ロンギング・フロンティア~居残り組、新大陸に挑まんとす~ 作:Z-LAEGA
「ねぇニコロ、そろそろ契約してくれたり……」
「
「知ってた。なんかこう……
「返答:ある。
「なんで」
「死ぬと解除されるから」
「そりゃ向かないね」
◆
というわけでダメだった。ニコロは対話くらいはしてくれるようになりつつあるけど、やはりまだまだガードが固い。飛行ユニットだけでも使わせてほしいんだけどそうもいかない。
「……はぁ」
小さく発した溜息が、夜道を照らす街灯の中で霧散していく。今夜の私は忍者モード、任務内容は……
……ここ最近、私はずっと金の使い道を探すために金を使っている。いかにもワルそうな服装で下品な笑いを浮かべる兄ちゃんの背中に手を回し、札束を握らせて情報を聞き出すとかそういう感じだ。ハッキリ言ってもう懲り懲りだ。そろそろいかにもワルそうな服装で下品な笑いを浮かべる兄ちゃんの背中に手を回すのをやめ、もっと有意義なことに時間を使いたいという気持ちがある。
そういうわけで、ショッピングをすることにしたのだ。
「よっ……と」
では、なぜショッピングをするために玄衣に身を包んで
……とりあえず、入ったら即気づかれるということはなさそうだね。「ステルスアサルト」発動、煤けた窓の内部を睨み、【空蝉】で侵入……いや、丸太が出現するから潜入向きじゃない。というわけで【瞬間転移】で侵入する。
「……よし」
小さく呟く。侵入成功だ。
現在、私は魔法店の商品倉庫にいる。天井に吊るされた魔力照明は弱いものの、これでもかと並んでいる木棚や、吊り下げられた「黒剣」のエンブレムの旗を視認するには十分だ。棚の中にはいかにもレアそうなスクロールがたくさん納められている。正直言って盗みたいけど、盗むとカルマ値が上がりすぎる。逆に侵入だけなら大したことはない。このゲームの量刑判断への謎は深まるばかりだね。
……さて、ここからのルートを考えよう。そもそもどうして魔法店に侵入しているかというと、強力な
そういうわけで、結論としてはこうだ。商品倉庫から誰にも気づかれずに出て販売フロアに向かい、「さっきから買い物してましたよ」とでも言いたげにうろつく。で、さりげなく目当ての品を取ってさりげなく会計し、買ったものをチェストリアに入れた後に即自殺、近くの宿屋にリスポーンする。
……完璧な作戦だ。
よし、後は行動するだけだ。私は立ち上がった。
「あ、ども」
ちょうど同時に立ち上がった
「あ、ども」
私も流れ的に挨拶を返した。
……?
「えっと、気にせず続けてくださいね?僕は後ろでスクショ撮ってますから!」
…………?
まあいいや。
私は歩き出した。アクセサリーの効果で足音は抑えられるけど、それでも出ないわけじゃない。注意しなければ。
……。
しばらく歩いたところで振り向く。
「あ、ども」
ダイナマイトがファインダー・インターフェースを覗き込みながら挨拶をしてきた。
「なんでいるの?」
「
ただの盗撮では……?
私は思った。
思ったけど、別に指摘すればカメラを下ろしてくれるわけでもない。撮られっぱなしも癪だったので、せめてもの抵抗としてスクショアイテムを取り出し、逆にこちらからもダイナマイトを撮影する。撮影しながら考える。
……まずいな、色々まずい。彼女がいると侵入が失敗しそうなのもそうだけど、一番危惧しないといけないのはニコロの存在がバレることだ。晒しスレにニコロの画像が投下された瞬間、何だかんだあって最終的に私が爆発して死ぬのが確定するからだ。とは言えダイナマイトをぶっ殺したら元も子もないし……そうだっ。
私はカメラを下ろした。ダイナマイトはカメラを下ろさなかった。彼女に言う。
「じゃあ盗撮は不問にするから、鉄砲玉になってよ」
「了解です!」
そういうことになった。
◆
「もう一度言うけど、『なるべく着弾が遅くて、目立つ魔法』だからね」
「わかってますよ!
具体的にどこから回収したのかは聞かないことにしておこう。私のカルマ値に影響がなければそれでいい。
「じゃあ、お願い」
「はい―――【
渦焔が空中に爆ぜた。
めらめらと轟音を上げながら、発動と共に出現した炎がうねり、成長していく。とりあえず『目立つ魔法』であることは間違いないね……傍にいるのに全く
売り場へと続くドアが勢いよく開き、NPCの店員が飛び込んでくる。
「あ、あなたは何ですか!?」
ダイナマイトは答える。
「ちょっとしたテロリストです」
「そっ」
「そこ、危ないですよ」
「ひっ!?」
彼女が指さした店員のすぐ横、そこを一匹の猪が駆け抜ける。その体は炎によって作られていて、走行と共に火の粉を飛び散らせる。相手を動揺させるためにこうなっているのだろう。
「ひ、火が」
「安心して下さい、燃え移ったりはしませんよ」
「えっ?じゃあ……」
「いややっぱり燃え移ります」
「どういうことですか!?」
「おいどうなってる!?」
売り場にいた店員たちがダイナマイトのもとに集まっていく。それは売り場側での警戒が薄くなると言うことでもあり、プレイヤーによる誘導が可能な猪は、誰にも見られず棚の間を抜けていく。
「ダメですね。要領を得ない」
「この炎って【
「ふふ、あなたがそう思うならそうなんでしょうね」
「何意味深なこと言ってるんだ!」
ダイナマイトが時間を稼ぐ間にも、猪の
「よし」
そして、私は【
ふふふ……無事に売り場に侵入することができたみたいだ。棚を見渡す。えーっと、これとこれと……コレ!棚の付近に展開したウィンドウを覗き込みボタンを連打、どんどんカートに詰め込んでいく。
「全く……何だったんだ?」
「何でもなかったんじゃないですか?販売を再開しましょう」
「ああ……」
ちょうど店員たちが帰ってきたようだ。私はカートを改めて確認すると、たたっとカウンターの方に走った。黒死の怨涙を取り出しながら、大きな声で彼らに言う。
「会計を!」