ミートギアス 〜筋肉のルルーシュ〜   作:ベルゼバビデブ

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EXTRAINING04 孤高のグルメ

 元ナイトオブラウンズのドロテア エルンスト、彼女は新生ナイトオブラウンズとして現れたロロにより敗北したが、しれっと生き残ってその後は各地を放浪としつつ、偶然街で『物直しの天才』と称して修理屋として働いていたルキアーノと再会し、同じ街で暫くゆったりと生活を送っていた。ジルクスタンの一件の後、モニカの結婚式の際に何故か呼ばれた為、日本へと向かい、その後は趣味の読書で培った筋肉を見る目と、各地を放浪とした経験から個人で筋肉雑貨の貿易商を営むことになった。因みに最早結婚については諦めたらしくノネットに「結婚は守るものが多くなって人生が重くなるからしない」と言い訳じみた謎の決意表明をしている。

 

「それではシャーリー殿、取引ありがとうございました。」

「いえいえ、ドロテアさんが持ってきてくれる雑貨はどれも素敵でいつも助かってます!」

 ドロテアは一仕事終え、帰路に着いた。しかし、そんな彼女にある問題が降り注ぐ。

「…腹が空いたな。」

 時間や社会に囚われず、幸福に空腹を満たす時、つかの間、彼女は自分勝手になり自由になる。誰にも邪魔されず、気を使わずものを食べるという孤高の行為。この行為こそが現代人に平等に与えられた、最高の癒しと言えるのだろう。そんな訳で彼女は次の仕事の予定まで時間があることを確認し、店を探して街中を歩き始めていた。

「…よし、今日はここにしよう」

 彼女は選んだ店に入るとカウンター席に座り、メニューを眺めたり、店の中の壁にかけられたメニューに目を通した。耳では店内の音を聞き、その雰囲気を楽しむのが彼女の流儀である。

「よぉ、しんくーに南ぃ!また来てくれてありがとなぁ!今日は何にする?いい魚が入っててよぉ!キンメダイの煮付けとかどうだ!?」「いや、今日は軽めのメニューを頼む」「そういう訳だ、悪いな」「しゃーねーなぁ…」

(キンメダイの煮付け…確かワショクと呼ばれる日本の料理か、我々がかつて占領した国の料理…味わい私が再度占領するのも一興か)

 彼女は空腹になるとたまに意味のわからないことを口走るのだ。そんな訳でキンメダイの煮付けは確定、他に何を食べようかと迷っていると、おすすめランチの文字が目に止まった。

(こういう店は気を衒わずに店主のおすすめが一番美味いものだ。よし、決まった)

 常連であろう客から店員が離れたのを見計い、店員を呼びつけるとキンメダイの煮付けとおすすめランチを注文した。自分の注文したものを待っている間も店の音と匂いを楽しむことを忘れない。

「あいよしんくー!お待ちどう!肉ニラ玉と青椒肉絲だ!」「お、来た来た。冷めないうちに頂こう。」「そうだな」「「頂きます」」

(…ほう、この店では中華連邦の料理も食べられるのか。それに手を合わせてのアレも確か日本の文化だったか)

 ドロテアは聞き耳の結果、余裕があるなら青椒肉絲も食べようと決意した。彼女は食べる時は食べるのだ。…そしてたまに後で後悔する。

「あいよぉ!ねぇちゃんお待ちどう!キンメダイの煮付けとおすすめランチだ!…見た感じアンタブリタニア人だろ?箸…あーチョップスティックは使えるか?」

(ね、ねぇちゃん…?)

 呼びなれない呼ばれ方に少しだけ困惑したが、料理の匂いを嗅げば多少馴れ馴れしい店主の態度も気にならなくなる。そして当然ドロテアは箸は使え無い為、首を横に振る。

「そういうお客にはナイフとフォークだ。まぁ、ナイフで切るほど硬くはねぇけどな!」

「気遣い感謝する。」

 ドロテアは店主の馴れ馴れしさもこの店の味わいの一つなのだろうと考え、常連らしき男二人に習い、ぎこちなく手を合わせる

「頂きます」

 ドロテアは右手にナイフ、左手にフォークを構え、早速キンメダイに突撃した。

(おお、柔らかい…)

 店主の言っていた通り、ナイフなど不要な程に柔らかくなったキンメダイに、ドロテアは驚きつつもまずは身を食べ易いように削いでから口に含んだ。

(うむ、旨い。歯応えのあるステーキ肉も嫌いでは無いが、口の中で解けるような柔らかさと、甘辛いタレとの絶妙なバランスが堪らん…)

 ドロテアは器用にナイフとフォークでライス…要は白米を口に運び、またキンメダイの煮付けを頬張った。

(甘辛い味付けのキンメダイが甘い米を進ませる…!)

 本来はおすすめランチの米を半分ほど平らげてからドロテアはようやくおすすめランチのメニューについて確認を始めた。

(これは…キムチ、だったか?あとは味噌スープにキャベツの千切り、それにこれは…揚げ物か…平べったく、尻尾が出ている…魚、だろうな)

 おすすめランチのメインはアジフライであった。これにはドロテアも思わず苦笑いをしてしまう。

(キンメダイの煮付けとアジフライ…いかんな、魚と魚が被ってしまった。)

 しかしドロテアは気を取り直し、今度はアジフライに齧り付いた。揚げたての衣がサクサクと音を鳴らし、アジ自体の味付けもあったため、何も掛けずともドロテアは一つ目のアジフライを平らげてしまう。

(ううむ、ナイフとフォークが止まらん…)

 そのままドロテアのナイフとフォークは減速することなくライスを平らげ、キンメダイの煮付けを平らげ、アジフライを平げた。

 

 しかし、ドロテアは止まらない。

 

「済まない、追加の注文いいだろうか」

「おお?ねえちゃんよく食うなぁ、何にすんだい?」

「青椒肉絲とライスの中をくれ」

「あいよっ!」

 ドロテアの追加注文に顎髭にバンダナの店長はニカッと笑い厨房へと戻っていった。しばらくして運ばれた青椒肉絲とライスもあっという間に平らげるとようやくドロテアは満足げに目を閉じた。

(…美味かった)

 すると、常連らしき客は会計を済ませたらしく、ドロテアは入り口の開く音を聞いた。

「美味かったぞ玉城、ご馳走様」「また利用させてもらう。馳走になった。」「おうよ!また来てくれよなー」

(ご馳走様…か、うむ、食事の前と後にも挨拶か、悪く無い文化だ。)

 ドロテアは手を合わせて

「ご馳走様」

 と言うと、会計を済ませにレジへと向かった。支払いを済ませると店主はドロテアに向かった

「ねえちゃん、ありがとな!また来てくれ」

 と笑いかけた。ドロテアも少しだけ口角を上げると

「日本に来た際にはまた寄ろう」

 と答え店を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今回ドロテアが向かったのは筋肉雑貨の仕入れ先の店。

「頼んでいた品は出来ているだろうか」

「あ、ドロテアさん、いらっしゃいませ。はい、出来てますよ」

 取引先のもやし男に店の奥へ案内され、ドロテアは約束の品を確認した。

「素晴らしい。ここまで見事に筋肉を表現したフィギュアを作れるのはロロ殿しか居ないな」

 木彫りのマッスルガイを手に取り、ドロテアは満足気に頷いた。

 




Q.そういえばドロテア、ルキアーノの居場所はどうやってモニカにバレたの?
A.腹筋のルルーシュシナリオの後、トラックを買い戻す際にルルーシュに発見されたため、スザクに居場所が伝わり、招待客に元ラウンズを呼びたいというモニカの願いに卜部がスザクに相談したため、間接的に伝わった。

Q.筋肉要素薄く無い?
A.(殴打)

因みに、クソどうだも良い話ですが、作者は煮魚が嫌いです。

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