ミートギアス 〜筋肉のルルーシュ〜   作:ベルゼバビデブ

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 黒の騎士団と学生生活、いくら病弱で通し、成績上も文句を言わせない様に振る舞っているカレンでも、出席日数が足りない事態は避ける必要がある。結果として二重生活による疲れを溜め込むカレンは寝着に着替える余裕もなく、はしたない格好で泥の様に眠っていた。ガシャンと不愉快な物音で叩き起こされたカレンは簡単に一枚だけ纏うと廊下の様子を確認する。いつも失敗ばかりのメイドが今日も何かやらかしたらしい。
「また?」
「めんご!今日は脚立が壊れちゃったテヘペロ!」
 相変わらず立場も理解せずに馴れ馴れしい態度を続けるメイドにカレンは苛立つ。ご丁寧にウインクして舌まで出し、コツンと拳を頭にちょこんと乗っけるポージングにお前今何歳だと言いたくなるのをぐっと堪えるのは忍耐力の賜物だろう。
「早く片付けて。もうすぐもうすぐ学校に行く時間なんだから」
「りょ!最近よく学校行くけど、もしかして友達とか…」
「あなたには関係ないでしょ!」
 カレンは怒鳴り部屋に戻る。ドアを背にし、心の底から不満をぶちまける。
「消えてよ…もう!」


STAGE09 プ ロ テ イ ン(リフレイン)

「黒の騎士団!」

 俺がいつも通り身体の半分を休めつつ筋トレに勤しみながら授業を聞き流していると、突然カレンが立ち上がりそう叫んだ。どうやら寝不足の様だな、最近学校に来ては生徒会の仕事をこなしたり、夜は黒の騎士団として働いているからだろう。オーバーワークは故障の原因だ。少し休暇を出すほうが良いかもしれない。

「HAHAHAHAHA!!」

 クラスのみんなに笑われてカレンは恥ずかしそうだ。ああいうところは乙女なんだな、あいつ。

 

「珍しいね、カレンが居眠りなんて」

「う、うん…ちょっとね」

「ルルーシュに弟子入りしたら?あいつ授業中も半身だけ寝てるらしいしさ」

 同じ生徒会ということもあり、カレンに話しかけているのはシャーリーとリヴァルの様だ。授業中は左半身を休ませていた為現在は右半身を休ませている為目では確認できないが。

「そんな離れ業他の人間に真似できるの…?」

 

 とある朝、生徒会へ向かうとスザクに拘束され、シャーリーとミレイ会長から抵抗するとナナリーにイタズラすると脅された俺は仕方が無く椅子に座らされ、大量の鎖と南京錠によって雁字搦め拘束された。別にその気になれば鎖くらい引きちぎれるが大人しくしていよう。よく見ればみんな猫にちなんだコスプレをしている様だ。スザクは着ぐるみの様な格好、ミレイ会長に至っては随分破廉恥な格好だ。仮に会長達のイタズラがナナリーにああいった破廉恥な服を着せることだったなら……………

 

 俺は自分を抑えられるかわからない。

 

 むしろ暴れて悪戯を容認するか?いやダメだ。落ち着け俺…!

「ほら、スザクそっちそっち!」

 手に筆を持ったスザクが俺の顔にペイントしてくる。

「ごめん、ルルーシュ…これは、これは…!会長命令なんだ…!」

 苦虫を噛み潰した様な顔で涙を滲ませながら俺の顔にペイントしてくるスザクに俺は何も言えなかった。そんなに嫌なら断れば良いだろう。せめて楽しめ。

「なに…やってるんですか?」

 昨日は活動の休みを伝えたはずだが、それでも寝不足なのだろう。欠伸を噛み締めた後の様な独特な顔の筋肉の緊張を残したままのカレンが生徒会室に入ってくる。

「おはようにゃーん。」

「なん…ですか?これは…」

「あれ?言ってなかったっけ?アーサーの歓迎会」

 生徒会では新メンバー加入時に歓迎会をするのがお決まりである。因みにスザクの歓迎会は俺が会長を手伝って見様見真似の日本食を作った。スザクは久しく食べる日本食に号泣していたが…まぁブリタニア人にも日本文化を尊重する人も残っているということだな。

「カレンの分も用意してるから」

「え?私も?」

 するとまたスザクが泣き出した。俺が知らないだけで日本には猫の仮装をしてパーティをやる習慣があったのかもしれない。それを思い出したのだろうか

「良かった…またこうやってみんなと集まれて…本当に…」

「…そうだな。」

 

 黒の騎士団は俺が宣言した通り正義の味方であることに専念した。民間人を巻き込むテロ、横暴な軍隊、効果がないインチキ健康食品・グッズ、汚職政治家にブラック企業、結果にコミットしないジム、科学的根拠のない筋トレ法を周知する詐欺師、法律では裁けない悪を次々と断罪していった。俺たちはあっという間に英雄になったのだ。ふと公園を見れば俺の真似をして弱々しい体で健気にダブルパイセップスを決める少年や工事現場では屈強な男達が誰の体が一番ゼロに近いかと競う姿が確認できた。

 たまにコーネリアの罠が紛れていたが拳で粉砕し、俺たちは再びナイトメアを手に入れた。もちろんこれらは表立っての話ではない。

「やめなさい!ゼロの真似なんて!」

「なんでだよぅ」

「あんなムキムキになるほど鍛えたら着る服とか困るわよ!」

 それは否定しない。実際俺の服はほとんどが特注だ。

 

 ある日の朝、珍しく会長が学園からどこかに向かうところに遭遇した。

「珍しいですね、会長が1人で学園を出るなんて」

「そうかしら?」

 会長は肩をすくめておどけている。もしや俺の正体…ゼロだと言うことバレてどこかに報告しに行くんじゃないだろうな?

「どこ行くんです?日中とはいえ最近はテロとか物騒ですし、送って行きますよ」

「あー…カレンのところに行くの」

 カレン?何の用事があるのだろう。

「複雑な家庭の事情って奴でね、ルルーシュなら気分…分かるでしょ?」

 確かに俺も普通の人間から家庭の事情に踏み込まれるのはまずい。とは言え、まさかカレンの奴テロ活動がバレたんじゃ…?カマを掛けるか

「そうか、カレンの奴バレたのか。ハーフだって事」

「なんでそれ…って、まぁルルーシュならわかっちゃうか」

「仲良くなれば悩みの一つや二つ聞きますよ。その時色々察しちゃって」

 全部嘘だがそれらしいことを並べておけば会長は納得するだろう。

「ふーん?ルルーシュとカレンがね…。でも私ルルーシュから悩みの相談なんてされたことないけど?」

「じゃあ今度相談しますよ。もっと効率の良いトレーニングの方法とか」

「うん、聞かなかったことにするわ」

 なんとか上手い流れでカレンの家への同行許可を勝ち取った俺は会長と共にカレンの家へとたどり着いた。道中柄の悪い連中に絡まれたが軽く撫でてやると尻尾を巻いて逃げ出していった。後何故か会長はどさくさに紛れて俺の腕に絡みついている。歩き難いな。

 

 カレンの家のベルを鳴らすと赤髪のメイドが扉を開けてくれた。

「アッシュフォード学園から来ました。ミレイ アッシュフォードです」

「付き添いのルルーシュ ランペルージです。カレンさんに用がありまして参りました。お取次をお願いします」

「かしこま!ちょっち待ってて!カレンお嬢様!カレンお嬢様ー!お友達ですよー!」

 しかし現れたのはカレンではなく金髪の女性。この人がシュタットフェルト夫人だろう。それにしてもこのメイド、どことなくカレンに…なるほどな。カレンはハーフ、このメイドは日本人…なるほど、中々複雑な家庭をしているようだ。

「あら、お友達と聞いて見てみれば…あらやだ逞しい…好み……」

「逞しいなんてもんじゃないわよ。筋肉でできた化け物よアレは…」

 遅れてやってきたカレンはシュタットフェルト夫人に何か俺の悪口っぽいことを話してから降りてくる。どう考えても病弱で通しているとは思えないスピードでだ。

「どちらにお通ししましょうか?客間ですか?それとも…」

「私の部屋に」

 カレンはピシャリと冷たく言い切った。母娘はあまり仲は良くない様だ。

「かしこまっ!」

「お願いだからそのノリやめて!!」

 

 流石に俺が女子の部屋に入るのは不味い。案内された客間ではシュタットフェルト夫人がやたらとねちっこい目で見てくる。思わず適当な理由で逃げる様に客間を脱出した俺はメイド…つまりカレンの母親と遭遇した。

「あら?ランペルージくん、どったん?道迷った?分かるー!私もたまに迷うもん」

「ええ、少し迷いまして。…失礼ですがあなたがカレンの本当のお母さん…なんですよね?」

「あー…」

 その反応を見てすぐに確信に変わった。カレンの母は自室に案内してくれ、そこで話を聞くことになった。

「すみません、お客さまを通すには汚い部屋で」

「いえ、構いませんよ。」

「…おっしゃる通り私がカレンの本当の母です。シュタットフェルト夫人はカレンにとっての継母という奴です。でも、それはできれば秘密にしていただけませんか?」

 俺とカレンの母はお互いベッドの上に腰掛け話をしていた。

「もちろんです。私も複雑な家庭の事情を持つ身。人の秘密を漏らす様な趣味はありません」

「ありがとうございます。」

 俺は部屋を見渡す。落書きがひどいな。どう見ても良い待遇を受けているとは言い難い。カレンとの仲も良好とは言えず、シュタットフェルト夫人とも…仲が良いとは思えない。

「ひとつお聞きしても?なぜこんな冷遇…しかもカレンとの関係も劣悪なのにこの屋敷に残られているんです?女性1人とは言え暮らしていく方法はいくらでも…」

「決めたんです。私は。」

 カレンの母親は力強く俺を見つめてくる。

「私は、カレンと…私の娘の側にずっといて守るんだって。私は娘が何事もなく育ってくれればそれだけでいいんです。他の些細なことなんて全部我慢できます。」

「…そうですか」

 強い女性だと思った。同時に危ういなとも。その時その時は耐えられても…積み重なれば壊れててしまう。

 

 

 筋肉と同じだ。

 

 

 

 最近、違法な薬物が蔓延しているらしい。扇さんからの電話でその存在を知った。

「違法プロテイン?」

『一時的に尋常じゃない筋肉がつくけれど、効果が切れると立てないくらい筋肉がなくなるってのが特徴かな。』

 なんだその薬物…作ったやつは馬鹿なんだろうか

「売れるんですか?そんなもの…」

『黒の騎士団に憧れて体を鍛え始めた日本人を狙い撃ちにした薬物だ。誰だって羨ましいよ、ゼロの筋肉が。ゼロも大層ご立腹だよ。物資が届き次第直ぐに叩く。カレンも準備しておいてくれ』

「分かりました。」

 私が電話を終えると近くで揉め事がある様だった。どうやらカルフォルニアドッグの屋台をやっている男の人がガラの悪い連中からリンチに合っている様だ。許せない…!私が向かおうとすると肩を掴まれる。びくともしない。ルルーシュだな?振り向くとそこにはやはり筋肉…つまりはルルーシュ

「相手はたったの5人程度だ。俺が軽く撫でてくるよ」

「あ、うん。手加減してあげて」

 ルルーシュはスタスタとリンチをしているガラの悪い男たちに近寄り、逆リンチを開始していた。なぜ5人相手に一人でリンチできるか不明だが、もう見慣れた光景だ。

「助けてくれー!」「筋肉に殺される!」「うわああああ!」

「ふん、情けない奴らだな」

 

 その後、営業の邪魔をしたとルルーシュはカルフォルニアドッグの屋台のホットドッグとアイスクリームを買い占め、ルルーシュと私はベンチに腰掛けていた。因みに私は私は一つ奢って貰っている。アイスクリームは周りの子供達に差し入れたりしていた。当然だ、あんなに食べたらお腹を壊してしまう。

「そんなに食べて平気なの?」

「今日はチートデイなんだ。それにあのイレブンはもうここでは商売できないだろうからな、最後の売り上げ貢献だ。我ながら短絡的なことをしてしまった。」

「ルルーシュって頭良いのに脳筋よね」

「そんなに褒めるなよ」

「褒めてないわ」

 ビンタでも食らわせてやろうかと思ったが、どうせ止められるだろうし、下手したら当たってもダメージはゼロだ。

「ま、多少はマシな男だとは思うけど…」

 

 ゼロの指示で私は無頼に乗り、違法プロテインの売買現場を襲撃した。逃げていく男達を追ってシャッターを突き破るとそこには違法なプロテインを使用して手に入れた異常な筋肉に喜ぶ者、萎んだ後なのだろう、立つこともままならず他を這う者。

『これであの人みたいにブリタニアの奴らを返り討ちにできるぞ!』

 この後から体が萎むことを知らずに復讐心を燃やすカルフォルニアドッグ屋の人…そして。

 

『これでカレンを…』

 

 ゴリマッチョになってしまった母の姿を見た。私を…どうするのだろう。実の母に冷たく当たった私を殴るのだろうか?だったら直接言えば良いのに。

「…男に縋って、ブリタニアに縋って、今度は薬…?あなたって人はどこまで弱いの!」

 その油断が仇となったのだろう、現れたナイトポリスに気が付かず先制攻撃を受けてしまった。

『あれ警察のだろ!?』

『グルってことか』

『腐ってやがる!!』

 

 私は咄嗟にゴリゴリの母を掴みその場を離れる…が、ナイトポリスの追跡を遮蔽物のない倉庫内で張り切ることなど出来るはずがない。あっという間に追い詰められてしまう。母を掴むのをやめ、早くどこかに行ってくれることを願った。

「逃げろ!この馬鹿!」

 しかし母はナイトポリスと私の間に立ち、構えを見せていた。生身でナイトメアに勝てるはずが無い。

『そこの女!力を貸してもらうぞ!』

 

 

 

「あなたは…?」

 突然現れたどこか見覚えのある…私の憧れた人に似た筋肉を纏った男の人が私の隣に立った。

「お久しぶりですね、カレンのお母上。」

「!」

 その言葉で察する。この人は…。そして私は私を守り倒れたナイトメアをチラリと見た。赤いカラーリング…もしや!?

「あなたには成し遂げたいことがあるはずだ。力を貸していただきたい。」

 彼は私にそう言うと走り出す。私も慣れない筋肉に戸惑いながら彼の後を追う。

「横に跳べ!」

 彼の指示通り溢れる筋肉で横っ飛びをし、ナイトメアの銃撃を躱す。

「頭だ!頭を狙え!同時に行くぞ!タイミングはこちらが合わせる!」

「はい!」

 彼の言葉を受け、私は駆ける。

「この筋肉はカレンを---------」

 

「「どりゃぁぁぁ!!!!」」

 私と彼の蹴りがナイトメアの頭部に直撃する。

『なんだ!?ファクトスフィアが…!?』

 そしてそこで私の体は動かなくなった。私の身体を彼が抱えてくれた気がするが…私はもう目も開けていられないほどに疲れてしまっていた。

 

 

 

『この筋肉はカレンを"守るために"!!!』

 そんな母の声が聞こえた。ルルーシュと母は丸太のような脚でナイトポリスの頭部側面を両側から蹴り付けていた。

『なんだ!?ファクトスフィアが…!?』

 恐らく視界を奪われたのだろう、ナイトポリスはあたふたとしている。それにしても私を守るために…。そうか、あんな家に居たのは…。そんなことのために薬まで使って…馬鹿じゃ無いのか。いや違う…

 

「馬鹿は、アタシだッ!!」

 

 動かなくなった腕を廃棄し、それを思い切り蹴り飛ばす。避けることもできないナイトポリスはよろめき、隙が生まれた。私は天井にスラッシュハーケンを突き刺し、高く登ってからスラッシュハーケンを抜く。

 

 そして、重力加速度を味方に付けた両脚による踵落としをナイトポリスにブチ込んだ。

 

 

 

 

 母の体は違法プロテインの後遺症でろくに立てない程に筋肉が衰えてしまった。ナイトメアを蹴るなどという馬鹿な行為により蹴った右脚は粉砕骨折までしている。因みにルルーシュはピンピンして今頃学校に通っているだろう。化け物だ。

「私 お母さん。私頑張るから、私とお母さんが普通に暮らせるように。」

「りょ!がんば!」

「うん。頑張る…!あたし、頑張るから!」

 




脳筋世界の歪みによりカレンの母の性格と言葉遣いが大幅に歪んでしまいました。というかリフレインの存在そのものが歪みました。

今回はとうとう生身のルルーシュとプロテインによるブースト+娘を守る母の愛の力でナイトメアを攻撃しましたが、あくまで精密機械のセンサー類がちょっと壊れる程度です。
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