ロンギング・フロンティア~居残り組、新大陸に挑まんとす~ 作:Z-LAEGA
リスポーンした。
後頭部に柔らかい感触がある、枕だ。特に裁定がバクったりすることもなく、〈繁殖住宅〉近くの宿屋の一室に戻ってこられたらしい。
「……ふぅ」
私は目を瞑ったまま嘆息した。吐息が熱を帯びているのが分かる。
……とりあえず、目を開く前にある程度の予定を立てておこう。まずは何から始めよう、まずはニコロの四肢パーツを交換するところかな?たぶんベヒーモスに売ってるんだろうけど、今のジョブ構成で前と同じようにリザルトを荒稼ぎできるとは思えない。爆弾の大量生産も、【空蝉】の発動もできないのだ。
【
そういうわけで、方針としては……とりあえずベヒーモスに行って、今の構成でできることを試行錯誤しつつリザルト稼ぎ。【
私は目を開いた。そこには予想に反して、宿屋の天井ではなく数枚のウィンドウが開いていた。
『
『ジョブを喪失しました:【
『称号を獲得しました:【
私は特に動かさなかった【
「なるほど」
もしかしてこのゲームってクソゲーなの?
私は悟りつつあった。
とりあえずむくりと起き上がり、ウィンドウを操作して詳細を確認する。いや待て待て待て待て……。不思議と驚きはない。焦りもない。
「……
おかしいのだ。それはおかしい。装備していた防具をドロップするなんて普通じゃない。PKされたときならあり得るかもしれないけど、私の死因は落下死だ。逆にこれがPK扱いになったとして、主犯はラエルカンということになるのだろうか?ラエルカン側としてもこんな意味わからん裁定でキルぺナを付けられたら困るだろう。つまりあり得ない。
……いやちょっと待って、
私は胸のあたりに手を置いた。防具の喪失によって空気中に晒された肌は仄かに体温を帯びていて、そこには冷たいものなど何もなかった。首飾りが消えている。
私はそもそも
チェストリアは……キャラクターステータスを確認する。装備済み、中身も問題ない。流石に取り外し不能アクセサリーを落とすなんてことは無いみたいだ。しかし私はステータスの隅にバフの発動を示すアイコンが輝いているのを見逃さなかった。
『特殊状態:運命神の救手』
『効果:ドロップ率増加(超特大)』
『効果時間:5:52:39…5:52:38…5:52:37…』
えっと、これがいわゆる詫び石ってやつですかね?
「なるほど」
このゲームって明らかにクソゲーだね。
私は悟った。
ベッドから抜け出す。とりあえず落としたものを拾いに行かないといけない。仮防具として
「いけそう?」
「
了解。私は展開したニコロをもう一度格納した。
……それじゃ、行こうかな。
私は歩き出した。
◆
瓦礫の山が広がる。
山といっても、別に掘り返す必要があるわけでもない。私は〈繁殖住宅〉が崩壊した後に墜落死したので、山の上にある装備を拾えばいいだけだ。ちょっと探せばすぐ、
「えい」
私は駆け寄り、
……なるほど、特にジョブが戻ったりはしないらしい。いや、クソ仕様じゃん。
「はぁ~~~~…………」
私は萎えた。萎えつつ、周囲に散乱する首飾りを拾い集めていく。一つ、二つ……。何かしらの建材の粉にまみれ、くすんだ様子の輝きをチェストリアに仕舞う。自分は今、地面を這いつくばっているように見えるのかな……なんて思ったりした。
「……クソ」
ちょっと悔しい。
ニコロと契約もできたし、別にすごく悔しいって程ではない。でも、なんとなく……自分が誰かへの
……いいや。こういう時は自分より下の人間を見て安堵感を覚えるに限る。誰がいいかな……。私は周囲を見渡すが、基本的に野次馬と、見てはいけない者を見てしまったようなそぶりをして立ち去る通行人と、ファインダー・インターフェースを覗き込む
いた。
そいつは両手にドリルを携え、轟音と共に瓦礫を掘り進めていた。掘削された瓦礫がさらに小さな瓦礫を量産していくのにも厭わず、一直線に作業を続けている。
ラエルカンだ。
「なるほどね」
私はラエルカンを自分より下判定した。ドリルを持っているからだ。どうせ私と同じで落としたアイテムを探しているんだろうけど、私はドリルを持っていない。それだけ楽と言うことだ。実際、ラエルカンは〈住宅〉たちが崩れるのと共に死んだから、装備があるとすれば瓦礫の下だ。ご愁傷様ァ~~。私は安堵感を覚えた。よし、元気が出てきたぞ……!
私は随分前に使った……何だっけ。そう、τ型のドリルを取り出した。うまくいけばラエルカンの装備を横取りできるかもしれない。いやでも本人が見つけられてないんだったら流石に……待てよ。
思い出そう。ラエルカンが使ってたのは……デカい銃でしょ、聖杯でしょ……いや聖杯は多分仕舞ったかな。それで……そうだ、
「これだ」
私は
駆け寄ってドリルをドリドリする。ビンゴ、空けた穴の向こうにちらちらと、燃え盛る蒼い炎が垣間見えている。火傷するかな?まあちょっとなら大丈夫か。私は手を突っ込み、なんか燃えてるやつをチェストリアに収納した。
『
「よっしゃあ!」
「何をしている?クグリン氏」
しかしそこに長身の影が落ちた。ラエルカンが気づいたらしい。
彼は私の頭上で言った。
「
「返すぅ?なんで?」
「このゲームを破壊するのに必要だからだ」
それでイエスって答えるヤツいるかな……?
「じゃあ聖杯と交換ね」
「いや、聖杯もこのゲームを破壊するのに必要だ」
「じゃあデカい銃」
「……まだ掘り出している最中だ。あそこに」
耳寄り情報ゲット!
私はラエルカンの指差す方向に【
「そこだァーーッ!」
もう一度【
「……クグリン氏」
全身にダメージエフェクトを残しつつ、ラエルカンがそばに立っていた。銃を掴んでくる、これではチェストリアに収納できない。
「その手を、離してもらおう」
「こっちのセリフだよ」
奪い合いの構図だ。
私が銃を引っ張り、ラエルカンも銃を引っ張る。STRはだいたい互角らしい、両者のどちらかが銃を得ることは無く、ただただ腕が酷使されていく。
「私は―――絶対にこの手を離さないぞ、クグリン氏」
ラエルカンが言う。そっか、じゃあ逆に……。私が考えたところで、ラエルカンの左腕が私の右腕を掴んだ。
「『そっか、じゃあ逆に私が手をいきなり離してやれば、こいつは転ぶだろう』とか考えていただろう」
チッ、お見通しか。
「残念ながらね。私は」
じゃあこっちで。
私はセパレーションの能力を発動し、ラエルカンに掴まれた部分ごと腕を切り離した。
「は?」
ラエルカンは転んだ。今だ!ハイヒールでラエルカンを踏む。オラッその銃を放せ!しかしラエルカンは離さない。
「言った、だろう!手を離さないと!」
しゃーない、じゃあ腕を離してもらおう。私はドリルを取り出してラエルカンの手首近くを掘削した。
「は?」
破壊属性の暴虐がダメージエフェクトを飛び散らせる。よし、確かにラエルカンは銃から手を離してないけど、別に手が常に腕とくっついてるとは限らないからね。私はラエルカンの手ごと銃を拾い上げた。チェストリアに収納、手だけが残って地面に落ちる。
「待」
「じゃあね~!」
セパレーションの能力を首に発動。自分自身の頭部が胴から切り離される。私は死に戻りした。