ミートギアス 〜筋肉のルルーシュ〜   作:ベルゼバビデブ

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 ジルクスタンの神官長のシャムナは今から弟と共に風呂に入ろうと服を脱ごうとしていた、その瞬間、シャムナの脳内に6時間分の記憶が流れ込んでくる。
「こ、これは…!」
「どうなさいました?シャムナ様」
「…今すぐに将軍に連絡を取り付けなさい」
「ナムジャララタック」
 ジルクスタンが強国である理由はシャムナにあった。彼女には無限新生という『死ぬと自分の記憶が6時間前の自分に送られるギアス』があった。この力の恐るべきところは自分が死ぬと過去の自分に記憶が送られるという性質故にC.C.などのコードユーザーにすら実質的にギアスが通用するという点である。シャムナはこの力を使い、ジルクスタンを侵攻しに来たブリタニアを退け、難民キャンプではスザクを追い込んだのだ。
 そしてシャムナの記憶に送られて来たのは少数による奇襲と速攻、気がついた時にはに攻め込まれ、あっという間に制圧された…というもの。目の前にナイトメアを含めて約20人の男女が現れたのだから驚くのも無理はない。そして恐ろしいことに…何度も何度もやり直し、いくら対策をすれどもすれども記憶が送られてくるのだ。お陰で風呂には入りそびれた。

「つ、強すぎる…!迷いのない神殿への速攻、ナナリーの場所を移せば途端に襲撃と強奪、こちらの対策を尽く無効化してくる…一体なんなのだ…!」
 相手がどこからどんな手で攻めてくるのか分かっていても対処しきれないというふざけた事態にシャムナは頭がおかしくなりそうになる。更に追い討ちとして外交ルートはどう頑張ってもシュナイゼル率いる黒の騎士団による上陸作戦を止められず、目の前の敵に粘ったとしても上陸作戦の時間になれば質量で押しつぶされることが確定してしまった。結果的にシャムナに取れる選択肢は『Cの世界にアクセスするシステムを完成させ、時の戻りを自由にし、全てをやり直す』ことしか無くなってしまった。その為の時間稼ぎだ。…その時間稼ぎが全く出来ないのだから辛いところである。システムの完成と軍への指示…両方やらなくっちゃぁいけないってのが神官長の辛いところだな。
 そもそもの話として6時間巻き戻せたとしてもやれる事は限られている。取らねばならない対策は多く、備えるにしても限度があった。それほどにゼロと愉快な仲間達というドリームチームは強靭無敵で最強だった。それが搦手を放棄して全速前進し、こちらの対策を全て跳ね除けるのだから始末が悪い。

「まだよ…!システムが完成さえすれば…!私の『無限新生』は無敵な能力…運命はこの私を『頂点』に選んでくれたッ!このシャムナとジルクスタンはいつだって危機を乗り越えてきた『強国』なのよッ!」

 それではシャムナの悪足掻きと本編スタートです!
(今回セリフ少なめです。ごめんなさい)


TRAINING05 シャムナの野望

「それではこれよりナナリー奪還作戦の概要を説明する!」

 こちらの駒はコーネリア、ギルフォード、ユフィ、ジェレミア、アーニャ、卜部、モニカ、星刻、咲世子、ロイド、セシル、C.C.、スザク、カレン、ロロ、そして俺自身。

 更にナイトメアとして、コーネリアとギルフォードにクインローゼス、ユフィのフレームコート・ピンクタスク、ジェレミアのサザーランドローヤル、アーニャのモルドレッドビルドアップ、星刻の神虎、スザクのフレームコート・ホワイトファング、カレンのフレームコート・火焔光背、そして俺の真母衣波 零式。C.C.とロロには月虹影を任せてある。これだけの戦力があるならば小細工は不要。つまり…

 

 

「全軍全速前進だ!!」

 

 

 どんな能力かはわからないものの、C.C.から聞いたギアス能力者と思わしき襲撃者。そして実際に存在した大監獄の門、そしてスザクが言っていた『まるで先読みされていたかのような罠と襲撃』これらから考え得るに敵にはギアス能力者がいる。そしてスザクに対して『罠』という手段を取ったことから、手段は兎も角先読みが可能なギアスだと分かる。心を読んで罠に誘導したという線もあるが…その場合、この作戦に対して無意味だ。何故ならこちらの作戦は全軍全速前進だからな。心を読んだとしても意味がない。俺がかつてマオに対して使った殴れるまで殴る作戦と同じだからだ。それに、『ジルクスタンの予言』という噂は調べれば簡単に知ることができた。心を読むことを予言とは言わないだろう…まぁ、全ての情報を網羅して計算するならば話は別だが。

 そして敵のギアスには必ず穴がある。その証拠がシェスタールとかいう親衛隊長の死だ。仮に未来を読むギアスを持っていたとして、我々が今から攻め込むとしよう、ならば何故シェスタールは死んだ?スザク達を相手にそれなりに戦える相手なのであれば貴重な戦力のはずだ。そもそも、我々が脱獄できていなければこんなことにはなっていない、つまり、敵のギアスは完璧な能力ではなく、何かの条件がある。再使用間隔、範囲、対象、時間、使用条件…何かはわからないがな。

 そしてナナリーを誘拐したのは人質にするためではない。確かにナナリーはこの世で最も可愛いし、そばに置いて愛でたくなる魅力を兼ね備えては居る…が、その為に国が滅びて自らが死んでは意味がない。そもそも人質にしてもシュナイゼルには無意味だからな。故に目的はそういう物理的なものではない…相手がギアスを持っているのであれば恐らくCの世界に関係する何か。かつて神根島で見た門の前にあった機械…Cの世界に入る為の機械に必要なのだろう。原理は知らないが。

 C.C.曰く、現在はCの世界は現在自由に入ることができないらしい、そしてそんな怪しいオカルトアイテムを置くならどこか?決まっている…神殿だ。

 傭兵を排出する軍事国家、ナイトメアを見ても合理的で無骨な物だ。そんな科学の発達した現在に神殿などというものが国の首都のど真ん中にデカデカと存在している時点で影響力の大きさなど簡単に分かる。そして先読みのギアスがあるならばジルクスタンなどという小国を、シャルルの代のブリタニアが攻めあぐねていた理由にもなる。門が欲しいだけで他は大した価値もない土地…門そのものも他の土地でも代用可能なのであれば多大な損失を負ってまで奪う必要もない。

 だが、そうなるとギアスを持っているのは国の中心に属する人物…神官長か大将軍のどちらかだろうがそれも関係ない。何故ならこちらの作戦は少数による全速前進、速攻で決め、相手が何かをする前に量を質で押し潰す。例え何かしても質で跳ね除ける。

 かつてスザクが未来を読むギアスを持ったビスマルクを正面からのゴリ押しでねじ伏せたり、心を読むギアスを持ったマオを正面からのゴリ押しで捩じ伏せたのだから今回も相手の反応できない速度で殴れば済む話だ。

 

 司令塔である俺への砲撃を絶対守護領域を展開して防ぎきる。まさかスザクの奴が絶対守護領域を操れるほど鍛えていたのは驚きだが、今はひたすらにありがたい。俺が現れたと同時に一斉に砲撃をして来たところを見るに、やはり何かしらの方法でこちらの作戦は読んでいるようだ。…が、関係ない。こちらは全力で前進するのみ。常に各員の判断に任せ目的地である神殿に全速前進だ。俺、C.C.&ロロ、アーニャによる部隊はこのまま空から神殿に向かって全速前進!どんなに作戦を読んでも物資には限りがある。こちらの最高戦力であるカレン、スザク、ユフィの部隊に敵の戦力の大半が割かれるはず。でなければ3機のうちのいずれかがそのまま神殿に全速前進してナナリーを確保する。更に俺達とは別方向のコーネリア、ギルフォード、星刻、ジェレミアの部隊もスザク達同様に大戦力、これを無視しても全速前進でナナリーの奪還は可能だ。そして相手がギアスを使ってもジェレミアならば無効化できる。残る歩兵隊は街中を全速前進。華奢ながらマッスルウーマンの咲世子と侍である卜部が居れば大半の物理障害は突破可能、ロイドとセシルが居ればあらゆる電子障害も突破できる。…モニカ?

 

 …。

 

 …あらゆる手段による全速前進により敵は同時に全てを対応する必要がある。ジルクスタンの処理能力ではいかなる手を持ってしても全てに対応し切ることは不可能なはずだ。

「アーニャ!敵部隊を薙ぎ払うぞ!」

『了解』

 アーニャのハドロン砲と真母衣波の胴体から放たれるハドロン砲…流石のスザクも反射計算はできなかったらしい…で敵を薙ぎ払い前進する。

『ルルーシュ、敵のギアスについて検討はついているのか?』

「能力は3つに絞り込めている。そのうちのいずれもに対応はできるが…問題は発動条件だ」

『ほう、既にそこまで絞り込んでいるとは流石だな。聞かせてくれるか?』

「1つ目は未来を見るギアス。こちらがどんな風に攻めるかが分かるならば対策は取れる。だがこの場合、最早相手のギアスを気にする必要が無い。何故ならこちらは未来を読まれた上でそれをねじ伏せるのだからな。更にこちらにはC.C.…お前がいる。お前は相手のギアスの効果を受け付けない、最悪俺が囮になりその間にお前が動けばナナリーは奪還できる。」

『なるほど。二つ目は?』

「こいつが一番厄介だ。タイムリープ…つまり過去に戻るギアス」

『過去に戻る?』

「そうだ。自由なタイミングか、何かのきっかけかは兎も角、過去に戻り経験を基に対策を立てる」

 コードユーザーの不死の原理の世界丸ごと版とでも言うべきだろうか。まぁ、ギアスは物理法則には干渉しないことを考慮すると…精神、要は記憶のみをバックアップの世界に送り付ける感じだろう。この場合の厄介な点はC.C.の行動すら見て対策ができることだ。何せ自分だけでギアスが完結しているのだからな。

 だが、仮に過去に戻るギアスでも付け入る隙はある…それは初見殺し。未来を見れるわけでは無いのだから初めて見る行動には対応出来ないはずだ。

『それでは三番目は?』

「無いとは思うがこちらの思考を読み取るマオのようなギアスだ。俺の思考でも読んで軍を動かした…」

 だが、これはあまり考えられない。いくらこちらの作戦を読んだからと言っても短時間でこんなに万全な対策ができるはずがない。更に言うならば未来が読めたからと言ってこれほど的確に兵を配備できるだろうか?まるで…何度も試行錯誤したかのような配置だ。

 故に大本命が過去に戻る、次に未来予知、大穴で思考を読み取るギアス。未来予知も思考の読み取りも全速前進でねじ伏せれば済む話な上、過去に戻ったところで取れる対応には限度がある。これが個人の生存のみに関わるのであればある程度はなんとかなるだろう、如何なる技もいかなる知恵も何度も過去に戻ることで経験を積む事で対処可能だ。しかしどうにもならないこともある。例えば今から1日戻って自由に鍛えられるからと言ってトラックを持ち上げられるはどれくらい居るだろうか?殆どいないだろう、俺やかつてのロロのように下地となる筋肉があるならば話は別だが。

 戻れるのが精神だけ、しかも本人のみなら軍をいかに指揮しようとも技量や技術の差は覆せない。そしてその証拠に俺達はもうすぐ敵陣を突破しようとしている。

「アーニャはこのままここに残り殿として追手を殲滅しろ!C.C.とロロはついて来い!」

『了解』

『分かったよ兄さん』

 そしてまずは俺だけで神殿に乗り込む。どうやらシャムナと思われる女は謎の装置に入っているようだな。今のうちだとナイトメアから飛び降りる。

「何奴!」

「当て身」

 武器を持つ女達の意識を刈り取ったらC.C.への指示だ

「C.C.、相手のギアスについて警戒しておいてくれ」

『分かった。』

 すると謎の装置からシャムナが出てくる。

「お前がシャムナか。既にこの場は俺が制圧した…つまりチェックメイトなんだよ。」

「…確かに制圧されてしまってるわね。この私の細腕ではどう頑張ろうと貴方には勝てない…でも、この『無限新生』の前では何者だろうとその『行動』は無意味となる!誰であろうとこのジルクスタンの永遠の繁栄を脅かす者は許さない…決して!確実に消え去って貰う…『最初の人類』はこのシャムナだッ!!」

 するとシャムナは自らを銃で撃ち抜いた。

「馬鹿な!?」

 そして…シャムナの瞳が怪しく光った。あれは…ギアス…か?

「…!そうか、発動条件は死ぬこと…!だがそれでは…」

「我が『無限新生』の能力の前ではこの世の全ての時間が巻き戻り、そして全ての人類は巻き戻す前の時間の中で動いたことを覚えていないッ!空の雲は千切れ飛ぶ事を忘れ、消えた炎は消えた瞬間を炎自身さえ覚えていない!『記憶』だけだ!この世界のことは私の『記憶』だけに残る!!」

 そしてシャムナは力が抜けたように倒れた。

「…また、会いましょうゼロ…」

 

 ………

 

 ……

 

 …

 

 …そしてその証拠に俺達はもうすぐ敵陣を突破しようとしている。

「アーニャはこのままここに残り殿として追手を殲滅しろ!C.C.とロロはついて来い!」

『了解』

『分かったよ兄さん』

 そしてまずは俺だけで神殿に乗り込む。どうやらシャムナと思われる女は謎の装置に入っているようだな。今のうちだとナイトメアから飛び降りる。

「何奴!」

「当て身」

 武器を持つ女達の意識を刈り取ったらC.C.への指示だ

「C.C.、相手のギアスについて警戒しておいてくれ」

『分かった。』

 すると謎の装置からシャムナが出てくると同時に、杖で床を叩いた。瞬間、背後から音がして振り向くとC.C.が月下に踏み潰されているのが見える。俺は今ナイトメアから降りている。つまり…

 

「私がシャムナよ。この場の制圧はこれで封じさせてもらった…つまりチェックメイトよ」




Q.ダモクレス攻防戦、ルルーシュにとらせた作戦は何だった?
A.ええと…全速前進作戦だね。
Q.嘆きの大監獄突破戦、復活したルルーシュにとらせた作戦は何だった?
A.…全速前進作戦だね。
Q.ルルーシュの知的さと戦略性どこやった?
A.…君のように勘の良い読者は嫌いじゃないよ(でも殴打)

Q.シャムナのセリフになんか既視感があるのですが。
A.キングクリムゾンッ!(読者の頭部を殴打)読者の既視感は消し飛ぶッ!!

●オマケ● オリジナルナイトメア紹介
『真母衣波 零式(脳筋)』
・ほぼ蜃気楼と同じ機体。スザクが使いこなせるくらいに鍛えた為、絶対守護領域を搭載している。
・胸部はただのハドロン砲に変更されている。

『フレームコート・ピンクタスク』
・スザクのフレームコート・ホワイトファングの姉妹機。
・最大の武器は大型のハーケンフィストである「ビッグフィスト」
・ビッグフィストの指はユーウェインの時に使っていたハーケンフィストと同じものであり、単純計算でユーウェイン5機分の殴打を同時に放つことが可能。
・ユフィの類稀な戦闘センスにより、全方位からの同時殴打が可能。
・フレームコートの例に漏れず内部にナイトメアを格納している

『ユーウェインsiN』
・ランスロットsiN同様の理由からsiN(罪)の名を冠する事で作成された機体
・色々と懲りてないユフィの「やっぱりデケェ拳でぶん殴りたい!撲殺です!」という要望で結局ハーケンフィストのみを武装とする機体となった。
・更にユフィから「足なんか飾りです」という意味不明な言動により脚部の代わりにハーケンフィストを装備しており計4つの拳で相手をボコボコにぶん殴ることが可能

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