ロンギング・フロンティア~居残り組、新大陸に挑まんとす~ 作:Z-LAEGA
「……で、結局のところ何の用なの?」
しばらく時間をおいたあとに何とも言えない表情で再び歩いてきたダイナマイトは、何とも言えない表情を継続しつつ口を開いた。なんとなく落ち込んでいるようにも見えるんだけど、さも手の前でちょっと組んでみてるだけですよとでも言いたげな彼女の両手が、人差し指と中指でスクショ撮影を表すジェスチャーを作り続けている事実について、私は決して見逃さなかった。
……晒しスレを見てみて分かったことだが、ダイナマイトに会うたびに撮られているにしては、私の画像はそこまで高頻度で貼られているわけではない。それは
……ということを指摘できないまま、私の目の前でダイナマイトが問いに答える。
「はい、実はクグリンさんに紹介したい人たちがいるんです」
へえ?
……よし、今回はお断りしよう。
「ごめん、テロに加担するわけには……」
「いやクグリンさんもテロリスト寄りじゃないですかぁ!」
そんなわけないじゃぁ~ん!
私は笑顔を振りまきつつ踵を返した。さあ、次は上忍試験に向かうぞ~っ!
「ちょ、待ってくださいよぉ~!テロじゃないです!テロじゃないですからっ!」
縋り付いてくるダイナマイトの声色は、先ほどまでの何か
まあ、一応再び振り向いてあげよう。ダイナマイトに聞く。
「テロじゃないなら……え、詐欺?」
「詐欺でもないです!その他反社会的行為は全部違いますよ!」
現在進行形で盗撮しながら言われても説得力無いって!
ダイナマイトは両手のジェスチャーをやめないまま、私に説明を続ける。
「えっと……そうだっ!クグリンさん、あの様子だと多分【水滑り】を引いちゃったんじゃないですか?」
何が言いたい……?
ダイナマイトは意気揚々と続けた。
「私の紹介したい人たちと会えば、別の秘伝書をくれると思いますよ!」
マジ!?
「会います」
「ねっ」
会うことになった。
◆
「クグリン氏、お会いできて光栄です、お噂はかねがね」
ダイナマイトが導く先に進んだところ、そこには十人ちょっとくらいのプレイヤーたちが佇んでいた。私は今、多分リーダー的な何かと思われる中背の女性と話している。頭上には『コウガイガー』のプレイヤーネーム、レッドではない……彼女の背後にいるプレイヤーたちもみんなそうだ。どうやら反社会的じゃないっていうのは本当らしい。
「なんでも、【水滑り】の達人だとか」
それほどでも~。私は謙遜した。謙遜しながら考えた。
……なるほど、そういう方向性で来たか。私は心無い人々によって悪評を流布されているけど、別に悪いことだけがアイデンティティではない。というか悪くないまである。【水滑り】の習熟はその一つで……まあ実際、【潮躱し】を習得したときにwikiを見ても何も書かれていなかった。それはwikiに書かれないレベルの少人数しかあの忍術を発見していないということで、つまり【水滑り】を頻繁に使う人間がそれだけ少ないということを意味している。
いや……それにしてもこう、安心した。普通に私を能力的な面で頼ってたんだね!
「そして、このゲームにおけるズルの仕方を考えるのがうまく」
前言撤回、私はダイナマイトを睨んだ。
「しかし実行力に難があり、ズルをやり切る前の中途半端なところで終わってしまうことが多いとか」
さらに目力を強くする。しかしどうやら通じなかったようで、彼女のカメラロールに『目力の強いクグリン』の画像を追加するに終わった。一人負けェーーーッ!
……まあいいや、とりあえず話を聞いてみよう。
「……あー、まあ否定はしないよ。それより聞きたいんだけど、結局のところあなたたちはどういう団体で、何が目的なの?」
「はい、説明しましょう」
コウガイガーは凛々しげに言った。
「私たちはミニクラン【
コウガイガーの紫の瞳が、その奥行きの底でわずかに光った。ような気がした。
「―――王国騒乱中に、ユニークシナリオ「大いなる巡礼」を達成することです」
◆
ユニークシナリオ「大いなる巡礼」。
「聖職者」系統の上位ジョブ就職者が色々やると発生するシナリオで、ユニークといってもwikiに乗っている程度には有名になっているものだ。内容を説明するのは至極簡単だ―――『カルマ値0を維持した状態で、一度も死なず、徒歩で、シャングリラ・フロンティア内のすべての教会に巡礼せよ』。そして、それを実行するのは極めて困難だ。
カルマ値0を維持。これがそもそも難しい。このゲームのカルマ値はPKをしなくても上がる。モンスターを殺すのはまだしも、肉を食べただけでも上がるって言うんだからちょっとヒドい。
一度も死なない。これもかなり難しい。シャンフロには死にゲーの側面があるので、どれだけステータスを磨いても注意不足だとすぐ死ぬ。私が言うんだから間違いない。
徒歩。かなり厳しい。転移魔法はもちろん、ベヒーモスで買える乗り物も、飛行魔法も使うことができない。戦術機なんてもってのほかだ。
何より―――一番の問題だ。
これらの問題が重なって、「大いなる巡礼」はかなり困難なクエストと化している。
「しかし」
場所を移し、適当に入った喫茶店。
「王国騒乱中、ファスティアからサードレマの間とフィフティシアに隣接する4エリアを除けば……
薄味のレモンスカッシュが入ったグラスを木製の机にドンと叩きつけ、コウガイガー氏は力強く言った。
私たちとは別のテーブルに座る【
「ユザーパードラゴンを回避できる!」
「そう!ユザパは出現しない!」
「ユザパは出現しない!万歳!」
「いや出現しないんじゃないぞ、通らなくていいだけ!でも万歳!」
「二度と俺の前に現れるなクソカスゴミモンスターが!」
「エンチャント奪うのはズルだろ~がよォ!」
この治安で聖職者は無理じゃないですかね?
私は率直な感想を抱いた。
「王国騒乱はチャンスなのです。良いことはエリアボスの件だけではありません……新王側陣営に加入して即脱退すれば、肉を食べたなどの理由で発生したカルマ値の端数を初回恩赦でリセットできる」
マジ?良いこと聞いちゃった。カルマ値に恩赦が出るとは聞いてたけど、仕事の有無とは別に人一人殺した分くらいはデフォルトで減らしてくれるんだ。
「もちろんリスクだって存在する。当然戦争をしているわけですから身の危険は増えますし、おそらく……エリアボスよりも巨大なモンスターが動くことだって考えられる。しかし、やる価値はあると考えます」
グラスが汗をかいている。まるで、闘志を帯びた熱気にあてられたかのように。
……戦争イベントは『予想外』の塊になるだろう。そう私は考えている。「この陣営を勝たせよう」レベルの抽象的なものから、目の前でコウガイガーが熱弁するような複雑なものまで……。誰もが戦争における『目標』、あるいは『予想』を立てている。そしてその通りになるように行動し、結果としてその行動たちが絡まり合って混沌を生み出して、誰の『予想』とも違う結果を生み出す。乱戦とはそういうものなのだ。
だから……この試みが上手くいくとは、思えない。しかしそれも、結局私の『予想』でしかないのだ。覆る可能性はある。なら、私は秘伝書をくれる方に動くだけだ。
「わかった……協力するよ」
……それはそれとして。
「で、その作戦のどこで【水滑り】を使うわけ?」
「話すと長くなるんですが」
話すと長くなるんだぁ……。
「まず、本作戦においては重要な町が四つあります。サードレマ、サーティード、ファイヴァル、そしてイレベンタル。前者二つは言わずもがな両陣営の本拠地ですから、どちらかの陣営に属する限りは『潜入』の形をとらなければならない。ここが既に【水滑り】の使いどころです―――具体的には、
最終的に【竜威吹】と【超転身】をもらった。
具体的なルートとしては
イレベンタルからスタート
↓
エイドルト→フォスフォシエ→サードレマと行く
↓
サードレマからファスティアまで行って戻る(貪食の大蛇&泥掘りと2戦ずつ)
↓
シクセンベルト
↓
翔風楼結の大河の隠しルートから天頂地朽の大穴に出てファイヴァル→セブラセブルと行く
↓
セブラセブルからトゥエルレムスまで行って戻る
↓
隠しルートを逆に行って翔風楼結の大河に出てニーネスヒルに進む
↓
ニーネスヒルからサーティードまで行って戻る
↓
ニーネスヒル→シクセンベルト→テンバート→フォルティアン
↓
フォルティアン→フィフティシア(閃霆万里の坂道のエリアボスと一戦)