ミートギアス 〜筋肉のルルーシュ〜   作:ベルゼバビデブ

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「みなさんこんばんは、ニーナ アインシュタインです。今日は私の作った究極のクリーンな破壊兵器、『フレイヤ』についてご紹介しますね。
 フレイヤは発射するとある程度の距離を直進してから内部のサクラダイトが起爆して核分裂反応を起こし、巨大なエネルギーの球体が発生させます。見てください、綺麗でしょう?そしてこのエネルギーに触れたものを跡形もなく消滅させるんです。ゴミ処理問題の救世主です。この時球体内部の空気すら消滅してしまうので球体の縮小・消滅後は真空となった圏内に周辺の空気が流入し、第二次、第三次影響圏内に強烈な突風が発生してしまうので広範囲に甚大な被害を及ぼしてしまいますが、放射能とかは残らないのでとっても安全です!」

 それでは、あらゆるものが光の中に消えていく上に何故か無駄に長い本編スター…


TURN19

 なんだ…?スザクの奴、何故今さらあんなものを撃った?この追い詰められた状況で当たるはずもないのに…

 

『聞こえるかゼロ!戦闘を停止しろ!こちらは重戦術級の弾頭を搭載している。使用されれば4000万人単位以上の被害を出す…』

 

 まさか…あの言葉は本当だったのか!?いけない…アレが本当なら…!

 突如目の前に光の球体が現れる。それはみるみる内に大きくなり、光に触れた物体を飲み込んでいく。ナナリーは政庁にいたはずだ。つまり…ナナリーが…ナナリーがあの光の中に…!?そんな馬鹿な!助けに、助けに行かなければ…!

「ナナリー!」

 そんな俺の機体を押し出す奴がいた。コーネリアだ。

「姉上!邪魔をするな!」

『ルルーシュ!お前に死なれては困る!約束は守れよ…ユフィの、ユフィのギア…』

 そして目の前のグロースターが脚から徐々に光へと飲み込まれていく。そして瞬時に光の球体が収縮すると突風が巻き起こった。

 

 政庁を探すが、政庁が無い。粉微塵になって消えたのだ。いや、きっとナナリーはどこかに居るはずなんだ…!

「ナナリー!ナナリーを探せ!早く!全力で探せ!黒の騎士団に告げる!全力でナナリーを探し出すんだ!!」

『しかしゼロ!またあの攻撃を受ければ黒の騎士団は壊滅するぞ!?』

 ええい…!藤堂!こんな時に俺に逆らうんじゃない…!殴られたいのか…!?

「ロロ!ジェレミア!ナナリーを探せ!ナナリーを探し出すんだ!早く!」

『イエス ユア マッスル!』

『ブラザー、ナイトメア部隊のエナジーは尽きかけていマス。一度補給した方が結果的に早くシスターを見つけ出せると思いますヨ!』

 …何…?それもそうか…こんな時でも冷静に判断を下せるとは流石は我が弟…ここはロロの言う通り一度補給をして万全な状態にしてから探す方が効率的か…待っていてくれナナリー!

 斑鳩に着き、補給の間は部屋で休んで万全な体力にした方が効率良くナナリーを探せるとロロに言われ、一理あると思った俺は部屋に戻っていた。

 

 しかし、結局休む気になどなれなかった。ナナリーはきっと今も俺の迎えを待ち望んでいるはずだ。

 すると、ロロが部屋に入ってきた。

「…どうしたロロ」

「…ナナリーは粉微塵になって死んダ。」

「…なに?」

 ロロは何も答えなかった。

「ふ、ふざけるな…!!お前はさっき探すと言ったじゃないか!!」

 俺はロロの胸倉をつか……もうとして腕が空を切った。ロロの奴め…!ギアスを使ったな…?

「あぁでも言わないとブラザーはあの場に残ったでショウ!?」

「当たり前だ!今もナナリーは俺の迎えを待ってるんだ!!」

「シスターはもう居ないヨ!!シスターは死んだんデス!あの光の中に飲み込まれてしまったんダ!!だかラ…」

 ナナリーが…ナナリーが死んだ…?そんな、そんな馬鹿な…いや、そんなことがあるはずがない…そんな…。

 

 問題だ…あの全てを飲み込む破壊の光からナナリーはどうやって生き残った?

 ①かわいらしすぎるナナリーは神にすら愛されたため、突如破壊の光から身を守るバリアを構築し耐え凌いだ

 ②誰かが助け行き、脱出を手引きした

 ③かわせない、現実は非常である

 

 俺が選びたいのは①だが、あの綺麗に租界をえぐった半球を見ればあまりにも非現実的過ぎる。物理現象が止められないのだからギアスで逃げることも不可能だ。つまり答えは②…そうだ、咲世子だ、咲世子が脱出させたに違いない!…では、何故その咲世子から何故連絡が来ない…?ほ、本当にナナリーは……答えが③だと…?そんなことは認めない…!認めてなるものか…!!!

 

「もしもシ?ジェレミアですカ?租界の探索ニ…?…オーケー。わかりまシタ、ブリタニア軍には気をつけて下サイ。ブラザーにはボクがついてマス」

 ロロがジェレミアと電話をしている…。ふと、ロロの携帯に付けられた揺れるハートのロケットが目に入る…あれは…あれは!あれは!!ナナリーへの誕生日プレゼントだ!!!!

 俺はロロから携帯を取り上げ、ロケットを引きちぎる。これはこんな奴が持っていていいものじゃないんだよ…!!携帯をロロに投げつける。そしてついでに顔面に拳を叩き込む。

「どうしてお前にあげてしまったんだろうな!このロケットは…このロケットはナナリーにあげるはずだったんだよ!」

「ブ、ブラザー…?」

「何がソウルブラザーだ馬鹿馬鹿しい!!」

 俺はロロの胸倉を掴み、その顔面に頭突きをブチ込んだ。

「お前のような奴が俺やナナリーの弟になどなれるものか!!」

 そしてロロの顔面に右の拳を叩き込む。まだだ。この目障りなクソッタレを徹底的に痛めつけて部屋から叩き出してやる!胸倉を掴むのをやめ、思い切り体を捻る。

「出て行け!!」

 すぐさま左の肘を叩き込み、更に両手で顔面を掴む。こいつでトドメだ!

「今すぐ出て行け!!!」

 顔面に右膝を叩き込む。

「二度と俺の前にその面を見せるな!!!ナナリーを救えと言った俺の命令を実行できなかった役立たずめ!!!何がマッスルガイだ、お前のは所詮見せ筋だ!!!!」

 そして部屋から物理的に叩き出すため、助走を取ってからドロップキックを叩き込み部屋から追い出す。

 

 よし…

 

 静かになった部屋の中で俺はソファに座り込んだ。

「お兄ちゃん…大丈夫?」

 恐る恐る…と言った様子で柱から顔を覗かせて声をかけてきたのはC.C.…。そういえばこいつもまだ部屋にいたんだよな。

「…怖がらせてしまったな。済まない…でも、今はそっとしておいてくれ…」

「ルルーシュ!」

 そんな静かになろうとした部屋に突撃してきたのはカレンだった。

「あの、お兄ちゃんがそっとしておいてほしいって…」

「は!?C.C.…アンタ…。ルルーシュ!私がいない間にそういうプレイに興じてた訳!?」

 クソ!そっとしておいて欲しいんだよこっちは!!

「ふーん、私のこと無視する訳ね…いいわよ、もう。でも、扇さん達が格納庫に来てくれって言ってるんだけど?」

 格納庫に?何で今…そうか、補給が終わったのか。でももう無駄だ。ナナリーは居ない…死んで…しまったんだ…。だが、ゼロとして行かないわけにもいかない。C.C.にすまなかったと頭を撫でてやってから部屋を後にする。エレベーターの中、カレンと俺は二人きりだった。

「ルルーシュ、私ね、筋トレのお陰で壁を壊せたの。それで脱出できて…」

「…そうか。助けるのが遅くなって悪かったな。お前は無事でよかったよ…」

 そういえば…俺を助けるためにコーネリアも光の中に飲まれてしまったのだったな。約束を守る義理くらいはあるか…。俺は携帯を取り出し、ジェレミアに連絡を取る。

「もしもし?ジェレミアか」

『これはルルーシュ様、いかがなさいました?』

「済まないジェレミア…もう、探索は良いんだ…代わりに斑鳩内のユーフェミアに掛けられたギアスを解除しておいてくれ…死んだ姉上との約束だ。」

『コーネリア皇女殿下の…畏まりました。ルルーシュ様』

 エレベーターを出ると、カレンが疑問を口にした。

「ぎあす?解除するって何の話?」

 あぁ、そういえばカレンはギアスを知らないんだったな…まぁ、カレンくらいには言っておくべきだったか。…どうでもいい、全て終わったことだ。

 すると、突如俺の体がライトに照らされる。こんな時に俺の筋肉鑑賞会でもする気か…?俺のこの素晴らしい筋肉…いや、今日はダメだ。キレがない…ナナリーを、ナナリーを失ったせいで…!!

 

「ゼロ、答えてくれ!君がギアスをかけて日本人を殺させたのか!?」

 

 …。何故、扇がギアスのことを知っている…?

「ずっと俺たちを騙していたんだろう!アンタはブリタニアの皇子ルルーシュ!そしてギアスという催眠術を使って人々を操っていた!」

 そして俺に対し一斉にスナイパーライフルが向けられた。なるほど、あれなら俺の身体を貫通させられるな。…さっきロロを殴った時に枢木神社で受けた傷が開いてしまったか…これではバベルタワーの時の様に跳んだら跳ねたりは難しい…

「待って!ゼロがブリタニアの皇子だからなんだっていうの!?今まで私たちは彼のお陰でやってこれたんじゃない!誰に吹き込まれたのよそんなこと!」

 カレンは俺の前に立ち、両腕を広げてくれている。しかし君の細い体では盾にもならないだろうに…いや、前に比べて少しがっしりしたか?捕まっても筋トレをしていたっていうのは本当らしい。扇達だけで俺の正体に気付けたとは考え難い…。見つけた、部屋の隅にやはりいたかシュナイゼル…つまりこれは奴のチェック、逃げる手段は無いということか。

「…第二皇子シュナイゼルがそう言ったんだ!」

「みんな馬鹿よ!そんな男に騙されて!ゼロ、貴方からも…」

 …マッスルウーマンへの道を歩み出したカレンは巻き込みたくはない。とは言っても素直に言って聞く女ではないな。

 もういいんだ、今更粛清されようがどうでもいい、ナナリーは居ないのだから。

「どくんだカレン!」「まさかギアスに操られてるんじゃないだろうな!」

「…ねぇ!答えてルルーシュ!わ、私にもギアスをかけて操ったの…?」

 今もなお体を盾にしながらカレンは恐る恐ると言ったように振り返ってきた。いいんだ、俺はもう。それに嘘は吐き慣れている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「HAHAHAHAHAHA!!!!やっと気づいたか、自分達が利用されているだけということに!」

 

「ルルーシュ!?」

 済まないカレン、君は鍛えろ と小さく呟き、カレンの背中にドロップキックを叩き込んで突き飛ばす。

「そんな貧弱な身体が俺の盾になるものか!出直せ!…まぁ、そのカレンが最もマシな筋肉だったがな。全てはジム!俺の筋肉のためのトレーニングに過ぎなかったのだよ!」

 俺は両腕を広げ、全てを受け入れる。待っていてくれナナリー、すぐにそっちに行くからな…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ブラザー!!!』

 

 俺の前に現れたのは蜃気楼だった。そして聞こえてくる声はロロだ。何故…?次の瞬間、俺は蜃気楼に乗せられていた。操縦しているのはロロだ。

「ソーリー、ブラザー。またボクの面を見せることになっちゃってサ」

「ロロ…もういいんだ…」

 絶対停止のギアスを使い、絶対破壊両腕で道をこじ開けたのだろう、振り返ると土手っ腹に風穴が開いた斑鳩が見えた。度々視界が変わり、移動を繰り返していく。俺にはドンドンと胸を強く叩くロロの姿が思い浮かんだ。

 やがて森の中で俺は降ろされた。

「もう良いんだロロ…俺は…生きる意味なんて…」

「何言ってるんデス?ブラザー、まだ終わってないでショウ?」

 ロロこそ何を言ってるんだ?もう俺には全てがどうでもいい、ナナリーのいない世界なんて…。

「復讐デス!まだボク達のシスターを奪われタ復讐が終わってまセン!」

 …復讐…?そうだ、そうだな!そうだよ!!俺から、俺からあの可愛らしく、愛おしく、笑顔が素敵で、寝顔も愛らしく、怒った顔も堪らない、声は心地よく、髪も体も優しい香りがして…誰にでも優しく、強い芯を持ち、どこに出しても恥ずかしくない、目の中に入れても痛くなかった我が妹ナナリーを奪った奴を…シャルルをこのまま何もしないでは気が済まない…!!!

「そうだな、俺達のナナリーの弔いを…盛大にしてやろうじゃないか…!!」

 …ナナリーの弔いをする前に、俺には一つやらなければならないことがあるだろう。

「ロロ、さっきは…酷いことを言ってすまなかったな…」

「何言ってるんデス?ボク達はファミリーなんだかカラ喧嘩くらいしマス。ボクは気にしてまセン」

「それに…本気で膝とか膝とか叩き込んでしまって悪かった。痛かったろ?」

「何言ってるんデス?ボクはブラザーの弟だからネ。あれくらい全部ガードしたから平気サ」

 顔を腫らし、痣もくっきりある上に鼻血を出しながら言ってるあたり強がりなんだろう。しかし…

 

「そうか、しっかり防がれてるな。流石は俺の弟だ。」

 

 そして俺はロロにハートのロケットを返した。

「…引きちぎってしまって悪かったな。これはお前にとって大切なものだ。返すよ」

「ブラザー…。いいんデス。これはここに埋めまショウ。シスターの墓を築き上げるのデス!」

 ナナリーの墓、そうだな、今は簡易的なものしか作れないが、必ず世界で最も立派な墓を建ててやる…!

 

 

 

 

 

 

 

「無事だったか卜部」

「はい、今戻りました。藤堂中佐」

 星刻からトウキョウに援軍に行けと言われたものの、戦場は俺が辿り着く前に一時停戦になっていた。話ではあのゼロが腹に傷を負っているという話だったが…まぁ、彼のことだ、それくらいではくたばりはしないだろう。藤堂中佐と共にブリッジに向かうと、直ぐに通信が入る。ブリタニアから…?

『こちらはブリタニアの外交特使である。繰り返す…こちらはブリタニアの外交特使である。こちらに戦闘の意志ははない。繰り返す…』

「ブリタニアなんて信用できません!早く撃ち落としましょう!」

「待ってくれ朝比奈!俺は…ブリタニアを信じたい。話し合いのテーブルについてくれるというのなら…」

 ブリタニアの外交特使に対し、直ぐに撃ち落とせという朝比奈と話し合いをしたいという扇副司令。彼方の護衛はナイトメア一機…とはいえあの形状はラウンズの機体だ。戦いになれば少なくない犠牲が出るのは必然、まずは話し合ってからでも判断は遅くないだろう。怪我のせいかゼロに連絡が取れなかったため、扇副司令、藤堂中佐、ディートハルト、俺、千葉で向かう事になった。朝比奈はいつでも攻撃ができるように待機させている。

「これはこれは…黒の騎士団の中でも特に有名な皆さんに出迎えていただき光栄です。はじめまして、私はブリタニアの宰相を務めています。シュナイゼル エル ブリタニアです。」

 この男は…!ゼロでさえ苦戦するあのシュナイゼルか…!中華連邦でも相手にした事がある。見た目こそ細いが神楽耶様の話ではあのゼロの猛攻を防ぎ切ったとか…

「どうか私の話を聞いてはいただけませんか?」

「…分かりました。今から部屋へお連れします。」

 扇副司令の案内で俺たちは会議室へと向かった。再度ゼロに連絡を取るもののやはり繋がらない。仕方が無いのでこの五人でシュナイゼルの話を聞くこととなった。

「ゼロとは一度チェスのお相手をしていただきたかったのですが…怪我をしていては出られない…」

 そう、現在ゼロは治療中のはず…

「…と、いうことになっているのでしょう?」

 …なに?

「ですが、彼にとっては銃弾一発での怪我なんて擦り傷でしょう。出られない理由は他にある」

「ゼロのことを随分と知った様な口で語るのですね」

 噛み付いたのはディートハルトだった。

「知った様な口…ですか、いえ、実際私は彼のことは良く知っていますよ…少なくともあなた方よりは」

「なんだと?俺はゼロの正体を知っている。その俺はよりも知っていると言いたいのか」

「卜部 巧雪…ナイトオブラウンズとも互角に渡り合う四聖剣と呼ばれる日本の騎士…いや、サムライ…でしたね。あなたが知るのはゼロの正体であってゼロの正体ではありません」

 この男は…何を言っている?

「ゼロ…ルルーシュは、この私…ブリタニア皇族の一人、ルルーシュ ヴィ ブリタニアですよ。」

 ルルーシュが皇族…!?

「何!?ゼロがブリタニアの!?」

「卜部本当か!?」

 扇副司令も藤堂中佐も驚き俺に確認を取ってくるが、俺の知っていることとは違う…彼はブリタニアの学生、ルルーシュ ランペルージのはず…。そうか、出鱈目を言って我々の動揺を誘う作戦か!

「俺が知っているルルーシュはルルーシュ ランペルージだ!ルルーシュ ヴィ ブリタニアなどでは無い!」

 しかし、シュナイゼルから一枚の写真が差し出される。それは幼い頃のルルーシュの写真だろうか、幼くまだ筋肉もないが、その整った顔立ちは確かにルルーシュだった。

「これは…まさか!?」

「信じていただけましたか?」

 …いや、信じる信じないはどうでも良い話だ。

「ゼロの正体がブリタニアの皇子だからなんだと言うのだ。我々はゼロをその起こした奇跡によって評価している!俺は彼がブリタニアの学生だと知った後も彼の作戦を見てきた!彼は本物だそれを…!」

「しかし、その奇跡が偽りだとしたら?」

 何…?この男は何を言っている…?

「そう、ゼロには特別な力…ギアスがあります。人に命令を強制する強力な催眠術の様なものです」

 馬鹿馬鹿しい。そんなものあるはず…いや、たしかにゼロはどうやって租界構造を破壊した…?いくらブリタニア人とはいえ、学生にそんな力が…?それに、逃亡生活で見てきた『緑の魔女』に反応する人々…彼らは急にこちらに協力的になりすぎていた気がする…ナイトメアの強奪だって、ものは奪えても起動キーやナンバーまでは簡単に奪えたり知れるものでは無いはずだ。

「…その…ぎあす?なる力を使っていると…証拠はあるのか?」

 そうだ、たしかに証拠がなければただの難癖でしか…いや、あるのだろう、この男がそんなあやふやな状態でこちらと話し合いなどするはずがない。いけない…!ルルーシュが、ゼロでさえ勝つことの難しい相手に我々が勝てるはずがない!このままでは我々は負ける!その負けがどんなものかは分からないが…

「証拠なら、あります。」

 そう言って取り出したのはボイスレコーダーの様な機械。

『答えろ…ルルーシュ!君がユフィにギアスをかけたのか!』

『あぁ、そうだ!』

『日本人を殴り殺せと?』

『俺が命じた!』

 何ということだゼロ…何故君がそんなことを…。

「ゼロは…ペテン師だったのか!」

 いけない!早くも扇副司令は流されはじめている!早くなんとかしなければ…

「奴は我々を駒として扱っていた、そう言うことか」

「おい千葉、言葉を慎め。」

「なんだ卜部。どうしてそんなに奴の肩を持つ?まさかギアスとやらで操られているんじゃ?」

 もし仮に本当に催眠術があったとして、自分が操られていないことを証明など出来ようはずがない。ルルーシュの筋肉は本物だし、筋肉で数々の偉業を成し遂げているのは知っている。だが、筋肉にだってできないことはあるだろう、つまりそれは…

「そういえばC.C.もある日を境に急に人が変わったな。ブリタニアの洗脳などと言っていたがあれは本当は…」

 藤堂中佐の発言に一瞬、ほんの一瞬視界の端でシュナイゼルが笑った…様な気がした。いけない…!この流れは!

「ゼロは敵のみならず味方にもギアスをかけ操っているのです。…こんなことを言っている私も操られていないという保証はありません。ですが最近ゼロが、ルルーシュが不自然に誰かを仲間にしたことはありませんでしたか?例えば、ブリタニア人のなどの…」

 そこではっとしたように顔を上げたのは扇副司令だった。

「そうか、ジェレミアやロロをギアスで操って…!」

「トウキョウでは確かあのコーネリアがゼロを助けたんだよな?それってつまり…」

 続く千葉は事実を言っている。だが、それではアイツの思う壺だ!

 シュナイゼル、この男はこれが狙いだったのだ…!常に正体を隠すリーダー、それに対する少なからず存在する疑念、それをギアスというきっかけで爆発させた…。こうなって仕舞えばもはや本当にギアスなるものがあってもなくても関係ない、ルルーシュは奇跡を起こしすぎたのだ。

「俺はルルーシュに…ゼロに直接聞きたいと思う」

 そう言う扇副司令だったが、シュナイゼルにとってはそれも想定の範囲内のはずだ。

「私もそれが良いと考えます。どうでしょう、私の考えに乗っていただければルルーシュが本当のことを話してくれる様に誘導できますが…」

 俺はすぐにその場を立ち去らんと立ち上がった。これ以上この男のペースに飲まれるのはまずい。なんとかルルーシュに…ゼロに指示を仰がねば…!

「卜部さん、どこへ行く気です?」

「俺は彼を裏切る気にはなれんよディートハルト。失礼します、藤堂中佐」

「待て卜部!」

 俺は反応が遅れ、藤堂中佐に腕を掴まれてしまった。

「離してください!」

「そういうわけにはいかん。一人で動くのは危険だ、皆で確かめよう。」

「それはやめた方がいい、彼はおそらくギアスによって操られている…我々に危害を加えるかもしれない。どこかの部屋で大人しくしてもらったほうが良いでしょう。もしこれに対抗するなら…やはりギアスで操られていると考えた方が良いのでしょうね」

 こうして俺は斑鳩のある一室に閉じ込められてしまった。

 

 そして…その部屋にはどうやら先客がいるらしい。

 

 そう、今回の作戦で捕らえることに成功したと言うあの女…

「あなた…日本人ですか?」

 部屋の角からゆらりと人影が現れる。

「撲殺皇女…!」

「あらぁ?その声…確かエリア11で…。日本人は…撲殺です!!」

 突如俺の目前に拳が現れた。俺はなんとか体を逸らし、直撃を免れる。そのまま転がる様に距離を取る…つもりが、すぐ後ろは壁だ。そのまま壁に追い詰められ、腕を掴まれ壁に押し付けられてしまう。な、何と言う力だ…!整いながらも憎らしい顔の、二つの瞳がこちらを見ている。狂気を孕んだ目でこちらを捉えている。逃げられない…ならなんとか防ぐしか無い…!

「撲殺!」

 なんとか拳を止めんと空いている手で防御を試みるが、一撃一撃が重い…!こ、これが撲殺皇女の殴打か…!

「撲殺です!日本人は撲殺です!」

 突如腹に膝が突き刺さり、痛みで抵抗が出来なくなる。こ、このまま殺されるのか…!そう思った瞬間、突如扉が開き、ジェレミアが現れた。そしてそれと同時に何故かユーフェミアは崩れ去った。

「ユーフェミア皇女殿下!なんとおいたわしい…」

「わ、私は今まで一体何を…?な、なぜ私な日本人を…そんな…う、嘘です…!こんな…!」

 ユーフェミアは頭を抱え泣き始めた。そしてジェレミアはユーフェミアに寄り添っている様を俺は呆然と見ていた。先ほどまでの狂気が嘘のようだ。

「…ジェレミア殿、教えてほしい。何が起きた?彼女に何をした!?」

「それは…。私の口からは言えない。我が主人に許可を頂かねば。」

 つまり…これがぎあすとやらで本当にルルーシュは撲殺命令を…なぜそんなことを。そう持っていると突如斑鳩に振動が響く。

「なんだ!?」

『蜃気楼が奪取された。戦闘可能な部隊は蜃気楼を破壊せよ…』

 ディートハルトの艦内放送…蜃気楼が奪取…このタイミングで考えればゼロが蜃気楼に乗って逃げたのだろう。

「ジェレミア殿、ゼロは…ルルーシュは蜃気楼に乗ってこの斑鳩を離れたようだ。恐らく黒の騎士団は彼を討とうとするだろう」

「なんと!?我が主人を!何という不敬!!」

「私も今や追われる側の人間、そこの…ユーフェミアも撲殺皇女と忌み嫌われる存在だ。」

「わ、私は…違う!い、嫌!殴り殺したくない!!」

 このまま斑鳩に残っても碌なことにはならない。となればすべきことはひとつだ。

「ジェレミア殿、我々も逃げましょう。俺は目の前で起きたユーフェミアの変化をゼロから聞き、全てを知るまでは…なぜそんなことをしたのかを聞くまではゼロを裏切ることもゼロに着いていくことも出来ない」

「…分かりました。さぁ、ユーフェミア皇女殿下も行きましょう。失礼ながらこのジェレミア ゴットバルトが抱えさせて頂きます。」

 

 こうしてゼロ達の逃走のどさくさに紛れ俺たちは斑鳩を脱出しルルーシュの後を追った。

 




作者は原作のロロの最期に対し「でもお前シャーリー殺したやん」と思ってしまうロロ絶対許さない派閥の人間です。

Q.あれだけカルマ下げなどしたのに結局裏切られるの?
A.まぁ、作者の都合じゃ無いといえば嘘になりますね。ですが、どちらにせよルルーシュが殴り殺す命令を出したのは事実なので…。また、半信半疑の格納庫での確認でルルーシュが開き直ってしまっているのも一因かなと。(殴打)

●オマケ● NGシーン
「ロロの能力は『体感時間の静止』だ…。絶対停止の結界内で動く人間は一人も居なくなる。誰でも止められる!ロロの『絶対停止のギアス』が完璧なのはそこなのだ!爆走するスザクだろうと止められる!荒ぶる俺だろうと止められる!その気になりゃあなあ―ッ」

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