ロンギング・フロンティア~居残り組、新大陸に挑まんとす~ 作:Z-LAEGA
さて、リザルトを確認していこう。
私はログインするなりシステムメニューを開いた。適当に取った宿の一室、窓枠の形状を十字の影として落とされた床の木目。その上に半透明の板が重なり、その表面にごちゃごちゃと文字情報を浮かび上がらせる。これ前から思ってたけどUI的にどうなの?せっかくVRなんだしもうちょっと二次元描画から脱したインターフェースでもいい気がするんだけど……。
まあいいや。
とりあえずメニューの一番上、『ステータス』欄に人差し指を勢い良く突っ込む。ボルクネスに先を越されたのははっきり言って最悪だけど、まあ悪いことばかりじゃない。なんか装備進化したしレベル結構上がったし謎のジョブへの就職権も手に入れたしね。
小気味良い効果音が聞こえ、ステータスウィンドウがアニメーションと共に展開する。その上部に大きく配置されたテキストラベルは、『Lv:120』の文字列を表示している。いいね、確かレベル120からはメインとサブを両方最上位職にしても問題ないんだっけ?上忍クエスト進めようかなぁ……。
よし、次。
私が入れたジェスチャーに反応し、ステータスウィンドウがアニメーションと共に閉じる。これコンフィグで切れないかな?正直まあまあ鬱陶しい。今は普通に宿のベッドに座ってるだけだからいいけど、例えば大事な戦闘の途中にステータスウィンドウを開けたり閉めたりするとして、そのたびにこのアニメーションが再生されたら正直かなりイラっとすると思う。ちょっと後で設定を探してみよう。
私は愚痴りつつ指を動かし、次のウィンドウ……『装備』を開く。
えーっと、今回変化したのは……
・
オブジェクトとして設置可能。常に浮遊しており、魔力操作系魔法の対象として設定することで位置を移動できる。
また、アクセサリースロットを二つ消費することでモード「サテライト」で装備可能。
誰も近寄りはしない。
※モード「サテライト」……装着者のMPを消費して周囲を回転し、発見した敵性キャラクターに自動で攻撃を加える。
「……?」
どうなんだ……?なんていうかこう、迫撃砲に比べ強くはなってるんだけど……戦車っぽい見た目しといてそれなの?みたいな。だって浮くらしいじゃん。え、見た感じこのぐるぐる回ってる3Dモデルにはバッチリ
ぱりん。
出現した自走竜砲とやらの砲塔が、部屋の窓ガラスを割った音だ。
ふ、ふーん……デカいじゃん。迫撃砲の1.5倍くらいかな?デカ過ぎるって程でもないけどまあまあデカい。ま、まあ……うん。悪くは、ないんじゃない?
私はなんとなく不安を覚えつつあった。
なんかこう……あれ?みたいな。もうちょっと強くてもいいんじゃない?みたいな。今のところ浮いてデカいだけじゃん。もうちょっとなんかないの?だってそうでしょ、真なる竜種だよ真なる竜種。……いや、でも冷静に考えると真なる竜種って結局のところ何なの?なんか流れ的に二体倒したけど全然何なのかわからない。wikiにも載ってないし。最低十四体いてwikiに載ってないの頭おかしいだろ。もしかして私が思ってるより格の低いモンスターなの?いやそうでもないの?わからない、何もわからない。このゲーム人に情報を渡す気が無さすぎない?
「ま……まあ」
次行ってみよう。
祈るように呟き、
・
裏返すことで装備を切り替えられる。
◆共通効果
装備時、装着者のステータスとして設定されているすべてのユニークな数値について、
①上位4数値までを選択し、その数値を有する全てのステータスに20加算する。
②下位4数値までを選択し、その数値を有する全てのステータスに20減算する。
◆
DEX3倍、TEC0.5倍。
◆
TEC3倍、DEX0.5倍。
強いものはより強く、弱いものはより弱く。
「日本語でお願いできます……?」
前から思ってたんだけど、このゲームの説明テキストって統一感が無さすぎない……?世界観って言ったらそれまでなんだろうけど、説明テキストってむしろ世界観を破壊する代表格のような気もする。要するにメタじゃん。
……まあいいや。
私は考えるのをやめた。共通効果は正直言って意味が分からないけど、限定効果は単純に上位互換だしもうそれでいいと思った。
「……次行こう」
……ここからが本命、ってことで!
私の操作に呼応して、「ジョブ」ウィンドウがアニメーション付きで開く。これコンフィグで切れないかな?まあいいや。私は焦っていた。なんか今のところやったことに対して微妙じゃない?みたいな感じがあったからだ。頼むぞ【
・【
性能は討滅した真なる竜種によって変化する。
あなたの就職可能数:1
…………。
これは、あの……。
恐る恐る、もう一つの【
・【
性能は討滅した真なる竜種によって変化する。
あなたの就職可能数:1
「ガチャかよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ガチャだった。
ふざけんなっ!!!!!!私はその辺の壁を適当に殴った。しかし思ったより硬い。痛ッ!!!!!!紅いポリゴンが僅かに宙を舞う。クソ!!!!!!!!ふざけんなよ!!!!!!!!!
「『性能は討滅した真なる竜種によって変化する』じゃないだろ~~~~!!!!!!!!」
効果テキストの役割を放棄してるんじゃないよ!!!!!!!!!
ク、クソ……!最悪だ、最悪に近い。二体倒したのがまずかった。二つのジョブは両方とも就職可能数は1、つまり再就職はできないとみていい。メインとサブを両方これにするのは流石にリスキーすぎることを考えると、どちらかを上忍の代わりにセットすることになるだろう。でも……職性能が違う以上優劣が生まれる。私のプレイスタイルと合致するかで「アタリ」と「ハズレ」が分かれることになる。じゃあ、もしも適当にどちらかを選んで「ハズレ」だったら?もしくは、「ハズレ」のように見えて実はもう一方がより一層ハズレで相対的に「アタリ」になることも考えられる。そういう時、私は壮絶に悩むことになる。もう一方で上書きしてガチャを引き直すべきか、それとも上忍に戻るか……だ。錬金術師を上書きして、残った中でマシな方を残す?いやダメだ、私は錬金術師ギルドを出禁にされている。一度ジョブを手放したら再就職できないということだ。
「……終わりか……?」
呟くほかになかった。そうだ、就職しなければいい。ガチャを引かなければ結果で一喜一憂することなどない。ただ、割れた窓ガラスと妙に硬い壁を眺めているだけでいい。いやそれだけじゃ不十分だ、何か追加で考えるものを作らないと……
……
これさぁ……ふと思ったんだけど
……ちょっとやってみよう。
「よっと」
普通にまたがればいいんだけど、なんとなく【空蝉】を使って自走竜砲の上まで転移してみる。砲を足場に直立する感じだ。
丸太が木床に転がるごろごろという音と共に、私の視界がささやかに切り替わる。浮遊感、着地。さてどうなるかな……
ずしん。
ずしんって?
なるほど、自走竜砲が私の体重を支え切れず床に落ちた音かぁ。
「……か弱すぎない?」
一応魔力を込めてみる。軽く「上昇」を命じると……お、一応浮きはするじゃん。感覚としては【黒潮】に近いね、MPの燃費はちょっと悪いっぽいけど。
……じゃあ【黒潮】で良くない?
じゃあ【黒潮】で良かった。
えぇ……いやちょっと待てよ。何か活用法が欲しい。このままだと完全に微妙な結果に終わりかねない。えっと……そうだ、ここまで魔力を使うのは結局のところ私が重いからだ。実際、キャラメイクをしたときはここまで考えてなかったわけで、実際、出すところは出したし伸ばすところは伸ばしたと言わざるを得ない。重くなるのも無理はない。
……じゃあ逆に言うと、今からキャラメイクを
「よし」
私は立ち上がる。リザルト確認後に初手でやることは決まった……ベヒーモスに向かおう。
窓ガラスの弁償に結構な額を持っていかれつつ、私は【