ミートギアス 〜筋肉のルルーシュ〜   作:ベルゼバビデブ

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 そこはとある部屋…それは今なお戦いで傷を負った者たちが運び込まれては治療を受ける施設のとある一室だった。
「酷い怪我だな」
「…姫様こそ」
「幸い傷跡は殆ど残らんそうだ。治ればまた戦場に立てるさ」
「戻る戦場があるのでしょうかね」
 フレイヤに飲み込まれ、あわや消滅の刹那、ぎりぎりコクピットだけは飲み込まれずに済んだコーネリアは、ナイトメアの落下で大怪我をする程度に留まった。入院し、ルルーシュの日本再占領の際にこの病室に運び込まれ治療を続けていたのだ。
 そしてコーネリアの横たわるベッドの隣に運び込まれたのは彼女の騎士、ギルバート GP ギルフォード。
「姫様…か、まだ私をそう呼んでくれるとはな、一度はお前と剣を交えた私を」
「姫様はいつまでたっても私の姫様です」
「…そうか。ところでその怪我、ユフィにやられたそうだな。」
「えぇ、ユーフェミア様は…お強かったですよ。」
「それはそうだろう、なにせ私の妹なのだからな。」
「…違いありません。」

 それでは「ミートギアス ~筋肉のルルーシュ~ R2」最終話…開幕です!


TURN FINAL

 ナナリー目指して天井を突き破っていると、ジェレミアから連絡があった。

『ルルーシュ様、ナイトオブエイトとナイトオブイレブンがやられました。ナイトオブスリーも機体に損傷が…ナイトオブワンも現在紅蓮と交戦中で、星刻達のアヴァロンへの侵入を許したとのこと…』

「問題ない。アヴァロンはミッション『アパティアレティア』を発動して降伏しろ。ナイトメア部隊はダモクレス周辺に集結して制圧までの時間を稼げ」

『イエス ユア マッスル』

 

 そして天井を突き破ると広い空間に出た。どうやらナナリーのいるフロアに飛び出たようだ。

「床を突き破るような衝撃音…もしかしてお兄様ですか!?」

 声のした方に顔を向けるとナナリーが座っていた。可愛い。

「…ナナリー!よく無事で…そしてフレイヤの発射スイッチを確保してくれてありがとう。ナナリーが居なかったら厳しかったよ」

「やっぱりお兄様なのですね!はい、これをどうぞ」

 ナナリーが笑顔で差し出したものがフレイヤの発射スイッチなのだろう。それをナナリーから受け取る。

「さぁ、私も…」

 ナナリーは期待を込めてか笑顔で手を広げていた。かわいい。本当はこのまま連れ去りたい。だが、それはできない

 

 …何故なら俺は今から最大の罪を犯すからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 拳に力を込め、息を吐く。

 

「…?お、お兄様?…まさかッ!?」

 流石は我が妹…聴覚と気配だけで俺の意図に気が付くとはな…

「そのまさかだナナリー、歯ァ食いしばれッ!!」

「なっ!?」

 

 ナナリーの腹に!拳を!!叩き込むッ!!!

 

 ナナリーの口からおおよそ人間が発してはいけない類の声が漏れ出る。これからの俺の計画にナナリーは必要ないからだ。…だからナナリーに最初で最後の暴力を叩き込む。

 そして、これでもうナナリーにとっても俺は必要ないはずだ。ナナリーに暴力を振るうような…優しくない兄など必要ないのだから…

「お兄…さ…」

 ガクリと身体から力が抜け、車椅子から崩れ落ち、床に倒れて動かなくなったナナリーの頭を撫でる。

「愛しているよ、ナナリー」

 俺はその場を後にした。

 

 フレイヤの発射スイッチを押し、誰もいない空間でフレイヤを炸裂させる。そして俺の映像を撮っているカメラに対し、モストマスキュラーを見せつけた。

「全世界に告げる!私は神聖ブリタニア帝国皇帝…ルルーシュ ヴィ ブリタニアである。」

 これで私がフレイヤを使えると言う事が分かっただろう。もはや俺に逆らうものは居ない。次にサイドチェストを披露する。

「シュナイゼルは我が軍門に下った。よって、ダモクレスもフレイヤも全て私のものとなった。黒の騎士団も私に抵抗するだけの力は残っていない。それでも抗うと言うのなら…」

 俺は上腕二頭筋に力を籠め、その凄まじい筋肉を見せつける。

「フレイヤと我が殴打の威力を知ることになるだけだ。我が覇道を阻むものは最早存在しない。そう、今日この日この瞬間をもって世界は我が手に落ちた!」

 俺はポージングをラットスプレッドフロントに変更した。

 

「ルルーシュ ヴィ ブリタニアが命じる…世界は…我に従え!!」

 

 

 

 お互いそれなりに熾烈な闘いをしてきた…だからもう余りエナジーに余裕はないはず。しかし、油断はできない。ここでカレンを止めなければルルーシュの邪魔をされるに決まっている。

「カレン、どうしても邪魔をする気かい?」

『スザク、私はあなたを誤解していた。やり方は違うけれど、あなたはあなたなりに日本のことを考えて筋肉を鍛えていたって…でも、違うみたいね。あなたの筋肉は権力を振りかざすためのただの暴力。…正義のないあなたはここにいちゃいけない。あなたを倒し、ルルーシュを止める!』

「それは…させない!」

 躱されることを前提にヴァリスを放つ。やはりと言うべきか、上空に飛び上がってカレンは回避し、そのまま右手による砲撃を放ってくる。僕はそれをブレイズルミナスで受け流す。すぐさまスラッシュハーケンを放つが躱され、お返しにとミサイルを放ってくる。

「ここまで温存してきたのか…!」

 それらを全て躱し、ヴァリスを放つがやはり防がれた。

『そんな攻撃…効くかァ!』

 だが、こちらの狙いはそれだ。紅蓮はあの右手こそ厄介だが、攻撃も防御も右手がメイン。ならば右手のエナジー切れにもっていけば…それに、あれだけの威力なのだから連続使用は負荷がかかるはず。距離を詰め、MVSによる斬撃を放って十手型のMVSで止めさせる。そしてヴァリスを構えてカレンに反応をさせた。

『学習しないのねスザク、そんな武器なんか!』

 スラッシュハーケンによる攻撃を回避し、こちらもスラッシュハーケンを飛ばして牽制しつつ距離を詰める。

 

 しかし、もうこのヴァリスを撃つ気はない。では何故ヴァリスを構えたか、それは簡単だ。

「これはッ!これが君が僕に撃たせた…ヴァリスだァーー!!」

 

 ヴァリスで!思いきり!!殴りつけるッ!!!

 

『なッ!?』

 そう、普通銃を見れば撃ってくると思うだろう!しかし、カレンに対してヴァリスは大したダメージソースになり得ない!ならば…ヴァリスはここで放棄し、隙を作る!

 カレンが怯んだその一瞬の動揺を見逃さず、蹴りを叩き込みエナジーウィングを破壊する。これでもう空は飛べない!

『調子に…乗るなァ!』

 !?紅蓮の動きがまた早くなった!?紅蓮の右腕を躱しきれず、右腕がエナジーウィングを掴んでいる!

「くっ!」

 仕方なくエナジーウィングをユニットごと切り離し、スラッシュハーケンでダモクレスに飛び移る。

『…0%…』

 …?カレンが何か言っている…?

 

『紅蓮聖天八極式…出力100%…!!』

 

 放たれたスラッシュハーケンは今までのどれよりも素早くキレがあり、思わずMVSを弾かれてしまう。まさか…!?

「カレンもマッスルデバイスを…!?」

『もってことはやっぱりスザクも付けてたのね。』

 この土壇場で成長したというのか!?だが!ブレイズルミナスを展開しての蹴り…これで!

『そんな攻撃なんか!』

 輻射波動による防御…だが離れる時にスラッシュハーケンを叩き込む!ギリギリ躱されたが、紅蓮のスラッシュハーケンのうち、一つは破壊することができた。

『スラッシュハーケンをやられたくらいで!!』

 紅蓮の攻撃パターンが変わった…!あの右手を貫手のように…狙い通り輻射波動は尽きたようだ。だが、こちらのシールドエナジーはまだ残っている!さらに純粋な格闘戦なら鍛えた僕の方が勝るはずだ。

 貫手を躱し、右拳を突き出すと左腕で防がれた。だが、まだ蹴りがある!

 胴体に蹴りをねじ込むが右手で若干防がれ威力はイマイチ、だがそれは同時にこの蹴りにシールドのエナジーを使わなかったことが正解と言える。距離をとってからスラッシュハーケンによる攻撃で残っていたスラッシュハーケンを破壊し、左手の十手型MVSも弾き飛ばす。

「しまった!?』

「これでとどめだ!カレン!」

 いつもの蹴りを決めようと脚にブレイズルミナスを展開してランスロットを回転させる。

 

 

 

 

 

 

 しかし、あの禍々しい赤い光が紅蓮の右手から放たれる。

 

「何!?」

『思った通り…紅蓮の攻撃を直接の物理格闘に切り替えれば輻射波動のエナジーが尽きたと勘違いすると思ったわ…!』

 あの土壇場を…使わなければ負けるかもしれない戦いの中で温存だって!?馬鹿な…!この瞬間のために温存を!?僕が勝利を確信してこの蹴りを放つ瞬間を…待っていたのか!?

 

『紅蓮の右手が真っ赤に光る!スザクを止めろと震えて焦す!!』

 

 いけない!このモーションでは躱せない!!

 そして僕は紅蓮に胴体を掴まれてしまう。

『爆熱ッ!輻射ァ…波動ォ―ッ!!』

 全身を熱が包み込み、ボコボコとランスロット表面が歪に膨らむ。警告音が鳴り響くが、ロイドさんは脱出ユニットなんてものを付けてはくれないので脱出もできない。

 しかし、まだ…まだランスロットは動く!両腕でアームハンマーを叩き込んでッ!

「届けェ!!」

『そんな機体でまだ!?』

 アームハンマーは紅蓮の頭部を打ち砕き、機体前方の装甲を削り取る。そして紅蓮の輻射波動が炸裂し、ランスロットは爆散した。そして僕は爆炎に飲み込まれる。

 

 僕が最後に見たのはランスロットの爆発でダモクレスの外に弾き飛ばされたカレンの姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 流石にランスロットの爆発に巻き込まれた僕はそのケガを治し、筋肉の調子が戻るのに2か月を要した。

 僕のリハビリ期間中にE.U.は超合衆国憲章に批准し、ルルーシュは世界統一と言う偉業を成し遂げたのだ。因みにカレンはあの後ジノのトリスタンに間一髪のところでキャッチされ、死は免れたそうだ。とは言え、そのジノもカレンも今やルルーシュにより拘束されている。

「スザク、約束通りお前が俺を殺すんだ。誰よりも鍛えてきたお前にしかこれは成し得ない。計画通り全ての憎しみは俺に集まっている。後は俺が消えることでこの憎しみの連鎖を消し去るんだ。」

 そしてルルーシュからゼロの仮面が手渡された。

「黒の騎士団にはゼロと言う伝説が残っている。シュナイゼルもゼロに仕える…これで世界は筋肉による拳と拳の物理的な話し合いではなく、対話による穏便な話し合いのテーブルにつくことができる。明日を迎えることができる。…全ての憎しみをこの俺に!」

 僕はゼロの仮面を受け取り、それを掲げる。

「いいですとも!」

 

 そして計画実行の日、僕は仮面をつけた。鍛え抜いた末に僕の筋肉はルルーシュと大差なくなっていたから、ゼロに成り代わるのは簡単だった。今日僕はルルーシュを殺す。全ての憎しみを引き受けたルルーシュがゼロによって討たれる。そしての真実は秘匿され、誰も真実に到達する事はない。それがゼロレクイエム。

 僕は英雄となる。悪逆皇帝、ルルーシュ ヴィ ブリタニアから世界を救った救世主として。その代り、僕は今後正義の味方のゼロとして生きることになる。人並みの幸せも、人並外れた筋肉も、全て世界に捧げて筋肉を鍛えて生きていくのだ…永遠に。だが、僕はその願いを受け取った。

 捕まった人達を見せつけるようなルルーシュのパレードに僕は足を踏み入れ、ダブルバイセップスを決める。

 

「ゼロ…!」「体脂肪ゼロだ!」「背中にエナジーウィングでもつけてんのかい?」「間違いない!あの肩幅、あのポージング!」「ゼロだ!ゼロが来てくれたんだ!」

 

 騒然とした会場を僕は駆け抜け、放たれたヴィンセントの銃撃を回避する。更にジェレミアさんの顔をぶん殴り、再び駆け抜ける。カレン達やシュナイゼル殿下、ナナリーの横を通り抜け、ルルーシュの前の坂へとやって来た。この坂を駆け上がればルルーシュに拳が届く…!

「ゼロ…か、どこの誰かとは知らぬが愚かな者よ…。だが、その愚かさに免じて一つ提案しようではないか。私の仲間にならないか?そのまま坂を降りれば…命を助けてやるどころか我が下僕にしてやろうではないか。だが、その坂を登れば命は無い」

 僕は無言で坂を上がる。

「そうかそうか…この私、ルルーシュ ヴィ ブリタニアに逆らうか…ならば…死ぬしか無いなァ!ゼロッ!!」

 瞬間、ルルーシュの姿は消え去り、突風が巻き起こる。僕は後方を振り返りつつ肘打ちを叩き込む。

「ほう?見えていないのによく反応できたな?それとも知っていたか?この私の動きを」

「…!」

 ルルーシュは僕の肘を掌で止めていた。なぜ抵抗を…?なんだ…?この違和感は…ルルーシュ、事前の計画では僕の拳で胴体を貫かれて死ぬと…まさか…!?

『もうお前は用済みだ、スザク』

 誰にも聞こえないような…肉薄した僕にしか聞こえないような小さな声でルルーシュはそう呟いた。まさか…!?裏切ったのか!?この土壇場で!?

「隙を晒したな?死ねィ!!」

 瞬時に腹筋に力を込め、ルルーシュの拳をガードする…が、思わず吹き飛んでしまう。な、なんてパワーだ…!

「財力…権力…そして筋肉のパワー!この俺はこの世界の誰よりもぶっちぎりで頂点に立った!この世界は今より私が支配する。それを邪魔する事は誰にも出来ん!」

『ゼロレクイエムで俺が死ぬなどと…その気になっていたお前はお笑いだったぜ』

 そう口パクで僕に伝えて、ルルーシュの顔はニヤリと歪んだ。まさか…ルルーシュの真の狙いは本当に世界征服する事だったのか…!ここで僕を始末すれば後はギアスと筋肉でどうにかできると…!?どこまで卑怯なんだ君は!!僕を…騙したのか!踏み台にするのか!!

「ッ!!」

 歯を食いしばり、一気に駆け出す。ルルーシュの突き出してくる拳を砕かんと膝と膝で挟み込む

 

 …が、砕けない!

「その程度の筋力で俺の拳を砕くことは出来ぬゥ!!」

 ルルーシュは素早く息を吸い込むと口を窄めて唾液を飛ばしてきた。ルルーシュの口から高速で放たれるそれは水圧カッターよりも鋭いはず、当たるわけにはいかず距離を取るが、幾つかが腹部に突き刺さった。鋭い痛みだ…!更にルルーシュは高く脚を上げ、素早く振り下ろして踏み込み、正拳突きを放った。その拳から放たれる拳圧は暴風を巻き起こし、僕の体を吹き飛ばさんとしてくる。更に先程の水圧カッターが暴風を受け更に加速して突き刺さる。

 

「我をぶって良いのは…我にぶたれる覚悟のある奴だけだッ!」

 

 僕にも覚悟なら…ある!しかしルルーシュの奴、一体いつの間にこれはどの力を…!ふと、ルルーシュの目に…その黒目の輪郭に赤く光る輪を見た。C.C.曰く、あれはギアスを受けた者…通常は視覚できないが僕ほどの鍛えられた目ならば判断可能…の特徴!まさかルルーシュ…君は…!

「俺は世界を手に入れる!その為に死んでもらうぞゼロォ!!」

 ルルーシュ…君は自分自身にギアスを使ったのか!?一瞬、ルルーシュの筋肉がさらに膨れ上がるのを見た。まだ…まだ強くなると言うのか…!?

 

「負けるなゼロ!」「負けないでくれ!」「心臓の代わりにユグドラシルドライブでも入ってるのかい?」「あんただだけが希望なんだ!」「悪逆皇帝を倒せ!」

 

 周りから声が掛けられ、僕は肉体の活性を感じ取った。民衆が僕に声援を…そんなことすれば一族郎党皆殺しなのに…いや、違う、みんなそれだけの覚悟を持ってこの場に立ってるんだ…負ける訳には行かないッ!僕の覚悟にはみんなの覚悟が上乗せされるんだ!!だから僕の身体が活性化されたのだ!穿たれた傷や痛みを吹き飛ばし、暴風の中、僕は全身に力を巡らせる。

 

--普通、人間は己の肉体の限界を脳が無意識にストッパーをかけ、セーブしている。

 

 ストッパーを外した状態で激しく、肉体の悲鳴を無視して暴れれば骨は折れ、血管は千切れ、皮膚は引き裂けるだろう。

 

 しかし、最早枢木 スザクはそれを厭わなかった!その覚悟が彼には有ったッ!!周りの声援がそれを可能にした!

 

 みんなの心が一つに、ルルーシュを倒せと!その願いに呼応し、スザクの心の筋肉がとてつもない爆発力を産んだのだ!!--

 

 これから先の道にルルーシュの作った計画という道は必要ない、ここから先は…覚悟が道を切り開く!

「立ち止まってどうした?疲れでもしたか?まぁいい、そのままじっとしていれば…あの世には楽に行くことができるぞ!命は…貰ったァーーー!!!」

 

 突き出された拳を拳で返す。僕の拳とルルーシュの拳から血が噴き出た。しかし、僕はそのまま拳を押し退けて、ルルーシュの顔を殴り抜ける!

「何ィ!?」

 

 吹っ飛ぶルルーシュに対し僕は更に拳を握り締めて接近し、ふたたび拳をルルーシュの顔面に叩き込む。僕の腕から悲鳴のように血が噴き出るが気になんてしていられない。二発目の殴打を受けてルルーシュは吹き飛び地面を転がっていく。

 そしてルルーシュは立ちあがろうとするが、脚が痙攣でもしているのか、うまく立ち上がれていないようだった。

「ば…馬鹿な…!?こ、この俺が…唯一皇帝ルルーシュがッ!気分が…わ、悪いだと…!?た、立ち上がれないッ!顔面を殴られて…力が入らないだとッ…!?」

 

 僕は黙って歩を進める。もう一度拳を握り締め、ゆっくりと…

 

「く、来るな!俺に近寄るなァーー!!」

 這いつくばって叫ぶルルーシュの顔面に蹴りを叩き込む…これで、終わりだ!!

 限界を超えた一撃にルルーシュはすっ飛んでいく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふ…ふはは!はははははは!馬鹿がッ!!」

「!?」

 チラリと見えたルルーシュの顔は笑っていた!この状況で!

 

 突如、僕らが戦っていた乗り物が急に大きく揺れ始める。蹴り飛ばされて坂の上に戻ったルルーシュは何事もなかったかのように立ち上がる。そんな…先程の攻撃で無傷だとでも言うのか…!?

「甘いなァゼロ!この私が…本当に貴様程度の拳で致命傷を負うとでも思ったかァ!?馬鹿が!!演技だよ演技!貴様にとどめを刺す為に、この場所に登るためにわざと食らったのだ!!」

 すると突然坂が割れ、中からナイトメアがせり上がってくる。あれはまさか…月下!?

『ふははははは!残念だったなァゼロ!いくら貴様とてナイトメアには勝てまい?これで…チェックだ!!』

 か、勝てない…!いくら僕でもナイトメアに素手では勝てない…!ここで僕は負けるのか!?月下は僕に近づくと、その拳を振り上げる。

 

『潰れ死…『 " 鍛 え ろ ! " 』』

 

 ルルーシュの声を掻き消すように、俺の頭にかつてのルルーシュの声が響き渡る。

 そうだ、ナイトメアに素手で勝てないなら…

 

 勝てるように鍛えればいいじゃァ無いか!

 

 簡単なことだ。何故今まで気付かなかったのだろう。それに今の俺の中にはいつもとは比べ物にならない圧倒的な力を感じる!ルルーシュに裏切られた怒りと正義の心で僕の心は燃え滾っている!俺は月下の拳を紙一重で躱し、月下の膝関節にこちらの肘打ちを叩き込む。肘に激痛が走るが、痛みは気合い柔らげる。予想通り関節部ならなんとか破壊できることがわかった。そして体勢を崩した月下の苦し紛れのパンチを受け流す。

『馬鹿な!?』

 動揺している今がチャンスだ。月下の腕を駆け上がり、頭に回し膝蹴りを叩き込む。よし、壊れた!これでモニターは使えないはず!コクピットが開き、正面のガラスが透明に戻る。ルルーシュの焦った顔がよく見えた。

「ふざけるなよゼロ!こんなところで私の覇道を止められてたまるか!!」

 俺は破壊した月下の頭部を両腕を使って月下の胴体に叩き付ける。破損した装甲からはケーブルが剥き出しになっていた。俺は拳を突っ込み、思い切り引きちぎる。

「何を!貴様!馬鹿な!!やめろ!ゼロォォォォォォ!!!!」

 俺は月下を思い切り蹴り、距離を取る。

 

 そして、クラウチングスタートの構えを取る。

「その…構えは!?」

 そうだよルルーシュ。これは君の技だ。だからこそこれを君に叩き込む必要がある!

 装甲が剥がれ、火花を散らす胴体に膝蹴りを叩き込んだ。

「私は、私はァ…!身体を鍛え…!!筋肉を創…」

 

 一度距離をとり、拘束されているナナリーを抱えて更に距離を取るとタイミングを見計らったかのように月下は爆発した。

 

 …さようならルルーシュ。僕の最初にして最後の親友。

 

「ゼロ!」「凄い!悪逆皇帝ルルーシュを倒した!」「素手でナイトメアに勝つとかヤバすぎだろ!」「血の代わりに流体サクラダイトでも流れてんのかい?」「ゼロ!ゼロ!体脂肪ゼロ!ゼロ!」

 予定通りゼロレクイエムは…いや、そうか、君はここまで考えて…道理で素手でナイトメアが壊せたはずだ。君はワザと関節を脆くしていたんだね?悪逆皇帝を倒した、ナイトメアを素手で破壊できる『仮面の英雄ゼロ』を作るために…。

 さっきの爆発も違和感があった。至近距離のニトログリセリンによる爆発をも防ぐルルーシュの肉体を容易く破壊しうる規模の爆発…通常のナイトメアが爆発してもそんな威力は普通は出ない。つまりルルーシュは流体サクラダイト等を使ってわざと爆発力を高めたのだ。僕に、ゼロに悪逆皇帝ルルーシュを殺させるために。

 

 

 

 

 そして、ルルーシュは粉微塵になって死んだ。

 

 

 

 

 全てが終わった証明に僕はダブルバイセップスを決める。

「人質を解放しろ!」

「いかん、ここは退却しろ!」

 そんなやりとりがなされる中、民衆によるゼロの名前を呼ぶ声が響き渡る。

 

 

 それから世界は大きく変わった。戦争に向けられていた人々の意識や筋肉は、教育、ボディービル大会、運送業、福祉や貧困等弱者の救済に向けられた。全ては…ルルーシュ、君の思い通りだったね。

 困難な事はまだあるけれど、人々は未来に向け歩み出している。きっと大丈夫だ。

 

 ルルーシュ、君の犠牲のおかげで完成したよ。

 

 優しい、世界が…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゼロ、今から合衆国中華に行ってこのアンニン…というスイーツを買って来てください。」

 あ、はい。

 




8月中は後日談等の
おまけの話があります。
ちょっと短めではありますが…。
わたし的にR2まで書き切れて満足です。
ほんとうにありがとうございました!
つぎの作品にご期待下さい!

「ミートギアス 〜筋肉のルルーシュ〜 R2」の一番好きなところを教えて下さい。

  • オールハイルマッスル!
  • 筋肉
  • 脳筋に置き換えられた原作の言動
  • 卜部の活躍
  • モニモニのモニカ
  • 原作にない追加エピソード
  • ナイトメアの戦闘
  • 唐突に始まる格闘戦
  • 混沌とした相撲回
  • ちょろくなったC.C.
  • 脳筋のルルーシュ
  • 作者による謎の月下推し
  • ネタと思わせて地味に仕込まれる伏線
  • あとがきで殴打し始める作者
  • 上記全て
  • 上記以外
  • わならない
  • 特に無い

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