ミートギアス 〜筋肉のルルーシュ〜   作:ベルゼバビデブ

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 現在ルルーシュ達によるたった3機のナイトメア…さながらパイロットの力量というどうしようもない要素を正面から叩きつけて敵の作戦そのものを捩じ伏せる、「全速前進作戦」が行われているのは嘆きの大監獄。そして嘆きの大監獄を攻める部隊を指揮しているのはジルクスタンの親衛隊隊長、シェスタール フォーグナーだった。
『先行したナイトメア部隊、突破されました!…信じられない!たった一機のゲド・バッカに複数のフロアを制圧されるなんて…』
「な、なんだこれは…!戦略が機能しない!?私はこの日の為に『モンキーでも分かる戦略指南書(初級編:著者L.L.)』で戦略を学んだのだぞ!」
 シェスタールは悔しさに唇を噛み、机に拳を叩きつける。
「やはりエクスカリバー氏にも来ていただくべきだったのでは?」
「…私はあの男は好かん、あのなんでも見通したかのような目がな…!マリオ、私と共に死地に飛び込めと言ったら来てくれるか?」
「…それが命令なら行きますよ。しかし指揮官であるシェスタール様も出られるのですか?」
「ならばついて来い!英雄の私…つまり上の者自らが出なければ部下達は着いてこない!尊敬する戦略家のL.L.氏もそう言っている!」
「はぁ…ナムジャララタック…」
 青き人型のナイトメア、ハニーブ スル ヒーバーと月下の二機が監獄へと足を踏み入れた。


TRAINING04 シェスタールの誇り

『全速前進だ!』

 ルルーシュの指示に従い、僕は再び上のフロアに突入し、そこで独楽のように回転しつつ前進し、回転する視界の中でモニターを確認して肩のキャノンを放つ。

「済まないカレン、C.C.、二機ほど柱の影の死角だったから倒し損ねた。掃除を頼めるかい!?」

『任せて!』

『誰に言っている』

 更に上のフロアに向かうとそこには青いナイトメアと僕が乗るのを拒んだナイトメアと同じタイプのナイトメアが立っていた。ルルーシュに連絡を取ると直ぐに向かうと言っていた。

 

 ルルーシュと合流すると相手の青いナイトメアが抜剣した。それにしてもあの青いナイトメア、初めて見るタイプだ。難民キャンプで襲ってきたのとはまた別のようだけど…

『私はジルクスタン親衛隊隊長、誇りあるフォーグナーの血を引くシェスタール フォーグナーである!私の策を破った実力は素直に賞賛に値する!だが、ここらで降伏をお薦めしたい、我々としては嚮主C.C.様の身柄さえ頂ければ手を引くし、ナナリー殿もお返ししようではないか』

 やはりジルクスタンがナナリーを…!

『私は…ゼロ!』

『ゼロだと…?』

『C.C.の身柄を引き渡せだと?残念ながら私は彼女を守ると決めている。君のような英雄気取りが重職に就くような国に彼女を任せるわけにはいかないのでな』

『英雄…"気取り"だと…?貴様ッ!フォーグナーを侮辱した罪は重いぞ!私直々の罰を受けるが良い!!』

『罪?罰だと…?』

 ルルーシュは何故か罪と罰と言う言葉に反応を示し、突然ルルーシュからスゴ味が溢れてきた。

『貴様らを誘拐罪と監禁罪で断罪する!理由は無論分かっているな?貴様らがスザクをこんな監獄に繋ぎ、ナナリーを誘拐したからだ!覚悟の準備をしておくが良い。近い内にぶちのめす!顔面もぶちのめす!ナナリーも問答無用で返して貰う。命乞いの準備もしておくが良い!貴様らは犯罪者だ!顔面に拳ぶち込まれる楽しみにしておくが良い!いいですね!』

 ルルーシュはナナリーを誘拐された事で興奮しているのか、武器を振りかぶって距離を詰めていく。しかしルルーシュの丸鋸はシェスタールには届かず、代わりに何度か見た刀に止められていた。

『これは…廻転刃刀と月下…チィ!どこから流れた!』

 刀による薙ぎ払いを石突の代わりに取り付けられたタイヤによって速度を得て距離を取る事で回避していた。

『スザク!俺はこいつの相手をする!お前達はあの青いナイトメアをやれ!』

「分かった」

 とは言え敵の数は多い。密集陣形からの一斉砲撃を縦横に動き回って回避しつつ、こちらも砲撃を与えて数を減らしていく。

「僕が囮になる!カレンとC.C.は敵の数を減らしてくれ!」

『オッケー!やられるんじゃないわよスザク!』

『このまま敵の大将を倒してしまっても構わんのだろう?』

 頼もしい二人に背中を預け、引き続き敵陣を縦横無尽に駆け抜ける。

『止められねえってこんなの!』

 一機また一機と蹴散らしていくと、使っているナイトメアの主砲の弾薬が切れた。僕はスラッシュハーケンで敵のナイトメアを飛び越えつつ乗り捨て、そのまま下にいたナイトメアに組み付く。ハッチを無理やりこじ開け、中のパイロットをブン殴りつつ摘み出し乗り換える。

『おい!敵がナイトメアを乗り換えたぞ!』『戦闘中にふざけやがって!』

 ルルーシュ達に自分が乗り換えた機体の信号を報告しつつ、放たれた砲弾を地面をブチ抜いて躱し、続けて天井を攻撃して足場を崩す。落ちまいとスラッシュハーケンで逃げる敵を撃ち落としていると通信が入った。

『スザク、そろそろこちらの弾薬が保たない、戻って来られる?』

「ハッチを無理矢理こじ開ければナイトメアを奪えると思うけど」

『そんな離れ業はお前とルルーシュくらいにしかできん』

 言われた通り戻ると敵の数はかなり減っていた。…瞬間、アサルトライフルで左の砲身を撃ち抜かれてしまう。

「読まれていた…?」

『ふん!所詮はテロリスト、英雄の血筋には勝てまい!』

 どうやらあのあの青いナイトメアのパイロットは中々やるようだ。スラッシュハーケンを放つとブレードで弾かれ、咄嗟に飛び退くと僕の居た位置にアサルトライフルの弾が着弾する。中々正確な射撃だ。

「ルルーシュ、そっちはどうだい?」

『悪いなスザク、相手も中々やる…援護には行けなそうだ』

「分かった。こちらも手強くてそちらの援護には行けなそうだ。」

 同じ性能のナイトメアとは言えルルーシュでも決めきれないとは…。幸い、もう少し時間を稼げばC.C.とカレンが補給を終えて戻ってくる筈だ。狙いを定めつつ、前進してスラッシュハーケンによる牽制をしつつ相手の動きを確認する。今度はスラッシュハーケンを避けてやり過ごす様だ。相手のアサルトライフルを右手で受けつつ砲撃、右腕は壊れてしまうし、こちらの攻撃もブレードで弾かれたがそれは計算通り、初めから僕の狙いは相手の後ろにいたナイトメアの残骸、それをスラッシュハーケンで引き戻して相手に後ろからぶつけるのだ。

『ふん!背後からの攻撃をこの私が気付いていないとでも?」

 スラッシュハーケンで天井へと飛び退かれ躱されてしまった。更にアサルトライフルを受け、僕がナイトメアから飛び出ると爆散してしまう。

 

 しかしそれもまた想定内。

 

「今だ!カレン!C.C.!」

僕の開けた床の穴から飛び出た二人による砲撃、これは躱せない!

『何ッ!?』

カレンの砲撃が脚部に直撃、C.C.の砲撃は天井を貫き崩落を誘う。

『た、絶えてしまう、英雄の血統がッ!…父上ェッ!!』

 崩落した天井に彼は飲み込まれた。すると、左腕を切り落とされたルルーシュのナイトメアが近づいて来る。

『そちらも片付いた様だな。』

「ルルーシュ!そっちも終わった様だね」

『いや、こちらは逃げられた。だがロイドに確認したところ敵は撤退を開始している。今のうちに脱出するぞ』

 

 こうして僕らは大監獄から脱出し、国境沿いの村に向かう事となった。

 

 

 

 村に着くとコーネリアから歓迎を受けた。スナイパーライフルが多数向けられているが、姉弟の再会を見たいだけだろう。うん、そうに違いない。

「久しぶりだなルルーシュ」

「お久しぶりです姉上。まさか生きておられたとは。」

「ふん、お互い様だ。にわかには信じ難いが…まさかあの爆破も演出で、生きながらえていたとはな。とんだペテン師だ」

 スザクはともかく、俺は本当に爆破に巻き込まれて粉微塵にはなったのだがな…まぁ、これを言っても意味はないだろう。

「ジルクスタンの追手から逃げてきたのだろうが、お前とスザクを超合衆国に入れるつもりはない」

「姉上、間違っておられますよ。私は逃げてきたのではなく、姉上達と合流するためにここに来たのです。」

「戯言を言うな!」

 するとコーネリアは部下に保たせていたスナイパーライフルを受け取り、俺に突き付けてきた。

「ここでもう一度死んでもらう!」

 放たれた弾丸を掴み、コーネリアの持つスナイパーライフルの砲身をへし折る。

「申し訳ないがあなた方にはこれより私の指揮下に入りナナリー奪還作戦に協力していただきたい」

「ナナリーの救出は我らも目指すところだ。しかし、幽閉されているであろう首都には12000人もの人員が割かれている。対するこちらは民間人を含めた20人程だ!それにあくまでも実態調査や先行隊の回収を目的とした集団なのだぞ!これ以上増やすこともできんしな…」

 敵との差は約600倍、俺とスザクが3000ずつ、カレンとC.C.で2000は対応できるとして残り4000か…。だが、ナナリーを救うだけならそれだけの相手ができれば十分だろう、何も全滅させる必要はないのだ。

「頼む、姉上…今頼れるのは姉上しか居ない。相手の狙いがわからない以上、ナナリーが何をされるかわからないのだ!」

「我らが力を貸せば勝てる保証でもあるというのか?」

「ある!私の筋肉を見ろ!!」

 俺はダブルバイセップスをし、筋肉を隆起させ服を弾け飛ばす。

「この筋肉、そして俺の頭脳、更にスザク!これらが揃えば負ける道理がない!」

「説得力皆無な要素でとんでもない説得力を生み出すのはやめろ!」

 叫ぶギルフォードだったが、姉上は少しだけ考えらように目を閉じ、そして開いた。

「…お前にはかつて約束を守ってくれたな。…今回も約束できるか?」

 俺はポージングをマストマスキュラーに変更し、力強くうなづく。

「できる。この筋肉に誓って!」

「…分かった。」

 するとコーネリアはいつも身に付けている銃と剣が一体化した獲物を取り出し、それを天に掲げた。

「これより我らはナナリー救出作戦に従い、ナナリーを助け出す!」

 

 そして時が夕方ということもあり、結団式が行われることになった。皆は酒や食事を楽しんでいるようだ。

「ところでルルーシュ…なぁ、ユフィの…あれはギアスとは関係ないんだよな?」

 コーネリアがチラリと見た先にはユーフェミアが現地の子供達と戯れ…ボクシングの手解きをしているらしい…ているところだった。

「…え、えぇ、ギアスキャンセラーは確実に機能しています。ですが、その、どうやらユフィの中の闘う才能が開花してしまった様で…アレにはなんとも」

「そうか…まぁ、あれがユフィの意志だと言うのなら尊重するしかあるまい」

 そう言えばコーネリアにはフレイヤから庇って貰った礼をまだ言って無かったな…

「姉上、あの時はフレイヤから庇っていただきありがとうございました。」

「…ユフィのためだ。お前のためではない。」

 すると、いつの間にかユフィは俺達の側に居たらしく、コーネリアの腕に絡んでいる。

「もう、お姉様ったら素直じゃないんですね。ルルーシュ、全て過去の事です。お姉様もとっくの昔にもう水に流してますよ」

 笑顔のユフィに言われ、コーネリアも頬を掻いていた。どうやら許してくれているらしい。ありがたいことだ。

「そうか、ありが…」

 

 瞬間、俺の顔面にユフィの拳が突き刺さった。

 

「ふふっ、私は水に流したとは言ってませんよ?お姉様を危険な目に合わせてたなんて、ラウンズになる時私聞いてなかったんですけど?」

 ユフィの拳で前が見えねえ…。

 更にユフィは俺に馬乗りになると顔面を殴打しまくった。そして俺はそれを甘んじて受け入れた。

「ユフィ?私はもう水に流したから、な?ユフィ、やめるんだユフィ!ユフィ!やめろ!!」

「お姉様は黙っててください!」

「あ、はい」

 

 しばらくするとユフィの殴打が止む。

「ふぅ、これでスッキリしました。過去のことは汗とともに綺麗さっぱり水に流します!さぁ!一緒にナナリーを助けましょうルルーシュ!」

「あ、あぁ、協力感謝する」

「平和を乱すものは撲殺です!」

 ギアスはとっくに解除されてるはずなんだがな…

 

 

 俺はとんでもないギアスをユーフェミアにかけてしまったのかもしれない。

 

 

 コーネリア達と別れてから背後に気配を感じ振り返ると、色白もやしと形容するのが相応しい少年と目が合う。彼は徐に俺の胸板に触れてきた。

「この筋肉…やっぱり生きていたんだね…!」

 俺の記憶にこんな奴は居ない…いや、この瞳には見覚えがある。それに…この魂を揺さぶる感覚は…!?

「お前…ロロか!?」

「うん、そうだよ兄さん。」

 やはりそうか、しかしこの体は一体…筋肉がなく、色も白い…髪型もスキンヘッドでは無くなっている…それに話し方も変だ。…いや、普通なのだが、ロロの場合それが変なのだ。

「実はね、兄さん。色々あったんだ。そのせいで僕はもう激しい運動ができなくなって…」

「そうだったのか、大変だったな。だが…またお前と話すことができて俺は嬉しいよ。」

 しばらくロロとも話し、ロロの最近について知る。どうやら人工心臓になった影響か、もうギアスは使えないらしい。だが、そんなことは関係ない。ロロはロロだ。ならば俺とナナリーの弟なのだ。すると乳首に刺激が走る。つまりモニカだ。

「この乳首の感触…!もしかして本物のルルーシュモニ!?」モミィ…

「これはこれはモニカ クルシェフスキー卿…相変わらずあなたは乳首を弄るのがお好きですね…」

 うーむ、なんだかだんだん癖になってきたような…いや、いけない、なんだかこれは良くないことのような気がする…!モニカを無視してモニカの隣に立つ人物に視線を移す。男は手を出してきた。つまり…握手か

「モニカ殿から誘われまして…はじめましてルルーシュ殿。表屋 拙炎と申します」

「そうか、よろしく頼む。表屋」

 俺は握手に応じ、話を合わせた。どう見ても卜部なのだが、まぁ、こいつにもこいつの事情があるのだろう。大方俺の側についたことを咎められ偽名での生活を余儀なくされてる…とかな。

 その後、ジェレミアとアーニャが合流し、ナイトメアの受け取りと最後の一人の合流が終わった。最後の一人は我が弟子たるマッスルガイの星刻だ。

「星刻…俺は…」

「いや、何も語ってくれるな。君の筋肉を見れば分かる。私だって天子様が誘拐されたら同じだけのことを同じ覚悟で成し遂げるだろう。必ずナナリー殿を取り戻すぞ」

「…ありがとう」

 俺は星刻の差し出した手を掴み、思い切り握力を込める。

「…強くなったようだな」

「無論だ。君の教えがあって今私はここに居る」

 力強く握り返してくる我が弟子もいるとはな、頼もしい限りだ。

 

 夜、俺が作戦を練っていると扇が訪ねてきた。こいつ居たのか。

「ゼロ、これは神楽耶様が『もしゼロが生きていたら渡してくれ』と言われていたデータです」

 確認するとどうやらジルクスタンの地形図の様だ。ありがたい。

 すると、扇は急に拳銃を取り出し、自分の首に突き付けた。

「ゼロ!今の日本があるのは君のおかげだ、あの時は裏切って済まない。ここで命を持って償……」

 あぁ、斑鳩での一件を言っているのか。今更過ぎたことだ。それにしても自殺を図るなど筋肉が鍛えられていない証拠だ。ここは心と体に教え込む必要があるだろう。

「この馬鹿野郎!!!」

 俺は扇の顔面を殴り、そのまま殴り飛ばす。落ちた銃を拾い上げそのままくしゃくしゃに丸めて放り投げる。

 

「過ぎた事は…汗とともに水に流す。それが…マッスルガイだ。」

 

 遥か後方にすっ飛んだ扇の元まで歩き、手を差し伸べる。

「…あ、ありがとう、ゼロ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 因みに、扇はこの一件が原因で全身の骨を粉砕骨折し、留守番となった。脆弱者め!!!

 




シェスタール君は修行の成果でそれなりに強くなってます。このように、ルルーシュ側が強くなっている関係でジルクスタン側にオリジナルキャラを投入等して強化しています。悪しからず

ルルーシュのスゴ味のところは「ワザップジョルノ」で検索してください。

●オマケ● オリジナルキャラ紹介
『エクスカリバー』
・ある日ジルクスタンにやってきた謎の人物。
・屈強でナイトメア操縦技術も高いが記憶の大半を失っているらしい。
・現在は顔の上半分を仮面で隠しているが、シェスタール曰くなんでも見通したかのような眼を特徴としている

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