ミートギアス 〜筋肉のルルーシュ〜   作:ベルゼバビデブ

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ミートギアス 〜筋肉のルルーシュ〜 蒼穹に散らないゼロ 第二話

 俺とスザクが合流して暫く経ったある日。俺とスザクとグランは依頼で祭りに参加していた。

「「「ソイヤッ!ソイヤッ!!ソイヤッ!!!」」」

 俺とスザクは褌一丁、二人で神輿を担ぎ、神輿の上で同じく褌の団長が太鼓を叩いている。騎空士は魔物退治や人物の運搬護衛ばかりではなく、こう言う地域興行も生業とするらしい。…いや、そんな事をするのはグラン達だけくらいらしいが。

 

 祭りが終わり、俺達三人はヒートアップして熱った身体を冷やしていると、突如声がかけられた。

「あれ…?スザクにルルーシュ…?」

 声のした方にはカレンが居た。…あ、カレンもこっちに来てるの忘れてた。

「…ねぇ、あなたルルーシュよね?」

「カレンか、久しぶりだな」

 俺はダブルバイセップスを決めながら答えた。

「あぁ、なんでこう…その暑苦しいポーズ決めながらじゃ無いと喋れないのよアンタは」

「カレン?元気みたいで良かったよ!」

 スザクはラットスプレッドを決めながらそう喜んでいた。うむうむ、神輿を担ぐと言う運動に今日もキレてるなスザク!ナイスバルク!

「もう突っ込まないわよ。…で、そこの筋肉属性持ちの残念イケメンは誰?」

「僕はグラン。よろしく」

 グランも白い歯を輝かせサイドチェストを見事な披露していた。

何も言わずに目を閉じたカレンにC.C.は肩を叩いていた。

「お前だけでもまともな奴がいて助かったよ」

「…C.C.、アンタが居てくれてこんなに嬉しいと思った事は無いわ」

「お互い様だ。」

 …?あいつらなんの話をしてるんだ…?

 

 とりあえず褌のまま過ごすわけにもいかず、一度待ち合わせ場所を決めカレンと分かれ、暫く経ってから合流した。待ち合わせ場所はカレンがこちらに来てから世話になっていた飲食店だったらしく、行き倒れたカレンに食事と寝床と仕事を与えてくれたらしい。

「異世界に転移…ねぇ、はー…やっぱりそうかぁ…でもまぁC.C.もこっちに居るなら一安心だわ」

 情報交換を終えたカレンの第一声はそれだった。なんでC.C.なんだ…?…あぁ、同性だしな、話の通じるところもあるのだろう。

 

 すると、外から女性の悲鳴が聞こえ、みんなで向かうとカレンの世話になっていたドラフの女性が酷い怪我で倒れていた。

「いけない!すぐに手当てしないと!」

 スザクの声に頷き俺達は近寄るが、正直止血くらいしか出来ることはない。すると、グランは冷静に女性の状況を確認し、傷の具合などを確かめていた。

「…状態異常…これは裂傷か。これはいけない。クリアオール!」

 グランの回復魔法らしきものに女性の顔色は良くなったが、傷は癒えていないようだ。しかし、グランの手当ては止まらない。

「ヒールオール!」

 グランの魔法により傷口が塞がったようだ。魔法って凄いな…。

「後は…ポーションリファイン!」

 グランは突如手に謎の緑色の液体を出現させていた。なんでもありだな魔法って…。その液体を女性にゆっくりと飲ませると先ほどまで死に掛けてたのが嘘かのように安らかな表情へと代わっていた。

「これでよし。後はちゃんとした病院で診てもらって下さい。」

「え、えぇ、ありがとう」

 最早自らの足で病院に向かえるあたりほぼ完治しているだろうが、まぁ念には念をと言うことか。グランと旅を続けて少しだけ経つが、グランは団長として様々な団員と共に闘う人物だ。そして闘う相手、共に戦う味方に合わせて様々な手段をとれるようにとグランはあらゆるジョブなるものを修めたらしい。

 相手の大技には全身の筋肉に力を込めて全ての攻撃を70%カットするファランクスなる防御の技を持ち、一度攻めに転じれば直様奥義を叩き込むための準備を整えるウェポンバースト、仲間が傷付けばヒールオールと言う癒しの魔法を唱え、その肺活量を活かして大声で歌うことで攻撃する事もあると言う。それに今のは…怪我人への冷静な診察と対応はさながらドクターと言ったところか。

 そしてグランは獲物を選ばず、剣や刀、短剣に槍、斧なども巧に操れるそうだ。そして時には銃やギターなどの楽器、杖などを握って相手を殴り、弓でしばき倒すこともあるのだとか。そして時に戦場にて馬に乗って闘い、狼の群れや鳥、熊に猪などの動物と共闘したり、狐とも協力する…極め付けにあのビィと舞うように踊りながら闘うと言う。…最後のは全く想像できないが、とにかく普段はブーメランパンツにマントとマスクの危ないファッショに身を包む彼だが、兎に角努力家であることが窺い知れる。

「…グランは凄いな。俺なんてこの身体を手に入れるので精一杯だったよ」

「僕は騎空団団長のグランだからね。これくらいなんてことはないよ。」

 …俺も黒の騎士団の団長だ。俺ももっと努力しなければな…その為にもいつまでもこちらの世界にいる訳にも行かない。幸運なことにカレンとも合流は出来たのだ。これでようやく本来の目的である元の世界に戻る手段を探すことが出来る。だがその前に、カレンのお世話になった恩人であるあの女性を襲った何者かを捕まえなければならない。そう思って街中に出ると、俺の目の前には驚くべき人物が立っていた。

「…。」

 イカしたセンスに格好いいマントをはためかせた…ゼロだ。

「なんだぁ?あのヘンテコな奴は」

 …何?

「はわわ…センスを疑います…」

 …えっ?

 

 俺は恐る恐るグランを見るが、グランは二人とは違い目を輝かせていた。

「ナイスセンス」

 …良かった、グランは分かってくれるらしい。遅れてやってきたスザクとカレンもゼロを確認すると驚きの声をあげる。

「何あれ…ゼロのコスプレ?なんでこの世界に…」

「異世界って不思議だなぁ」

 当然だがあれを本物だと思っている人物は居ない。何故なら…明らかに筋肉量が足りず、というか胸筋の発達具合から女であることが容易に予測できた。

「ゼロを騙る偽物め、何の様だ。」

 俺の問いに偽物はクックックと笑った。

「何がおかしい」

「お前が愚かにも自らの正体を明かしたから笑ったまでだ」

 …?俺がゼロだということはとっくの昔にスザクにもカレンにもバレている。今更角は必要はないだろう。

「…何!?前々から正体を知っていたのか…!?な、なら…そうだ!お前はブリタニア皇族のルルーシュ ヴィ ブリタニアだろう!」

「そうだが?」

 それもこの前の神根島の時にスザクのやつがバラしやがったからカレンに知られている。

「あ…あぁ…。くそっ!嚮主様の情報はなんの役にも立ちゃしない!」

 奴は何かを投げ捨て、急に走り出した。

「ルルーシュ!」

「皆まで言うな」

 俺とスザクは同時に走り出し、偽物を追った。

「…あいつ何を落としていったのかしら…?…!これってナ…」

 

 カレンの奴が何か叫んでる気がするが、遠すぎて分からん。しかしあの女、俺達より足は遅いくせにやたらと隠れるのが上手いのか、中々距離が詰まらない。そして偽物を街のすぐ側の崖に追い詰めたと思ったが、小型の騎空艇らしき物で空に逃げんとしていた。

「ルルーシュ!」

「分かっている。」

 俺はすぐにその場にうつ伏せになると、スザクが俺の両足を脇の下で挟んだ。そのままスザクは高速回転を始め、俺の体に凄まじい遠心力を生み出す。

「今だ!」

「ミサイルルーシュ発射!」

 おいなんだそのネーミングは…!俺は空中をライフル弾の様に超高速回転しつつ偽物を追う。速度はこちらの方が上だ。もうすぐ追い付け…

 突如、偽物は軌道を大きく右に逸らし、俺と離れていく。

「何!?何故こちらの動きがバレた!?」

 スザクのジャイアントスイングで俺を射出するなど、普通誰にも考え付くはずはない。一体何故バレた…?とりあえず俺は両足を交互に勢いよく踏み込むことで落下を阻止し、空を走る。

「クソ、作戦は失敗だったな。何か奴の足取りが掴めると良いのだが…」

 俺は空中歩行を続けていると、突如俺の近くにふよふよと浮かぶ雲に乗った幼い女児が近付いてきた。

「うわぁ!この人空を歩いてる!キミって凄いね!」

「俺としては雲の上に乗って空を漂ってる君の方が凄く見えるが」

 女児は…なんというかかなり際どいファッションをしていた。そしてよく見ると猿の様な毛の生えた尻尾があり…そしてその尻尾には風呂敷のようなものが巻き付いていた…そして髪の間から見える耳もよく見れば猿のものであることがわかる。恐らく彼女は「えるーん」なる種族の人物なのだろう。ビィの話ではえるーん族は皆恐ろしく露出度が高く、場合によっては水着の時の方が布面積が多いことすらあると言う。俺とナナリーがもしえるーん族だったなら…俺は恐らくナナリーを家に閉じ込めていただろう。ナナリーにこんな破廉恥な格好をさせるわけにはいかないからな。

「あ、ボクはそろそろ行かなくちゃ。あんまり遅いと怒られちゃうから…それじゃあお兄さん、じゃーねー!」

「あぁ、暗くならない内に家に帰るんだぞ」

 彼女と別れ暫く経つとガウェインが現れた。

『一人で空中に飛び出す奴があるか!お前に死なれたら困るのだぞ!』

「問題ない。空中をこのように歩行できるからこそ俺はスザクに射出されたのだからな」

『…お前と話のは疲れる。いいから早く乗れ。さっさと帰るぞ』

 俺はガウェインに乗り、島へと向かった。

 

 偽物を捕まえるのは失敗した上、その原因が謎のままである。そして現状手がかりがない…。不幸中の幸いはグラン達がカレンと紅蓮弍式の搭乗を快く受け入れてくれたことだろうか。そして紅蓮のエナジーは尽きかけていたが、俺とスザクで発電機を回すことで充電し、これにより我々の戦力は整ったといえる。しかし、更なる問題としてカレンの拾った偽物の落とし物から判明した。それは捕らえられたナナリーの写真だったのだ。

「ナナリー…!まさかお前まで巻き込んでしまうなんて…!俺があの時捕まえていれば…!」

 グランサイファーの手摺に拳を叩きつけようとするもその腕は途中で掴まれ止められた。

「ルルーシュ、妹さんが心配なのは分かるけどよぅ、今はどうしようもないぜ…自分をそんなに責めるなよな。…あと、この船に攻撃するのは止めるんだ。ノアに殺されるぜぃ…」

 ビィをここまで恐れさせるとは…のあなる人物は物を大切にする人なのだろう。確かに俺も短慮が過ぎた。人の物に当たろうなど…。そのまま暫くビィと共に風に当たりながらどうにかナナリーを助ける術を考えるが…やはり情報が少な過ぎた。

「せめてあの小型騎空艇がどこに向かったかさえ分かればな…」

「あれ?お兄さんもウチの団員さんだったんだね」

 背後からかけられた最近聞いた幼い声に振り返ると、そこには猿の少女が立っていた。

「よぉアンチラ!さっきはお使い頼んじまって悪かったな!あの島でしか買えない限定のリンゴだから助かったぜぃ!」

 …俺と彼女が会ったのは偽物と分かれて暫く立ってからだ…もしや…

「…なぁ、アンチラ…と言ったか?君、そのリンゴを買った島からこっちに向かう時に小型の騎空艇とすれ違ったりしなかったか?」

「え?なんで分かったの!?キミって凄いね!うん、すれ違ったよ」

「…!ビィ、グランに頼んでそのリンゴの島に向かってくれないか!?そこにナナリーの手がかりがあるはずだ…!」

 

 思わぬところで手掛かりを掴めた俺達は現在グランサイファーで偽物がいると思われる島に向かっている。とは言え、向かうまでには少しだけ時間がかかるのでガウェイン達をフル充電にしても時間が余った。そんな訳で俺達は現在食堂で交流を深めていた。

「ふーん、ガウェインにランスロットと同名の団員ねぇ…流石に紅蓮は居ないみたいね」

「そうですね、グレアさんって一文字違いならいるんですけど」

「グレアの奴も右手がすげぇし似たようなもんかもな!」

 話を聞けばグレアなる女性はドラゴンと人間のハーフだとか…。もしかしてビィみたいな見た目じゃないだろうな…?

「でもよぅ、カレンと同じ名前の団員ならいるぜぃ!」

「えっ?私と?」

「おうよ!この団の副団長もカレンって言うんだぜぃ!今はちょっと外してるけどよぅ」

 

「私と同名かぁ…異世界って…不思議ねぇ…」




●登場人物紹介●
・アンチラ
女児が着るには際どすぎる服装を身に纏うエルーンの少女。どれぐらい際どいかというと、普段着がレオタードタイプの水着よりも脇と背中の布面積が少ない。十二神将と呼ばれる存在における西南西の守護者、申であり、グラン達の団の団員でもある。特別な雲に乗り、単独飛行が可能。

地味に「原作」に全く登場してないセリフあり人物だったりする。(シェロカルテは一応名前か存在だけは出てきてたと思う)

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