ロンギング・フロンティア~居残り組、新大陸に挑まんとす~   作:Z-LAEGA

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無念の塔の頂上で 其の四

 私の戦い方は何だったか。

 忍術で読みにくい動きをしつつ、爆薬と毒薬と銃で攻撃。たまに魔法。スキルはバフ系統が多く、アクティブなものはあまり使わない。

 ラエルカンはそれにどう対策したか。

 弾道操作魔法を使いつつ弾幕を張ることで忍術にリキャストタイムを発生させて封印。毒薬にはアクセサリーで対処、爆薬の周囲にバリア魔法を張って無効化。

 それでは、ここからの私の戦い方は()()()()()

 

 

 転職と同時にジョブの性能を理解する。視界の隅のUIが、二つの()()()()()()()が発動したことを伝えてきたからだ。そしてまた別の隅のUIが、MPが減少し始めたことを伝えてくる。なるほど、【真竜討滅者(ドラゴンバスター)】はON/OFF切り替え可能かつ発動中は常時MPを消費するパッシブスキルを付与するジョブだ。とりあえず両方をつけっぱなしにし、どこに行ったかもわからない自走竜砲や、もう必要ない忍具なんかをアクセサリースロットから外す。代わりに入れるのは首飾り、MPリジェネタイムだ。

 そうこうしている間に煙幕が晴れていくから、私は錬雷合金のダガーを握りしめた左手を掲げた。目くらましくらいにはなるだろう―――投げつける。投げつけながら背後に振り向く。そこにはついさっき私がこの部屋に乗り込むのに使った雨のカーテンが、今だ止まずに広がり続けている。もう【潮躱し】は使えないけど、ちょっと落ちるくらいなら大丈夫だろう。【瞬間転移(アポート)】、重力と雨粒が体に殺到する。室内からやってきたラエルカンのものであろう銃声が、雨音に塗りつぶされていく。

 雨の中、床を失った私の身体は落ちていく。【鼯衣(むささびのころも)】でゆっくり落ちることも、【鎖縛帷子(さばくかたびら)】で壁にアバターを固定することもできない。今、重力は完全に支配的だ。一階落ちた、二階落ちた―――

 

「ここっ」

 

 腕を伸ばし、最上階から二つ下に位置する〈住宅〉の屋根を掴む。窓ガラスをぶち破り、最上階から一つ下の階に爆弾を投げ込む。

 

「いくらバリアを張れると言っても」

 

 爆発。〈住宅〉が僅かに揺れる。

 

「見えないものは防げないんじゃない?」

 

 最上階の床が抜けた。

 色々なものの破片が降ってくる。私は引き金を引いた。ラエルカンが落ちてくる。着弾。彼の右手人差し指が飛ぶ。これで引き金を引ける手は一つだ。

 

「……やはり破壊属性がついているな」

 

 ラエルカンはバリアを張って言った。何のことやらぁ。

 

「まったく驚いたよクグリン氏。突進して来たのかと思ったら」

 

 彼は右腕を上げてみせた。その二の腕には先ほど投げた()()()()()()()()()()()()()()()()が突き刺さっている。

 

「自分の左手を切り離して、陽動に使っただけだったとはな」

 

 ……私はもう、錬金術師でもなければ忍者でもない。使っているのも単なるライフル、手なんて一本あればいいという考え方もできるだろう。

 私はスクロールを取り出し、【二重詠唱(デュアルスペル)】を発動した。

 

「……『発動者によるあらゆる攻撃に破壊属性を付与する。また、発動者の意思に応じ、自身のアバターの任意の個所を破壊可能にする』だったか」

 

 やっぱり知ってたか。

 私はスクロールを取り出し、【加算詠唱(アッドスペル)】を発動した。

 

「確かに君が戦闘中に転職することは想定していなかった。しかし……セパレーション由来の【真竜討滅者(ドラゴンバスター)】が持つ効果なんて、ライブラリの機密情報を漁れば容易に知れるのだよ」

 

 そっか……私もジュゲッキに聞いとけば良かったかもなあ。いや、もしかしてペンペンがバトルアックスで私の首を落としたのもセパレーションの効果だったのかな?

 私はスクロールを取り出し、【拡張詠唱(エクススペル)】を発動した。

 

「種が分かれば対策は簡単だ。破壊属性がつく分単純な攻撃力はむしろ落ちる、ただある程度のバリアを展開すればそれで良いのだ」

 

 そう言って、ラエルカンは左手に大型銃を構えた。あのバリアって一方通行にもできるの?ズルいなあ。

 

「あれで優位性(アドバンテージ)を取ったつもりだったのか、クグリン氏?」

 

 そりゃあもう。

 ラエルカンの人差し指がトリガーを引く。発射音、巨大な弾丸が回転しながら私に向かう。私は魔法を発動した。

 

「【ファイアボール】」

 

 それは、レベル1の頃から私の習得リストに残り続けている火球だ。はっきり言って弱すぎる。ある程度振ってあるMPと、三つの魔法強化魔法を踏まえてもなお弱い。速度だって速いとは言えず、表面を這う炎からも何だかチープな印象を受ける。ついさっきまでの私にとっては【不知火蕾(シラヌイツボミ)】の下位互換、ライター代わりに使う魔法でしかなかった。

 でも、弾丸一発よりは強い。

 私の火球とラエルカンの弾丸が交差する。火球のほうが大きいから、交差というよりは弾丸が()()すると言ったほうが正しいだろう。別になんてことはない。両者が相殺するわけでもなく、弾丸は弾丸の殺すべきものを、火球は火球の殺すべきものを殺しに行く。普通ならそうなるはずだ。

 

「……な」

 

 ラエルカンが呟くのが聞こえた。

 突入した弾丸は()()()()()。ネタバレすると、火球に()()()()()()しまったのだ。

 

「―――!」

 

 彼は自身に迫る危機を理解したらしい。火球は先ほどよりどこか勢いよく燃え盛り、高速化しているようにも見える。銃声が聞こえる、ラエルカンがさらに発砲したのだろう。でも、それは()()()でしかない。火球は弾丸たちをさらに飲み込み、より一層大きく、速くなっていく。火球が何もない空間を通過し、そこに面が広がるようなエフェクトが発生した。

 

「バリアをケチりすぎなんだよ!」

 

 不可視の障壁が溶け落ちる。ラエルカンの胸部へと紅蓮が迫る。

 

「そのまま死ね!」

 

 私が叫ぶのと同時に、

 

「くっ」

 

 ラエルカンが左に跳んだ。クソ、反射神経が良い。火球は彼の右腕を抉り取るにとどまり、そのまま〈住宅〉の壁を突き破って雨の中を飛び去っていく。

 

「……クグリン氏」

 

 ラエルカンの態度が露骨に変わっている。いいね、もっとそんな風に動揺してよ。

 

()()()()()()()()?」

 

「決まってるでしょ?」

 

 チャンスだ。

 

「アドバンテージだよ」

 

 私は【瞬間転移(アポート)】でバリアに潜り込み、ラエルカンをブン殴りながら答えてあげた。

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