ロンギング・フロンティア~居残り組、新大陸に挑まんとす~ 作:Z-LAEGA
多忙レベルが段々上がるのでそんなに更新速度出ないと思います ご了承を
プロローグ 戦火は豪雨のように
描かれた線条が空中を走る。
それは明確なる弾道として、回転する銃弾を追いかけて一直線に進む。そして、共に空間を貫きながら標的へと吸い込まれていく。銃弾を追いかけているのは直線だけではない。加熱した銃口から破裂音と共に飛び出していく
ずだだだだん。ずだだだだん。私たちの間に広がる空間を、火薬の音が鋭く別つ。
「ごめんね、ペンペン」
ずだだだだん。ずだだだだん。私の呟きが銃声に掻き消され、鳴るはずだった風音と共にどこかへ消えていく。
「ふざけんなよ、クグリン……っ!」
ずだだだだん。ずだだだだん。ペンペンは側転しながらそう返した。銃声すら掻き消すことができないほど、大きくよく通る声だった。彼の四肢と四肢の間を、まるで避けるように弾丸がすり抜けていく。ええいしぶといなこいつ、とっとと撃ち殺されろよ……!
私は歯ぎしりをしながら【
「クソっ!」
ペンペンは叫び、チェストリアから掘っ立て小屋を取り出した。唐突に発生した小規模建築物が地面に影を落とし、ついでにその壁で弾丸を防いで見せた。
「流石にズルすぎなぁい!?」
私は火薬が作り出す反動の連続を感じつつ、人差し指でトリガーを引きながら指摘した。
……レビンカムイの【黒潮】と
「どっちが、だよ!」
ペンペンは火薬が作り出す弾道の連続を回避しつつ、人差し指でこちらを指しながらそう言った。いやよく見たら指したんじゃない、ついでみたいな感じで投げナイフ投げてる。えーっと……まあ普通に避ければいいか。
「クグリン!」
ペンペンが叫ぶ。何だ!?
「お前の野望もここまでだぜ!」
左胸に痛み。ペンペンが至近距離からアイスピックみたいな奴をブッ刺してきた。なるほど転移魔法、たぶんあの投げナイフを起点にしている。私はダメージエフェクトをダラダラと流しながら言った。
「……野望?、っ!……私のこれは、野望なんて大層なものじゃないよ」
「大層なものじゃない!?売りさばいた銃弾を一斉に
……
「……別に」
HPゲージがヤバい、私はもうすぐ死ぬだろう。しかしペンペンの背後にもう一発、飛んでいる最中の弾丸が残っている。これを操作して当てれば勝てる。ペンペンは当然気付いているはず、だから少しだけ
「
ペンペンが人差し指を天に向ける。今度ばかりは正真正銘、投げナイフを投げているわけでもない。その先には随分巨大な一体の竜が、シリンダーのような胴体から生えたマズルブレーキのような頭を振っている。下へと細かい粒がたくさん落ちていくから、一見すれば雨を降らせているようにも見えるだろう。だが、あれはぜんぶ銃弾だ。
『
『
『参加人数:四十八万三千五百九十二人…四十八万三千五百九十五人…四十八万三千六百一人…』
視界の片隅は未だ、そう告げるアナウンスウィンドウに占領されている。
炎が、その最前線を広げていく。
「俺は真なる竜種ってのが何なのかわかってないけどな!ライブラリの奴らが言ってたぜ!真なる竜種は
ペンペンが言う。弾丸はとりあえず背後で回転させておく。
「ダブルミーニングの余地が広がるからだ!それでも本来シンプルな名前なんてなかなか現れない、強い分だけ恐怖が必要なんだとさ!わかるか!?お前が
それは。
それは、わかってる。
「そうだね」
私は言った。弾丸を加速させ始める。
「私は確かに、失うものを持っていなさ過ぎたのかもしれない」
私は言った。右腕にスキルエフェクトを纏わせ始める。
「でも―――」
今さら、どうすることもできないんだ。
その言葉を言い切る前に、私は右腕の
しかし、そうはならなかった。
「……な」
「……やっぱり、そう来るか」
彼の背後で、弾丸が明後日の方向へとフェードアウトしていくのが見える。
ペンペンは……私の右拳を左手で受け止めた。いや、ただ受け止めただけではない。左手はスキルエフェクトを纏っている。それは……私の右手のものと、ちょうど同じで。
「
……そうだ。
身体から力が抜けていく。私は地面にへたり込んだ。頬に感触がある。涙がそこを伝っているのが分かる。VRゲームというのはすぐこうだ、感情を隠すのが随分難しい。
「ああいやあの、多分やり直せる、んじゃないか?」
ペンペンがいきなり弱気になった。慌てて励ますように私に声をかける。
……ついさっき、自分でファイアの強さを強調したくせに。
「ほら、ちょうど来たみたいだしな」
ペンペンがファイアのほうを示して見せる。いや違う、示したのはファイアじゃない。ファイアのすぐそばに対峙する、あまりに小さい一体の人類だ。
涙で目がにじんで詳しくはわからない。でも、二つ分かったことがある。一つは直後、空に掲げられるようにして斬撃が巨大な星形を描き、ファイアが悶える声が聞こえたこと。そしてもう一つは、私が既に、新大陸に行ける可能性が残っているような状況にはないということだ。
ああ、どこからやり直せばこうならなかっただろう。何かを拾うか拾わないか。それとも誰かと出会うか出会わないかだろうか?ペンペンが目の前にいるんだから、友達がいなくてこうなったって訳じゃないはずだ。だったら……誰かを
ああ、もうダメだ。これ以上考えることはできない。
咆哮を上げるファイアを含め、あらゆるものが涙にぼやかされていて……ただ、ゲームのインターフェースだけが普段通りだ。じりじりと減少していたHPバーが、その時ついに底をついて。
そして。
私は、目を閉じた。
具体的には、戦災孤児の討伐がもうちょっと順調に進んで、素材の入手に成功してしまった世界線です