ミートギアス 〜筋肉のルルーシュ〜   作:ベルゼバビデブ

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ミートギアス 〜筋肉のルルーシュ〜 蒼穹に散らないゼロ 第一話

 俺はマッスル、C.C.はグレーテルと名を偽り、グランの騎空団に身を寄せていた。初めは筋肉量の差を見せ付けて支配下に置こうとも思ったが、グラン達は筋肉量もお人好しさも桁外れであったため、事情を話すだけであっさりと同行を許可してくれたのだ。

「行くぞグラン!」

「…ファランクス!」

 グランの腹に拳を叩き込むが反応を見るに余りダメージは通ってないようだ。まるで俺の殴打の"ダメージが70%カット"されているかのようだ。

「ウェポンバースト!」

「何ッ!?」

 直様反撃に転じたグランは今まで防御に徹していたのが嘘かのように嵐のような猛打を放ってくる。例えるならそう、"即座に奥義が発動可能"かのようだ。こういう相手と組み手をするのはいい鍛錬になる。

 お互い体が動かなくなるまで組み手を行い、甲板に仰向けに寝転がる。

「…ヒールオール」

 これも魔法なのだろう、グランの言葉でなんというか"体力が回復"した心地になった。すると、船室の方からドカドカと俺のような影がこちらに向かってくる。即ち、ビィだ。

「二人とも、今度はオイラと死合おうぜぇ!今度は負けねえからよぅ!」

 そうしてビィはアドミナブルアンドサイを決めるので俺は負けじとダブルバイセップスを決める。グランも無言でサイドチェストを決めてきた。うーむ、二人とも見事な筋肉だ…。

 

「「「ナイスバルク」」」

 

 そんなやりとりをしていると、C.C.がルリアから借りたであろうエプロン姿で甲板に現れた。…結構似合うな。

「おい、肉ダルマ共、飯ができたぞ。さっさと来い」

 C.C.はグレーテルとしてすっかりこの騎空団の料理担当が板について来たようだ。俺も厨房に立とうとしたが、厨房にはバウタオーダと呼ばれる俺にも負けないマッスルガイ…彼は頭にツノの生えた「どらふ」なる種族らしい…がいた為、俺と彼で厨房に入るとお互いの筋肉が反発し、艇を破壊しかねなかったのだ。よって俺は厨房に立つことを諦め、代わりにC.C.を送り出したのである。C.C.はこの騎空団では猫を被っている事もあり、かなり優秀な人物としてこの団に溶け込んでいる。良好な関係を築いてくれていて何よりだ。

 

 俺達が食堂に向かっていると、ビィがこちらに話しかけてきた。

「そういえばよう、昨日ガウェインのチャージが終わったって言ってたよな?あの黒いデカブツ動くんだよな?飯の後動くところ見せてくれよ」

「…そうだな。こちらでもちゃんと動くか確認は必要か」

「…?他の空域でもここの空域でもそんなに風の感じは変わらないと思うぜ?」

 …空域…。確か、この世界はいくつかの空域なる…元の世界で言う大陸とでも言うものが存在し、空域と空域の間には「瘴流域」と呼ばれる乱気流が発生してるんだったか。よし、ここはその話を利用させてもらおう。

「あぁ、あのガウェインで瘴流域を越えてきたからな、調子が悪くないか心配なんだ」

「マジかよ!瘴流域を越えられるなんてすげぇじゃねぇか!」

 その後、C.C.の飯を食べ終え、俺とC.C.はガウェインの起動実験を行うことにした。しかも態々近くの島に寄ってもらい、人気の無い原っぱでた。

 そしてこの世界でも問題なくガウェインは動き、ありがたいことにフロートシステムも稼働するようだった。そう言えば島が浮くのに俺達は重力に捕まってるってどうなってるんだこの世界。

『すげぇ!あのゴーレム空飛んでるぜぃ!』

『はわわー!凄いですぅ!よーし、私も負けてられません!』

 突如ルリアが青く光ったかと思うと、突如黒い鎧の巨人が現れた。その手に持つビッグサーベルは赤く光り、ブゥンと起動音のようなものを鳴らしている。

『コロッサス!やっちゃえー!』

 ルリアが魔法の類で召喚したであろうコロッサスなる巨人はその手に持つサーベルを地面に突き刺すと、こちらに向かって走り出し勢いよくぶつかってきた。

「ルリアの奴、こんなものをいきなり呼び出して何のつもりだ!?」

「C.C.、口を閉じてろ」

 ぶつかってきた相手とガウェインはお互いを押し合い、地面を穿っている。ナイトメアであるガウェイン並みのパワーとはな…

 俺はガウェインを動かし、コロッサスなる巨人の胸辺りを掴み、更に腕を掴むと背負い投げを仕掛けた。

「おいルルーシュ!いきなりなんて操縦してる!舌を噛んだぞ!」

「だから口を閉じろと言っただろう」

『はわわ…凄いパワーです…。それなら…お願い、リヴァイアサン!』

 またルリアが青く光ると今度は蒼龍のような生き物が現れ、こちらに向けて大きく口を開いた。

「…!いかん、C.C.!ハドロン砲を撃て!!」

「ここでか…?どうなっても知らんぞ!?」

 ガウェインの放ったハドロン砲とリヴァイアサンなる龍の吐いた恐らく水であろうレーザーがぶつかる。なんとかハドロン砲で相殺できたが、逆にいえばただ水を吐くという行為がハドロン砲並みと言うことだ。流石にやり過ぎだと判断したのか、グランがルリアに何かあっているような様子がモニターで確認できたこととコロッサス、リヴァイアサンが消えたことから俺達はガウェインから降りた。

「驚いたよルリア。あんな凄いものを呼び出せるなんて…」

「その、実は私は星晶獣を呼び出す力を持ってるんです」

「せい…せいしょ?…なんだって?」

「星晶獣だよグレーテル。…済まない、出来れば詳しく話してくれると助かる」

 ルリア曰く、ルリアには自身に取り込んだ星晶獣の力を借りてその力を使役することができるそうだ。その力に目をつけられ一時期は悪い国に捕まっていたらしく、そこからなんとか逃げ出し、グランと出会い、今に至るらしい。

 そして星晶獣とは遥か昔に戦争の中で生まれた兵器のようなものらしく、通常は人の手に余るようなものらしかった。どんな世界でも過ぎた力というのは人から恐れられる物だ。

 チラリとC.C.の様子を確認すると、一時期囚われていたという言葉に思うところでもあったのか、珍しく真面目な顔をしていた。

 

 すると、俺達の側に突如影が差した。見上げるとそこには見覚えのある白いナイトメアが居た…スザクだ。

『何事かと駆け付けてみれば…これはガウェイン…!やはり君達も来ていたのか…!』

 どうやら先ほどのガウェインとルリアの闘いに気付いてやってきたようだ。それにしてもやはりスザクもこちらに来ていたか…異世界でこんなに早く再開できるとは思っていなかった。

 ランスロットが着地すると、早速スザクが降りてきた。

「ルルーシュ、君たちも来てたんだね」

「あぁ、スザク。無事に再会できて何よりだ。」

 するとルリア達は俺達を見て首を傾げていた。

「ルルーシュって…?」

 あぁ…そうか、こうなったらもう隠すわけにもいかないだろう。

「済まない、実は俺の名前がマッスルだってのは…嘘なんだ。俺の本当の名前はルルーシュ。今まで隠して悪かった」

 俺がグラン達に頭を下げると、すぐに後頭部に衝撃が走り、思わず顔面が地面に激突した。

 

「君はッ!この世界でも人を騙していたのか!!」

 

 なんとか振り返りってみると、どうやら先ほどの衝撃はグランにやられたものではなく、スザクによるものだったらしい。

 そうかそうか、スザクか、スザクね、はいはい。全くスザクめすぐ俺に暴力を振るうんだから、困った奴だ。HAHAHAHAHA!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …は?ふざけるなよ?

 

 俺は俺の頭を押さえつけるスザク腕を掴み、腕をずらして頭を押さえつけられないようにした。そしてそのまま拘束から逃れると直様反転し、スザクの顔面に拳を叩き込む。

「いきなり暴力を振るうなど何をするんだ!許さん!!スザク、お前が泣くまで殴るのは辞めんッ!!」

 再度拳を叩き込まんとするとスザクはギリギリで躱し、逆に俺のボディに拳を捻じ込んできた。

「はわわ!急に殴り合いが始まっちゃいました!」

「気にするな。こいつらの愛情表現だ。」

 C.C.め、適当な事を…!

「ルルーシュ、僕の前で余所見なんて余裕そうだね」

 一瞬の隙、その隙を見逃さずスザクは的確に俺の腹に拳を叩き込んで来た。くそ…!これしきのことでこの俺が怯むかッ!

 俺はよろけたフリをしてスザクの接近を誘うと、瞬間頭を仰反らせ思い切りスザクの顔面に頭突きを叩き込んだ。

「掛かったな馬鹿が!!」

「な、何ィー!?」

 追撃に腹に膝を叩き込むが流石はスザク、怯まずあちらもこちらの腹に拳を捻じ込まんとしてきた。なんとか突き飛ばし距離を作る。

 

 そして俺とスザクは同時に駆け出し、お互いの顔面へと拳を叩き込まんと拳を振りかぶった。

 

「スザァク!!」

「ルルーシュ!!」

 

「はわわ…お二人の愛情表現激しいです…!」

 そしてお互いの顔面にお互いの拳を叩き込み、俺達は同時に仰向けに倒れる。

 スザクとの挨拶代わりの殴り合いを終え、取り敢えず自己紹介という流れになった。

「…まずは団長達に紹介しよう。こいつはスザク」

「枢木 スザクです!よろしくお願いします!」

 スザクはラットスプレッドをしてニコリと笑い、白い歯を輝かせた。

「そしてスザク、こっちが今俺が世話になっている騎空団の団長のグラン達だ」

 グランは無言でサイドチェストを決めてから

「さっきの闘いは見せてもらったよ…ナイスファイト!」

 と言った。うむ、グランもナイスバルク!

「オイラはビィ!よろしくな!」

 ビィはアドミナブルアンドサイを決めながら答え

「さ、最後は私ですねっ、私はルリアです、スザクさんよろしくお願いしますねっ」

 一生懸命か細い体でダブルバイセップスらしき構えを取っていた。可愛い。

 ビィはドカドカとスザクに歩み寄ると肩を組んでランスロットに指を指していた。

「ところでよぅ!お前のあれもマッスル…じゃなくて、ルルーシュ…だっけかのガウェインと同じ空飛ぶゴーレムなのか!?」

「う、うん。僕のはランスロットって言うんだ」

「ランスロット…?あぁ、だからルルーシュはこの前ランスロットってやつが団に居ないか聞いたかのかぁ」

 ビィの言葉は俺は頷いた。まさか異世界にナイトメアと同じ名前の人物がいるとは思わなかったのである。

「じゃあよぅ!ジークフリートって奴はねぇのかよぅ!うちにも居るんだぜぃ!」

 ジークフリート…知らないな。俺は首を振りスザクを見るが、スザクも同じようで首を横に振った。…そう言えばスザクの奴、どうやってエナジーフィラーを充電したんだ…?

「なぁ、スザク。お前どうやってエナジーフィラーを充電したんだ?」

「あぁ、それはね、ロイドさんがいざという時のために手回し発電機を持たせてくれてたんだ。フロートシステムは燃費が悪いからね。神根島みたいな事もあるし」

 変わり者だとは思ったが、ミレイの婚約者のあの男…あいつがランスロットを作ったのか。しかしなるほど、考えることはみんな同じってわけらしい。

「そう言えばスザク、お前はこっちに飛ばされてから何して過ごしてたんだ?」

「僕?ずっと森の中でサバイバルをしてたよ?」

 …。そういえばスザクは天然だったな。深く考えるのは止めよう。

「なぁ、団長俺から頼みがあるんだが、聞いてもらえるか?」

 グランは無言で頷いてくれたので俺は言葉を続ける。

「スザクとランスロットもグランサイファーに乗せてやってくれないか?」

 俺が頼むとすぐにグランは再び頷き、ビィが白い歯を輝かせながら笑った。

「水臭ぇこと言うなよな!ルルーシュの友達なら俺達の仲間だぜぃ」

「ですね!」

「ありがとう団長」

 こうして、スザクと無事合流できた俺はスザク共々団長の世話になる事になった。

 

「なぁなぁスザク!」

「どうしたんだい?ビィ」

「お前のランスロットも二刀流なのか?」

「うん、そうだよメーザーバイブレーシソードって言うんだ。」

「俺達の団にいるランスロットも二刀流なんだぜぃ!」

 

「へぇ、そうなんだ。異世界って…不思議だね!」




余談ですが、この世界のグランはザンクディンゼルにてヒュドラに殺されてません。

●登場キャラクター紹介
・コロッサス
星晶獣と呼ばれる人知を超えた存在の一つ。黒い甲冑の巨人のような見た目をしている。機械仕掛けの部分もある為、起動音がしたりする。大型ナイトメアであるガウェインを押し戻せるほどのパワーを持つ。火属性

・リヴァイアサン
星晶獣と呼ばれる人知を超えた存在の一つ。本来は海に住み海を綺麗にしたりする役割を持つ。口から高圧で水を噴出する空烈口刺驚はガウェインのハドロン砲と互角の破壊力を誇る。水属性

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