ロンギング・フロンティア~居残り組、新大陸に挑まんとす~ 作:Z-LAEGA
「新大陸への行き方、ですか」
「うん」
野外だ。
ダイナマイトはカルマ値が相当高いため、普通の店には入れない。例の蛇の林檎なら行けるんじゃないかとも思ったけど……試しても、危ない橋を渡ることになる。いくら犯罪者を許容すると言っても限度はあるはずだ。実際、私は一度店内に入った瞬間に鬼ごっこの対象になったプレイヤーを見たことがある。名前は何だっけ……ヒ……ヒダマリ?いやヒダマリではないなあ。じゃあヒグラシ?それも違う。
ダイナマイトの額に滲んだ汗が、突き刺さる日光を受けてぎらりと光る。
「ん~、そうですねぇ」
ダイナマイトがいかにも悩んでいますという感じの声を出す。思ったより日差しが強い。日傘くらいは持ってきた方が良かったかな?私は少しばかり後悔した。
「えっとぉ~」
……ダイナマイトは
「よし>>50が……」
「今なんて?」
「あ、何でもないですよ!」
本当に大丈夫かなぁ……?
ダイナマイトはストライプの入ったストローからジュースを吸い、グラスの中身が半分になったあたりで口を放した。透き通った氷がぶつかり合い、小さく音を立てる。
彼女は私を見て、言った。
「えっと、ディープスローターってプレイヤーは知ってますか?」
「知らないよ、新大陸で有名なプレイヤーなの?」
「>>70……あ、そう
ダイナマイトの透き通るような瞳は、依然として往復運動を続けている。
……これ触れちゃダメかなぁ?ダメかぁ。
「そのプレイヤーは何でも【
……へえ?
「対価って具体的には?」
「時価ですね」
時価かぁ。
「魔法の効果は?」
「はい、指定した座標に自分と同行者を転送できる魔法らしいです」
「ぶっ壊れじゃん」
「ぶっ壊れですね」
反射的に口から飛び出した言葉に、ダイナマイトが目を泳がせつつ答える。
……えぇ?
いや、ヤバすぎるでしょ。その魔法を使ってさえもらえれば新大陸どころじゃないじゃん。ちょっと聞くだけでいくらでも詐欺に使う方法が思いつく。……いや、でも
「ただし」
ほら、きっと何か発動条件があるんだよ。
「ただし?」
「本人と同行者、両方が行ったことのある場所にしか転送できないらしいです」
あ~。
「やっぱそういう感じだよね……そもそも新大陸に行ったことない私には関係ないや」
「ですよね~……>>100……まあ、僕がぱっと思いつくのはこれくらいですよぉ」
「そっか。わかった、今日はありがとう!」
「はい!」
ダイナマイトは輝くような笑顔を浮かべると、去り際にそれとなくスクショを撮って歩いて行った。……きっと、何かを爆破しに行くのだろう。
小柄な彼女の小さな背中が、千紫万紅の樹海窟の適当な場所に敷いたレジャーシートからどんどん遠ざかり、より一層小さくなっていく。
……本格的に姿が見えなくなった。よし、こんなもんか。
「さぁて……!」
作戦開始だ。
……ダイナマイトは基本的にカスだ。私が何かを企めば、それが自分の助言に起因するものでも爆破しに来る可能性がまあまあある。だから、悟られるわけにはいかない。『私は
「……転移、ね」
呟く。
そう、転移。あの時も転移だった。【乱数転移】による新大陸への
……この作戦は私一人で進めよう。危ないのはダイナマイトだけじゃない。新大陸に行ったボルクネスは基本的に人捜しでは役に立たない、ペンペンも同じ。パストラットに話すと悪巧みととられかねないし、ジュゲッキに話せば実験台にされる。ハゴノイゲは論外だ。
だから、一人で。
「ディープスローターを、探すぞ」
決意の言葉を置き去りにして、私はさっそく駆け出した。
◆
しかし無理だった。
無理だったのでジュゲッキに泣きついている。
「ディープスローターについて教えて~~!」
「もう……仕方ないなあクグリンちゃんは!」
彼女は嬉しそうだ。まあ当然だろう、実験台が増えて喜ばないヤツなんていない。私だって、目の前に弱みを握っているプレイヤーが急に現れたら「マジでこれ使っちゃっていいんだね?」みたいなことを聞く。聞いたうえで、使う。
そして今、私は使われようとしている。
「ハッキリ言って彼女を追いかけるのは無理だよ、追うべきじゃないと思うな!」
まず、ジュゲッキはそう言った。
そっかぁ……。
いや、考えてみれば当たり前だ。私はその当たり前から逃げていたにすぎない。ディープスローターは【座標移動】の上位魔法を使える。つまりそれだけ転移魔法を極めてきたということだ。きっとマップの開拓率も相当なもののはず。熟練の転移魔法使いを旧大陸で燻ってるようなヤツが追いかけて勝てるわけがないのだ。
……まあ、仕方ないか。ここはいったん立ち去ろう。まだまだ考えていることはいろいろあるんだ。
「……そっか。それじゃあ……」
「それはそれとして実験に参加してねっ」
なんだと……?
「いや、そっちは何も情報を渡してなくない?なんで私がモルモッてあげる必要があるの?」
「情報を渡してない……?違うよ、クグリンちゃん」
ジュゲッキはニヤリと笑った。その笑みの奥底に何が隠されているのか、旧大陸でつるんでいたころから今まで、ずっと分からないままでいる。
彼女は少しの溜めを置いた後、再びその口を開く。
「『ディープスローターは追うべきじゃない』―――
…………。
発された言葉は、妙に印象深く感じられて……そしてきっと、印象以外の面でも深さを有していた。旧大陸にこびりついている私には、その面を見ることが決してできない。選択肢は、頷くか、頷かないかの二つだけだ。
「……わかった」
だから、私は前者を選んだ。
◆
「こ、これは……」
そう呟くことしかできなかった。
『今回はモルモッたりはしない、実験
「ねえジュゲッキ、これは……」
恐る恐る、
工場の細部を見てみれば、戦術機にありがちな形状が所々に認められる。なるほど、普通の建築に加えて戦術機の装備をところどころに加えることで、強引に機械的なプロセスを実行可能にしているわけか。
……でも、そんなのは些細な情報ではない。
「ああ、こう名付けたんだ」
違う、何を思ってこんな意味の分からないことをしてるのか聞きたいんだ。
私の意図を多分敢えて無視し、ジュゲッキは言う。
「〈
……工場の上に