ロンギング・フロンティア~居残り組、新大陸に挑まんとす~ 作:Z-LAEGA
◇
ハヤブサ、フクロウ、カラス、ハト、スズメ、そしてカモメ。広げられた羽毛の色は多様なれど、その集合は大空を埋め尽くし、各々の目的地へと飛び出していく。
……第四段階に囚われていた
モザイクを描く鳥たちは、コケーとかピヨーとかいった鳴き声を上げる。それらが折り重なって空間にばら撒かれ、何かのファンファーレのような、そんな音を作り出す。それは同時に、第三段階の効果が消失していることを意味していた。
「……なるほどね」
パストラットは理解した。ついさっき、パーティーからクグリンが抜けた。死んだ後に抜けたんじゃない、自発的に抜けた。要するに、彼女は何かを
第三段階が解除されたことで、パストラットは背後で起こっていた轟音に今更気づいた。彼女は振り返り、その残痕を目にする。……巨大な爆発があったらしい。しかし、巨大な爆発なだけではセパレーションの翼を
彼女の推測はおおむね正しい。セパレーションの有する能力の本質は
要するに、セパレーションは
パストラットは自分が何をすべきかわかっていた。彼女は戦闘をメインとしているわけではないが、
「……っと?」
その時だ。
飛び立った伝書鳥のうち一羽のハヤブサが、目にもとまらぬスピードで彼女の元へと飛んでくる。ひょっとして、囚われていた中に自分宛ての鳥もいたのかな―――パストラットは急ぎつつ、一応ちらりとそのメッセージを見る。
『WAKE UP!』
一文だった。
なんだ、と。彼女は思った。
「……言われなくてもわかってるよ」
パストラットは銃を改めて構える。爆発音が聞こえる以上、自分の認識は少なくとも第二段階までは後退している。第三段階にいた彼女が第二段階にいるからには、第四段階にいたプレイヤーも第三段階にいる。音は聞こえずとも見ることはできる。つまり、今の彼女に誤射の心配はない。引き金を引く。
向けられた銃口が、盛大に砲火を吐き出した。
◆
「……はぁ」
リスポーン後、最初に出たのは溜息だった。
典型的な宿屋の天井、という風貌の、木製の板を見上げて考える。
……私以外にできなかったとはいえ、なんか貧乏くじ引かされた感あるなぁ……。いやだってそうじゃん?結局のところ私以外の死んでなかった面子は普通にそのまま新大陸に辿り着けるわけだし。いやまあ……
……
「ん~……」
とりあえずベッドの上をごろごろと転がってみる。そこで思い出したけど、そういえば
フレーバーテキストを読みたい気もするが……気力がない。自分だけ旧大陸に取り残されてしまったという印象が強すぎる。まあ……とりあえず、そろそろ起き上がって……。おや。
ふと目をやった窓の中。開け放たれたカーテンの先。傾き始めた日光を背負って、幾羽かの鳥たちが空を駆けている。
……あれだけの速度が、私にもあれば困らないのに。
そう考えている間にも、伝書鳥たちは私を追い越し飛び越して、どこかへとメッセージを届けに行った。
……行くか。
私はベッドを後にした。
◆
「…………いやなんでいるの?」
チェックアウトしようとした私は、チェックアウトしようとするペンペンと鉢合わせた。
ペンペンは特に悔しそうでもなく、ごく平然と答える。
「?何って、ただリアクターが切れて海に沈んだだけだが?」
「緊急脱出ボタンとかないの!?」
「あるけど……使ってもどうせ溺れるだけじゃないか?」
「いや浮き輪は!?出航時点では浮き輪持ってたよね!?」
「ああ、あれはな……」
ペンペンは何でもないみたいに、妙にはっきりと言い切る。
「飽きた」
……そうだ、こいつはそういう奴だったっけ。
私は息を吐くと、彼を見据えて強く言う。
「……行こうか」
窓は夕焼けの橙に染め上がっている。もうすぐ夜が来るだろう。密航するなら今だけど、敢えてトンネルを掘ってみたりしてもいいかもしれない。
シャングリラ・フロンティアは自由度に溢れたゲームで、だからこそ先を見たくなる。障壁は多い、しかし歩く方向も決まってはいない。そもそも自分がどこを歩いているか分からない以上、とりあえず目の前に開けた道を進んでみるのも手だ。
私は羽衣を裏返し、代わりに玄衣に身を包んだ。以前より長くなった裾が夕風を受け、昼の時間の終焉を、この