ロンギング・フロンティア~居残り組、新大陸に挑まんとす~   作:Z-LAEGA

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原作のプロローグは未来の話、第2章のプロローグは過去の話……なら、第3章のプロローグは()()()()の話や!
多忙レベルが段々上がるのでそんなに更新速度出ないと思います ご了承を


銃よ、竜よ! われらが描けるは線条の道
プロローグ 戦火は豪雨のように


 描かれた線条が空中を走る。

 それは明確なる弾道として、回転する銃弾を追いかけて一直線に進む。そして、共に空間を貫きながら標的へと吸い込まれていく。銃弾を追いかけているのは直線だけではない。加熱した銃口から破裂音と共に飛び出していく()()()()()()たちが大挙して、たった一つの弾丸に伴われて進んでいる。その背後には、やはり()()()()()()たちが描かれている。

 ずだだだだん。ずだだだだん。私たちの間に広がる空間を、火薬の音が鋭く別つ。

 

「ごめんね、ペンペン」

 

 ずだだだだん。ずだだだだん。私の呟きが銃声に掻き消され、鳴るはずだった風音と共にどこかへ消えていく。

 

「ふざけんなよ、クグリン……っ!」

 

 ずだだだだん。ずだだだだん。ペンペンは側転しながらそう返した。銃声すら掻き消すことができないほど、大きくよく通る声だった。彼の四肢と四肢の間を、まるで避けるように弾丸がすり抜けていく。ええいしぶといなこいつ、とっとと撃ち殺されろよ……!

 私は歯ぎしりをしながら【魔練幻撃(トリックビート)】を撃った。薬剤士系統標準の魔力操作魔法、それを十一番目の真なる竜種(オブジェクション)のジョブ効果で地脈越しに発動し、物理弾に混ぜ込んだ【黒潮】を経由して、同じく混ぜ込んだ【青風】に推進力を発揮させる。要するにやっていることは()()()()だ。ぐいっと軌道を変えた弾道が、ブリッジするペンペンに向かう。

 

「クソっ!」

 

 ペンペンは叫び、チェストリアから掘っ立て小屋を取り出した。唐突に発生した小規模建築物が地面に影を落とし、ついでにその壁で弾丸を防いで見せた。

 

「流石にズルすぎなぁい!?」

 

 私は火薬が作り出す反動の連続を感じつつ、人差し指でトリガーを引きながら指摘した。

 ……レビンカムイの【黒潮】と戦災孤児(ウォールフェン)の【青風】。その同時搭載は強力だが、その分弾丸そのものの威力をかなり削る。掘っ立て小屋の壁でも防げるくらいに、だ。

 

「どっちが、だよ!」

 

 ペンペンは火薬が作り出す弾道の連続を回避しつつ、人差し指でこちらを指しながらそう言った。いやよく見たら指したんじゃない、ついでみたいな感じで投げナイフ投げてる。えーっと……まあ普通に避ければいいか。

 

「クグリン!」

 

 ペンペンが叫ぶ。何だ!?

 

「お前の野望もここまでだぜ!」

 

 左胸に痛み。ペンペンが至近距離からアイスピックみたいな奴をブッ刺してきた。なるほど転移魔法、たぶんあの投げナイフを起点にしている。私はダメージエフェクトをダラダラと流しながら言った。

 

「……野望?、っ!……私のこれは、野望なんて大層なものじゃないよ」

 

「大層なものじゃない!?売りさばいた銃弾を一斉に()()させるのがか!?」

 

 ……戦災孤児(ウォールフェン)の素材を拾って【青風】を完成させたとき、これは絶対にヤバいと思った。要するに自由度が低い代わりに出力がバカでかい【黒潮】、つまり少しの【黒潮】と大量の【青風】をミックスすれば特に問題なく使用できる。そしてオブジェクションの力も合わせれば、遠くの存在に魔力操作を届けることも可能だ。

 

「……別に」

 

 HPゲージがヤバい、私はもうすぐ死ぬだろう。しかしペンペンの背後にもう一発、飛んでいる最中の弾丸が残っている。これを操作して当てれば勝てる。ペンペンは当然気付いているはず、だから少しだけ()()()()()()を混ぜないと。

 

()()を見てもそれが言えるのかよ!?」

 

 ペンペンが人差し指を天に向ける。今度ばかりは正真正銘、投げナイフを投げているわけでもない。その先には随分巨大な一体の竜が、シリンダーのような胴体から生えたマズルブレーキのような頭を振っている。下へと細かい粒がたくさん落ちていくから、一見すれば雨を降らせているようにも見えるだろう。だが、あれはぜんぶ銃弾だ。

 

真なる(The Truth)竜種(Dragon):No.XVII』

 

Fire(ファイア)

 

『参加人数:四十八万三千五百九十二人…四十八万三千五百九十五人…四十八万三千六百一人…』

 

 視界の片隅は未だ、そう告げるアナウンスウィンドウに占領されている。

 炎が、その最前線を広げていく。

 

「俺は真なる竜種ってのが何なのかわかってないけどな!ライブラリの奴らが言ってたぜ!真なる竜種は()()()()()()()()()()()!」

 

 ペンペンが言う。弾丸はとりあえず背後で回転させておく。

 

「ダブルミーニングの余地が広がるからだ!それでも本来シンプルな名前なんてなかなか現れない、強い分だけ恐怖が必要なんだとさ!わかるか!?お前が砲火(ファイア)への恐怖を創り出したんだぞ!」

 

 それは。

 それは、わかってる。

 

「そうだね」

 

 私は言った。弾丸を加速させ始める。

 

「私は確かに、失うものを持っていなさ過ぎたのかもしれない」

 

 私は言った。右腕にスキルエフェクトを纏わせ始める。

 

「でも―――」

 

 今さら、どうすることもできないんだ。

 その言葉を言い切る前に、私は右腕の戦砕誇示(ウォールフェン)をペンペンへと叩きつけた。ゆっくりと、優しく。それで彼のアバターは吹っ飛んで、ちょうどいい位置に誘導した弾丸に貫かれるはずだった。

 しかし、そうはならなかった。

 

「……な」

 

「……やっぱり、そう来るか」

 

 彼の背後で、弾丸が明後日の方向へとフェードアウトしていくのが見える。

 ペンペンは……私の右拳を左手で受け止めた。いや、ただ受け止めただけではない。左手はスキルエフェクトを纏っている。それは……私の右手のものと、ちょうど同じで。

 

戦砕誇示(ウォールフェン)はノックバックのスキルだろ?逆方向に撃てば、相手の発動を相殺できる」

 

 ……そうだ。戦災孤児(ウォールフェン)の討伐は、私とペンペンの二人でやった。どうしてそれを忘れていたんだろう。もっと早くそのこととか、その背後に広がる色々なことに気付けていれば……こうは、ならなかったのかもしれないのに。

 身体から力が抜けていく。私は地面にへたり込んだ。頬に感触がある。涙がそこを伝っているのが分かる。VRゲームというのはすぐこうだ、感情を隠すのが随分難しい。

 

「ああいやあの、多分やり直せる、んじゃないか?」

 

 ペンペンがいきなり弱気になった。慌てて励ますように私に声をかける。

 ……ついさっき、自分でファイアの強さを強調したくせに。

 

「ほら、ちょうど来たみたいだしな」

 

 ペンペンがファイアのほうを示して見せる。いや違う、示したのはファイアじゃない。ファイアのすぐそばに対峙する、あまりに小さい一体の人類だ。

 涙で目がにじんで詳しくはわからない。でも、二つ分かったことがある。一つは直後、空に掲げられるようにして斬撃が巨大な星形を描き、ファイアが悶える声が聞こえたこと。そしてもう一つは、私が既に、新大陸に行ける可能性が残っているような状況にはないということだ。

 ああ、どこからやり直せばこうならなかっただろう。何かを拾うか拾わないか。それとも誰かと出会うか出会わないかだろうか?ペンペンが目の前にいるんだから、友達がいなくてこうなったって訳じゃないはずだ。だったら……誰かを()()事が必要だった、とか。

 ああ、もうダメだ。これ以上考えることはできない。

 咆哮を上げるファイアを含め、あらゆるものが涙にぼやかされていて……ただ、ゲームのインターフェースだけが普段通りだ。じりじりと減少していたHPバーが、その時ついに底をついて。

 そして。

 私は、目を閉じた。




具体的には、戦災孤児の討伐がもうちょっと順調に進んで、素材の入手に成功してしまった世界線です
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