ロンギング・フロンティア~居残り組、新大陸に挑まんとす~ 作:Z-LAEGA
「へぇ~……アドバンテージ、かぁ」
「ねえ何か知らない?というか知らないはずないよね、この『真なる竜種』とかいうコンテンツは何?」
「よくわかんないかなぁ……」
「無理があるでしょ無理が!」
「……そうだね。これだけは言っておくよ」
「何?」
「真なる竜種を相手取るときは、
「やっぱり何か知って……!まあいいや、それで?」
「例えば『アドバンテージ』の場合……確か
「そうだよ」
「アドバンテージ……『優位性』ってことでしょ?つまりアドバンテージは~。クグリンちゃんたちに対し火力で常に優位を取った、そういうことじゃないかな~」
「……なんかおかしくない?他にも隠してるでしょ」
「まさか~」
………
……
…
……名前を見るべき、か。
目の前で飛竜が咆哮を上げる。いや、本当に飛竜と言っていいのだろうか?確かに翼はある、大きな、湾曲した翼だ。でも……
……確かに、
オッケー考察中断、向こうのターンだ。
「散れーーーっ!」
言われなくてもそうしてる!
白を黒へと裏返す、ここからの私は忍者モードだ。
プラズマが青空をバックにほどける。セパレーションの翼が完全に連結性を失い、ファンネルのようになって船へと突っ込んでくる。荒波の音がやけに大きく感じる。
よ~し落ち着け私、向こうと
「【空蝉】!」
肉体の座標を
「……というか」
左から着弾音。ちょい右に走行方向修正。断絶圏は改めて考えると結構狭い、少なくとも全部で二十パーツくらいありそうな翼ファンネルを暴れ回らせるには少々狭すぎる気がする。
「ほらまた来たぁ!」
ファンネルが一つ、ちょうど私と反対方向を向いて突っ込んでくる。海面に落ちる影が大きい、しかしそれにひるんではいけない。【空蝉】か【
……これさぁ。私は水の上歩けるからいいけど他の人は……。
「ごぼごぼ」
やっぱり~!
ちょうどいいところにボルクネスが溺れている。私はとりあえず彼を引き上げた。しかし運ぶにはSTRが足りなかった。どうする?諸共に運ぶわけにもいかないし……。
あ、STRが足りてそうな人発見。
「後よろしく!」
「えっ?」
というわけで投げつけておいた。まあ何とかしてくれるだろう。
……さて、現在翼(のパーツ)はセパレーション本体の周囲で回転中。いかにも攻撃を弾きそうな外見だ。というか実際のところ弾いている。翼の鱗の間で垣間見えるセパレーションの本体は、中々間抜けな外見をしている。飛竜から翼を取るというのはそういうことだ。
……しばらくこのモードが続くかな?だったら、試しにセパレーションに近づいてみよう、か……。
「……んん?」
何かがおかしい。
調査隊の中でも遠距離魔法職のプレイヤーたちは、セパレーションの本体に魔法を撃ち込んでいる。回転する翼に当然のように弾かれるけど、まあそれは仕方ない。でも……。
「……ショボくない?」
魔法の
調査隊に属するプレイヤーのほとんどは、既に新大陸に到達しているはずだ。それでも調査船が旧大陸から発進したのは、内訳にベヒーモス永住民がある程度含まれていたことが理由だ。つまり……彼らは、レベル120帯くらいの魔法が使えなければおかしいはず。
でも……炎魔法はせいぜい【ファイアボール】、雷魔法はせいぜい【サンダーボルト】。少なくとも外見上は、その程度の威力しか持っていないように見える。
……もうちょっと近づいてみよう。
私は脚をさらに進める。レベルアップに伴いMPに多少振ったし、更に【水滑り】そのものの燃費も良くなった。もう昔のようにいつの間にか溺れる忍術ではないのだ。
群青と純白の境目が視界を流れていく。そろそろファンネルのターンが来そうだ。警戒しつつ進んでいると、
魔法が見えなくなったのだ。
「……なるほどね」
翼のパーツたちが回転をやめる。ファンネル……いや違う、一度再連結して飛竜モードになるらしい。ビームでも撃つのかな?わからないけど、離れたほうが良いのは間違いない。そうして反転してまたステップを踏み始めれば……ついさっきまでと同じように、ショボい魔法が飛ぶのが見える。危な!ちょっと掠った。
そうか、セパレーション。それは
思えば……無線が使えなかった時点で始まっていたんだ。断絶圏という尺度で見るべき問題じゃない、あれが
どこまであるのか。本当に『見えない』だけなのか……疑問は尽きない。しかし確実なのは、今すぐここから逃げなければならないと言う事だ。
「うわあああああああ!」
セパレーションが
まずい……まずい。そうか、セパレーション本体は動かないと思い込んでいた。普通に離れれば認識阻害なんて関係ない、と。でも……考えてみれば、当然
視界から急速に情報量が減っていく。魔法が見えなくなる。音が聞こえなくなる。これが第三段階ね……どうしよう、第四段階を見たいけどそこまで近づいたら死ぬ。いや待てよ、逆に考えよう。逃げるんじゃない、回り込むんだ。
「【黒潮】っ」
咄嗟に解き放った黒雷を足元に纏いながら、、一瞬【水滑り】を発動してすぐに切る。要するにジャンプ台運用だ。というか黒雷は見えるんだ、自分の攻撃エフェクトは普通に視認可能って感じかな?
「【
よし、セパレーションの背後に立つことに成功!これで、第四段階が何を示すのか分か―――。
「……」
私は絶句した。
その空間には、セパレーションと、自分と、海しかなかった。
……そうか、
刹那の先。セパレーションの後ろ姿が小さくなっていったことで、どんどん段階が下がっていき……再び見え始めた他者を前に、私はどこか安堵を覚えながら、荒波の上で考えた。