺はもう、失いたくないから…」

「ううん、受け取って?私、全部が終わるまで待ってるから。ルルの戦いが終わるまで、私待つから。その時また返事を聞かせて?」

 …敵わないな。

「負けたよ、シャーリー。分かった。全部終わったら…必ず君に会いに行くよ」

「約束だよ?」

「…あぁ。」

 シャーリーに約束をすると、遠くから声が聞こえてきた。

「おーい!シャーリー!時間にっても待ち合わせ場所にいないから何かあったのかって…ルルーシュ?」

 そう言えばさっきシャーリーは全部分かった上で俺を許し俺を待つと言ってくれていたが…そもそもスザクとは何を話すつもりだったんだ…?

「ルルとはたまたまさっき会ったの。ね?」

「あぁ。そうなんだよ。スザクと会うって聞いたからさ、ちょっと妬いたんだ。」

「そう、だったのか。…それでシャーリー、僕に話って何かな」

 スザクの顔は真剣なものになっていた。とてもじゃないが同じ生徒会のシャーリーや「ただの友人」の俺に向けるものではない。怪しまれているな…

「私ね、お父さんを殺したのは黒の騎士団だとずっと思ってた。でも、違ったの。」

「…え?」

「ある人に教えてもらったんだ。誰が犯人かは…言えないけど。」

 スザクはチラリと俺を見た。昔俺はスザクと何度かフェネット氏の死について話をしたことがある。黒の騎士団でないなら犯人はブリタニア…だがそれはゼロである俺との話である。

「そうか…シャーリー。真犯人見つかって良かったねと…言うべきなのかな。でも僕は黒の騎士団もゼロも許すわけにはいかないよ。」

「そっか」

 その時、俺の携帯に着信があった。出てみればロロだ。スザク達に聞かれるのはまずいと思い距離をとる。

「ロロか?どうした?」

『ジェレミア…ジェレミア ゴットバルトがブラザーの命を狙ってイル!ボクのギアスが効かなかっタ!それに機械の身体を持っていたんデス!気をつけてくだサイ!』

「分かった」

 電話を切ると当然だがスザクが近づいてきた。

「なんの電話だったんだい?」

「それが学園で不審者が出たらしいんだ。単独犯だけど、ロロがやられた。」

「あのロロが!?彼は無事なのかい!?」

 俺の監視役として大切な部下だものな、そりゃあスザクは焦るだろう。

「おいおい、兄の俺がこんなに落ち着いてるんだ。無事に決まってるだろ?」

「そうだよスザクくん、ルルのことなんだと思ってるの?」

「えっ…あぁ…それもそうだね…」

 機械の身体…人間の大きさでロロにも勝てるとなるとサクラダイトは使っているだろう。ならばゲフィオンディスターバーを使えば…しかしスザク達が…。ん?シャーリーと目が…

「ルル、やっぱりロロが心配なんでしょ?」

「えっ?」

「今すぐ本当に無事かちゃんと見て確かめたいって顔してる」

 …!そう言うことかシャーリー。ありがたい。

「あぁ、実はそうなんだ。悪いけどスザク、シャーリーのこと頼めるか?彼女を任せられるのはお前しかいないんだ。もし不審者が現れたら…守ってやってくれ」

「それは…。うん、分かったよ。」

 俺はスザクにシャーリーを任せてイケブクロの駅へと向かった。

 

 機械の身体が相手ということで、ゲフィオンディスターバーの準備はしておくべきだろう。あらかじめギアスをかけて置いた駅員達に電話をして準備を進めておくか。

『ゼロ様、遅かったですね。ゲフィオンディスターバーは…』

「試している余裕はない。場合によってはぶっつけ本番で行く、準備を進めろ。」

『かしこまりました』

 しかしギアスの効かない相手とはな…まさか、シャーリーの記憶が戻ったと言うのは…。そうなるとシャーリーに真実を話したと言うのはジェレミア…?…個人的に礼を言いたい気分ではあるが、ゼロとしての立場では止めなくてはならない…!人のギアスを解除する力を無闇に使われては俺の計画が崩れる!

「見つけたぞ。ルルーシュ ランペルージ!」

 視認した瞬間、男の姿は消えていた。チッ!早い…!俺はその場で跳躍をし、天井に指を突き刺すことで保持、駅内を見渡す。

「お探し物は見つかりましたか?」

「!?」

 馬鹿な…俺が背後を取られた!?

 片手を天井に突き刺したまま裏拳を放つと硬い何かにガードされた。なるほど、やはり機械の体と言うのは本当らしい。しかも俺に匹敵するスピードと俺の攻撃に対応できるだけの硬さとは…!天井を蹴り地面へと着地する。相手も少し離れたところに着地をした。

「…戦う前に一つ問いたい。」

「何かな?」

「シャーリーのギアスを解いたのはお前か?」

「いかにも」

 そうか、やはりこいつが…

「ならばシャーリーにフェネット氏の死の真相を伝えたのもお前だな?」

「ええ」

「…その事についてはゼロとしてではなく、一人の…彼女の友人として礼を言わせてもらう。彼女には真実を知る権利があった。だからその真実を教えてくれたお前に素直に感謝をしたい。…だが、俺の、ゼロの前に立ち塞がると言うのなら…死んでもらうぞ!ジェレミア ゴットバルトォ!!」

 俺はクラウチングスタートからの膝蹴りを見舞う。如何に機械でもこの一撃は避けられまい…!

「まさかゼロからその名で呼んでいただけるとは何たる僥倖…!ならばこそ、忠義を示さねば」

 クロスした腕で防がれた!?こいつ…!瞬間、ジェレミアの腕の横振りが見えた。…何かまずい!蹴りで距離を取ると、何か鋭利なものが顔面スレスレを横切った。

「仕込み武器か…!」

「流石はゼロ。まさか私の奥の手を初見で見切るとは!」

 今のを避けられたのはたまたまだ。それにこの男も過去に紅蓮の輻射波動を初見で見切り間合いを取ろうとしたことはあった。その時は運悪く腕が伸びるところまでは見切れずに攻撃を受ける事になっていたが…

「受けよ!忠義の拳ッ!!」

「フンッ!!」

 真正面からの拳を俺は腹で受け止めた。

「なんと!?」

 相手の拳を敢えてガードせず腹筋の硬化のみで防御…その行動に驚いた隙に顔面に拳を叩き込む。

 

 一旦距離を取ることに成功し、俺たちは構は解かずに睨み合った。

「ルルーシュよ。お前は何故ゼロを演じ、身体を鍛える…?祖国ブリタニアを…実の父親を敵にまわす?」

 突然ジェレミアが俺に疑問を投げかけた。この男の力はさっきまでのやり取りでよく分かった。騙し討ちなどをする男ではない。

「母の死の真相を暴き、妹のナナリーを守るためだ。」

「ナナリー…ルルーシュ…。やはり、そうでしたか」

「…お前、俺たちの正体を知って…!?」

 ジェレミアは俺に対して跪くと涙を流してこちらを見てきた。

「ルルーシュ ヴィ ブリタニア様、私の話を聞いていただけませんか?」

「なっ…」

 こいつ、俺が皇族だと知っている…?いや、あらかじめ聞かされていたのかもしれない…が、何故ここで跪いてそれを口にする必要がある?

「マリアンヌ様の事件の日、私もあそこにおりました」

「母さんの!?」

「初任務でした。敬愛するマリアンヌ皇妃の護衛。しかし、守れなかった。忠義を果たせなかったのです…」

 ま、まさかこいつ…

「ルルーシュ様。あなたが筋肉を鍛え、ゼロとなったのは、やはりマリアンヌ様の遺されたご自身とナナリー様のため、そしてマリアンヌ様の為であったのですね」

 やはりそうだ。こいつの目的は俺を殺すことではなく、俺と同様に真実を知る為だ。俺の真意を確かめること、その為にこいつは…

「おまえは、俺を殺しに来たのではなく…」

「えぇ、私の主君は、V.V.ではなく…マリアンヌ様…。そしてマリアンヌ様の遺されたナナリー様とルルーシュ様です。」

 この男、そのために純血派を立ち上げ、俺に賄賂をでっち上げられてもなお軍に残り戦い続けたと言うのか…強い思いを胸に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 つまりこいつは機械の身体だが、心は紛う事なきマッスルガイ!

 

「ジェレミア ゴットバルトよ。貴公の忠節と心の筋肉はまだ終わっていないはず。そうだな?」

 まさかここにも心の筋肉を鍛えた真のマッスルガイが居たとは…

「イエス ユア マッスル!」

 

 

 

 ルルーシュは僕にシャーリーを守ってくれと去っていった。…頼まれなくったって僕はシャーリーを守るつもりだったさ。それにしてもシャーリーのお父さんの死の真相がまさか今頃わかるとは…いや、本当にわかったのだろうか?ギアスを使えば偽の証言くらい…いや、それはおかしい。ギアスが使えるのなら前みたいにシャーリーの記憶を消すだけで良いのだから。それに今のルルーシュは記憶が戻っていないはず。ギアスが使えるはずがない。

「そういえばシャーリー、用事ってなんなんだい?」

「うん、スザクくんに聞きたいことがあって」

 僕に聞きたいこと…?電話じゃダメなのかな。身体の鍛え方ならそれこそルルーシュやロロにも聞けば良い話だと思うけど…

 

「スザクくん。スザクくんはルルが好き?」

 

 …?なんだ?その質問は…。僕がルルーシュのことを好きか否か…。ルルーシュは…ゼロで、ユフィをおかしくした元凶で、みんなを騙す…僕の親友だった男だ。

「…好き、だったよ。」

「だった?…やっぱり、なんかおかしいと思ってたんだ。最近…去年に比べて二人の仲が悪そうだったから。」

「気づいてたんだね。」

 シャーリーは微笑みながら頷いた。

「当たり前だよー。よく見てればわかるもん」

「…僕はね、ルルーシュが許せないんだ。」

 

 ルルーシュはギアスで僕を歪めた。でも、捕まった僕を助けた。

 ルルーシュはギアスでユフィをおかしくした。でも、ユフィの話ではホテルジャックで、無人島で彼女を助けた。

 ルルーシュはギアスで日本人を撲殺するよう命令した。でも、彼と黒の騎士団はブリタニア軍では救えない人々を救った。

 ルルーシュはナナリーに、僕達に嘘を吐いた。でも、僕だってみんなに嘘を吐いている。

 

「許せないことなんてないよ。それは多分、スザクくんが許したくないだけ。」

 許したくない…か

「私は…もう全部許しちゃった。」

 …ルルーシュが今のシャーリーに何か許せないようなことをしたのか…?だって彼女は……………いや、まさか…?

「…君もしかして…記憶が…?」

「さぁ?どうなんでしょう?」

 クスクスとシャーリーは笑っていた。間違いない、シャーリーは記憶が戻っている。

「どうやって…?」

「…ごめんなさい、それは私にも…」

 それが分かればユフィを元に戻せると思ったけど…残念だ。

「シャーリー、記憶が戻ったのは良いこと…なんだろうけど、くれぐれもルルーシュには関わらないでいて欲しい」

「それはルルーシュがゼロだったから?」

 そこまで知ってるのか…これは危険だ。ルルーシュにそれがバレたら確実に拳で消されてしまう。今度は記憶だけじゃなくて存在そのものがだ。それに彼女の記憶は何も黒の騎士団側にとって不都合なものなわけではない、ブリタニア…皇帝陛下の機密情報局としても障害となりうる。

「それもあるけど…シャーリー。くれぐれも戻った記憶を周りに話したりはしないで。…事情は話せないけれど…」

「分かってる。ナナちゃんのことを話せないのは残念だけど…」

「ありがとう、友達を巻き込みたくはないからね…」

 その日は不審者を警戒してシャーリーを学園まで送って行った。帰りにナナリーに頼まれたパンといちごミルク買って帰らなきゃ。限定品だから売り切れてないといいんだけど。





脳筋過ぎて搦手を用いないルルーシュにより、正面戦闘を選択しているので原作のような騒ぎにはなっていません

Q.原作沿いなのになんでシャーリー生きてるの?
A.うるせえ!!!(殴打)
そんなこと言ったら卜部なんて生きてるどころか大活躍じゃねえか(殴打)
 原作(アニメ版)準拠だけど都合のいいところは原作(劇場版)準拠なんだよ!!(殴打)納得しろ!(殴打)納得したと言え!!!(殴打)

●オマケ●
ミートギアス 〜筋肉のルルーシュ〜 R2 OPテーマ その2

鍛えた身体が 反射する光 今ジムの中

鍛えただけじゃ魅せれない
筋肉だけじゃ掴めない
鍛えてきたのは何故だ?歪んだ世界で
守りたいものは何だ?筋肉の盾

Everything is muscle!!

鍛えた身体でポーズ決めて
見せつけるように

鍛えた身体が 反射する光
筋肉が付き
今 ジムの中

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