「…筋肉を…彼の筋肉を認めて…私は…」
帝都ペンドラゴン跡地を一人、全裸で歩く男がいた。そう、ナニを隠そう…じゃなくて何を隠そう、彼こそが神聖ブリタニア帝国第一皇子のオデュッセウスだ。
突如帝都ペンドラゴンを襲った破壊の光、ありとあらゆるものが…空気すらをも掻き消したそれは正に絶対的兵器、放たれれば万物を飲み込み、飲み込まれれば粉微塵になって無くなる。それがフレイヤである。
しかし、あのシャルルですら耐えられないお転婆なナナリーの金的を受けても長男だからと耐えられた男がいた事を覚えているだろうか?
そう、神聖ブリタニア帝国第一皇子オデュッセウス…ルルーシュ曰く凡庸な男は見事フレイヤにも耐え切ったのだ。
全裸のまま認めし筋肉を持つルルーシュを探して彷徨い歩くオデュッセウスは、帝都を目指してバイクを走らせていた男達に絡まれてしまった。
「おい見ろよ!このオッサン全裸で歩いてるぜ!」「なんかどっかで見たことあるような…」「腹に板チョコでも付けてんのかい?」
フレイヤによって身につけていた衣服を全て粉微塵になって消されたオデュッセウスは現在全裸であるが、どうやらバイクに乗っていた彼等はそれを面白がったようだ。そして暴れ者である彼等は周りに誰もいないのをいいことに乱暴を働いたのである。殴る、蹴るでは飽き足らず、ついには道具を持ち出し彼に危害を加えんとした。
が、無意味。フレイヤで傷つかない彼が人間の暴力で傷が付くか?答えは勿論ノーだ。シュナイゼルがあらゆる攻撃を予測し的確に弾き、『当たらない』ことで全ての攻撃を無効化するのに対し、オデュッセウスは全てを受けるものの『ダメージが無い』ことで全ての攻撃を無効化するのだ。回避特化と防御特化みたいなものの違いだと考えてほしい。
そんな訳で三人がかりの暴力にも屈さないオデュッセウスは現在ルルーシュの『我が筋肉を認めよ』というギアスにかかり、彼によって『ブリタニアの兵士となって我が敵と戦え』と命令を受けていた。全ての攻撃を受け切ったオデュッセウスはギアスにかかった頭でこの乱暴者達を敵と判断し、普段は温厚で人を殴ったことなどないのだが兵士として戦うことに決めた。
「私は…神聖ブリタニア帝国元第一皇子…オデュッセウス ウ ブリタニア…今から君達を我が主君ルルーシュに逆らう敵として始末させて貰うよ。」
そして彼は拳を振りかぶって一人の男の腹を渾身の力でブチ抜いた。速度こそそこそこだが、何せオデュッセウスは頑丈なのだ。拳は驚くほどに固く、今まで一方的に痛め付け(られると思っ)ていた相手からの反撃にガードできなかった乱暴者には十分な威力だったのだ。
こうして乱暴者を逆にボコボコにしたオデュッセウスはギアスに操られた頭ながら流石に何か着た方が良いと考え始めた。そして目の前に転がる男から革ジャンを剥ぎ取り、裸革ジャンという危ないファッションに身を包んだ。ついでにサングラスも拝借し、移動のための足となるバイクも奪ってその場を後にした。
そしてオデュッセウスはルルーシュの敵…つまり、ルルーシュを殺害したゼロと超合衆国を敵視していた。そしてあろうことかテロリストになっていたのだが、指揮攻略に乏しい彼ではうまいことはいかず、あっという間に囚われてしまった。そしてオデュッセウスがテロリストだと聞いたシュナイゼルはコーヒーを吹き出しつつ、コーネリアに事情聴取を命じた。どうにも話が噛み合わず、話の噛み合わなさにピンときたコーネリアはジェレミアを呼び寄せたのだ。そしてギアスキャンセラーを受けることで本来の自分を取り戻したのである。因みにシュナイゼルは未だにギアスに掛かったままである。
そんなオデュッセウスは本日ジルクスタンにてナナリー監督率いるブリタニア選抜…という名の皇族チームとジルクスタンの親善試合を見学していたのだ。試合が終わると彼は弟妹達に労いの言葉をかけようと近づいて行った。
「やぁシュナイゼル、見事なディフェンスだったね。」
「ありがとうございます兄上。」
オデュッセウスはシュナイゼルにタオルを手渡したが、とうのシュナイゼルは汗をかいていなかった。悲しいことである。
「コーネリアも、見事なパスだったよ」
「ありがとうございます、兄上」
オデュッセウスはコーネリアには飲み物を手渡していたが、途中交代した際に水分補給していたのでコーネリアには不要であった。
「ユフィも…ユフィ?どこに行くんだいユフィ!ユフィー!?」
ユフィは…持ち前の跳躍力で何処かへと飛んでいってしまった。
「あら、オデュッセウス義兄様、来てたのですか」
「やぁ、ナナリー。見事な采配だったよ。」
「ありがとうございます」
オデュッセウスは自分の足を見て、ナナリーを見て、再度足を見た。
「何か?」
「ははは、ナナリー、車椅子で私の足を踏んでるんだよ。車椅子の車輪の軸が悪くなるといけないからどかした方が良いんじゃないかな」
「あら、失礼しました」
「ナナリーは相変わらずお転婆だね」
お転婆という発言にナナリーは可愛らしく恥じらった表情を見せると
「それでは失礼します」
と言い、車椅子でオデュッセウスの足を轢きつつ去っていった。
オデュッセウスは現在シュナイゼル達と同じ施設にて働いていた。つまり、一応は黒の騎士団員と言うことになる。元第一皇子とはいえ、今やナナリーでさえ働く時代、オデュッセウスとて例外なく働かなければならないのである。とは言え、彼は凡庸だった。本来の気性を取り戻した彼は争いごとには向かず、器用さもなく、知略に富む訳でもない。
そんな訳で彼は今施設内の清掃員として実に穏やかな表情で廊下を清掃しているのである。すると、オデュッセウスのインカムに連絡が入った。
『オデュッセウス殿下!私です、ゼロです!ナナリー名誉顧問が逃走しました!捕まえて下さい!』
「それは大変だね。」
ゼロからの連絡を受けて直ぐにオデュッセウスはその視界に車椅子で爆走するナナリーとその背後をダッシュで追うゼロを捉えた。
「予防接種は嫌です!!注射怖い!!」
「子供みたいなこと言わないでください名誉顧問!!」
「私はまだ子供です!!」
オデュッセウスはそんな仲睦まじいゼロとナナリーを見ながら微笑み、廊下の真ん中で仁王立ちした。
「オデュッセウス義兄様!?しまった…!」
結果として、オデュッセウスに激突した車椅子は爆散し粉微塵になって消えた。ナナリーは微笑みの表情のまま、車椅子爆散の影響でほぼ全裸になってしまったオデュッセウスに抱っこされる形になったのである。
因みにナニも…ではなく、何も知らない紅髪の職員がその様子を見て変質者がナナリーを誘拐しようとしていると勘違いして殴りかかったりしたのだが、まぁ、それは瑣末な出来事だろう。
「漣十七夜さん」からのリクエスト「弟妹達を微笑んで見守るオデュッセウス」のお話
Q.なんでフレイヤに耐えられたんですか?
A.長男だからさ
ここで光和こそこそ噂話!
腹筋のルルーシュシナリオでは、ルルーシュはギアスを使ってないんですよ。