「ナナリー名誉顧問、そろそろリハビリの時間ですが」
僕がいつものようにナナリーの所を訪れると、そこには僕を睨むナナリーの姿があった。
「…イヤです。」
「我儘言わないでください名誉顧問。リハビリが辛いのは分かりますけど」
「私は車椅子で十分です。リハビリなんて必要ありません」
ぷいと顔を背ける仕草は可愛らしいが、そうは行かない。ここは心を鬼にしてナナリーをリハビリに連れていかなくては。
僕が近づくと観念したように車椅子を動かし、部屋を出て…
瞬間!ナナリーの車椅子が恐るべきスピードで廊下を駆けて行く。
「待て!逃げるなナナリー!!」
流石はルルーシュの妹…あの皇帝陛下の娘であり、『しいのせかい』にて機敏な動きで僕と肉弾戦を繰り広げたマリアンヌさんの娘といったところか、尋常じゃないスピードにあっという間に背中が小さくなっていく。しかし、僕はゼロ!全力を出せば車椅子に追い付くくらい!
僕も加速してナナリーを追うと、やがて廊下の角に近づいた。車椅子では減速せざるを得ない、このまま捕まえて…
「ゼロ、あなたは今から『そんな馬鹿な!?』と言う!」
そうナナリーが叫んだかとおもうと、ナナリーの車椅子は轟音と共にドリフト走行をして直角に曲がっていった。
「そんな馬鹿な!?…なっ!?」
しまった…!目の前に壁が…曲がりきれない!!
そのまま壁を突き破り僕は7階から転落してしまった。
なんだか壁を突き破るような音と何かが落ちて地面が爆散するような音が聞こえた気がするが…何かあったのだろうか?すると、廊下の向こう側からナナリーが凄まじいスピードで車椅子を走らせている様子が見え…と言うか既に目の前に迫っていた。流石は我が妹だ。走る速さはまるで閃光のようだ。
「コーネリアお姉様!退いてください!!」
その時、インカムに枢木からの連絡が入った。
『コーネリア殿下!ナナリーがリハビリを拒んで脱走しました!捕まえて下さい!』
その瞬間私の横を凄まじい速度でナナリーが走り抜け、私はその背中を見送る。
「済まないなゼロ、私にあれは止められんよ」
手を出してみろ、手がもげる。というか、目が見えるようになってからのナナリーは今までのように電動の車椅子に改造を施し手で回す事で加速できるようになっているようだ。…まぁ、それであんな速さが出せるのならもうリハビリなんて良いんじゃないかとさえ思う。というか、あれが完全な脚を取り戻してみろ、誰も止められんだろうに。
『わかりました、コーネリア殿下…それじゃあユフィに頼んでみます!』
枢木とユフィの二人ならあるいは…。まぁ、私も見学くらいはさせて貰おうかな。
「退いてくださーい!危なーい!」
あら?この声はナナリー?声をした方を見ると…あら、すごいスピードでナナリーが迫ってきます。それにしても腹違いとは言え実の姉である私に退けだなんて…ナナリーは少し解らせる必要があるようですね。
敢えて私は廊下の真ん中に仁王立ちし、ナナリーの行方を阻みます。
「ユフィ姉様!?」
「ナナリー、私はユーフェミア リ ブリタニアですよ!この私を相手にそのままのスピードで突っ込むことが出来ますか?」
姉としての威厳を見せるため、決して動かずナナリーを待ちます。すると…
「仕方ありません!」
ナナリーは車椅子を器用に操りまるでバスケやサッカーのドリブルのように私の身体を回転するように躱し抜き去っていきます。
「なっ!?姉に対して無礼でしょう!」
「ごめんなさいお姉様!」
ダメだ、カチンときました。ナナリーにはお仕置きが必要です!油断していたとは言え、抜かれると言うのもなんだか腹が立ってきました。すぐにナナリーの後を追うと、インカムからスザクの声が聞こえてきました。
『ユフィ、聞こえるかい?ゼロだ。ナナリーを捕まえてほしいんだけど…できるかい?』
「私を誰だと思ってるのですか?ユーフェミア リ ブリタニアですよ?」
『ありがとう、ユフィ。でも気をつけて、ナナリーの車椅子ドライブテクニックは異常だよ。ドリフト走行だって身に付けてるみたいだ』
確かにさっきの動きを見ればドリフト走行だってやってのけるだろう。廊下を走りナナリーの追跡を続けていると、ナナリーはもうすぐ角に差し掛かるみたい。どうにか足止めしないと…。
すると、少し先の扉からギルフォードが顔を覗かせています。
「先程廊下を走り抜けて行ったのは…ナナリー名誉顧問か?…流石は姫様の妹様だ…もう、なんでもありなんだな…」
これは使えそうです!
「ギルフォード!ちょっと出てきなさいな」
「?なんです?ユーフェミア様」
扉から出てきたギルフォードを掴み、角に向かって投擲します!
「お行きなさいギルフォード!ナナリーを捕まえるのです!」
「そんな無茶を…のわぁ!?」
ギルフォードは壁に激突し、上手いことナナリーの進路を妨害…
「お次にユフィ姉様は…『ありえません!』と言います!」
ナナリーはそう宣言するとドリフト走行しつつ、更に急ブレーキ、つんのめって前に倒れるところを体重移動と腕の筋肉で車椅子を前宙返り…そんな…!
「ありえません…!なっ!?」
そして私はナナリーの超絶技巧に気を取られ、壁をブチ抜き、6階から転落してしまいました。
「いたた…膝を擦りむいてしまいました…」
「姫、ご無事で何よりです。」
背後から聞こえたのはギルフォードの声、振り返ると…
「あら」
「出来れば引っこ抜いて頂けますでしょうか」
ギルフォードは首から下が埋まっていました。…何故?
ジルクスタンの一件以降、世界は再び小さな混乱が起きつつある。悲しいものだね、何故人はこうも愚かなのか…。いや、いけないな、こう言う考え方は。するとインカムにゼロからの連絡が入ったようだ…なんだろうね?
「やぁゼロ。私に何か用かい?」
『実は名誉顧問が現在建物内を逃走中でして、車椅子の超絶技巧に私もユフィも手をこまねいている状況です。なんとかしてリハビリを受けさせたいのですが』
…ゼロとユフィを振り切れるのならもうナナリーにリハビリは必要ないんじゃ無いかな。それにナナリーが車椅子に乗っているのは交渉において必ずしも不利では…あぁ、いや、こう言う考え方も改めなくてはね。
「分かったよゼロ。ナナリーの件は私が引き受けよう」
『お願いします』
ふむ、まずは…
「やぁ、私だよ。今すぐ来てくれるかい?あぁ、よろしく頼むよ。」
さて、仕込みは済んだ。あとは私自ら出向くとしよう。
現在3階を逃走中…後方にはユフィ姉様もスザクも居ませんね。この建物はバリアフリー構造、故にこのまま順調に進めば…
「!」
角を曲がる前、何かとても嫌な予感がして車椅子を止めると拍手が送られて来ました。
「…おやおやおや、ナナリーは鋭いね。」
角から姿を見せたのはシュナイゼル義兄様…!すると、私のすぐ後ろの防火シャッターが勝手に降りてしまいました。
「ナナリー、君は次に『いったい何故…!』と言うね?」
「いったい何故…!…あっ!?」
「ナナリー、ここを通りたいのなら…私を越えていくと良い。」
あの構えは…以前スザクから聞いたシュナイゼル義兄様の『天地知闘の構え』…!
「その様子だとこの構えが何か知っているようだね。的確に相手の弱点を切り裂く私の手刀が天から降り注ぎ、如何なる攻撃をも受け流す技を地から放ち、そしてそれを可能にする私の知略による先読み。これを同時に行うのがこの天地知闘の構えだよ。後の防火シャッターを突き破るにはその位置からでは加速が足りない。ならばナナリー、君は私に向かってくるしか無いよね。」
微笑みながら構えを取っているが、まさにその通り、確実に言えることはお兄様でさえ破れなかったあの構えを私が破るなど不可能…。
「くっ…」
「どうしたんだいナナリー?向かってこないのかい?このままここで睨めっこをしても構わないけど、もうすぐこの場にゼロもユフィも到着してしまうよ?」
私はナナリー ヴィ ブリタニア…こんなところで諦めるわけには行かないのです…!
私はその場で車椅子を高速回転させました。これこそが私の打開策!
「…!?ナナリー、まさか君は…!」
このまま高速回転させた状態で後ろのシャッターに突撃!シャッターを見事突き破ることが出来ました。
…が、シャッターを突き抜けた瞬間、私の車椅子が斬り裂かれてしまいました。そしてその方に抱きつかれて捕まってしまいます。
「モニ〜!ナナリー様捕まえたモニ」モニモニ
結果として、ナナリーのリハビリは中止になった。ナナリーは目を離すとその隙を見逃さず、逆立ちで逃走を企てるからである。どこぞのサーカス芸顔負けの技術を見てもうみんなが「リハビリ要らねえやもうこれ」となったのが理由だ。
…なんで逆立ち走りで僕らと大差ない速度で走れるんだろ…ナナリー。
「野良犬ジョーさん」からのリクエスト、「ナナリーのリハビリ」です。
何?リハビリしてないだって?(殴打)